55555HITしていただいた夏侯惇様さまのリクエストです。

お題は…。

「冬月大活躍」「ゲンドウVSシンジ&冬月」「本編系」というお題を頂きました。

くわぁっ!本編系は苦手だってば!どうしてリクエストは本編系ばかり…。みんな人の弱点を巧妙につくんだから…。

ということで、本編パラレル天邪鬼の権化・のジュンが贈ります。55555HIT記念SSです。

 

 

 


 

 

 2015年。

 本来なら秋と呼ぶべきだが、現在のこの日本に夏以外の季節はない。

 

 エレベーターの扉が開いた。

 中に乗っていた少年は扉の向こうの人を見て、慌てて居住まいを正した。

「あ、こんにちは」

「ああ、こんにちは、シンジ君」

 初老の男は微笑むと、箱に入ってくる。

 充分な広さがあるのに、シンジは隅に身体を寄せる。

 初老の男−冬月は唇の端で苦笑した。

 どうも警戒されているようだと。

 冬月はL3のボタンを押し、背中を向けたままシンジに声をかけた。

「最近はどうかな?」

「えっと、エヴァですか…」

「いや、学校だよ。中学校はどうかね」

「あ、た、楽しいです。友達もできましたし」

「そうか。それはよかった」

 微かに箱が左右に揺れ、エレベーターが止まる。

 冬月は開いた扉に向かう。

「では、お先に」

「あ、はい。さようなら、副司令」

 おずおずとした言葉を背に、扉は閉まった。

 冬月は出てきたままの姿勢で立ち止まっている。

「副司令…か。仕方あるまい」

 さっきよりも深く苦笑すると、冬月は歩き出した。

 人気のない通路に靴音を響かせながら。

 

 

 

そして、また月は輝く

 


ジュン   2003.09.23

 

 

 

 

「ちょっと、またレトルトぉ?もっとまともなもの食べたい!」

「文句があるなら、自分で作れよ」

「何よ、何か言いたいならもっとはっきり喋んなさいよ」

「いいよ、もう」

「はん!大体この私に文句言おうだなんて、100万年早いのよ、馬鹿シンジ」

 この金髪の美少女はいつも多弁である。

 何か話題を探してはシンジに絡んでくる。

 それがアスカの寂しさの裏返しであることを知るには、シンジには経験も思いやりも足らなかった。

「まあ、大学を卒業している天才美少女に中学校に通わせているんだから…」

「自分で美少女って言うなよ」

 ぼそりと呟いたその言葉にアスカは飛びついた。

「あら、私って不細工?」

 シンジはカレーを咀嚼しながら、挑発するような表情で前の席から覗き込んでいるアスカを見た。

 性格以外は綺麗だ。

 間違いない。

 シンジは返事ができなかった。

「ちょっと!黙ってるってことは…!もしかして、アンタ、私のことを不細工だって思ってんのぉっ!」

 アスカは真剣な顔をしている。

 言葉は大仰だが、その表情には不安さが見え隠れしている。

 もちろんそんな事を読み取れるシンジではない。

「あんなにラブレターが来るんだから、みんなはそう思ってないんじゃないのかな」

 一瞬、アスカの顔が綻びかけたが、それはシンジが確認できるほど長い時間ではなく、すぐに醒めた顔に戻った。

「みんなはってことは、アンタは違うって思ってるってことよね」

「えっ?」

 深く考えては喋っていなかったシンジはアスカの質問にはっとなった。

 自分はアスカのことをどう思っているんだろう。

 性格は悪いけど可愛い同居人。

 そして、自分と同じエヴァのパイロット。

 それだけ…だろうか?

「何、考え込んでるのよ?」

 アスカの声に顔を上げると、彼女は憤怒の表情でシンジを真っ向から睨みつけていた。

「考え込むほど、変な女だって思ってるわけよねっ!」

「そ、そんな…決め付けないでよ」

「だって!」

「アスカは可愛いと思うよ」

 シンジは小さな声で言った。

「へぇ…」

 アスカは当てが外れたような声を出す。

「何だよ」

「ふ〜ん、そうなんだ…」

 ちゃんと答えたじゃないかと少し膨れ気味のシンジに、アスカは内心では慌てている。

 今のは外交辞令じゃない。

 何をドキドキしたんだろう、この私ともあろうものが。

 それに私が綺麗で可愛いのは事実だし…。

 アスカは数秒で自己完結してしまった。

「はん!そんな可愛い女の子と同居できて、学校にも行けるんだから、アンタも幸せよね。

 毎日が楽しいでしょっ!」

 そのアスカの言葉を聞いた時、シンジは冬月を思い出した。

「楽しい、か…」

「ん?どうしたの?」

 今日はどうもこっちの予想と違う反応をしてくれるわね、と実はワクワクしはじめたアスカが声をかけた。

「う、うん。実は…」

 シンジは今日エレベーターの中での冬月との会話を話した。

「そっか、副司令と…。私もほとんど喋ったことないわね」

「僕もなんだ」

「で、どうだったのよ?」

「何が?」

「アンタ馬鹿ぁ?お話した感想は?って意味に決まってんでしょ」

「だって二言三言だったし……でも…」

「でも、何よ」

「少し…、少しだけあったかい気分になった」

 シンジは正直にそのときの気持ちを話す。

 緊張していたが、何故かほっとしたような…。

 多分、学校のことを聞かれたからかもしれない。

「ふ〜ん、無愛想な髭司令とは違うのか」

「酷いなぁ。僕の父さんだよ」

「はん!アンタもあんなのになんないように、せいぜいがんばんのよっ!」

「何を頑張るんだよ」

「そうねぇ…」

 アスカはにやりと笑った。

「まずはそのカレーを食べてしまって、洗い物をして、それから美味しい紅茶でも淹れてくれる?」

「へ?」

 目の前のアスカはいつの間にか食べ終わっていた。

 シンジの皿にはまだ半分以上残っている。

「わ、忘れてた!」

 慌てて食べ始めるシンジを見ていると、アスカは何故か暖かい気持ちになっていた。

 こんな情けないヤツでも、私の同居人。

 そして初めてできた友達という存在…。ヒカリよりも先に…。

 ドイツでは同世代の人間と知り合う機会がなかった。

 10歳近く違う同級生。

 生意気な少女だと誰も相手にしてくれなかった。

 そんな空気を読み取って、アスカはさらに意固地になり、年少のものの可愛げと言うものは微塵もなかったのだ。

 馬鹿シンジは、私のことを友達って思ってくれてるんだろうか…?

 否定されることが怖くて口にできない質問をアスカは心の中で繰り返していた。

 私とアンタは友達よね、ね、そうよね、絶対にそうよね?

 アスカのそんな思いも知らず、シンジは半ば冷たくなったレトルトのカレーをまずそうに食べていた。

 友達と呼ぶ存在を生まれてこの方持ったことのないアスカ。

 それはシンジも同様だったのだが…。

 ただし、この町に来てから、彼はようやく友人を得ることができた。

 アスカもそうである。

 トウジ、ケンスケ、そしてヒカリの存在は、チルドレン二人に感情を与えた。

 年相応の感情を。

「早く食べてよ。紅茶飲みたい」

「うぐっ、なら洗い物してよ」

「ヤだ」

 アスカはそう言うと、天井を見上げた。

 この天井も見慣れてきたわね…。

 じっと天井を見つめているアスカの視線を追って、シンジも天井を見つめる。

「何かいるの?」

「は?」

「蚊が飛んでる?」

 アスカは視線を落とした。

 そこには天井をキョロキョロと見ているシンジの間抜け面。

 その表情を見ていると、どこか心が暖かく、そして腹立たしく、何故かホッとした。

「ば〜か、引っかかった」

「えっ、酷いよ、そんな」

「引っかかる方が悪いのよ」

「もう…勘弁してよ。僕はおもちゃじゃないんだから…」

「はん!アンタは一生私のおもちゃになるのよ!光栄に思いなさいよ」

「一生だなんて酷いよ…」

 心底情けなそうにこぼすシンジに、アスカははっとなった。

 今、無意識に“一生”という言葉を使った。

 たとえエヴァのパイロットだとしても、シンジと一生付き合うわけじゃない。

 使徒との戦いが終われば、間違いなくアスカはドイツに帰る。

 少なくとも日本に留まるとは思えない。

 シンジとは十中八九それっきり。

 それなのに…。

 シンジはそれほど気にしなかったようだが、その言葉を使ってしまったアスカの方がどぎまぎしている。

 ただ、アスカはこう思い直した。

 そうだ、シンジを執事に使ってやろう。

 大科学者になって、ハンサムな大金持ちと結婚したら、馬鹿シンジのヤツを執事か私専用の秘書にしてこき使ってやろう。

 きっと愛しのマイダーリンもシンジ風情が相手なら嫉妬もしないだろうし…。

 アスカの妄想は広がっていき、次第に可笑しくなり、ソファに身体を移すと仰向けに転がって笑い転げた。

 そんな意味不明の行動をとるアスカに首を捻りながら、シンジは食器をシンクに運び始めた。

 本当にアスカはわかんないや…。

 

 

 


 

 

 

「イヤだ。私降りるっ!こんなので人前に出たくないわっ!こういうのはシンジの方がお似合いよ!」

 

 屈辱的な格好への反発からアスカは拒否権を発動しようとした。

 ところが、数十秒後にアスカは不承不承作戦に乗った。

 憧れの加持に煽てられたからだというよりも、シンジを押しのけて手を挙げたレイへの対抗心からだった。

 

「アスカ、気をつけてね」

「はん!大丈夫よ!」

「だってさ、使徒は動いてないって言ってもいつ動き出すかわからないし…。

 マグマの中なんだから…もし…」

「アンタも心配性ねぇ。エースパイロットの私が行くんだから、大丈夫よ!」

「でも…」

「もう…、ま、心配してくれんのは嬉しいけどね。私を信用しなさいって!」

 明るく笑うアスカは、実は不安だったのだ。

 ネルフの科学力は信頼している。

 耐熱耐圧は大丈夫だろう。

 ただ、使徒を捕獲するという異常な状況である。

 何がどうなるかわからない。

 だが、人に弱みを見せないで生きていたアスカである。

 今回も不安を隠している。

 不測の事態には対応できるような心構えを笑みに隠して、アスカは火口へと下降していった。

 

 そして、不測の事態が起こった。

 急に目覚めた使徒をアスカは熱膨張の原理を活用して殲滅した。

 しかし、その最中にケーブルが切れた。

 アスカは弐号機もろともに落ちていくほかなかった。

 

 せっかくやったのに…ヤだな。ここまでなの?

 これでお終い…?

 私の人生って一体なんだったんだろう?

 死ぬ時って痛いのかな?

 できれば、一瞬で終わって欲しいものね……。

 ……。

 ……。

 死にたくない!

 私、まだいっぱいやりたいことがあるの。

 海に泳ぎに行きたい。

 美味しいものいっぱい食べたい。

 遊園地へデートに行きたい。

 学校でみんなと騒ぎたい。

 ……。

 ママ、ママっ!

 助けて!シンジっ!

 ……。

 はん!泣き言言っても仕方ないわよね。

 アイツは泣き喚きながら死んでいったなんて思われたくないわ。

 どうせ最後の瞬間までモニターされてるんでしょうから。

 はぁ…どうして、私ってこんなに見栄坊なんだろ…。

 死ぬ前くらい、どうして素直になれないのかな……?

 

 その瞬間にアスカは多くのことを考えた。

 

 隔壁が軋む音に、アスカが観念した時…。

 シンジの声が聴こえた。

 

 アスカっ!

 

 はっとした瞬間に、衝撃がきた。

 ひび割れた強化ガラスの向こうに、初号機が見える。

 アスカを助けられるという確信もなしに、

 烈火のマグマにダイビングしたシンジの手がしっかりと弐号機の装備のメットを掴んでいる。

 

 シンジ…!

 馬鹿、無理しちゃって……。

 

 


 

 

 

 星空が綺麗である。

 シンジは温泉宿の一室に寝そべっていた。

 この天井は初めてだ…。

 そして天井の模様を目で追いかけていく。

 あ、行き止まりだ…。

 今日の出来事。

 アスカを助けるために、マグマの中に飛び込んでいった理由が自分でもよくわからない。

 ミサトには涙を浮かべながら感謝された。

 マヤたちにも偉かったわねと誉められた。

 だが、助けた相手には何も言われていない。

 お礼の言葉が欲しいから助けたのではないことは確かだ。

 あの後、アスカはごく普通に接してくる。

 それが、彼女の照れだとシンジは気付いてはいる。

 だからこそ、シンジも普通に接しようとしてきた。

 ただ、今…、こうして畳に寝そべっていると、一言でいいからアスカに言葉をかけてもらいたかったことがよくわかる。

 感謝ではなく、アスカに誉めてもらいたかったのだと。

 つまり……。

 

 がらっ!

 

 襖が勢いよく開いた。

 そこに立っていたのは金髪の美少女。

 誰に手伝ってもらったのか、枯葉色の浴衣をきちんと着ている。

 シンジは思わず見とれてしまった。

「どぉおっ?美少女は何着ても似合うでしょ?」

「うん」

 アスカの勢いに押されたわけでなく、シンジは心の底からそう思った。

 綺麗だ…。

 アスカにしては地味な色合いの浴衣なのだが、凄く似合っている。

 珍しくアスカをじっと見つめているシンジ。

 そんなシンジにアスカは少し戸惑った。

「そ、そう?あっ!」

「な、何?」

「花火しよう、シンジ!」

 

 宿の人に貰ったそうだ。

 帰省する孫用に買い置きしているのだとそのお爺さんは説明した。

 何しろ、ずっと夏だからねぇ…と、お爺さんは汗を拭った。

 まだ小さい子だから派手なのはないよと花火セットとマッチ、それにロウソクを渡されたのだ。

 

「綺麗ねぇ…私、花火って初めて」

「あ、そっか。ドイツだったもんね」

「あっちにはこんなのないわ……それに、毎日、冬だしさ」

「うん。花火は夏って感じだよね」

 宿の中庭で二人は膝を付き合わせるようにして、花火を楽しんだ。

 シンジはミサトも誘おうといったのだが、飲んだくれて眠っているそうだ。

 その眠っているはずのミサトは、部屋の窓から二人を見下ろしている。

 

 まだまだ子供ね、ああして見ると…。

 14歳か…。

 セカンドインパクト以降の自分の暗い数年をふと思い出したミサトだったが、アスカたちの育った環境を考えた。

 私は14歳までは、少なくとも不幸ではなかった。

 母親はいなかったが、父は私を慈しんでくれた。

 しかし、あの子たちは…。

 二人の満たされることのなかったこの数年を思いやり、ミサトはそんな二人に非情な命令を下す自分の立場を呪った。

 早くこの戦いを終わらせて、普通の子供たちに戻してあげたい。

 そんな日はやってくるのだろうか……?

 立ち上ってくる僅かな花火の火薬の匂いに、ミサトは溜息をついた。

 そして、手にしていた缶ビールを一気に喉に流し込む。

 はは…この酒の肴は、ちょっち不味かったわね…。

 

「シンジ、勝負しよう」

「へ?」

「線香花火…だっけ?同時に火をつけて、どっちが長く続けられるか」

「うん、やろう」

 二人はロウソクに各々の線香花火を近づけた。

 ぱちぱち…。

 オレンジ色の火花が小さく飛び散る。

 そして、その火花が少なく、そして小さくなっていく。

「負けた方はさ、ホントのことを喋ること」

「えっ」

 シンジの腕が動いた。

 その拍子にオレンジ色の小さな球体は音もなく地面に落ちた。

「あ…」

「アンタの負けね」

「酷いよ」

「作戦勝ちってことよ。さ、言いなさいよ。ホントのことを」

「何だよ、それ。ホントのことって」

「そうねぇ。今考えていること。それを正直に話すの」

「今…」

 シンジはアスカを見た。

「今は、楽しい…かな」

「つまんない男……」

 シンジの他愛もない返事に、アスカは先日とまったく同じ観想を口にした。

 だが、その口調は前回とはまるで違っていた。

 素っ気無くても暖かい。

 本人はそれに気づいてはいないようだが。

「よぉしっ!じゃ、第2回戦よ!」

「まだするの?」

「あったり前じゃない。まだ花火は一杯あるわ!」

「うん、じゃもう1回…」

 だが、勝負はそれで終わらなかった。

 シンジが弱いのである。

 元々淡白な性格だから、負けても悔しそうな顔をしない。

 4回連続でシンジは負け続けた。

「えっ、まだするの?」

「アンタが勝つまでやめないわよ!」

「う〜ん、勝てるかなぁ…?」

「私は絶対に負けないわ!」

「じゃ、僕は勝てないじゃないか」

「はん!私以上にがんばればいいだけじゃない。さ、行くわよ、馬鹿シンジっ!」

 喜怒哀楽がはっきりしているアスカ。

 まだ短い付き合いだけど、シンジは色々な表情を見てきた。

 だが、今夜のアスカはこれまでに見たことのない表情を出していた。

 背伸びをしていない、年相応の少女の顔だ。

 花火の美しさに見とれ、線香花火の勝負に夢中になる。

 アスカって可愛いや……。

 シンジは線香花火を一心に見つめるアスカの顔に見とれていた。

 それがよかったのだろう。

 シンジは勝った。

「あああっ……落ちちゃった……」

「はは、勝っちゃった」

「悔しいっ」

「もう1回する?」

「う〜ん、もういいわ。勝負は」

「えっ、いいの?」

 あんなに勝負勝負とうるさかったのに…。

 シンジが不審に思ったとき、アスカは真っ赤な顔をして言った。

「私の負けだからホントの事を言うわ」

「アスカ…」

「……アリガト……」

 小さな声でアスカは言った。

 いかに倣岸なアスカであっても、人に礼ぐらいは言う。.

 それなのに今回だけは、素直に礼が言えなかった。

 命を助けてもらったということがあまりに大きすぎたのか。

 それとも助けてくれたのが、シンジだったからか。

 とにかく、アスカは恥ずかしかったのだ。

 不満だったからではない、寧ろ嬉しくて仕方がなかったからだ。

 仲間だから。

 友達だから。

「そ、そんな…。いいよ、だって…」

 ついさっきまで、アスカに褒めてもらいたかった気持ちはどこかに消えてしまっている。

 シンジも恥ずかしかったのだ。

 アスカに言われた“ありがとう”。

 ただ褒めてもらいたかっただけだった。

 『馬鹿シンジにしてはよくやったじゃない』

 それがアスカの言葉だとシンジは予想していた。

 ところがただ一言だけの“ありがとう”。 

 アスカはその言葉を言いたいがために、線香花火の勝負を続けていたのだ。

「だって……何?」

「アスカだって…助けに来てくれただろ?」

「私?」

 アスカは虚を突かれた。

 もし自分がシンジの立場だったなら…。

 あの装備でマグマの中に飛び込んで行っただろうか?

 死ぬかもしれないのに…。

「来てくれないの…?」

 シンジが不安げに問いかけた。

 そして、アスカは顔を上げた。

「行くわ」

 その瞬間、シンジの顔が綻んだ。

 もう…何てわかりやすいヤツだろ。

「でも、アンタを助けにいくのよ。

 もしあそこにいたのが赤の他人だったら…私、飛び込む自信なんかない。

 私はそんな正義の味方なんかじゃない」

 アスカは一気に話した。

 そして、シンジに問い返す。

「で、アンタだったらどう?」

 シンジは口を少し開けた。

 何か言いそうにして、そして口をつぐむ。

 もし、あの灼熱地獄に沈もうとしているのがアスカでなければ…。

 自分は飛び込んでいっただろうか?

 もし、綾波だったら?

 多分飛び込んだと思う。

 でも、飛び込む瞬間まで迷ったはずだ。

 ところがアスカを助けるために、自分は躊躇いもなくマグマの中に突っ込んだ。

 シンジは自問自答した。

 自分でもわけがわからぬまま飛び込んだのだ。

 では、きっかけは?

 何かきっかけがあるはずだ。

 シンジは必死に思い出そうとした。

 そして、思い出した。

「僕は…アスカの声が聞こえたから」

「え……」

「助けて…って」

「嘘。私、そんなこと言ってない」

 確かに、言ってはいない。

 心の中で叫んだだけ。

 それなのにどうしてシンジに伝わったのだろうか?

「ごめん。聞こえたような気がして…気がついたときにはもうマグマの中に…」

「そっか…」

「いいの?これで」

 シンジがきょとんとしている。

 おそらくアスカに怒られると思っていたのだ。

 私はそんな泣き言は言わないと。

「うん、いい。それで」

 アスカはきっぱりと言った。

 その後、不安げな口調でアスカは付け加えた。

「私にも聞こえたよ」

「えっ」

「アンタの声。私の名前を呼んでた……」

 シンジは息を呑んだ。

 確かにシンジは叫んでいた。

 間に合ってくれ!アスカ!と。

「シンジ、私の名前呼んだ?」

 シンジは頷く。

「そっか、じゃあれは空耳じゃなかったんだ」

 アスカは軽く何度も頷いた。

 ロウソクの燃える音が微かに聞こえるほど、静かである。

 もっと耳を澄ませば、ミサトの鼾も聞こえてくるはずなのだが。

 アスカは考えた。

 私とシンジはエヴァのパイロット。

 そして同居人の同級生。

 その二人が友達だということに、何の不自然さがあるというのか。

 友達…、いやシンジとなら親友にだってなれるかも。

「私とアンタは友達。いいわね」

「うん」

 シンジは頷いた。

 トウジやケンスケとは違う。

 アスカは共に戦う…いわば戦友なのだ。

 生死を共にするのだといってもいい。

「私はアンタを裏切らない。絶対に…」

 だから、アンタも裏切らないで。お願い…。

 そのとき、アスカの首には母親の手に絞められた感触が甦っていた。

 愛する、信じ切っていたものに裏切られる気持ち。

 あんな思いは二度としたくない。

 だから…。

「僕も…がんばるよ。アスカを…裏切らないように」

「頑張るだけじゃダメ」

「えっ…ダメって…?」

 シンジははっとした。

 紺碧の瞳を真っ直ぐに向けているアスカは、いい加減な返事は求めていなかった。

 シンジは大きく息を吸い込んだ。

 この返事をすることに、もう躊躇いはなかった。

「わかった。僕は、絶対にアスカを裏切らない」

 漆黒の瞳は揺らがなかった。

 その真剣な表情にアスカの頬が緩んだ。

「OKっ!じゃ…」

 アスカは右手を差し出した。

 ロウソクの照らされた仄かな明かりの中で白く浮かぶ手。

 その白い手をシンジは握り締めた。

 しっかりと…。

 そして、アスカもシンジの手をしっかりと握った。

 ああ、この手に助けられたんだ…、私は。

 その時、アスカは涙が溢れ出てきそうになった。

 離したくない。

 この手を。

 ずっと……。

 


 

 その手を引き離そうとするもの。

 それはシンジの実父だった。

 

「何故あんな馬鹿な真似をした」

「馬鹿って…」

「あんなことをして、初号機に何かあったら…」

 いつものポーズのゲンドウの後に冬月が立っている。

 その前にシンジ。

 その斜め後にミサトとアスカが控えている。

「また初号機だ。乗っていた僕はどうでもいいんだ」

「ああ、初号機の方が大事だ」

「父さん!」

「司令と呼べ」

「碇司令、お言葉ですが、当初の目的は完遂できませんでしたが、弐号機を無事に回収できたのはシンジ君が決死の覚悟で…」

「弐号機などどうでもよい」

 ゲンドウは冷酷に言い切った。

 アスカが息を呑む音が聞こえ、その音はシンジの背中を後押しする。

「何てこと言うんだよ、父さん!」

「司令、だ」

「どっちだっていいよ、そんなの」

「シンジ、貴様…。ふん…そういうことか」

 ゲンドウはニヤリと笑ってシンジとアスカを見た。

 その場にいた全員がその笑みの意味するものを了解した。

「いつからそんな関係になった?葛城一尉、君は二人の監視役ではなかったのか?」

 誰も反論できなかった。

 邪推が激しすぎたからだ。

 むしろ唖然としたといってもいい。

 その3人の中で、さすがにアスカがしばらくたってから、顔を真っ赤にしてまくし立てた。

「アンタ馬鹿ぁ?どうして私とシンジが関係しないといけないのよ!私たちは友達、うん、親友なの!

 ホントに大人って何考えてんのかしら?馬っ鹿みたいっ!このエロオヤジ!」

 暴言である。

 プロ野球なら退場間違いないところだ。

 そじて、アンパイヤたるゲンドウは同様の宣告をした。

「葛城一尉」

「……はい」

「弐号機パイロットを拘束の上、ドイツに送還…」

 その瞬間、シンジがゲンドウに飛び掛ろうと…したが、いち早く察知したミサトに抑えられた。

「ふん…初号機パイロットの方は営倉にでも…」

「碇。もういいだろう」

 ゲンドウの肩を叩く冬月。

 いつになく厳しい表情をしている。

 ゆっくりと振り返るゲンドウ。

 冬月とゲンドウの視線が交差する。

 そして冬月は硬い表情のまま、顔を3人に向けた。

「葛城一尉、二人を連れて帰りたまえ。今回の件に関しては特に処置はしない。

 ただし、二人がそのような関係にならぬようにしっかりと保護者役を務めたまえ」

「はい!」

 こうなれば、迅速に動いたものが勝利する。

 ミサトはまだ何か言いたそうにしているアスカと真っ赤な顔で大きな息をしているシンジの背中を押して、部屋の外へ出た。

 

 そして、扉から出た瞬間、ミサトは大きな溜息をついた。

「ふぅ…助かった」

「何が助かったよ!」

「そうですよ、ミサトさん!僕たちは!」

 興奮する二人の肩をミサトは背後からギュッと抱き寄せた。

「知らなかったわぁ、この二人がそんな関係になってたなんてぇ」

「関係って、そんなっ!」

「離してよ、ミサトっ!」

 暴れる二人をミサトはしっかりと抱きしめている。

「でもまぁ、ちょっち早いわよね。14歳かぁ…」

「だからっ!」

「と、友達だって言ってんじゃない!」

「キスくらいならいいけど、その先はまだダメよ。そうねぇ、大学生になったら許してあげても…」

「聞いてくださいよ!」

「はん!私は大学卒業してんのよ!だったら、全然OKじゃないっ!」

 そう言ってしまってから、アスカの顔は真っ赤に変色してしまった。

「へぇ…シンちゃん、どうするぅ?アスカはOKなんだってぇ」

「ぼ、ぼ、ぼ、僕はっ!」

「……」

「はっはっはっ!いいわねぇ、アンタたち。ま、お姉さんを困らせないようにしてくれたらいいわ」

 ミサトはもう一度二人を抱き寄せた。

 そして…小さな声で囁く。

「よかったわね、本当に」

 そして、二人の頬にぶちゅっとキスして、豪快に笑いながら通路を去っていくミサト。

「乱暴なんだから…」

 キスされた頬を押えて見送るシンジ。

 アスカはごしごしと頬を擦りながら言った。

「嬉しかったのよ、ミサトは。お咎め無しだったから」

 そして、アスカは傍らのシンジを見た。

「ちょっとアンタ、何大事そうに頬っぺた押えてんのよ。

 さっさと消毒しなさいよっ!酔っ払いが感染るじゃない。ほら、口紅がついてる!」

「えっ」

 戸惑って、それから慌てて頬を擦りだしたシンジを見て、アスカはニヤリと笑った。

 そう、オーバー・ザ・レインボーの甲板で見せたあの笑みである。

 心の中で「ちゃ〜んす」と叫んでいたのだろうか。

 今回は何も言わずに、無言でシンジの逆サイドに身体を移動させた。

 

 ちゅっ。

 

「あっ!」

「そっちの頬は消毒とか、洗ったりなんかしたら……コロスわよ」

 アスカはにやっと笑うと、通路を歩いていく。

 その背中はいかにも楽しげだった。

「ま、待ってよ、アスカ!」

 


 

「どうだ、碇。うらやましいとは思わんか」

「ふん…」

 通路の3人の姿と会話はしっかりモニターされていた。

 そして、アスカを追いかけて走り去るシンジの後姿がフレームアウトすると、ゲンドウはスイッチを腹立たしげに切った。

「君ならあの年でユイと知り合っていたら…」

「おそらくね。いや、間違いなく」

「だろうな。だが、君とシンジ君は違う」

「ふん!お前よりも私の血の方が濃い。私とシンジは親子だ」

「だったら親らしいところを見せたらどうだ。もう、計画どおりには進まんぞ」

「何を弱気な…。計画にはほとんど狂いはない」

「私は未来を見たいと思ったのだよ。あの二人のな」

「未来?人類補完計画が発動されれば、未来などない」

「では、それを潰せばいい。いずれにせよ、それは計画に入っているではないか」

「先生。もう私には用済みの存在になりつつありますな」

「では、殺すか?あの子達の未来を見られぬのは残念だが、玲に会えるかも知れん」

 冬月は遠い目をした。

 

 あの秋の日、アメリカに留学するために、玲と別れて旅立った若き自分。

 キャンパスの銀杏並木に立ち竦んで、自分をいつまでも見送っていた玲。

 その姿をちらりと背中越しに見た冬月は、逃げるように走り去ってしまった。

 綾波玲。

 現在の綾波レイの名のもとになった女性。

 冬月がその生涯で唯一関係を持った女性のお腹の中に、ユイの生命が息づいていることを彼は知らなかった。

 もし、知っていたなら自分はどうしただろうか?

 その事を知った後、冬月は何度も考えた。

 わからない。

 まったく、わからない。

 そして、彼女…玲は、父なし子のユイを産み落としこの世を去った。

 冬月はその死を知っただけで、二人の間にそのような子供が生まれた事を知らなかったのだ。

 玲も父親の名は一言も言わなかった。

 母方の縁者であった碇家に養女となったユイは養父母に慈しまれ明るく育つ。

 片や冬月は帰国した後、玲を探そうともしなかった。

 彼女は記憶の彼方に残されたままだったのである。

 20年以上の時を隔てて冬月の前に姿をあらわしたユイの面影は、彼に昔日の恋人を思い出させた。

 年甲斐もなく彼女の一挙一動に胸を躍らせる自分が不思議だった。

 そんな彼女に恋人ができた。

 どうしてあんな男をと思ってしまう冬月だったが、彼は流されるままに二人と同じ時間を過ごすことになる。

 碇ユイが自分の娘だと教えられたのは、ユイがその時間から消えてしまった後のことだった。

 もちろんそれを教えたのはゲンドウ。

 己の実の娘に女を見ていたことに冬月はショックを受けたが、そんな彼に悪魔は囁いた。

「その娘にもう一度会いたいとは思いませんか?」

 そして、彼はゲンドウの計画に荷担した。

 

「ふん…悪いが、まだ死んでもらっては困る。ゼーレや政府との交渉もあるからな」

「そうか。しかし、私はもう…」

「邪魔をしますか?」

「いや、お前の邪魔をしてはあの子達の未来もなくなってしまう。私なりに力を尽くすつもりだ」

 ゲンドウは力なく笑った。

「ユイが帰ってこなくてもいいのですか、先生?」

「娘がいなくても、孫がいるんだよ、私には。孫は目に入れても痛くないという言葉を知らんのかね?」

「ふん…」

 くだらないという感じでゲンドウは眼鏡を上げた。

「後悔しますよ」

「それはわからん。ただ、私は…あの子たちを守ってやらねばならんのだよ。その義務がある」

「どちらへ?」

 扉へ歩きだす冬月の背にゲンドウは問い掛けた。

「レイのところだ」

「玲…?墓参りですか?」

「いや、綾波レイ…。酷いところに住んでいるらしいじゃないか」

「……」

「あの娘は私にとって、何にあたるんだろうね。なかなか難しい問題だよ」

 ゲンドウはその問いには答えず、引出しから拳銃を出した。

 撃鉄を上げる音に、冬月は一瞬歩みを止める。

 しかし、次の瞬間には扉に向かって歩き出した。

 一歩、二歩…。

 扉が開き、そして閉まる。

 さすがに背中でその音を確認した時、冬月は大きく息を吐き出した。

 喉がからからになっている。

「匹夫の勇…といったところか」

 苦笑して扉を見た冬月の耳に、連続して発射される銃声と扉からの金属音が聞こえた。

 そして、銃声がやんだ後、扉に何かしら重いものがぶつかった衝撃音がした。

 冬月は扉の中の部屋の主に向かって、哀れむような微笑を与えた。

「碇。子供たちのために生きろ。

 君は幸福だよ。どんなことをしようとも、シンジ君は君の息子だということに変わりはないのだ」

 彼女が私のことを想ってくれていたほど、私は玲を愛してはいなかった。

 帰国した後、彼女を探そうとしなかったのだから。

 私が今からしようとしている事は、その贖罪……なのかもしれん。

 冬月は歩き始めた。

 子供たちの未来に向かって。

 


 

「副司令っていい人みたい」

「その言い方じゃ、父さんが思い切り酷いヤツだって聞こえるなぁ」

「はん!私を強制送還しようとしたのよ!」

 シンジは頭を掻いた。

 それを言われれば、返す言葉がない。

「でも、アンタも変人よね。やっぱり親子だわ」

「えっ、どうして?」

「こんなにのほほんとしてるヤツが、あの時はあんなにカッコよく見えたもん…」

「えっ!」

「な、何よ。大声出しちゃって」

「ぼ、僕のこと、カッコいいだなんて…」

 アスカは自分の発言に驚いていた。

 そして、それを否定しようとして…、やめた。

 事実だったからだ。

「はん!あん時だけはそう見えたのよっ!

 口惜しかったら、ずっとそう見えるようにがんばんのねっ!」

 顎を上げて、腰に手をやり、フローリングに足を踏ん張って、アスカは高らかに宣言した。

「そうよぉ、シンちゃん、がんばんなさいよぉ〜。お姉さんも応援してあげるからぁ」

 祝杯だと空き缶を食卓に並べているミサトがどんよりした眼を向ける。

「もう…ミサトさんまで…」

 そうこぼしながらも、シンジは明日から頑張ろうと心に決めていた。

 その決意が垣間見える表情に、アスカは満足していた。

 この分じゃ、私のステディにも充分……。

 そこまで考えて、アスカははっとした。

 あれ?いつの間にシンジのことをそんな風に…。

 アスカは上気しはじめた顔をシンジに向けた。

 シンジは食卓からころころと転がり落ちる空き缶を片付けている。

 冴えないけど…、情けないときもあるけど…。

 アスカは頷いた。

 ま、いっか。

 

 その時、玄関のベルが鳴った。

 シンジが玄関に向かう。

 こんな夜遅くに誰だろう?

 アスカが耳を澄ましていると、シンジのびっくりした声が聞こえた。

「副司令!それに綾波!」

 ミサトの反応は早かった。

 さっきまでぐでんぐでんだった人間とは思えない。

「アスカ!さっさと片付ける!」

「片付けるって、アンタが食べ散らかしたものばっかりじゃない!」

「うるさい!早く動く」

 

「今説明したように、綾波君はシンジ君の従兄妹になる。

 そして、今日からこのマンションに住んでもらう」

「えっ!この部屋にぃっ!」

 レイがシンジの血縁者だということに内心ホッとしていたアスカが頓狂な声を上げた。

「いや、隣の部屋を準備する。

 彼女の保護者は明日決定しよう。任せてもらっていいかね?」

 優しく言葉をかける冬月に、レイはこくんと頷いた。

「しかし、今晩はこの部屋に泊めてもらえんか。

 あの部屋は酷すぎる」

「それはいいですけど…」

「じゃ、アンタは私の部屋で眠りなさい!」

 アスカが立ち上がって、レイを指差した。

 きょとんとした顔で見返すレイ。

「アンタ、あの地獄のような部屋で眠りたい?」

 アスカはミサトの部屋を指差した。

 シンジたちからミサトの部屋の様子を聞かされていたレイは、彼女にしてはかなり速いスピードで首を振った。

「シンジはダメよ!親戚っていっても、年頃の男と女なんだから、絶対にダメっ!」

 有無をも言わさぬ調子でアスカは一気にまくし立てた。

 その勢いにレイは頷いてしまった。

 アスカはニヤリと笑った。

「ということで、あんたが寝るところは私のところしかないのよっ!」

「ここでいい…」

 レイはリビングのソファーを見やった。

「うっさいわね!仲良くなるにはそれがいいのよ!」

「あ、アスカ、綾波と友達になってくれるんだ」

「あったり前じゃない。これからみんなで力を合わせて使徒をやっつけないといけないのよ!」

 レイに対する反感はシンジへの思いのためだと了解したアスカの掌の返し方も凄まじく早かった。

「みんなで未来を勝ち取るの!あ、そうだ。アンタ、私のこと、アスカって呼んでいいから」

「弐号機パイロットでいい…」

 豹変したアスカの調子についていけないレイだったが、落城は間近である。

「うっさい!私はアンタのことをレイって呼ぶわよ!だいたいアンタはねぇ…」

 

 冬月はインスタントコーヒーを啜りながら、目を細めた。

 そして、無意識に冬月はその骨ばった手を隣に座っているレイの頭に置いた。

 水色の髪の上に置かれた手に、レイは冬月を見上げた。

 その眼差しはまさしく、玲の…、そして、ユイのそれと相違なかった。

 冬月は愛すべきものに優しく微笑んだ。

 

 この子たちに未来を…。

 

 

 

そして、月はまた輝く

〜おわり〜

 

2003.09.23

 


<あとがき>

 夏侯惇様よりいただいた、55555HIT記念リクエストSSです。

 リクエスト内容は、1.冬月大活躍 2.ゲンドウVSシンジ&冬月 3.本編系

 以上のお題でした。

 ただし、本編系といっても例によって、本編パラレルとなります。

 いやぁ、本編LOVEの方には叱られそうな設定です。

 ただ、私としては本編でユイに情欲の念を抱く冬月は理解できるのですが、あの後あれだけの時間を経過してもなおユイの再生に情熱をかけるという気持ちが理解できないのです。たとえ惰性としても、命を賭けてまでというのがどうも……。

 ですが、ユイが血を分けた娘なら再生に粉骨砕身するのは十分理解できます。私も人の子の親ですから。

 ということで、お叱りは覚悟の上で設定を大きく変えました。

 これじゃ、リクエストに合わなかったかな?

 

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