「アスカ、なんだったら友達も一緒に連れて行ってやってもいいぞ」

「駄目駄目。ヒカリはアクションものなんか見ないもん」

「何を言うか。007はアクションだけではないぞ。『女王陛下の007』は…」

「それ、テレビで見た。面白かったから、リバイバル見に行きたくなったんじゃない」

 惣流トモロヲは一瞬眼を細めたが、心とは裏腹に挑発的な言葉を吐く。

「ふん、お前はわしと一緒ならおごりになるから誘ったんじゃろう」

「残念でした。中学生は保護者同伴じゃないと駄目なの。日本って過保護」

「その日本には敬老の日というものがあってな」

「知ってます。だからおじいちゃんとデートしてあげようっていうんじゃないっ」

「デート費用が全額わし持ちじゃかなわんの」

「映画館のポップコーンくらいはアタシが出してもいいわよ」

「ほう、そいつは嬉しいのう。嬉しくて涙が出てきそうじゃ」

「洗面器持ってこようか?それともバケツ?」

「うむ、では沢庵にしてくれ。冷蔵庫に入っておったじゃろ」

 OKと食卓を離れ、惣流・アスカ・ラングレーは台所に向かった。
 その後姿を楽しげに見やりながら、トモロヲはお茶を啜る。
 
「おじいちゃんはどのボンドが好きなの?」

 戻ってきたアスカが問いかけると、沢庵を箸で摘みながらトモロヲはあっさりと答える。

「そりゃあショーン・コネリーに決まっとる」

「ふ〜ん、やっぱりね」

「ロジャー・ムーアもいいが作品がの。宇宙にまで行ってしまってはあまりに荒唐無稽すぎるわい」

「面白かったら別にいいんじゃないの?」

「『ムーンレイカー』は話としてもくだらん。主題歌にシャーリー・バッシーを使ったのは評価してやるが」

「偉そうに」

 呆れた眼を祖父に向けるが、映画評論のスイッチが入ったトモロヲは気にしない。
 007シリーズはどの主題歌も素晴らしいと沢庵をばりぼり噛み砕きながら、彼は機嫌よく喋り続けた。
 もし一人娘がこの姿を見れば、「孫相手には良く口が回りますこと」などと嫌味を言ったことだろう。
 事実、スイッチが入っていないトモロヲはどちらかといえば無口な部類に入り、娘との会話はあまり言葉を費やさない上に趣味の話さえもしないからだ。
 この点についてはトモロヲ自身も驚いている。
 娘は論外として、亡き妻を相手にしてもここまで喋った記憶がなかったからだ。

「アスカはどの歌がいい?」

「そうね…」

 祖父に半強制的に聴かされた007映画主題歌集のレコードをアスカは思い返した。

「キョウコの娘だからやっぱりアレか?『死ぬのは奴らだ』だろう」

「まさか!」

 アスカは目を剥いた。
 曲はともかくとして、アレを歌っている歌手が気に入らない。
 断然気にいらない。
 憤然として全否定する孫娘を見てトモロヲはからからと笑った。

「母親の悪影響か。いやというほど聴かされたようじゃな」

「本当に、いやっ。ママがいなくなって一番よかったのは家の中でアレが流れていないってことだわっ」

 アスカはお茶をごくりと飲み、食べ終わった食器を重ね始める。
 それらを流しに持っていき、戻ってきた彼女は学生鞄を手にした。

「じゃ、あとヨロシクね、おじいちゃん。あ〜あ、朝から社会か。日本史って嫌い」

「漢字が多いからか?」

 祖父がからかうと、アスカはふんっと顎を上げた。

「漢字なんか全部覚えたわよ。普通以外の読み方するから嫌いなの!妹の子って書いてどうして“いもこ”なのよっ」

 そんな捨て台詞を残して、アスカはいってきますと玄関に向かった。
 急に静かになってしまった部屋の中で、トモロヲは苦笑した。

「あの調子じゃあまり映画映画と言わんほうがいいか?
惣流の血筋は天邪鬼だから強制されると反抗するに決まっとるからな」

 トモロヲは壁にかかった写真の一枚を眺めた。
 それはもう25年ほど前の家族写真だ。
 アスカそっくりの少女を真ん中に若かりしトモロヲと亡き妻が写っている。
 その白黒写真を見て、今はドイツにいる娘へトモロヲは語りかけた。

「お前のビートルズ好きはアスカに相当嫌われとるぞ。
 この分じゃ帰ってきた時に親子喧嘩が絶えなさそうじゃの。
 まあ、この先どうなるかわかったもんじゃないがな」

 さてとと立ち上がったトモロヲは朝食の後片付けに入った。
 なるようになるさという気分で鼻歌を歌いながら。
 『Let It Be』を60歳過ぎになって口ずさむとは、やはり町内で有名なハイカラ爺さんだけのことはある。







33回転上のふたり


A面 2曲目

メドレー

ー With A Little Help From My Friends ー



ー Do You Want To Know A Secret ー

 


 2010.11.6        ジュン

 
 


 


 惣流・アスカ・ラングレーは苦しんでいた。
 やっとの思いであの男子の名前を知ることができ、そして新たな感情を認めたというのにそこからまったく先に進んでいないのだ。
 彼が2年7組だということが彼女にとってかなりの障害となっている。
 2組に在籍する彼女にとって7組は遥かに遠く、そのクラスには彼との間を取り持ってくれる友人が一人も存在しないのだ。
 それどころか顔見知りすらまったくいないのである。
 7組と同じフロアにあるほかの2年の組でも同様だ。
 もっともアスカには友人と呼べる存在がほとんどいない。
 さて、この中学校ではかなりの有名人であるアスカに友人が少ないということは不思議に思われるかもしれないが、これもまた事実なのであった。
 2年になって2週間も経たないうちに横浜からの転校ということで、担任教師は面倒見の良い洞木ヒカリに当面の世話役を命じたのだが、この二人は偶々相性がよかったようで忽ち友人関係と相成った。
 その他にも屈託のない連中とは男女を問わず話をしているが、もともと彼女のようなハイスペック(同級生視点)の人間と屈託がなくなるような者など数えるほどであろう。
 同じクラスでさえそうなのだから、違う組の者ではなおさらである。
 アスカの方では気取るつもりは毛頭ないのだが、どう見ても白人にしか見えない彼女に気軽に声をかけることなど簡単ではなく、逆に白い目で見てしまうことさえあった。
 そういう視線に敏感なアスカが自分から馴染もうとしなかったのも無理もない部分もあった。
 ドイツやアメリカでは黄色人種の血が混じっている彼女は特別視されていたからである。
 日本で住めばもしかしてみんなと仲良くできるかもしれない。
 だからこそ猛勉強をして日本語に磨きをかけ、意気揚々と来日したのだ。
 それが1年前の横浜での出来事だった。
 しかし、彼女の目論みは当たらなかった。
 いい方にも悪い方にも大きくアスカの予想を裏切ったのである。

 いい方、それはまさか自分が日本人の男子にもてるとは思っていなかったのだ。
 母親からはそれらしきことを聞いていたのだが、ドイツでの“ちんちくりんのガリガリ”というレッテルを貼られていたア スカには悪い冗談にしか聞こえていなかったのである。
 それが来日して公立中学校に通うようになりすぐに見知らぬ男子生徒から声をかけられた。
 しかもその一人だけではなく何人も交際を求められた。
 もしこれがドイツならば最初の一人の求めに即座に応じていたかもしれない。
 だが、その最初の一人がたまたまかなり軽薄な男子であったために、からかわれていると思い込んだアスカに引っ叩かれてしまった。
 そのことが男子にチャレンジ魂を燃え上がらせ、そして女子には反感を持たれてしまったのである。
 それが悪い方であった。
 横浜での中学校での生活は孤立無援という状況であったが、元よりここには1年もいないことがわかっていたアスカはそれほど気にはしていなかった。
 逆に親友ができたならすぐに別れないといけないのだしいやだなと思っていたくらいである。
 そこで彼女は1年生の半年をいわば孤独の中で過ごしてきたのであった。

 アスカの一家が実家のあるこの町にドイツから直接引っ越してこなかったのは理由があった。
 ひとつには惣流家の改築が進んでいなかったこともある。
 日本家屋の惣流家だが祖父もそしてアスカの両親も洋風に改築する気は毛頭なかった。
 しかし今のままではアスカの父親が家の中を歩く時は常に猫背にならないといけなかった。
 廊下などでは問題ないのだが襖の高さが彼の頭よりも低いのだ。
 そこで改装と相成ったのだが、依頼した棟梁が職人そのものの気質をしていて適当にお茶を濁すようなことはできないと実に丁寧な仕事をしていたのである。
 そのため予定がずれこむことがわかった上に、肝心の父親の仕事の整理が巧くいかなかったのだ。
 ドイツで友人と共同で会社を興していたのだが、後を任そうとした友人が不慮の事故で入院してしまった。
 そこで彼が退院するまではと思っていたところ、今度は大きなプロジェクトにその会社が選ばれてしまったのである。
 退院した友人に後を引き継いでと考えていたのだが、プロジェクトが終わるまでは無理だと元請企業に駄目出しをされた。
 結果的に父親はそのままドイツに残らざるを得なくなり、一度は横浜に改築待ちのため引っ越したラングレー家はこれからどうしようかと考えざるを得なくなってしまったのである。
 そこで決まったのが母親は父親の世話のためにドイツへ赴き、アスカは家財道具とともに祖父の元に行くという結論になったのである。
 確かにアスカの学業のことを考えるとそう何度も日本とドイツを往復していてはややこしいことになってしまう。
 それに彼女は大好きなおじいちゃんの世話をするという魅力的な提案に飛びついた。
 一見そうは見えないのだがアスカは努力の人である。
 外では涼しい顔をしているが家に戻ると血のにじむような努力を平気でする性格をしていた。
 来日してからの彼女は日本での日常生活、特に家事について母親から徹底的にレクチャーされた。
 日本料理とドイツ料理の双方をマスターすれば祖父は大いに喜ぶだろうと母親に巧く乗せられたのである。
 実際に引っ越してみると祖父は家事全般なんでもこなす人だったので、アスカは当初がっかりしてしまった。
 だが、このままでは努力が無駄になると一念発起し料理をすることを宣言、その結果祖父の舌は合格点を出し、分業&交代制で二人で家事をすることになったのだ。
 ということで、今の惣流家はアスカと祖父の二人暮しであり、あと数ヵ月後に来日する両親を待っているのだった。

 さて、この第壱中学に引っ越してきてからのアスカは横浜時代とは少し違っていた。
 男子からのもて様も女子からの悪感情は同じなのだが、親友ができたことが大きい。
 委員長であるヒカリと仲良くなっていたことが救いで、それによっていわゆる苛めや無視をされることはなかったのだが明らかに彼女たちとの間には一線が引かれていたのだ。
 それはアスカの被害妄想ではなく、ヒカリからも「ごめんね、みんなそんなに悪気があるわけではないのよ」とよく言われている。
 確かにそこにあるのは疎外感だけであり、表面上は普通の会話はなされているので、それなりの日常生活がアスカの周囲でおくられているのは間違いない。
 そして、その日常生活はアスカにとって多少の居心地の悪さはあるものの不快だとまでは思えなかった。
 横浜にいたときよりもはるかにましであり、それどころか明るい未来予想図までも思い描けるようになったのである。

 それは一人の男子生徒のことを好きになったからであった。

 そう、この時にはもう好きだという感情に変異していたのである。





 話は夏休み前に遡る。
 図書室で見かけた男子の顔をヒカリの家にあったアルバムで発見した日のことだ。
 その時はまだ恋愛感情ではなかった。
 だからこそ、アスカは友人に事の経緯を説明できたのだ。
 その時はヒカリもややエキセントリックなところのある友人は好奇心を満たすためにそういう真似をしていたのだと了解していた。
 そしてアスカも彼、碇シンジが7組にいると聞いて、どうしようかと考えただけだったのである。
 悪戯っぽい表情を浮かべた彼女にヒカリはあまり変なことをしちゃ駄目よと釘をさした程度だったのだ。
 ところが、である。

 その翌日、放課後になり委員会に出席していたヒカリは昇降口で待ち構えていたアスカの姿を見た。
 彼女は暇だったからと待っていた理由を口にすると、しばらくは黙り込んでいた。
 そう思っているととりとめもない話題を次々と喋りはじめ、そしてまた口を閉ざす。
 そういうことを繰り返していると、いつもの分かれ道にきた。
 普通の交差点であるが、アスカは右に、ヒカリは左に進まないと家に帰れない。
 「じゃあね」といつもの別れの挨拶をしてヒカリが自宅へと足を進ませていると、何か後ろ髪を思い切り引かれたような気がした。
 振り返ってみるとその場に立ったままのアスカがじっとこちらを見ていた。
 どうしたのかと彼女の元に駆け寄ると、アスカは何でもないと頬を赤くして「また明日」と家の方に駆け出していった。
 そしてその言葉どおり、翌日もアスカはまた同じような行動を取った。
 「また明日」という言葉も同様で、そのまた翌日も言葉通りに動く。
 3日目は雨だった。
 さすがにヒカリも絶対に何かあると感じ、推理した一番目の餌をばらまくことにしたのだ。

「アスカ、うちに寄る?」

「うん!」

 間髪おかず、実に元気のいい返事が飛んできて、アスカの赤い傘が大きく揺れた。
 食いついた!とヒカリは思ったが、しっかり者の彼女はすぐに結論は出さない。
 自宅へ戻ってから次の餌をちらつかせたのだ。
 飲み物を持ってくると部屋を出て、一旦は階下に向かったが途中で引き返し、足音を忍ばせて自室へたどり着く。
 わざと薄く開いておいた襖の隙間に眼をやると、アスカはそわそわとした風情で手を握ったり離したりとしていた。
 しばらくそうしていると、「ああ、もう我慢できない!」と小さく叫び押入れに突進した。
 そして手にしたのはヒカリのアルバムである。
 気ぜわしい調子でアルバムを開くと、とあるページで身体がぴたりと止まった。
 その身体から安らぎのオーラが溢れていることを確認すると、ヒカリはいきなり襖を開けた。

「アスカ!何してるの?」

「な、な、な、な、何もしてないわよ!」

 彼女もこんなにうろたえる事があるのだとわかり、ヒカリは友人のことを可愛いなぁと思う。
 しかしそういう感情は棚上げしておき、この場は追求の刃を振りかざす。

「私のアルバムを勝手に見ないで」

「ご、ごめんなさい!どうしても我慢できなくて」

「何が我慢できなかったの?正直に言わないと絶交するわよ!」

「え…」

 しまった、やりすぎちゃったとヒカリは後悔した。
 こんなにも簡単にあのアスカが涙目になるとは予想もしていなかったのだ。
 生まれて初めてできた親友に叱られ、アスカは幼児のように素直にしゅんとなってしまったのである。
 その姿を見てヒカリは慌てた。
 これではまるで主人に捨てられた犬ではないか。
 急いで冗談だと言おうとしたとき、アスカの口が先に開いた。

「わかんないの…」

 このタイミングではもう冗談云々と言えるわけがない。
 ヒカリは「何が?」としか聞き返せなかった。

「写真をね、見たくて仕方がなかったの」

「碇君の?」

 こっくりと頷く様はまるで幼子のようである。

「ええっと、ということは…」

 言っちゃっていいわよね、とヒカリは判断した。
 ここまで露骨に反応しているのだから大丈夫だろう。

「アスカは碇君のことを好きになったのね」

「へ……?」

 ヒカリの判断は甘かった。
 顔を上げたアスカの表情は明らかにこう物語っている。
 何言ってんの、アンタ馬鹿?

「アタシがコイツを?はははははははっ!」

 笑い飛ばすという行為をヒカリは生まれて始めて目の当たりにした。
 なるほどこういう具合にするんだと思ったくらいに、アスカは高らかに笑った。

「で、でも、見たかったんでしょ?碇君の写真」

「そ、それは…。確かにそうだけど…」

 また歯切れが悪くなってしまった。
 
「例えば、この写真をあげるって言ったら欲しい?」

「うん!」

 またもや元気いっぱいのいい返事で、しかも右掌を上にヒカリへ差し出した。
 
「こ、こら、例えばって言ったじゃない!あげないわよ!」

「ひっどぉ〜い!」

 百面相かアスカは!
 ヒカリはこんなにたくさんの表情を友人の顔に見た覚えがない。
 この数分の間に色々な顔を見せてくれたことを少しばかり嬉しく思ったが、この写真だけは死守しないといけない。

「駄目!絶対に駄目なの!この写真だけは」

「どうしてよ!こんな写真いらないでしょ!アタシだっていらないくらいよ!」

「いらないんだったら、あげなくてもいいじゃない!」

「アタシは…そうよ!参考資料としてこの写真を持っておきたいだけなの!」

 いい事を思いついたと自画自賛しているのがその表情に思い切り出ている。

「どうして参考資料なの!もう覚えたでしょう」

「ううん、全然!」

 嘘つき!とは声に出さずに、嘘ですと顔に書いてある親友をヒカリは睨みつけた。

「覚えていないから道ですれ違ってもわかるように、そう、生徒手帳にでもいれておかないといけないかも。
あ、でも、このサイズじゃ入らないわね。うん、コイツだけ切り抜いたらいいか。他の馬鹿二人なんてどうでもいいし」

「どうでもいいことなんかない!馬鹿なんて言わないで!」

 叫んでしまってから、ヒカリは自分の口を両手の掌で蓋をした。
 だがもう遅い。
 情報は漏れてしまったのだ。
 アスカはニヤリと笑った。

「どっち?メガネ?それとも、こっちの乱暴そうなほう?」 

「そ、それは…」

「それは?」

「それは…」

「それは?」

 実際に行われた「それは」の繰り返しをすべて記述していると色々な意味で無駄である。
 結局5分後にはすっかりと顔を赤らめてしゅんとしてしまったヒカリは、想い人の名前を明かしてしまった。
 乱暴そうに見えるけどそういうことはなくて…鈴原トウジ君っていうの……。
 犯人を自白に追い込んだアスカは意気揚々とさらに事情聴取を進めるのだった。
 先ほどまでのしおらしさはどこへやら、腕組みをしにんまりと笑っている。
 初恋に至るまでの経緯と現状をすっかりと白状させられたヒカリはがっくりとうなだれた。
 
「ふふん、どんなものよ。アタシは毎週金曜日に落としの山さんで学習してるんだからねっ」

 七曲署一係の山村刑事を気取って人差し指を額にあてたアスカだったが、この次の瞬間から自分が取調べを受けようとはまったく気づかなかったのである。

「で、アスカはどうなのよ。碇君のことを好きなんじゃないの?」

「はぁ?馬鹿馬鹿しい。どうしてあんな変なヤツを?はははははっ」

 またもや高笑いをしたアスカはその行く手に真っ暗な穴が開いていることに気がついていない。
 そしてその穴に誘導しているヒカリは自分が穴の底にある片思い無間地獄にどっぷりとはまっていることを自覚している。
 その地獄に友人も導いているのだが、そちらの方の自覚はない。
 ただ彼女は友人の本心を引き出したいという友情が8割、残りの2割は自白させられた腹いせがあったことも否定はできまい。
 いい子のヒカリもやっぱり人間でしかもまだまだ子供なのだ。

「そうかなぁ、でもね、アスカ。写真は欲しいんでしょう?」

「くれるの?」

「ダメ」

「ケチ」

 これで自覚していないのだからなぁとヒカリは苦笑した。

「もし写真を持っていたらどうするの?」

「そりゃあ……」

 アスカは絶句した。
 瞳がさまよい、唇が微かにパクパクと開く。
 その様子を見ながらヒカリは時を待った。
 焦ってことを仕損じてはいけない。
 30秒ほど経ってから、アスカは口を開いた。

「決まってるわよ。前にも言ったじゃない。参考資料よ。顔を覚えるための」

 確かに少し前にそういうことを彼女は言った。
 しかしものの30分もしないうちに以前の発言を忘れてしまうだろうか。
 それが言い訳という類のものであってもあまりにおかしい。
 となれば、アスカは明らかに何かを心の中に隠しているに決まっているではないか。
 名探偵ヒカリはそう結論をつけ、親友をじっと見つめた。

「顔を覚えてどうするの?つまり、もう一度会った時に碇君をどうするのかって話」

「それは……!」

 アスカは再び瞳をふわふわと彷徨わせる。
 だが、今度は考える暇をヒカリは与えなかった。

「だいたい何が気に入らなかったの?アスカの前から逃げ出したこと?」

「え…」
 
「それにアスカの頭で顔が覚えられないなんてあるわけないじゃない。だって、その時ちょっと見ただけで碇君がそうだってわかったんでしょ?」

「そ、それは…」

「それに気に入らない男子だったら無視するのがアスカのいつものパターンじゃない?わざわざ追いかけていって嫌味言ったりとか喧嘩売るのなんてアスカらしくないよ」

「そ、それは…」

「それに女子が男子の写真を欲しがるのってその男子のことを好きになるしかありえない。絶対にそれ以外にはないわ!」

 いつになく強気のヒカリだが、自分がそうなのだからと自信満々の発言である。

 因みに少し脱線するが、この頃の女子と写真撮影にはそれほど密接な関係はない。
 カメラを扱うのは普通は男子と相場が決まっていて、出来上がった写真を購入(男子からという意味ではない)するのが女子というのが当たり前だった。
 “写るんです”が発売されるのはこの物語の6年後である。
 無論この時期でもコンパクトカメラと呼ばれる類の簡単なカメラも存在してはいたが、やはり女子はこういう機械ものは敬遠していたのである。
 それはカメラ以外でも同様でサイクリング車を乗り回す女子は第壱中学ではアスカただ一人であった。
 つまり、昭和55年において女子が好意を寄せる男子の写真を入手するというのはかなり難しいことだったのだ。
 もっともカメラに触る可能性が高い男子であってもそれは同様で、好きな女の子をファインダーの中に収めるなど容易にできるわけがない。
 わずか30年ほど前のことなのだが、今のように簡単に男女の仲は進展できなかったのだ。
 だからこそ行事ごとの後に廊下に貼られる写真販売のチェックは恋する男子や女子にとっては大チャンスだったのだ。
 いかにして好きな相手の写真を合法的に購入するかと血眼になってチェックしたものである。
 中にはフォークダンス中の豆粒ほどの女子を誰それだと断定し後日に人間違いだと判明し脱力した男子を見たことがある。
 またカメラマンが現れるのを見たとき、意中の相手の近くにそれとなく近寄り同じ写真に写りこもうと努力する者も多かった。
 某アニメ番組で2016年の男子中学生が同級生の女子の写真を販売していたが、あれはこの時代を経験していた者だからこその描写ともいえよう。
 以上余談。

 ヒカリに決め付けられたアスカはいつものように否定できなかった。
 もしかするとそうなのかもしれないと思いはじめたからだ。
 人の話をまず否定から入りがちの彼女ではあるが、逆に信頼する人の話は素直に受け入れてしまうのも事実である。
 だからこそアスカは何度も母親に見事にかつがれてしまうのだが、それでも何度も信用してしまう。
 その度に次こそはと悔しい思いをするのだが、何しろ本当に嘘が100分の1ほどの確率だけに無理というものだ。
 それにアスカは異性への恋愛感情というものがよくわからない。
 テレビや映画を見てこの人カッコいいなという類の感情はあるのだが、自分でもそれは美人を綺麗に思うというようなものと変わらないということをよく理解していた。
 つまり彼女は初恋未経験者だったのだ。
 そのために横浜以降交際の申し込みを受けても嬉しさがちょっぴり混じっていようがOKの返事をしなかったのだともいえよう。
 
 あの時からどうしてこんなに碇という男子のことが気になって仕方がないのか。
 まさか一目惚れというものなのか、これが。
 そこがどうしても頷けない。
 物語で言う恋心というものは、もっと胸がドキドキして相手の顔を見ると顔が赤らむとかそういうものになるはずではないか。
 それなのに自分は彼の写真を見ても胸がときめいたりしていない。
 どちらかといえば…。
 そう、もどかしいという表現が一番似合っているような気がする。
 つまり、ということは…。

 アスカはにやりと笑った。
 危ない、危ない。
 もう少しで騙されるところだった。
 このアタシがこんなに簡単に一目惚れなどしてたまるものか。

「ちょっと待って、ヒカリ。アタシはアイツにただ不愉快なだけ。それがどうして、好きになるってことになるのよ」

 不敵に笑うアスカだったが、意外にもヒカリはまったく動じない。

「不愉快とかでも気になるってことには違いないわよね。そうでしょ、アスカ?」

「まあね、そういう意味なら間違いないわ」

「じゃ聞くけど、アスカ。あなたに気になる男の子ってこれまでにいたかしら?」

 友人に問いかけられ、アスカはこれまでの長い長い半生を振り返った。
 アメリカ、ドイツ、横浜…。
 ………。

「い、いたわよ。腹の立つヤツなんていっぱい」

 彼女は頬を少しばかり赤くして力説した。

「うん、わかるわよ。アスカならそういう相手がいっぱいいてもおかしくない」

 アスカは眉を顰めた。
 しかし、ヒカリの言う通りで気に食わない同級生は男女を問わずそれなりにいる。

「その人たちの名前とか覚えてる?あ、覚えてるのはわかるけどね。アスカは頭がいいから」

 アスカは一瞬緩みそうになった表情を引き締めた。
 ああ、どうしてアタシはこうも褒め言葉に弱いんだろう。
 
「だけど、その名前を自分から探そうとした?」

「話が戻ってるわよ、ヒカリ。だから、アタシは…」

 危うく堂々巡りになりそうだった二人の会話はこの時大いなる転回点を迎えた。
 大げさに言うと、この時歴史は動いたのである。

「アタシが言いたいのは、あんなにいい笑顔をしていたのにアタシを見て引っ込めたってことが気に入らないのよ!」

 どうよとばかりに、アスカは胸を張り顎を上げた。
 ところが彼女よりも碇シンジのことを知っているヒカリの顔は呆気にとられた様な表情でいっぱいになる。

「ちょっと待って、アスカ」

「待ったなし。アタシの勝ちね」

「じゃなくて。笑顔って…アスカ、こういうのがいいの?」

 ヒカリは問題の写真を指差そうとしたが、その写真のシンジには笑顔の欠片もない。
 委員長に注意されてどぎまぎしていますという、物凄くわかりやすい表情だった。
 ヒカリは溜息を吐いた。
 こうなれば仕方がない。
 秘蔵の写真を出すしかないではないか。
 彼女は引き出しを開けると、その奥からクッキーの箱を取り出した。
 それは金属製でいかにも進物用という感じの、そしてロマンティックな雰囲気が漂うものだ。

「アスカ、眼を瞑ってて」

「どうして?」

「いいから瞑って。お願いだから」

 わけがわからないままに、アスカはわかったと目を瞑った。
 ヒカリは箱の蓋を開くと素早く中身を取り出してより分けをはじめた。
 中身は彼女の宝物である鈴原トウジの写真である。
 彼一人で写っている特上品(ヒカリ視点)は数えるほどだが、今回はそれらには用はない。
 碇シンジと一緒に写っている写真が十数枚あり、それをより分けているのだ。
 その途中、ヒカリは殺気を感じぱっと顔を上げる。
 するとそこにはいかにも今眼を瞑ったところという雰囲気満点のアスカの顔が見える。

「アスカぁ、見てたでしょう」

「ごめん」

 眼を瞑ったまま、アスカはぺろりと舌を出した。
 見られたのなら申し方がなかろう。

「もういいわ。でも、笑わないでよ」

「笑うわけないじゃない」

 しっかりと目を開けたアスカは写真の山を見て、口笛を吹くように口をすぼめた。

「すっごぉ〜い。どうやって集めたの?まさか、全部買ったの?」

「う、うぅ〜ん、それがね…」

 真実を友人に告げたヒカリに対し、アスカはうまくやったわねと褒め称えた。
 手伝いをした正式の報酬なのだから卑屈になることはないと励ましたのだ。
 もっとも彼女の視線はより分けられつつある、碇シンジの写った写真に釘付けだった。

「見ていい?」

 そしてついに我慢しきれず、アスカはヒカリにねだった。
 ヒカリがあっさりとOKすると、まるで虎か豹が獲物に飛びつくかのようにアスカは写真に飛びついた。
 これで好意を持っていないと言い張るのだから困り者だとヒカリは苦笑しながら残りの写真を選別する。
 しばらくして、アスカがシンジの写っているものすべてを眼にし終えた時、ヒカリは改めて質問した。

「どう、アスカ?どこにもいい笑顔なんて一枚もないわよ。
まあ、いかにも碇君って感じの笑顔だけど、そうね、愛想笑いっていったらいいの?あんな感じじゃない」

「うん、ちゃんと笑ってないわね、どれもこれも」

 アスカはあっさりと認めた。

「アイツ、そうなんだ。友達といる時もそうなの?」

「そりゃあずっと見ていたわけじゃないけど…、教室とかではいつもこんな感じよ」

 ヒカリが指差した写真は例の3人で写っており、シンジ以外の二人は大口を開けて笑っている。
 それとは異なり、シンジはぎこちなく笑っているだけである。

「学校外ではわからないわよ。でも、碇君がげらげら笑っているなんて想像できない」

「別にげらげら笑ったなんて言ってないじゃない、アタシは」

「そうだっけ?いい笑顔って言ってたじゃない」

「ふふんっ」

 アスカは得意気に鼻を鳴らした。
 
「アタシが見たのは…、そうね、言うならば天使の微笑み?そんな感じ」

 ヒカリは口を押さえた。
 だが、それだけではどうしようもなく、彼女はくつくつと笑い声を漏らしながら身体を二つに折って肩を揺らす。
 
「アンタ、そういうのって余計に失礼よ。笑うんだったら、ちゃんと笑いなさいよ」

「だ、だってっ。ふふっ、ははは」

 はしたない笑い声を上げたヒカリはアスカが睨みつけているのを見て必死になって笑いをおさめようとした。
 その様子を眺めていたアスカは、手にしていたシンジの写真をしげしげと見る。
 この笑顔は確かにぎこちなく、友人が言うように愛想笑いと呼称するのがぴったりだ。
 それにあの恐怖に歪んだ表情から見るならば、あの男子にはこちらの笑い顔の方が似合っているだろう。
 しかし、自分は見た。
 確かに見た。

「きっと、この残りの馬鹿二人なら見たことがあるんじゃないの?うかつには見せないのよ。国宝みたいなものよ、うん」

「こ、国宝って。あ、馬鹿って何?アスカ、酷いわよ」

「何言ってんのよ。ヒカリが3馬鹿ってアルバムに書いていたんでしょ。だから馬鹿で間違いないでしょうが」

「それは…そうだけど」

 しまった、とヒカリは後悔した。
 カモフラージュのためにあんなことを書かなければよかった。
 アスカのことだから一生馬鹿という言葉を使うに違いない。
 こうなれば絶対にアスカの初恋を自覚させてやる。

「それはそれとして、とにかくその天使の微笑み…」

 そこでヒカリはぐっと腹に力を入れた。
 笑っちゃダメ、笑っちゃダメ!
 笑っちゃ話が先に進まなくなる。

「その微笑みが気に入ったんでしょ。で、それをもう一度見たい。結局、そういうことじゃない」

 一瞬、アスカの時間が静止した。
 思考が止まり、あの微笑みが甦る。

 そうだ、これだ、この微笑みだった。
 この表情にアタシは…。
 えっ、ってことは、ということは……!

 残酷なことに甦った記憶はすぐに霧散する。
 手を差し伸べようとするがあの微笑みは遥か彼方へと飛び去ってしまった。
 
 ああ、もう一度見たい。
 近くで見たい。
 あの微笑みを自分に向けて欲しい。

 あ、そうか…。

 わずか3秒もかからなかった。
 静止した時間が流れ出した時には、アスカの頬に微かな赤みがさしていた。
 その変化を確認したヒカリはほっと息を小さく吐く。
 どうやら自覚したようだ。
 どこから好きになったかなんてわかったものじゃない。
 自分だって鈴原トウジのことが好きになったということを意識した時は慌てたものだ。
 あんな乱暴な口を聞く、しかも関西弁で喋る男子を好きになるわけなんかない。
 まずは否定して、それからゆっくりと考えた。
 そしてしばらくしてから大きく溜息を吐いて苦笑したのだ。
 なんと間違いなく自分は彼のことを好きみたいだ。
 こうして素直なヒカリはすぐに自覚できたが、天邪鬼なアスカはかなり複雑な経路を辿った。
 もしヒカリが手を貸していなければ、一目惚れに気がつかないままに彼への思いはフェイドアウトしていた可能性が高い。
 
「ヒカリ、アタシ…」

 アスカがポツリと呟いた。
 一旦俯いた彼女は、すぐに顔を上げる。
 その表情を見てヒカリは大いに驚いた。
 青い瞳は輝き、赤みのさした頬を緩ませたアスカは小さく叫んだ。

「Geil!」

「げ…?」

 意味どころか発音もよくわからなかったヒカリの肩をアスカはぽんと叩いた。

「凄いってこと。びっくりした。これが恋なのね」

 あまりに予想と違う反応に、ヒカリはぽかんとしてしまった。
 恋愛感情を認めるにしてももっと派手な言動をするのではないかと思っていたのだ。
 それが意外に落ち着いているのだから驚いてしまったのだ。
 
 しかし、彼女は知らない。

 しばらくしてヒカリの家を出た後、アスカはゆっくりと歩いていった。
 雨は上がり、片手に鞄、もう一方にはたたんだ傘がしっかりと握られている。
 ところがその足取りが少しずつ速くなっていく。
 そして、最後には駆け出してしまったのである。
 夕焼け空の下、赤金色の髪を煌かせながら彼女は駆けた。
 何のためにだか自分でもわからない。
 ただ走らずにはいられなかったのだ。
 息を弾ませながら疾走する少女が考えていたことはただひとつ、あの微笑みを自分に向けさせることだけだった。








 アスカは自覚した。
 あの男子生徒に一目惚れをし、そして彼を自分のものにしたいと心から思った。

 だが、その後に彼女の周囲は何か変わっただろうか。
 その答は否である。
 もちろん彼女の心境は大きく変化した。
 何しろ恋愛感情を理解できなかった少女から、恋する乙女に変貌したのだから物凄い変化が彼女に訪れているのだ。
 ところが、表立ったところは何一つ変わっていない。
 
 ただし、ほんの少しだけ日常生活に変化は訪れていた。
 親友と恋の悩み、つまり愚痴を言い合う時間が増えている。
 片思いの彼に何も言えない苦しみ、その彼を今日は見かけた、会話ができた(これはヒカリのみ)、などなど。
 この会話という点ではアスカは親友を大いに羨んでいる。
 彼女とその男子は1年の時に同じクラスにいて、尚且つ結構親しくしていたからだ。
 もっともヒカリの目から見るとそれは親しいというレベルではなく、ただ口うるさく注意をしていただけで相手はそれを快く思っていないということになる。
 だが、アスカから見ると全然違うのだ。
 ヒカリは相手のことを「鈴原」と呼び捨てにしており、向こうは彼女を「委員長」と呼んでいるという。
 厳密に言うと「委員長」ではなく「いいんちょ」らしいのだが、彼のことをどうとも思っていないアスカはその微妙な言い回しをマスターする気はさらさらない。
 ただそういう細かい部分を大切にしているヒカリのことを微笑ましく、そして羨ましく感じているのだ。
 それに廊下などですれ違う時、声を掛け合うことがあるというのだから羨ましいことこの上ない。
 自分は一目惚れした相手と喋ったことなど初対面の時の一度、しかも「ごめんなさい」の彼の一言だけなのだ。
 そこからまったく先に進んでいないばかりか、彼の姿を目にすることすらかなり難しいという事実がある。
 図書室に行けばいいかと考えたが恥ずかしいと思っているうちに1学期が終わってしまい、彼は図書委員の職務から解放されてしまった。

 そんな2学期がはじまってしばらくしてのことである。


 
 母さんはその夜病院を抜け出そうとしていたのでした。
だから、父さんは家のテレビを病室に運んできて、その番組を母さんが見ることができるようにしたのです。
今だったらビデオデッキというものがあるのでそれを使えば録画して退院してから見せてあげるって事ができたと思うんだけど、今も僕の家にはビデオデッキなんかないのでやっぱり無理だと思います。
父さんの話ではテレビがかなり大きくて重くて、リヤカーを借りてきて汗びっしょりになって運んだそうです。
病院の先生はテレビなんてとあきれていたらしいのですけど、今みたいに小さなテレビがなかった時代だから当然だと思います。
万博の時にカラーテレビに買いかえたからその時は白黒テレビのはずだけど、僕は大きなテレビだったとしか覚えてませんし、写真で見ると確かにかなり大きくて重そうでした。
よくもあんなものを運んだものだと僕は感心しました。
そして、母さんはその番組を見ることができて大喜びだったそうです。
これが僕の生まれた年にあった我が家の一番のニュースらしいです。




 その作文を読み終えて、洞木ヒカリは座席に座った。
 内心はどうしてこの私が違うクラスの男子の作文を読まないといけないのだろうかと不満だったが、それを顔に出すような彼女ではない。
 それをわかっていて教師は彼女を指名したのだし、そもそもその男子生徒が彼女の秘めたる想い人の友達だからまあいいだろうとヒカリ自身が自分を納得させたのだから問題はない。
 しかもその男子は…。
 ヒカリは後を振り返ってみたかったがとりあえずこの場は我慢した。
 作文を書いた男子の名前を聞いた時に彼女の親友がどんな顔をしたのだろうか。
 パッと顔を輝かせたのか、頬に朱を走らせたのか、それとも関係ないとばかりに思い切りそっぽを向いたのか。
 そのどれもしそうだし、もしかするとどれもを瞬間技でしてのけたかもしれない。
 あの子ならやりかねないわねと思うと、その瞬間を確認できなかったことが残念でたまらない。
 席替えで思い切り場所が離れてしまっただから仕方がないのだが。
 ヒカリが仕方がないと自分を納得させていると、クラスで一番騒々しい男子が大声を上げた。
 もしヒカリの想い人がこのクラスに在籍していたならば、彼が真っ先に同じようなことを叫んでいたに違いない。
 どこのクラスにも似たような性質の生徒は必ずいるものである。

「青葉先生!どうして他の組のやつの作文なんか聞かないといけないんですか?それ俺たちも書いたけど、国語の宿題だし、どうして社会の授業で、しかもよそのクラスのヤツの変な作文を?」

「黙れ!がたがた言うな。これが眼に入らんか」

「そんなもの眼に入るのはウルトラマンか怪獣くらいだよ!」

 別のお調子者が突っ込んで教室がどっと沸いた。
 確かに青葉シゲル先生が宙に掲げたアコースティックギターが眼に入る生徒など誰一人としていないだろう。
 しかし、そのような逆襲を青葉はまったく気にも留めなかった。

「ふふん、それはだな…」

 青葉はギターを構えなおすと教室中を見渡す。

「お前らの中でこの碇シンジの母親が何の番組を見たがったのかわかるヤツはいるか?いないだろう?」

「そんなの関係ないじゃないか、俺たちに」

「ふん!わからないんだろう?もしわかるヤツがいたら次のテストに10点、いや20点上乗せしてやってもいい」

「え!」

 冗談か本気かわかったものではないが、教師の発言に生徒たちはこぞってその気になってしまった。
 洞木ヒカリのような常に90点以上を社会で取っている生徒でさえ、答はなんだろうかと考えてしまったくらいだ。
 もちろん男子生徒たちはこぞって思いつく番組名を口にする。
 ただし自分たちの生まれた年、即ち昭和41年に放送されていた番組など簡単に思いつくわけもない。
 これが3ヶ月ほど前ならば、クラスの沸き立つ様子を醒めた目で見ている少女がいるはずであった。
 これだけ教室が騒がしくなれば振り返って彼女を見ても問題ないだろう。
 ヒカリが親友の席を見ると予想したとおりである。
 以前なら馬鹿らしいとそっぽを向いていた蒼い瞳がきらきらして教壇の方を向いているではないか。
 それは何故だろうかと考えるまでもなく、ヒカリは苦笑した。
 彼女だけがアスカの秘密を知っている。
 同学年のみならず下級生及び上級生、少し離れた場所にある公立高校生からも交際の申し込みが絶えず、しかもそれをことごとく瞬殺してきている、この日独クォーターの金髪碧眼少女には好きな男子ができていたのだ。
 社会担当の青葉が授業が始まってすぐにこのわけのわからない行為を示した時は、いつものようにそっぽを向いて空を眺めていたアスカである。
 親友が作文を読むことを指名された時も、「かわいそうなヒカリ」と心の中で思っただけで鰯雲が流れていくさまを眼でぼんやりと追っていたのだ。
 ところがヒカリの口から作文を書いた生徒の名前が飛び出したとき、アスカの首は物凄い勢いで前を向いた。
 今の名前が聴き違いではなかったかと驚いたのである。
 秋へと向かいつつある空を眺めながら、彼女はその名前の男子生徒のことを考えていたのだから。

 碇シンジ。
第壱中学校2年7組出席番号3番。
身長体重は不明だが、やや痩せ気味で背の高さはちょうど真ん中くらいにいる。
所属する部活動はなし。
趣味は…趣味になるのかどうかわかんないけどチェロを弾く。
あの時弾いていたのはチェロだったのね!
友人は不可解なことに3組の鈴原と9組にいるという相田。
出身小学校は希望が丘で、住所は春日1丁目のあたり。
1学期は図書委員で、そして、何よりも笑顔が最高!
むふふふふっ!
一度しか見てないんだけどさっ。

 だんだん冷静さを失っていったが、アスカの得ている情報はかなり正確であった。
 1年の時に同じクラスだったヒカリからの情報だから当然だろう。
 だが、碇シンジという男子にはまったく興味を持っていなかったヒカリの持っていた情報は僅かだった。
 そこでアスカは彼の秘密を自力で探ろうとしたのだ。
 一応確認しておくが、この秘密という言葉には特に意味はない。
 情報というよりも秘密とした方がロマンチックだから彼女が選んだにすぎない。
 ところが、この秘密という単語は案外的を射ていたのかもしれない。
 些細なネタですらおいそれとはつかめなかったのだ。
 何しろ2年2組に所属する彼女から見れば7組は遠すぎる。
 同じフロアならまだしも、7組は階段を上らないといけない上に、その4階にある特別教室の美術室は7組とは正反対の場所にあり、顔見知りもいないアスカが彼のいる教室近辺をうろつくことすらままならないのだ。



 あれ以来アスカが彼を見ることができたのはわずかに7回だけだった。
 毎週月曜日の朝は全校朝礼である。
 しかし朝礼中に彼を見ることは不可能だ。
 何しろアスカも彼も朝礼台に向かって立っているのだし、2組の女子と7組の男子の間には8列の人の壁がある。
 その壁越しに彼を探すなど不可能もいいところだ。
 それよりも朝礼前と後がチャンスである。
 ところがそうは簡単にアスカの思い通りにはいかない。
 この当時の中学校には1500人以上の生徒がいる。
 いくらアスカががんばろうが昇降口や運動場に体育館でたった一人の男子を探すなど簡単なように見えて案外と難しかったのだ。
 全校、または学年の集会という場で彼の姿を見たのは3回だけで、しかもそれは一瞬であり、もしその時に瞬きをしていれば確実に見逃していただろう。
 一度はかなり早く登校し昇降口で網を張ろうとしたが、間の悪いことに彼の登校時間は一番のラッシュ時であった。
 満員電車さながらのその場所で彼を見るために仁王立ちしているなどできることではなかったので、アスカはたった1回彼の靴を履き替える姿を人並みの向こうから僅かに見えた程度で朝の張り込みを断念せざるを得なかった。
 朝がダメならば放課後がある。
 アスカの放課後待ち伏せ大作戦は結局徒労に終わった。
 この学校の下足箱は扉がついていないので下校後かどうかは一目瞭然だった。
 まだ帰っていないことを確認したアスカは彼の下足箱が見える場所でそれとなく佇んだ。
 だが学内有名人のアスカが人通りの多い場所にいればどうなるか。
 せめてヒカリが一緒にいれば話は違っただろうが、生憎今日は委員会。
 さすがに二学期は委員長ではないが今度は学習委員の仕事をする羽目になった。
 文化祭で忙しいのは1年の時で誰もがわかっていたので、立候補するものがなくなすり合いになりそうだったのでヒカリがやむなく手を上げたわけだ。
 そのために一人佇むアスカは男女問わず注目の的となってしまっただけでなく、もしかすれば俺を待っているのかと誤解して特攻&撃沈してしまう男子すら出る始末。
 この調子ではとてもではないが張り込みどころか待ち伏せにもなりはしない。
 対象が現れる前に彼女はすごすごと運動靴に履き替え帰宅することになったのだ。
 その他の3回はすべて偶然に出くわしていた。
 体育館への通路、職員室前、牛乳の受け取り。
 特に最後の時は実に残念だった。
 給食センターから運ばれてきた牛乳をクラスの人数分入ったケースを教室まで運ぶのが日直の仕事だった。
 こういう力仕事を男女のペアでするのは非効率的ではあったが、この時期は平等公平を慮ることが主とされたので女子は相当いやいやながらこの仕事に従事していたのだ。
 この日、アスカの相方は鈴木君だった。
 彼女がいない鈴木君は学校一と評されている金髪美少女とペアになった彼は何か喋りたいと熱望していたが、一歩先をずんずん進むアスカは絶対に話しかけるなといわんばかりに固く唇を結んでいる。
 それほど気の強い方ではない彼はもうそれだけで口を開けなくなってしまった。
 さっさと受領場に進んだアスカはケースの一方を右手で持ち、早くしなさいよと態度で鈴木君を促す。
 それほど気の強い方ではない彼はもうそれだけで慌ててケースのもう片方を手にした。
 せぇ〜のも何もなくアスカが右手を持ち上げたので、鈴木君もこの僕だって君の力になれるんだよとばかりに力を入れた。
 その瞬間だった。
 アスカは急に手を離した。
 まだ5cmも持ち上がっていなかったので大惨事は免れたが、たたらを踏んでケースを支えた鈴木君が何をするんだとアスカを見れば、彼女は背中を向けていた。
 姿勢を崩した状態だったのでいささかばかり低い位置からだったので、アスカの白い足が目に入りドギマギして彼はつい視線を逸らしてしまったのである。
 だから、鈴木君にはアスカが何故放心状態に(いやそれすらわからなかったのだが)なったのかまるで知ることができなかった。
 アスカが呆けてしまったのは予期せず恋しい男子の姿を間近に見た所為であった。
 なんと彼も日直で牛乳ケースをひとりで抱えたのである。
 ひとりで…?!
 別のクラスの男子が彼に声をかけ、碇シンジは相棒の女子が急に用事ができたから一人なんだと語った。
 そしてよいしょとばかりにケースを一人で抱える。
 もちろん体格がいいとはいえないシンジは一見無様と呼べるような姿勢でケースを持ち上げよたよたと歩く。
 ああああああああ…!
 アタシが手伝ってあげる!
 そう叫んですぐに彼の元に駆けつけたかった。
 しかし、ほぼ初対面の相手に…、いや、単に恥ずかしくて足が動かなかったにすぎない。
 躊躇っている間にシンジは廊下を進んでいった。
 愛しい彼は4階まであの牛乳ケースをひとりで運ぶのだ。
 そのことを思うと彼を助けることができなかった自分が歯がゆくアスカは唇を噛む。

「そ、惣流?」

 時間にするとほんの10秒ほどの出来事だったが、鈴木君はわけもわからずアスカに声をかけた。
 すると彼女は背中を向けたままとんでもないことを言い出した。

「アンタ、このまま教室に帰んなさいよ。アタシ、手を洗ってくるからさ。あ、牛乳はアタシが運ぶから」

「えっ、そんな!いいよ、俺待って…」

「うっさい。早く行きなさいよ。もしアンタが待ってたり、勝手に牛乳運んでたりしてたら、ただじゃ済まさないわよ!」

 背中越しに啖呵を切ると、アスカは手洗いに向かって走り出した。
 鈴木君はトイレに行きたくなったのかな?と思春期の少年らしく顔を赤らめ、そして自分の行動をどうすべきか考える。
 このまま彼女の言うとおりに動けば間違いなくクラスの男子から吊るし上げを食らうだろう。
 しかし転校以来の彼女の言動を鑑みるに、もし指示通りにしなければ憧れの彼女から完璧に嫌われると容易に推察ができた。
 どちらにしても彼からすると大問題である。
 だが、頭の回転のよい鈴木君は巧い解決方法をすぐに導き出せた。
 彼はすたこらさっさと教室目指して駆けていった。

 さて、アスカは手洗い場で顔をごしごしと洗った。
 自分が腹立たしくてならなかったのだ。
 もちろん日直の仕事を放り出すことはできないまでも、声をかければ色々な方法を考えられたのではないか。
 自分のクラスのある3階までは2ケースを列車の連結のようにして3人で運ぶこともできた。
 それから彼のクラスまで自分が手伝うことも可能だったのでは?
 チャンスだとかそういうことではなく、彼が一人で文字通り重荷を背負ったということがアスカには悔しかったのだ。
 ハンカチで顔を拭くと曇った鏡の中にいる自分を睨みつける。
 アスカの意気地なしっ……!
 彼女は自分の両頬をぱしんと掌で叩くと、牛乳の受領所に戻った。
 すでに他のクラスの連中の姿もなく、彼女が願ったとおりに鈴木君もおらず牛乳ケースだけが少し壁際に移動して残っている。
 アスカは大きく頷くとケースをぐっと持ち上げようとした。
 うっ、お、重いっ!
 こんなに重いものを彼は簡単に持ち上げたの?さすがに男の子!
 念のために申し上げておくと、今のは恋する乙女視点の感想である。
 碇シンジはへっぴり腰でよたよたと歩いていき、階段では3段ずつ休憩を取っていたことをアスカは知らない。
 まして3階で通りかかった親友トウジに助けてもらうという幸運が訪れたことなど想像もせず、彼は一気に4回の教室まで重い牛乳ケースを運びきったものだと信じていた。 
 ヒカリから日常生活のシンジの姿を聞いてはいるのだが、何しろ彼のことをあまり知らずに恋をしているのだから仕方はなかろう。
 ただ、ご安心いただきたい。
 痘痕も笑窪という言葉がある。
 格好のいい彼の姿に恋したのではなく、その微笑にノックアウトされたのだから、実像を知っても幻滅することはない。
 良いのか悪いのか、それが惣流の血なのだ。
 好きになれば一直線。
 ドイツ留学中に恋をした娘を遙か日本にまで連れ帰った祖父に、アメリカまで恋する男を追いかけていった娘がその証拠だ。
 本人たちは知らねども、惣流家の家訓は坊主に惚れりゃ袈裟まで惚れよかも知れぬ。
 ケースの重さに辟易としたアスカだったが、恋する人と同じことをしたい。
 そのために日直の相棒を帰したのだ。
 もう後にはひけない。
 悲壮なる決意で彼女はケースを持ち上げた。
 ゴルゴダの丘を十字架を担いで進んだキリスト様に比べればこんな重さなど耐えられぬことはない!

 幸いにも彼女の試練は15mほどで終わった。
 鈴木君の注進でヒカリが1階まで助けに来てくれたのだ。
 教室に帰ったアスカは機転を利かせた鈴木君にお礼の代わりに日直の当番日誌は自分が職員室まで持っていくと申し出た。
 その申し出に鈴木君は頬を赤らめて喜んだが、残念ながらお礼の気持ちはほんの5%程度であっただろう。
 彼女はもしかすると職員室で彼と出くわすかもしれないという可能性に賭けただけの事。
 そして当然のことながらそういう自己中心的な目論見は外れるものだ。
 


 さてさて、このようにせっかくの恋も相手との接点がほとんどない状態にアスカはがっくりときていたわけだ。
 そういう状態の時にこの社会教師青葉シゲルの脱線はまるで棚から牡丹餅であった。
 最初は、どうして社会の授業にギターを抱えてやってくるのだ、こいつは芸人か?と馬鹿にしていた彼女である。
 だが、ヒカリに命じて読ませた他クラスの生徒の作文を書いたのが碇シンジと知った時の彼女の驚きは相当のものだった。
 青葉先生の評価はどん底からうなぎのぼりに上がり、そしてこの発言で頂点に達する。

「ぶぶぅっ!お前ら全員外れだ!おい、自分たちのうまれた年のことくらい勉強してろ!」

 青葉はギターをぼろんと鳴らす。

「昭和41年はな、彼らが日本にやってきた年だ。そしてこいつが1曲目だ。よく聴けよ」

 彼はにやりと笑うとギターを弾き出す。
 そのイントロを聴いた瞬間、アスカは思わず立ち上がってしまった。
 それを見て、青葉は顔を綻ばせた。

「おっ、惣流。早いな。お前、ファンなのか?」

「そ、それって…」

 物心ついたときから、という表現では生易しすぎる。
 おそらく胎教の段階からずっと聴かせ続けられてきた音楽なのだ。
 母親の熱狂振りに嫌気がさして、逆に嫌いな歌手を上げろといわれれば絶対にその名前を出していたアスカである。
 だから曲名は出てこない。
 出てはこないが、歌手の名前は嫌でも出てくるのだ。

「び、ビートルズ……?」

「正解っ!」

 にかっと笑うと青葉は調子に乗って『Rock And Roll Music』を大声で歌いだす。
 サビに到達する前に隣の教室から国語教師の伊吹マヤが飛び込んできて彼に説教を始めた。
 教室が爆笑の渦の中、アスカは一人呆然と立ち尽くしていた。
 彼がビートルズを好きだったなんて……!



 先に念を押しておこう。
 碇シンジはその作文中で一言も「僕はビートルズが好きです」とは書いていない。
 だが、彼女はそう思い込んでしまった。
 それは母親の悪影響でビートルズが嫌いになっていたため、好きになった男子がそのビートルズのことを作文に書いたというショックがそう脳内変換させてしまったのかもしれない。
 または恋するものの本能というものかも知れぬ。
 当然そういう類の本能というのはまず外れるものだ。
 ところが、アスカの思い込みをよりによって後押しした者がいた。

 伊吹先生に平謝りし、その上ギターを押収されてしまった青葉先生は、教師の威厳を復活させるために教壇で胸を張った。

「まあ、あれだ、昭和41年当時のビートルズの人気といえばとんでもないものだったぞ。
先生は10歳だったからウルトラマンの方に夢中だったがな、姉貴などは武道館に行くんだと家出する寸前に取り押さえられたんだ。
ああ、武道館でコンサートを最初にしたのはビートルズだ。これは試験には出ないだろうが、絶対に覚えておけよ。
俺がビートルズに夢中になったのは高校生になったときでその頃には残念なことにもう解散してしまっていたけどな。
しかし解散後も、俺や、この碇の様にビートルズを好きになる連中は後を絶たない」

 青葉は勝手に決め付けた。
 おそらくは言葉の勢いだったのだろう。
 しかし、彼の言葉は彼女の本能を確信に変えてしまった。
 そして、彼女の趣味をも一瞬で変えてしまったのである。

「どうだ、お前らの中にもいるんじゃないか?惣流、お前はどうだ?
イントロだけで『Rock And Roll Music』がわかるくらいだからな。ん?」

 青葉に促されたアスカはにこやかに席を立った。
 ビートルズだということがわかっただけで曲名まで答えていないということを青葉は失念している。
 だが、アスカは当然曲名まで知っていたかのような態度で青葉に負けず劣らず胸を張った。
 そして、彼女はこう宣言したのだ。

「当然!アタシはビートルズのことが大好きなのっ!」
 
 


− 3曲目へ続く −


 


− 『33回転上のふたり』メインページへ −


第2回目のためのあとがき

第2回を掲載いたしました。

実はこの物語の最初の構成では、
この回の最後に当たる、社会教師青葉の暴走が冒頭だったのです。
ここから過去に一旦戻りというスタイルだったのですが、
どうもわかりにくく…。
あ、いや、書いているとどんどん長くなる(いつもの)ので、
こいつは拙いと構想を練り直したわけです。
この回も後半だけのつもりでしたが、
どうもアスカの恋心が確立できていないような気がしまして…。
ええ、ただの脅迫観念に過ぎません(苦笑)。
そのために前半を書くことにし、
本来は『Do You Want To Know A Secret』のみの話だったのですが、
急遽メドレー形式となりました。

今回でアスカが宣言しましたように、
このおはなしはビートルズが軸となります。

はい、以前から申し上げていた“ビートルズ話”というわけです。
趣味に合わない方には本当に申し訳ございません。
できますれば、続きもお読みくださいね。

ジュン

 

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