99999HITしていただいたWhoops!さまのリクエストです。

お題は…。

「シンジ一人称」「恋愛以外の少年特有の悩み」「ハッピーだけどほろ苦いラスト」というお題を頂きました。

ということで、天邪鬼の権化・ジュンが贈ります、99999HIT記念SSは…。とうとう完結です。

 

 

 


 

 

 惣流さんは停学7日間。

 僕は5日間。

 この2日間の違いが僕には気に入らない。

 だから5日の停学が終わったあと、とにかく1日だけ学校に行った。

 そして、停学届を職員室に提出したんだ。

 明日から2日間停学をしますと。

 前代未聞だと説教を散々されたが、これだけは譲れない。

 欠席と停学じゃ意味がまったく違うんだから。

 内申書が悪くなるとも言われたけど、それじゃ停学自体はどうなんるんですかと切り返したら、学級主任は黙ってしまった。

 僕がそんな風に言うような生徒だと思わなかったと、先生は苦笑して届けを受理してくれた。

 これで1日惣流さんに会うのが遅くなってしまうけど、仕方がないや。

 僕も共犯なんだから、罰は公平に受けなきゃね。

 

 

 

あんばらんす

〜 後編 〜


99999HITリクSS

2003.11.20         ジュン

 

 

 

 

 

 停学の間、僕はいっさい惣流さんと連絡を取っていなかった。

 そんなことをしたら停学の意味がなくなると、母さんにきつく言われた。

 もちろん、学校の先生やクラスメートにも。

 惣流さんとも約束した。

 停学が終わるまで会わないし、電話とかの連絡もしないと。

 寂しくて寂しくて、何度も教えてもらった惣流さんの携帯の番号を押しそうになった。

 でも、それじゃ惣流さんに軽蔑されるんじゃないかと、ずっと思いとどまってきたんだ。

 ただ、ケンスケからは毎日連絡が来た。

 どうやら学校では僕のことが話題の中心になっているらしい。

 あの惣流キョウコさんに惚れられた男、という話題だ。

 芸能界のアイドルタレントや年上の外車を乗り回すような、かっこいい男が彼女の恋人であっても誰もが納得する。

 それが、ごく普通の…いや普通以下と思われていたクラスでも目立たないこの僕が、彼女の恋人だった。

 僕も驚いたけど、当然みんなも驚きを通り越してあきれてしまったらしい。

 最初のうちは、あのサッカー部のエース(僕の胸倉を掴んだ彼)のように、

 彼女を脅して無理矢理言うことを聞かせるようにしているのだと噂になった。

 あの前代未聞の放送も、僕に指示されたからなんだって。

 この話の中心になっていたのは、もちろん惣流さんにラブレターを送っていた連中だった。

 まあ、彼らにしてみれば、僕なんて本来惣流さんに相手すらしてもらえないような存在であるはずだもんね。

 その僕が彼女の恋人なんだから、腹立ちが容易に収まるわけがない。

 それはわかる。

 僕だって、こんな僕のどこが気に入ったのかって思っていたから。

 だけど、あの惣流さんの放送で、僕の腹は決まった。

 どこが好きかなんて問題じゃない。

 その相手のことを好きだという気持ちが一番大事なのだ。

 う〜ん、惣流さんって凄いよ。

 僕もがんばらないと。

 釣り合いとかそんなためじゃない。

 話や趣味が合う方が、一緒にいて楽しいもんね。

 例えばさ、惣流さんと同じ大学に行きたいと思ったら、そりゃあ死に物狂いで勉強しないといけないから。

 スポーツは…ちょっと苦しいかもしれないけど、勉強と…それからチェロかな?

 あっと、話が飛んじゃったね。

 僕がまず悪者だということになって、その次にそれに対する反論が巻き起こったんだって。

 あの惣流キョウコさんが少々の脅しに屈するなんて思えないし、大体あの放送のときの彼女の表情は真剣そのものだったと。

 これは特に女子から出てきた意見らしい。

 ケンスケに言わせると、惣流株が上がりすぎてるのが女子の中で問題になっていたことがベースになっているんだとか。

 つまり男どもが惣流惣流と夢中になってしまい、他の女子を相手にしなくなった。

 そのため、これを機会に惣流株を暴落させようと考えたんだ。

 彼女は売約済みなんだから、今度は私たちの方を向きなさいと。まあ、そういうことらしい。

 それに同じ女子として、あんな状況で自分からキスするのは相手のことが好きだからに決まっている…そうだ。

 もう一つ。これは僕の口からは言いにくいけど、僕のようなとりえのなさそうな相手を惣流さんが選んだってことをブームにしようという動きもあるんだって。

 この場合は逆玉になるんだけど、女子が考えたのは当然玉の輿。

 ぱっとしないような子でもいいところがあるっていうことを流行らせようというんだ。

 とにもかくにも、一中は空前の異性交遊ブームになったそうだ。

 ケンスケはそう言って、少し張り切っていた。

「お前は俺たちの星だぜ。希望の星だ!」

 そんなことまで言ってたっけ。

 どうやら僕はもてない男の希望の星に祭り上げられているらしい。

 これまでの僕なら、こんなことを聞かされたらそれだけでパニック状態になってしまいそうだ。

 ところが今は違う。

 自信…というものとは違うと思うんだけど、やる気が出てきたって言うのかな?

 人に振り回されずに、自分の思った方向に進みたいっていう感情が強くなってきたんだと思う。

 間違いなく、これは惣流さんのおかげだ。

 僕は窓から公園を見下ろした。

 まだお昼過ぎだから、当然子供たちが遊んでいる。

 なんとなくほほえましい気分で、僕は子供たちが駆け回っている姿を眺めていた。

 そして…。

 僕は惣流さんとキスしたことをなんとなく思い出していた。

 結局あの時の1回きりだったけど、感触は今でも唇に残っている。

 やわらかくて、暖かくて…。

 ファーストキスの時とは全然違う感触だった。

 あ、ファーストキスといってももう10年位前のことだけどね。

 幼稚園に上がる前だったっけ。

 場所はこの公園だったなぁ。

 そういえば、あの子も惣流さんと同じ混血だったよね。

 もっとも、髪の毛は惣流さんとは全然違う赤い色だったけど。

 あ、瞳の色は同じか。

 でも、あの子は可愛かったなぁ。

 小さくて、舌足らずで、すぐ泣き出したし。

 2週間ばかりの友達だった。

 そして、アメリカに帰る日に、僕にいきなりキスしてきたんだ。

 なまえは…あっか…あっかちゃん…としか聞こえなかったんだ。

 本当の名前は結局最後までわからなかったなぁ。

 うん、あの子のことは忘れるわけがない。

 今、どうしてるのかな?

 今でも泣き虫なんだろうか?

 その子と遊んだ公園は今も変わりがない。

 そうそう、あのブランコで泣いていたんだよね。

 近所の幼稚園児に苛められていて。

 髪の毛が赤いからって、馬鹿みたいな理由でさ。

 で、部屋の窓から見ていた僕がそいつらに飛び掛っていって…掴み合いのけんかになって。

 相手が3人だったから僕はすぐにぼこぼこにされたけど、泣かずに最後まで抵抗したんだ。

 今の僕から考えると別人みたいだなぁ…。

 最後には向こうが根負けして、もう苛めないって約束したんだ。

 あの子は僕の惨状を見て、さらに声を張り上げて泣いてくれたっけ。

 それはもう耳に栓をしたくなるくらいの大声で。

 それからは、あの子はいつも僕と遊ぶようになった。

 少しだけおばあちゃんの家にいるって、片言の日本語で話してくれた。

 楽しかったなぁ…本当に。

 でも、あの子はその時おばあちゃんが危篤だったんで日本に来てたんだ。

 それで、とうとうそのおばあちゃんが亡くなって、あの子は黒い服を着てアメリカに帰っていった。

 日本にいる親戚がいなくなったから、もう日本にくることがないっていうことをあの子は泣きながら言ってた。

 僕まで泣いたらあの子に悪いと思って、一生懸命涙をこらえてあの子を慰めた。

 で、お別れのときに泣きながら僕にキスしたんだ。

 だから、ファーストキスの味はしょっぱかった。

 そんなあの子に僕はおにいちゃんぶって、偉そうなことを言ったっけ。

「これからはあまりなくんじゃないよ」

「うん…ぐすん…がんばる…ぐすんぐすん…うぇ〜ん」

「なかずに、がんばってみなよ、ね!」

「う、うん…!ぐすん…」

 結局、迎えに来た背の高い青い目のお父さんにだっこされてあの子は行っちゃったんだ。

 僕は泣くなってあの子に言ったもんだから、自分も必死になって涙をこらえたっけ。

 うん、あの公園の入り口のところで、ずっと見送っていたんだ。

 あの日の僕はそこには見えないけど、何だか胸が凄く暖かくなって、僕はぼけっと窓から公園を眺め続けていた。

 

 その時、下で電話のベルが鳴るのが聞こえた。

 母さんがいるから出なくてもいいか。どうせ、この時間じゃ僕宛じゃないしね。

 ああ、あと一日。

 惣流さんは今学校でどうしてるのかなぁ。

 質問攻めになってるかな?それとも、遠巻きにされてるか。

「シンジ!電話よ!」

 僕の妄想は母さんの大声に破られた。

 こんな時間に誰だろう?

 階段を下りると、母さんがケンスケからだと受話器を渡した。

 おいおい、まだ授業中だろうが。

「もしもし、僕だけど…?」

「おい!シンジ!やっぱりお前知らなかったんだな!」

「何を?」

「惣流のヤツ、転校…じゃない。ドイツに帰るんだぞ!」

「えっ!嘘だろ!」

「嘘じゃない。今、担任から話があった。当の惣流は学校に来ていない。もしかするとお前も知らないんじゃないかって」

「ど、どこに!い、いや、どうして?そ、そ、そんな!」

「慌てるな、シンジ。まず惣流を捕まえる方が先だ。お前住所知らないって言ってたよな」

 ケンスケは落ち着いていた。

 僕の方はすっかりうろたえてしまって、何をどうしたらいいのか頭がふらふらになっていた。

「担任に何とか聞き出した。アイツ、ホテルから通ってたんだ。しかも隣町の。

 新東京グランドホテルって知ってるよな。そこだ。とにかく走れ!」

「わ、わかった!」

 僕はそのまま飛び出そうとして、受話器を持ったままだということと、

 靴を履いていないということと、財布とかをまったく持っていないことを母さんに指摘された。

 その母さんには事情をまったく説明しないまま、僕は駅へ走った。

 駅まで何分で走ったのか。多分、これまでの最高記録だったと思う。

 電車で2駅。ホテルは駅前にある。

 汗びっしょりで、僕はフロントに駆け込んだ。

 フロントの係りの人は、惣流様はすでにチェックアウトされてますと事務的に応対して来た。

 僕は全身の力が抜けそうだった。

 でも、ここであきらめちゃいけない。

 追いかけるんだ。どこまでも!

「あの?お客さまは碇様でございますか?」

「はい!碇です。碇シンジ!」

「さようでございますか。では、惣流様からのお託がございます」

「えっ!」

 惣流さんから僕への預かり物が駐車場にあると聞いて、僕は裏手の駐車場に走った。

 そこで僕の目に飛び込んできたのは、あの真っ赤なマウンテンバイクだった。

 1台分の駐車スペースのど真ん中に置かれている、惣流さんの愛車。

 その横に僕は走り寄り、恐る恐るその赤いハンドルグリップを握り締めた。

「碇様でございますか?」

 振り返るとホテルの制服を着た真面目そうな眼鏡の青年が立っていた。

「私、惣流様よりこちらの自転車をお預かりしておりました。

 きっとすぐに受け取りに来るはずとのことでございました」

「これ…だけですか?」

「いいえ、お手紙も一緒にお預かりしております。こちらへどうぞ」

 その係りの人に連れられて、僕は駐車場の一角にある控え室に入った。

 そこで渡された封筒を僕は凝視した。

 白い封筒に、碇シンジ様と僕の名前が丁寧に書かれている。

 係りに人は僕にパイプ椅子に座るように勧めてくれた。

「当分誰も入れないようにしますから、ゆっくりお読みください」

 そう言い残して部屋を出て行った係りの人にお礼を言ったかどうかもよく覚えていない。

 早く中身を見たかったからだ。

 糊付けされた封を震える指で破る。

 その中には、数枚の便箋が入っていた。

 焦る気持ちを強引に押さえつけて、僕は惣流さんの文字をたどった。

 

 

 


 

 

 ごめんなさい。

 許してください。

 私は嘘吐きです。

 私は惣流キョウコではありません。

 私の本当の名前は、惣流・アスカ・ラングレーといいます。

 何故、別の名前で貴方の前に現れたのか。

 それはもう少し後で書きます。

 まず、貴方に謝りたかった。

 本当の名前で貴方とお話していなかったことを。

 そして、貴方に会わずに姿を消したことを。

 飛行機の時間は午前9時15分です。

 貴方がこの私の懺悔を読んでいる時、私はもう日本の上空にもいないかもしれません。

 顔を合わせることが出来ないから。

 貴方の顔を見たら、帰ることができなくなるから。

 だから、私はさよならも言わずに行きます。

 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

 ああ、何から書けばいいのでしょう?

 アリスの物語のように、一番最初から始めればいいのでしょうか?

 一番、最初。

 10年前のことです。

 シンジ様。

 私の王子さま。

 覚えていますか?

 真っ赤な髪の毛をした泣き虫の女の子を。

 初めて来た見知らぬ国で、髪の毛が赤く目が青いというだけでいじめられていた女の子を。

 どうしていじめらているのかわからず、私はただ泣くしかありませんでした。

 その時、私を助けてくれたのが貴方です。

 身体の大きな3人の男の子に立ち向かってくれた貴方のことを私は王子さまだと思いました。

 いえ、今でも私は貴方のことをそう思っています。

 そして、あのお別れの日、貴方は私に言いました。

 泣かないで頑張れと。

 だから、だから、私はがんばりました。

 あの時から私は泣いていません。

 どんなに悲しくても、辛くても、貴方の言葉を思い出して涙をこらえてきたのです。

 そうすればもう一度貴方に会えると。

 いいえ。貴方はそんな約束はしていません。

 私が勝手にそう決めていたのです。

 泣かないために。泣きたいのを我慢するために、貴方を利用していたのです。

 そして、私はみんなから頑張り屋だと褒められました。

 飛び級で去年大学に進学した時も、家族も周りの人もみんな褒めてくれました。

 私はただ一人の人から褒めてもらいたいだけで頑張って来ただけなのに。

 泣かないでよく頑張ったねと。

 ここまでがんばったなら、きっと貴方も褒めてくれるだろう。

 私はそう思いました。

 そこで、私は日本へ行こうと思い立ったのです。

 ただ、私は不安でした。

 貴方は私のことを覚えてくれているだろうか?

 たった2週間くらい一緒に遊んだ、泣き虫の外人の女の子のことなんか忘れてしまっているのではないか?

 一度そう考えてしまうと、私は不安感に包まれてしまいました。

 もし貴方が私のことを覚えていなかったら…、私は生きていけないかもしれない。

 それに、私はあの時と比べると容姿が大きく変わってしまっていました。

 小さかった身体は160cmを越えて、日本人の中では大きい方になりました。

 燃えるような赤毛は金色に色褪せ、表情も泣かないために毅然とした感じになっています。

 がんばりぬくために、我慢したり意地を張ったり…。

 ずいぶんと偉そうに見えるようになってしまいました。

 こんな私を貴方があの時の泣き虫と同一人物だと思ってくれるでしょうか?

 私には自信がありませんでした。

 それに、もし泣き虫の女の子自体を忘れていたら…。

 忘れていたとしても、決して貴方は悪くありません。

 私が勝手に貴方を自分の王子さまだと決めていただけなのですから。

 でも、もし貴方があの少女のことを忘れていたなら、私は打ちのめされてしまいます。

 二度と立ち上がれないほどの痛みで。

 そんな不安を抱えていても、会いたい。貴方に会いたい!

 その気持ちはもう抑えようがありませんでした。

 そこで考えたのが、別人として貴方の前に現れるということでした。

 運が良いといえばいいのか、私は貴方に名前しか教えていませんでした。

 そのアスカという名前すら貴方が忘れていたとしたら…。

 もしそうであったならば、私は打ちのめされてしまう。

 笑わないでください。

 それだけ貴方は私にとって大きな存在だったのです。

 だから私はママの名前を借りることにしたのです。

 もちろん、パスポートとかは自分のものでないといけませんが、

 キョウコの名前で貴方のいる学校に入れるようにパパにお願いしたのです。

 パパは今アメリカにいますが、日本人にも顔が広く、こんな無茶なことも教育委員会に巧く言い含めることができました。

 期間限定の留学生として転校し、そのことは一切学校に教えないという滅茶苦茶なことを押し通してしまったのです。

 まさかそんなことはできないだろうと思っていたのですが、

 パパからOKだと国際電話を受けた時はもう舞い上がってしまいました。

 その後の事務手続きや制服とかの学校関係の手配。

 パパの友人の方が全部していただいたそうです。

 日本に着いてからお礼を言いに行こうとしたのですが、パパはその人の名前を教えてはくれませんでした。

 随分照れ屋の方らしく、いずれお礼のお手紙を書こうと思っています。

 ああ、話が脱線していますね。

 そのパパにも王子さまの話はしていません。

 そんなことを言うと、あのパパのことですから絶対に協力してくれやしませんからね。

 パパにはグランマのお墓参りと観光をしたいと嘘をつきました。

 そして、あの恐ろしいママには、パパのところに、アメリカに行きたいと嘘をつきました。

 本当に親不孝な娘です。

 

 貴方は変わってしまっていました。

 王子さまのイメージは消えて、目立たないおとなしい男の子になっていました。

 それでも…。

 そんな貴方でも、私にはすぐにわかりました。

 教壇に立つ私の顔を恥ずかしそうに見るその表情。

 たとえあの場所に数百人いたとしても、私には貴方を見つけることは容易だったと思います。

 毎晩のように夢見ていた貴方なのですから。

 だけど、私には声をかける勇気がありませんでした。

 できることは幸い一番後ろだったので誰に遠慮することもなく、黒板と私の机の中間に座っている貴方の後姿を一日中眺めることが出来たのです。

 貴方が振り向くとき、慌ててそっぽを向いていたことに気がついていましたか?

 ずっと貴方を見ていたからどう動くかすぐにわかっていたんです。

 そんな風に貴方を見つめ、学校とホテルを往復する毎日でした。

 どんなにか貴方の家を…あの公園を訪ねて行きたかったことか。

 でも、私には出来ませんでした。

 学校での貴方の姿を見ているうちに、

 私は王子さまの幻影を求めていただけなのではないかという悪魔の囁きに耳を貸しそうになっていたからです。

 思い出の場所を訪れて、覇気のない貴方の生活をも覗いてしまったら。

 そうやって悩み苦しみながら毎日を過ごし、いつの間にか1ヶ月が過ぎました。

 パパからは早く帰らないとママが疑いだしたと、何度も言ってきていました。

 だけど、私は帰ることが出来なかった。

 幻影を壊したくないから?違う!もしそうなら、さっさとドイツに帰ればいいのです。

 じゃ、どうして私は日本に残っているのだろうか?

 その答えは見つかりました。

 私が頑張ったのは、貴方の言葉のおかげ。

 もし貴方の言葉がなければ、今も泣き虫のアスカがいたのかもしれません。

 貴方を心の支えにして、がんばってきたのです。

 その貴方が今がんばっていないのは何故?

 貴方には目的がないのではないか。

 身体が小さいということが劣等感になっているように、貴方をずっと見ていた私には感じられました。

 その劣等感が貴方を萎縮させている。

 そう。萎縮させているだけだ。

 本当の貴方はその陰に今もちゃんと生きている。

 私はそう思いました。

 そして、そのことを証明したいと思うようになったのです。

 本当の貴方を表に出す。

 そのことは私にしかできない。

 それが私のなすべきことなのだ。

 そのために私はここにいる。

 私は決意しました。

 だけど、ゆっくりしているわけにはいきません。

 もうすぐ帰国しないといけないから。

 時間がないから。

 私にはもう時間がない。

 でも、どうやって貴方と親しくなればいいのでしょうか?

 いきなり声をかければ貴方は逃げ出してしまうのではないか。

 自然に会話できるように。貴方を逃がさないように。邪魔が入らないように。

 あれは偶然ではなかったのです。

 貴方の性格と掃除当番だということを計算して、あそこで待っていたのです。

 だから、貴方があそこに来てくれたとき私は神に感謝しました。

 その上、他人の出したラブレターの心配をするなんて!

 変わってない!私の王子さまは変わってはなかったんだ。

 本当は泣き虫のアスカは涙がこぼれそうでした。

 

 ああ、日本語って難しいですね。

 喋るのは自由自在なのに、いざ文章にすると自分の言葉じゃないみたい。

 

 そして、貴方はついに私を泣かせてしまいました。

 そう。チェロです。

 貴方はあんなに巧くチェロを弾けるではありませんか。

 ちゃんと目的を持っていれば、貴方も人一倍頑張ることが出来るんです。

 やっぱり目的がない生活を送っているから、学校で萎縮し覇気がなくなっているだけなんだ。

 本人もそのことに気づいていないんだ。

 私の王子さまはここにいる。

 そのことがわかった途端、涙がこぼれてきたのです。

 そして、私は決心しました。

 貴方の覇気の素になろうと。

 別に間違っていないと思います。

 私は貴方のことが好きで、貴方だって地の私を知っても好意を持ってくれているのだから。

 人を愛する気持ちが力になる。

 私のシンジなら、そのことに気づいてくれる筈。

 本当に楽しかった。

 ドイツのこと。大学のことなど、完全に忘れていました。

 いや、忘れようとしていました。

 ところが、あの夜。

 そうです。あの停学になった日の夜です。

 ホテルの部屋にママがやって来ました。

 アメリカのパパのところに行き、そこでパパに一部始終を白状させて来日したのです。

 ママが何を言いたいのかわかります。

 頬を一発平手打ちされて、それから話をさせられました。

 私の気持ちはわかってもらえましたが、だからといってしたことは許せないとはっきり言われました。

 当たり前ですね。大学に入学するためにいろいろと迷惑をかけた人たちのことも考えずに、自分の欲するままに動いていたのですから。

 もちろん、私はドイツに帰らなければなりません。

 貴方とはお別れです。

 一生……?

 それは貴方次第だと思います。

 私の心はもう決まっていますから。

 私を探してください。

 それに、私泣いてません。

 ほら、手紙のどこにも涙の痕なんかないでしょ。

 私また泣かずにがんばります。

 だから、貴方もがんばってください。

 

 

 私の王子さまへ

 

 惣流・アスカ・ラングレー

 

 追伸

 私が名前で呼ばせなかった理由がわかりましたね。

 今度…、またいつか会えた時、アスカって呼んでもらえますか?

 

 

 


 

 

 

 僕は青いインクで書かれた手紙を何度も読み直した。

 最初の部分を読んだとき、壁の時計を見ればもう10時になっていた。

 彼女が書いたとおりに、もう日本の上空にはいないだろう。

 惣流さんはもういない。

 名前なんてどうでもいい。

 名前がアスカだろうとキョウコだろうと、僕には問題じゃない。

 僕は涙を必死にこらえた。

 惣流さんが泣かないと書いているんだ。

 僕だって泣いちゃいけない。

 唇を咬み、便箋を封筒に収め、その封筒を僕は胸に抱いた。

 今は何をどうすればいいか全然見当もつかない。

 だけど、がんばろう。

 とにかくがんばるんだ。

 彼女があんなにがんばってきたんだから、僕だって!

 

「はい、これ飲んでよ」

 

 さっきの係りの人が缶コーヒーを両手に持って入ってきた。

 もう私服に着替えている。

「あ、す、すみません」

 受け取った缶コーヒーは暖かく、掌からその暖かさが体中に伝わっていくみたいだ。

「彼女かい?あの子」

 僕ははっきりと頷いた。

「そうか。ドイツなんだろ、確か。これから大変だね、長距離恋愛は」

 私服に戻った所為か、随分と気さくに話してくれる。

 きっと僕の引き攣った顔が心配だったんだろう。

 だから、こうして話しかけてきたんだ。

 優しい人だな。

 僕はプルトップを開け、ごくごくと……。

 苦い。

「あれ?コーヒーダメだった?これ缶モノの割りに巧いんだけどな」

「すみません」

「別に謝らなくてもいいよ。いやね、あの子からの手紙を読んでる君の顔を見てたら、つい話をしたくなってさ」

「顔?」

「ああ、唇をへの字にして、泣くもんかって必死に我慢してた顔」

 僕は苦笑した。そんなに変な、情けない顔を…。

「あの子とそっくりだった」

「え!惣流さんと?」

「そう、彼女もあんな顔をして僕に手紙と自転車を託したんだよ。よろしくお願いしますって、それは深く頭を下げてね」

「そうだったんですか」

「君たち、お似合いだよ」

「お似合い、ですか?僕たちが?」

「ああ、僕はいいと思ったけどなぁ。本当だよ」

 きっと僕がかなり変な顔をしていたのだろう。

 係りの人は真剣に念を押してくれた。

 他人が見てお似合いだなんて言われるのは、やっぱりなんだか変な感じだ。

 どう見ても容姿のバランスは取れていないのに。

 でも、お世辞や慰めで言ってるようには見えない。

 微糖のブレンドコーヒーを僕はじっと見つめ、そして一気に飲み干した。

 ああ、やっぱり苦いや。

 

 係りの人にお礼を言って、僕は家に戻った。

 惣流さんのマウンテンバイクに乗って。

 結構遠い道のりだけど、今日はその方がいい。

 僕の街までは軽い上り坂が続いている。

 だんだんペダルは重くなっていくけど、絶対に休まずに走ろうと決めたんだ。

 がんばって…がんばって、惣流さんのいるところへ、ドイツへ行くんだ。

 いきなりドイツ語の勉強なんてできっこない。

 まず英語をがんばらないと。

 英語だけじゃダメだ。他の教科も…。

 いや、勉強だけじゃない。

 惣流さんはあんな小さな時からがんばってきたんだ。

 僕だって。僕だって!

 ふう…、まだ上りだよ。

 ペダルを漕ぎながら、僕はいろいろなことを考えた。

 惣流さんのところへ胸を張って行くために何をしないといけないか。

 くそ!きついなぁ。

 でも、負けないぞ。

 やった!峠の一番上だ。

 僕は眼下に広がる自分の街を眺めて、大きく深呼吸した。

 その時、あの係りの人が言ってたお似合いという意味がわかったんだ。

 あの人は学校での僕たちを知らない。

 見ただけの僕たち。しかもお互いのことを考えて、必死になっていた僕たちを見てくれていたんだ。

 だから、お似合いだと思ってくれたんだ。

 容姿のバランスは取れてなくても、心のバランスはしっかり取れている。

 僕たちは!

 僕はもう一度、大きく深呼吸した。

 そして、ペダルを踏んだ。

 自分の街を目指して。

 いつの日か必ずめぐり逢う筈の惣流さんのために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの日か。

 そう、その筈だったのに、たった5時間後。

 僕の隣には惣流さん…、いや、アスカが座っている。

 にこやかに笑いながら。

 

 明日への希望と闘志を胸に帰宅した僕を待っていたのは、空港にすぐ来いという惣流キョウコさんからのメッセージだった。

 僕は母さんに確認した。

 あれは30を過ぎた女性の声だと母さんは断定。

 ということで本物からのメッセージだとわかったんだけど、空港は隣町の郊外にある。

 さすがにもう一度走る気力と体力はない。

 好奇心に燃える母さんの助けを借りて、オンボロ車で送ってもらうことになったんだ。

 

 そして、空港に駆けつけた僕が聞いたものは。

 新東京第3国際空港の広大なロビーに響き渡る女の子の泣き声。

 多分あれだと見当をつけそこに走り寄ってみると、混雑しているロビーの一角…いや中央だけがぽっかり穴が開いたかのように人がいない。

 その空間のど真ん中に音源がいた。

 ソファーにうつ伏せになって号泣している金髪の女の子。

 その隣に平然と座っている、惣流さんそっくりの金髪美人。

 みんな見て見ぬふりをしている中で、悠然と雑誌を読んでいる。

 僕はそんな二人のところへ歩いていった。

 その気配に顔を上げた本物のキョウコさんは、僕を見てにっこりと微笑んだ。

 わぁっ!うっとりするような笑顔!

 キョウコさんは読んでいた雑誌を丸めると、偽者の惣流キョウコさんのお尻をぱしんっと一撃した。

「きゃうっ!ふぇぇ〜んっ!」

 泣き声はまた増幅されてしまった。

 キョウコさんはため息を吐いて、娘の耳元で囁いた。

「王子さまの登場よ」

 その瞬間、泣き声が止まった。

 いきなり静まり返ったロビー。

 あれだけ震えていた惣流さんの背中はぴくりとも動かない。

 乱れに乱れた金色の髪の毛の中から、青い瞳が僕を窺っている。

 ああ!あの眼だ。

 公園で泣きじゃくっていた、あの女の子の眼だ。

 そうなんだ。

 手紙に書かれていたことと僕の意識が、この時完璧に一致した。

 どうしても容姿端麗で自信たっぷりの惣流さんと、10年前の泣き虫の女の子との落差が大きすぎて、

 何となく違和感があったんだ。

 でも、間違いなくあの子だ。

 僕の背中にくっついて、何かあるとわぁわぁ泣いていたあの“あっかちゃん”だ。

 僕はそのおどおどとした青い瞳に微笑みかけた。

 あの日と同じように。

「わぁっ!」

 突然、惣流さんが僕に飛びついてきた。

 あの日と同じように。

 ただ、その結果はあの日と正反対だった。

 僕より大きな惣流さんは、全身で僕を包み込んでしまった。

 だって惣流さんの鼻の辺りまでしか僕の背がないから…。

 思い切り抱きしめられているので、僕の顔は惣流さんの胸元に押し付けられて息ができない。

 嬉しくて、気持ちがよくて、でも、苦しい。

 早く背が高くなりたい。

 この時、僕はそう熱望していた。

 これじゃ、僕が慰められているようじゃないか。

 

 驚いたことに、この間に惣流キョウコさんは姿を消していたんだ。

 日本から。

 娘を置き去りにしてさっさとドイツへ戻ってしまったんだ。

 僕もアスカも…これで遠慮なく名前で呼べるようになった…仰天してしまった。

 お別れをさせてもらえたんじゃなくて、残留延長が認められたんだ。

 そうやって喜んでいた僕たちに、母さんがとんでもないことを言った。

「どれくらいの大きさの家がいいんでしょうね?」

「はい?」

「惣流家は日本に移住するんですって。だから、早く家を見つけておいて頂戴って。

 普通初対面の人間にそんなこと頼む?」

 母さんは悪戯っぽく微笑んだ。

 まさか結婚前の娘を男と同居させるわけにはいかないでしょうと、言い残して行ったそうだ。

 アスカの表情は見る見る崩れた。

 その耳元に小声で僕は言った。

「泣いちゃダメだよ」

 アスカは唇を尖らせて、僕を睨みつけた。

「泣かないもん。シンジの意地悪…。そんなこと言うと、泣いちゃうぞ」

「はは、ごめん。お願いだから泣かないでよ」

「うん、私もう泣かないよ。シンジが私を捨てたら泣くけどね」

「ああ、それじゃ一生大丈夫だ」

「嬉しいっ!」

 再び僕をぎゅっと抱きしめたアスカだったけど、母さんが呆れ顔で僕たちの間を裂いた。

「親の前でそういうことしないの。しかもこんな場所で」

 アスカの泣き声が消えたからだろう。

 周りはいつもの空港ロビーに戻っていた。

 暖かい目や、笑ってる目、蔑むような目、色々な目が僕たちを見ていた。

 もちろん、アスカの荷物を抱えて、僕たちは空港からすぐさま撤収した。

 

 そして、我が家のリビング。

 あれ以来笑顔の絶えないアスカは、空港での騒ぎを恥ずかしそうに語ってくれた。

 ずっと我慢していたんだけど、発着のアナウンスで搭乗カウンターに向かう時、

 手すりにしがみついて「帰らない!」って泣き叫びだしたんだって。

 その後のことはほとんど覚えていないけど、とにかくずっと泣き続けていたらしい。

 えへへと笑うアスカに僕は訊ねた。

「そんなに泣いて身体は大丈夫なの?」

「はん!鍛え方が違うわよ!」

 もう、すっかりいつもの惣流キョウコさん改め惣流アスカだ。

「ねえ、アスカはいつもこんな口調なのに、これって全然違うね」

 僕は上着のポケットからアスカからの手紙を出した。

「あっ!」

 いきなり奪い取ろうとしたアスカだったけど、さすがに予期していたからその手をかわす事ができた。

「返しなさいよ!馬鹿シンジ!」

「やだよ。これ僕宛だもん。絶対に返さないよ」

「泣いちゃうわよ」

「いいよ。僕の宝物なんだから、これは。死んだら一緒に燃やしてもらおうかなぁ?」

「あ、アンタねぇ…」

 アスカは溜息をついたけど、取り返すのはあきらめてくれたみたいだ。

「で、どうしてこんな文章なの?」

「アンタ馬鹿ぁ?口語体で書いたら全然印象が違うじゃない。

 そんなの読んで感動してくれると思う?こっちはそれ書くのに2日もかかったのに…あっ!」

 慌てて口を閉ざしたけど、あの手紙にそれだけ手間隙と心を込めてくれたのはよくわかった。

「ありがとう。僕がんばるからね」

「はん!あったり前でしょ!」

 照れ隠しもあって、アスカはいつも以上にハイだ。

「は〜い、コーヒーよ。私も一緒に飲んでいい?」

 笑いながら言う母さんだった。

 それぞれの前にカップが配られ、僕はトレーの上にある砂糖に手を伸ばした。

 すると、すっと白い腕が伸び、砂糖壺を横から掻っ攫ってしまった。

「何だ。アスカ、ブラックじゃなかったの?」

「ブラックよ、私」

「じゃ、砂糖かしてよ」

「い・や・よ」

「へ?」

「ま、いきなりブラックってのは可哀相だから、1杯くらいは…」

「待ってよ、アスカ。もしかして」

 遅かった。

 ミルクソーサーもアスカに没収されてしまった。

「勘弁してよ。ホテルの人に缶コーヒーもらったんだけど、あれでも無理矢理飲んだんだから」

「まあ、その人のは飲めて、母さんのは飲めないの?」

「か、母さんまで!」

「いい機会だから、シンジのダメダメなところをアスカちゃんに直して貰おうかしら」

「他にはどんなのがあるの?」

「そうねぇ、レバーが食べられないとか」

「わっ!じゃ、今日はレバーにしましょうよ」

「ま、待ってよ。アスカにだって苦手なものあるだろ」

「ん?蛸はダメよ」

「ほ、ほら、アスカにもあるじゃないか」

「何言ってるんですか、シンジ。外国の人は蛸が食べられないでしょ」

「あ、でも頑張ります。ほら、たこ焼きくらいから始めて」

「まあ!頑張り屋さんなのね、アスカちゃんは」

 それに引き換え…という感じで僕を睨む母さん。

「好き嫌いなくさないと背が伸びないわよ」

 うっ!痛いところを突かれた。

「ねえ、釣り合いが取れないものね、今のままじゃ」

 座っていても一目瞭然の二人の身長差を目で確かめている。

 そんな母さんに、アスカはにっこり笑った。

「釣り合いなんかいいんです。でも、食べ物の好みとかは一緒の方がいいなぁ」

 その笑顔のまま、僕の方を窺う。

「まあ健気なこと。そうそう、学校はどうするの?」

「今のまま…じゃダメ?」

「だって、アスカちゃんは大学生なんでしょ」

「大学にはシンジいないし。それにシンジのことだから、がんばって私と同じ大学に入ってくれます。ねっ、シンジ!」

「げっ!まさか、ひょっとして、新東京大学…とか?」

「ん…ま、そんなとこで我慢してあげるわ」

 ははは、日本の最高学府の頂点で我慢してもらったよ。

 僕はコーヒーカップを手に取った。

「シンジ、何も入れてないよ」

「いいよ。眠らずに勉強しないとアスカと同じとこ行けそうもないから」

「そっか。アリガトね、シンジ。あ、でも…」

 アスカは口澱んだ。

「何?」

「私の相手もしっかりしてよね。……私の王子さま」

 天使のように可愛らしく、アスカは微笑んだ。

 ああ、神様。僕だけ特別に1日を48時間にしてもらえませんか?

 観念して口をつけたコーヒーは、ほろ苦いどころの苦さではなかった。

 その表情を見て笑い転げているアスカに、僕は心の中で誓った。

 がんばるよ、何事も。アスカの泣き顔は見たくないから。

 

 

 

 

 

 

あんばらんす

〜おわり〜

 

2003.11.20

 


<あとがき>

 

 Whoops!様よりいただいたお題による、99999HIT記念リクエストSSです。

 う〜ん、前編ラストの所為で皆様にはご心労をおかけいたしました(笑)。

 はっきり言っておきましょう。私がLAS以外を書くはずはないでしょう!

 それにシンジ一人称というお題ですからね、アスカの秘密は書けないし。ふっふっふ(確信犯の笑み)。

 アスカ一人称だったら冒頭で書いてたんですけどね。

 「私、惣流アスカ。でも訳があって、学校では惣流キョウコって名前なの」てな感じで。

 ただ、アスカの手紙の文体については悩みましたね。

 あのアスカの口調とのあんばらんすさが酷いですから。

 ただ口語体で書く人は少ないですし、外国語(アスカにとっては)で文章を書くと固くなってしまいますからね。

 それにアスカにはシンジを奮起させようという意図もありましたので、ああいう手紙になりました。

 さて、“ハッピーだけど、ほろ苦い”に関してはこんなものですよ、Whoops!様。

 私コーヒーダメですから、訪問先で出される極上の豆で淹れたコーヒーにいつも苦しんでるんですよ。

 では、続いて10万HITの方のお題を考えましょう。ああ、大丈夫かな?

 

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