某所で特撮の話をしていただいている三只様に捧ぐ

2005.5.21         ジュン

 















世界各地が異常気象に覆われている。
日本列島でも毎日のように起こる小地震が不気味な地殻の変動を告げた。
そして怪獣たちが一斉に目を覚ましてしまった。





って、アタシの所為じゃないわよっ!
アタシはむしろこの太陽系第三惑星を護ってあげた方じゃない。
やってらんないわよ。
元カプセル怪獣の2バカなんかは
全部アタシの所為だって吐かすから殲滅してやったわ。
と〜ぜんシンジの見てないとこでね。
アタシはこの星の連中から感謝され崇拝されることはあっても恨まれる筋合いはないわっ!

あ、そうそう。
アタシの名前は惣流アスカ。
まだ14歳。
今年の12月で15歳になるの。
そして18歳になったら碇アスカに…。
ちょっと待ちなさいよっ。
碇になっちゃったら馬鹿シンジのすべてを所有するわけにはいかなくなっちゃうじゃない。
決定。
18歳になったら碇シンジは惣流シンジになる。
ぐふふふ。
これで完璧ね。

そう、アタシはすべてを支配せずにはいられないラングレー星人、だった。
シンジに出逢ったから、祖国を捨てたの。
今は地球人の天才美少女。
だってシンジのすべてを支配したかったんだもん。
もしラングレー星の命令通りに太陽系第三惑星侵略計画を実行したら、
絶対にシンジに嫌われちゃう。
そんなの絶対にイヤっ!
そんなわけでアタシは祖国を裏切ったの。
ま、侵略計画なんか考えるヤツが悪いのよ。
けどまぁ、この日本を侵略の計画準備地に選んでよかった。
シンジに逢えなきゃ侵略してしまってたわよ、まったく。
こんな星、我がラングレー星の最高の科学力と精神をもってすれば…。
いけないいけない。
まだまだシンジへの愛が足りないんだわ。
もっともっと愛情を注いで地球人とやらにならなきゃ。

ただシンジがカプセルヒューマノイドだったなんて、めちゃくちゃラッキーよね。
最初から正体がバレてんだもんね。
君はあの素晴らしい…じゃない、あの邪悪なラングレー星人だったんだね!
なぁんてシンジが叫んで、バッドエンドの安っぽいメロドラマなんかになっちゃヤだもん。
ま、そういう意味じゃ、あの女に感謝しないとね。
シンジを私の前に送り込んでくれたんだもん。
一目惚れよ、一目惚れっ!
シンジの顔を見た途端にビビ〜ンっと来たの。
こいつが欲しいって。
こいつのすべてを我が物にしたいって気持ちが私の全身を包んだのよ。
もうそれからはこんな星の侵略なんてど〜でもよくなっちゃった。
シンジがアタシに一目惚れしてメロメロになっちゃうのは、全宇宙の常識ってヤツだから仕方ないけどね。
何しろこの私はあの美男美女が揃ってる栄光あるラングレー星の中でもトップクラスの天才美少女……。
ああ、いけない。
骨の髄までラングレー星への忠誠心を叩き込まれてるから、ついつい元祖国を讃えちゃうじゃない。
よしっ。
これは治療の必要ありと認める。
シンジにキスしてこよっと。




その日はかなり暑い初夏の休日だった。
シンジは2バカと遊びに行ったの。
征服者であるアタシは寛大なのだ。
元カプセル仲間なんだからそれくらいの自由は与えてあげてもいいと思う。
あ、因みにカプセルヒューマノイドはシンジだけだと認定。
あとの2匹は怪獣。カプセル怪獣ね。

「ねぇ、アスカ。こんなのよそうよ」

「どして?」

「だって、何だか尾行してるみたいで…」

「尾行?はんっ、とんでもないっ。
 アタシは馬鹿シンジが危険な目に遭わないか警護してあげてんじゃない」

「け、警護って、さっきからしてるのは違うと思うけど…」

この星にやってきて最初にできたお下げ髪の親友が顔を赤らめて呟く。
何言ってんのよ、シンジに危害を加えそうなヤツを除外していってるだけじゃない。
あのファーストフードの女は危険な笑みを向けてきたし、
ゲーセンにいた馬鹿派手なおばさんも明らかにシンジを狙っていた。
危ない危ない。
何しろこのアタシが一目惚れすんのよっ。
シンジは狙われて当然。
ま、2バカはシンジのガードくらいはできるでしょうから交際を許してんのよ。
あ、ごめん、ヒカリ。
趣味悪いとは思うけど、アンタあの鈴原が好きなのよね。
邪魔はしないからどんどんやんなさいよ。
問題はあのツルペタボディの方よ。
確かマナイタとかいったっけ?
100m走るのに記録で負けたくらいで逆恨みしちゃってさ。
おまけにアタシの所有物であるシンジを好きだなんてちゃんちゃらおかしいわ。
だけど、身体を武器にされちゃまずいし…。
あの女ならシンジの前で平気で裸になって誘いそう。
このアタシでさえバスタオル巻いてたってのに。

そう、アタシのジレンマは身体のこと。
第三惑星人とは身体の出来が違うのよ!
よくない方で。
まず、この私はこれでもラングレー星では背の高い方なのだ。
重力の問題かもしれない。
地球ではやたら身体が軽く動くような感じだし。
だから、背はもうこれ以上高くはならないと思う。
胸もこのままかも…。悔しい。
いや、別にそれは問題ではないのよ。
だってシンジはこのままのアタシがいいって言ってくれてんもん。
問題は…恥ずかしいわよね、もう。
ラングレー星人は生殖活動ができるのが生まれてから18年経たないとダメってことなのよっ!
はぁはぁはぁ。
詳しくは教えてやんない。
ただ人口抑制のために数千年前にラングレー星で実行された種族維持計画の結果らしいわ。
ホント、馬鹿なことしてくれたわよ。
おかげでせっかく最愛のシンジと同棲してるっていうのに、
テレビとか雑誌とかで見るようなこと何にもできないんだもん。
ヒカリになんか真っ赤な顔で「避妊だけはちゃんとしておきなさいよ」って囁いてきたりして。
そんな心配してみたいわよっ!
親友にだって言えないから笑って頷いておいたけど、心の中は涙の大瀑布よ。
ただ、シンジには教えてあげたけど。
だってアタシの愛を疑われたら困るもん。
顔から火が出る思いで告白したのよ。
あの馬鹿、鼻血吹いた。見せたら。
だって現物見せないと嘘だって思われちゃうじゃない。
はぁはぁはぁ。
第三惑星人の身体を図鑑で調べたら屈辱的にも
アタシのは幼稚園児並み…。
しかもまったく感度無し。
キスはあんなに気持ちいいのに、どうして頸から下は不感症なのよ。
胸だって周りの子よりも大きいのにぃっ。
シンジに触ってもらってもこそばゆくもない。
もうっ!数千年前のラングレー星の科学者はっ!
はぁ…、やんなっちゃう。
ま、それについてはアタシも学習済みだったけど、やっぱりショック。
ラングレー星の常識通りに成人するまでは精神的なお付き合いをしないといけないってことよ。
大宇宙の神秘よねぇ。
って、この星の人間はそういうこと知らないわけだし、
何より私の身体が実はお子様だなんてばれた日には死ぬか生きるかって感じ。
あ、もちろん秘密を知った方がね。
ただ、シンジはこのことをよくわかってくれているからそれは嬉しい。
この星の文化を調査してるから中学生でもそっちの欲望は結構あるってことはわかってる。
まあシンジはこの星の出身じゃないけどさ。
でもアイツの気持ちをゲットしようと風呂上りの悩殺ポーズを見せたとき、鼻血ブーしてるから似たようなもんなのよねぇ。
だからさ、恥ずかしかったんだけど、アタシの身体をシンジの好きにしていいって言ったのよ。
でもシンジは自分勝手なことは死んでもしたくないんだってさ。
そういうことはアスカの身体が大人になってからだってきりっとした顔で言ってくれちゃってさぁ…。
その言葉を聞いたとき、アタシは思ったわよ。
アタシは全宇宙で一番素敵な男を所有してるってさ。
あ、この“所有”はやめなきゃいけないって思ってるんだけど、赤ん坊の時からこれで育ってるもんね。
ま、おいおい変わるわよ、たぶん。
ああ、話が随分露骨な方にいっちゃった。
つまりアタシが言いたいのは、このアタシの弱点を利用してマナイタがシンジに攻撃してこないかってこと。
怖いよぉ。

そんな不安があるから、アタシは相田のヤツを焚きつけてんのよ。
とっととマナイタを自分の所有物にしなさいって。
あ、また使っちゃった。反省、反省。
結果は連戦連敗だけど。
それでも何度も挑戦するのは偉いと思ってあげる。
このアタシが思ってあげてんだから、いつまでも失敗続きじゃ許さないわ。
ああ、心配っ。
と〜ぜん、アタシとシンジのこと。
相田の色恋沙汰じゃない。

アタシの心配を知ってか知らずか、どうせ知らないんだけどさ、
三人はいい気になって遊んでいる。
まあ、ああいうシンジを見るのもいいわよねぇ。

「アスカぁ、もうやめようよ。暑いよ、私」

「あのねぇ、こういうカッコウしないとすぐに見破られちゃうじゃない」

「そりゃあ見破られないわよ。家族に見られたって不審者としか…」

「仕方ないでしょ。アタシの髪の毛の色はすぐわかっちゃうもん」

アタシは髪の毛を隠すために頭からすっぽりとフードを被っている。
そしてサングラスにマスク。
アリガトね、ヒカリ。
ホントにいいヤツだよ、アンタ。
アタシ一人じゃさすがに恥ずかしくて。
ああ、暑い。
ゲーセンの反対側にある自販機コーナーの陰にアタシたちは駆け込んだ。
フードつきのオーバーを脱いで身体に外気を接する。
ひゃあ、涼しい!

「ヒカリ、奢るわ。何がいい?」

「鬼右衛門。ペットボトルの方にして」

「オ〜ケ〜」

アタシに付き合ってくれてるのだ。
気前がよくて当然。
がしゃんと受け取り口にペットボトルが落ちてくる。
わっ冷たくて気持ちいい!

「ハイっ!ヒカリ」

颯爽と投げたペットボトルを真剣な顔で受け止めるヒカリ。

「ありがとう!」

「い〜え。さぁて、アタシは何にしよ〜かなぁ」

やっぱ炭酸?それともブラックコーヒーかな?
缶の紅茶は甘すぎて嫌い。
ヒカリと一緒のお茶にしようかなぁ。
アタシは3台並んだ自動販売機を二往復した。

「アスカぁ、先飲んでいい?」

「うんっ」

悩むのよねぇ、こういうの。う〜ん、そうねぇ。
ぶるるるっ。
背筋が寒くなった。
ぴゅぅっと冷たい風が吹きぬけていく。

「寒っ。ホットはないのっ?」

もう6月になろうとしている。
さすがにホットは自動販売機にはあるはずがない。
アタシは口を尖らせた。

「こんなに寒いんだから、ホットも置いとけば…」

「アスカっ!」

ヒカリの叫びに振り返った。
彼女は真っ直ぐに空を指差している。
真っ黒な空を。
さっきまで青空が広がってたのに!
おまけに白いものまでちらほら。
なんて思っているうちに吹雪。

「な、何よ、これぇっ!」

想定外の事象に出くわすと我が親友は固まってしまう。
私は彼女の肩をぽんぽんと叩いてあげた。

「ね、よかったでしょう。厚着してきて」

きっとこういう異常気象を予感してアタシはこの用意をしてきたんだわ。
さすが、天才美少女。
って、自己満足してる暇はないわ。
これは間違いなく何かが起こる。

「ヒカリ、行くわよ!」

アタシは愛するシンジのいるゲーセンに駆け出した。
「待ってよぉ」と右往左往する人たちをかきわけてヒカリが追っかけてくる。
ゲーセンの前で空を見上げている馬鹿面どもを押しのけてアタシは店内へ。
連中は外の騒動も気にせずに遊び呆けていたわ。
ま、こんだけの音と光じゃ外のことはわかんないでしょうけど。
シンジの首を引っ張るようにして表に出ると、うへっ、もううっすらと雪が積もり始めてる。

「なんじゃあこりゃあ!」

「へくしょんっ」

Tシャツのシンジが冷気にくしゃみする。
そりゃあそうよね。
みんな夏向きの格好だもん。
でへへへ。
アタシはつんと澄ましてシンジにオーバーを着せてあげた。

「アスカ」

「どう、あったかいでしょ?」

「でも、アスカが寒くなるじゃないか」

どこから持ってきたかとかそういうことを聞かないのが嬉しいわよねぇ。

「アタシはだいじょ〜…くっしゅっん!」

よかった、可愛いくしゃみで。

「アスカ、ここにお入りよ」

シンジがオーバーの前を広げてくれる。
ふへぇぇ。
アタシは頬が蕩けてしまわないように表情を引き締めるのに必死だった。
そそくさとシンジの懐に入り込む。
あったかぁ〜い。
そしてアタシはヒカリに顎で促す。
アンタもしなさいと。
ヒカリは真っ赤になりながらオーバーを鈴原に差し出す。
鈴原のヤツも空を見上げながらオーバーを受け取って、アタシたちの真似。

「いいよなぁ、お前ら。俺はどうなるんだよ」

相田がぼやいたその瞬間、恐ろしげな咆哮が響き渡った。
そして、真っ黒な空から大きな物体が姿を見せる。
その物体は翼を羽ばたかせながら街の中心部の方に降りてきた。

「怪獣!」

これが第三新東京市に現れた最初の怪獣だった。
日本でも出現したことは知っていたけど、何てことなのよ。
よりによってアタシとシンジの愛の巣があるここに出るなんてっ!

「おいっ、ケンスケ!どこいくんや!」

駆け出した相田の背中が止まる。
振り返った彼は、まあいい表情をしていたのは認めてあげるわ。

「あっちに霧島の家があるんだ。得点を稼ぐいいチャンスだぜ」

明るく笑って相田は走っていった。
相変わらず見栄を張るわね、あの馬鹿は。

「アスカ、僕も」

「シンジっ」

マナイタのことが心配なの?
なぁんて馬鹿なことは思わない。
親友のことが心配なのは百も承知よ。
何しろカプセル仲間だもんね。

「わかった。アタシも行くわ」

「止めても聞かないよね」

「あったり前でしょっ。あ、鈴原はヒカリをお願い」

「な、なんでお前に命令されなあか…」

「アンタ馬鹿ぁ?こんなとこにヒカリを置いて行く気?それともあんな場所に連れてくの?
 安全なところにちゃんと連れて行きなさい!」

鈴原は一瞬戸惑ったけど、やっぱり彼女のことは大事だもんね。
シンジに「アホのことは任せたで」って言って肩を叩いた。

「じゃ、シンジ、行くわよ!」

って、二人羽織じゃ走り難いわね。
それに道路も凍り始めたし。
何十年ぶりかの怪獣の襲来にみんな大慌て。
ま、昔は怪獣王国みたいに毎週のように怪獣が現れた国だったらしいけど、
今は平和ボケしてたみたいでどこへ逃げたらいいかもわからない感じ。
けっこう遠くにいるはずだけど、やっぱり大きいのよねぇ。
大きな翼をぶらぶらさせながら、口から冷凍光線みたいなのを吐き散らしてる。
いったいど〜いう構造してんのよ、アンタの身体はっ!
眠たげで腫れぼったい目はどこを見てんのかよくわかんない。
でも、この寒さっ!
真剣に凍死しちゃうかも!
もう地面はつるつるでもう走ることなんかできないし、吐いた息すら凍りつきそう。
そんな時だったわ。
突然、夜のように真っ暗だった空が光に満ち溢れた。

「あの光は何っ?」

まぶしくて目を開けていられない。
怪獣が凄まじい咆哮をあげる。

5秒も目を閉じていなかったと思う。
でも、目を開けるとあの冷凍怪獣が器用な飛び方で大空へ飛び去っていくのが見えた。

「ねぇ、シンジ、どうなったの?」

「わからないよ、まぶしくて…」

まあ、とにかく怪獣の脅威は去った。
でも、次にやってきたのは遭難の脅威だったのよ。
だって初夏の格好してる時に真冬どころか、南極並みの…ううん、これは第3新東京氷河期よっ!
しかもあの怪獣はどっかに行っただけみたいだから、また来るかもっ。
冬物なんか全然持ってないのにぃっ。この星に来たの3月だったから。
って、明日の心配よりも今よ、今。
どうすればいいのよ、周りは真っ白けで場所もよくわかんないし。

「こりゃ、相田を探すどころじゃなくなったわよね」

「うん…どうしよう」

シンジも困った顔。
とにかくこの寒さを何とかしないと真剣に身体がどうにかなっちゃいそう。

むぅっ!

突然、奇妙な唸り声が響いた。

「な、何?今度は何っ?」

「あっ、あれ!」

いつの間にそこに現れたんだろう。
別の怪獣がいた。
二つ足で尻尾がない。
人間というか鬼というか、それに近いような怪獣。
第一印象は暑苦しい。
身体から湯気が出てるもんね。
事実、何だかぽかぽかしてきた。
周りの氷や雪が見る見る溶けだしていく。

「ちょっと、今度は熱い怪獣?どうなってんのよっ」

「うわっ、足元べちゃべちゃだよ」

一気に溶け出したおかげで地面は水溜りというよりも浅い川みたいになってきた。
もうっ!服がびしょびしょじゃない。
しかもついさっきまで凍傷になりそうなくらい冷たい水だったのに、もうぬるま湯みたいになってきた。
そこにようやく戦闘機が飛んできたの。
遅いっってば!
怪獣は不機嫌そうにサングラスみたいな目を戦闘機に向けた。
うわっ、戦闘開始?
目から光線?それとも口から火炎放射?
戦闘機もそれを警戒したのか急旋回。
その背後から攻撃!と、思ったら、怪獣は両手で頭を抱えてしまった。
何、こいつ。
思い切り見かけ倒し?
その顔形でそんな格好して見せても可愛くもなんともないわよ。
呆れて見ていると、灼熱怪獣はぱっと消えた。
そう、地面にもぐったのでも空に飛んだのでもない。
急に消えたの。忽然と。
わけわかんない。

そのあとすぐに家に帰ってシャワーでも浴びたかったけど、周りの状況じゃそうもできなかった。
だって建物とかは壊れてないけど、迷子とかがいっぱいで。
自慢だけど、シンジはそういうのを放っておける性格じゃないからね。
当然、シンジに愛されてるアタシとしても一生懸命になっちゃうわけ。
ようやく繋がった携帯で相田の無事も確認。
やっとこさで到着したマナイタの家はお留守。
近所の人の話じゃ昨日から一家揃って旅行中なんだって。
ま、そのうちいいことあるよ、相田。

我が家に到着したのはもう8時を過ぎていた。
アタシもシンジももうへとへと。
シンジは晩御飯を作るって言ってくれたけど、アタシは断固として拒否。
カップラーメンにしようと提案して、もちろんそのまま帰結した。
一緒にシャワーを浴びようというアタシの提案は拒否されて、
アタシがお風呂に入っている間にシンジはお洗濯。
服が滅茶苦茶だもんね。
そしてシンジがお風呂を出てきて自分の部屋に入ったきり出てこないから見に行ったら、
ベッドにうつぶせになってもう寝ていた。
きっと疲れてたのよね。
そのまま添い寝して眠りたかったけど、今日は我慢。
ぐっすり眠らないと、明日は学校があるもんね。

アタシは戸締りとか確認しながら今日のことを思い出していた。
ううん、怪獣のことじゃなくて、そのあとのこと。
迷子の子供に「お姉ちゃんたち、ふ〜ふ」って言われちゃった。
思わず大きく頷いて、その子の頭をなでなでしちゃったわよ。
やっぱり子供って正直者よね。
あ〜あ、早く夫婦になりたいなぁ。
アタシたちの子供って絶対に可愛いわよ。
名前何にしようかなぁ?
そんなことを考えながら、アタシはソファーでうとうとしてしまった。




チャンチャラチャ〜〜〜ン、ジャンッ!









「目を覚ましなさい。ラングレー星人」

アタシは目を開けた。
暗い部屋の天井。
ソファーで仰向けになっていたようだ。
もちろん、誰もいない。
夢か。
私の事をラングレー星人と呼ぶ人間はいないしね。
シンジはアスカだし、あのカプセルコンビだって惣流だもん。
どんなに親しくなったって、シンジ以外の男にアスカって呼ばせたりはしないからね。
ね、シンジ。
どうしよかなぁ。
ベッドまで行くの面倒だし、このまま朝まで寝ちゃおうかな?
決定。
このまま眠って、そしてシンジに起こしてもらおう。
あ、でもでも、狸寝入りしといてどうやって起こしてくれるのかを楽しむのもいいかも。
どうしよどうしよ、どっちにしよ〜かなぁ〜。

「ラングレー星人、起きなさい」

あれ、夢じゃない。
誰かいる!
アタシは飛び起きようとしたけど、身体が動かない。
嘘っ!

「ラングレー星人、私は君の事をよく知っている」

女の声。
いったい誰よ!
って、この棒読みは。

「君はこの星のために祖国を裏切った。
 私は君の勇敢な決意を目の当たりに見た。
 実は私はこのままの姿で地球に留まることができない。
 そこで君の姿を借りたいのだ」

はぁ…。
一瞬びびったアタシは馬鹿だ。
何よ、こいつ故郷に帰ったんじゃなかったの?

「一緒に地球の平和と人類の自由のためにがんばろうではないか。
 どうだ、ラングレー星人」

「い・や・よ」

誰がそんなことするもんですか。
見えない相手に向って私ははっきり言ってやった。

「あら、やっぱり?」

口調が素に戻った。

「ちょっと、早く動けるようにしてよ」

どこにいるのかわからないから、アタシは首をあちこちに曲げて喋った。

「こら、出て来い、元正義の味方」

「元じゃないの」

耳元の声に首を右に傾けると…。
げげっ。
これには驚いた。
だってアイツ、拳くらいの顔でそこにいたんだもん。
アタシの表情を見て、その小さな顔がにやっと笑った。

「あなたと違って、身体のサイズは自由自在なの。ふふふ」

「ああっ、もう!わかったから早く…って、アンタこれ何よ!」

縛られていた。
動けないはずだ。

「ちょっとっ、何してんのよ!こらぁ」

「うふふ、少し聞いて欲しいことがあって」

「やだやだ、正義の味方なんて絶対になんないわよ!」

「あれは冗談。聞いて欲しいのは…」



まるで拷問。
アタシが聴かされたのは惚気話。
ああ、知ってる、そいつ。
隣のクラスだもんね。
もしかして最近元気がないのはコイツが星の世界に帰ってしまったから?
うっ…。
恋する乙女のアタシとしては、ちょっといい話かも。
でも、やっぱり拷問よ、これっ。
耳元でぼそぼそと惚気話を聞かされ続けるこっちの身になってみなさいよっ。

で、その内容はアタシの口からは喋れるもんですか。
人の惚気話をど〜して代弁してやんなきゃいけないのよっ。
バッカじゃない?
はい、語り手交代。
あ、言っときますけど、ちょっとだけよ。
これはアタシとシンジの愛の物語なんだからっ。






「ひゃん!?」

声が出てしまった。
変な声。
今の本当に私?

「ごめんよ。あまりに美しかったからつい触れてみたくなったのさ」

頸を傾ける。
ちょうど胸の辺りに彼の顔が。
急に恥ずかしくなった。
私の場合顔とかは殆ど変わらないタイプだから。
これまで他の星ではこの姿で戦ってきた。
だけどその時に胸に触れられたってまったく気にならなかった。
だって衝撃に耐えるための強化スーツなんだもの。
そして動きやすいようにそれは肌と一体化している。
それなのに彼の手が触れたとき、私は確かに…。

「まるでギリシャの彫刻みたいだよ、君は」

嬉しい。
どうしてこんなに嬉しくなるのだろう。
ああ、でも恥ずかしい。
ボディペインティングしておけばよかった。
まるで裸のまま彼に抱きしめられているみたい。
恥らうあまり前ばかり見ていたら、彼の歌声が聞こえてきた。
この前とは違う歌。
私は耳を傾けた。

Fly me to the moon And let me play among the stars ♪

なるほど私たちの行く手にぽっかりとお月様が浮かんでいる。

「月までは無理。息ができないから」

「ふふ、君は素敵だねぇ。で、君は歌えるかい?」

「わからない。その歌、知らないから」

「教えてあげるよ」

ゆっくりと空を飛びながら彼にその歌を教わる。
物覚えは悪い方ではない。

「歌はいいねぇ。今度は一人で歌ってくれるかい?」

嬉しそうに言う彼に促されるままに私は歌を紡いだ。

♪ In other words, darling, kiss me !

ちゅっ。

彼が身体を伸ばして私の唇をふさいだ。

「きゃっ」

バランスを崩しそうになる。

「危ない。落ちてしまうわ」

「だってキスしてくれって言ったからさ。それに君となら落ちてもいいよ」

私は顔を背けた。
不快だったのではない。
その時、私が思ったのは、彼となら堕ちてもいいかもしれない、ということ。
字は違うけど、私の気持ちにはこっちの方が合っている。
ふと思い出した。
碇君をはじめて会った後のヤツの顔。
そう、壁越しで透視したヤツは碇君のことを思って熱のこもった目をしていた。
顔を火照らせて。
なるほど、運命の人を見つけたと直感したのね。
ふふふ…。
私は彼の身体を抱き寄せた。
離さない。
あなたの髪の毛一本までこの私の所有物にしたい。
私はそう熱望した。
故郷に帰らねばならないというのに。





元正義の味方はやっとアタシを解放してくれた。
うわっ、アタシを縛ってたのはザラブ星特産涙で溶ける特製バンドじゃないよっ。
あわわっ、放っておいたら遂にはアタシの身体は真っ二つ…。
まったくとんでもないもん持ち出してくるわよ、こいつ。

解放されたアタシは真っ先に人間大に戻った元正義の味方の頭を小突いてやった。
まだ気が済みやしないけど我慢してやろう。
何故なら話の先が気になるからに決まってんじゃないっ。
ど〜して、コイツがここにいるのよ!
もしかして男恋しさに脱走してきたの?
アタシはわくわくして返事を待った。

「あ、任務。第三惑星の平和を護りに来たの」

「へ?」

「後任が手に負えないからって助けを求めてきたの。
 だから、私は助っ人」

復活したらしい正義の味方は少し胸を張った。
赤いマントに身を包んでいるから結構カッコいいじゃない。
あの時に一度見ただけだけど、コイツ真っ白だもんね。
やっぱり正義のカラーリングは赤よ、赤っ。
アタシは赤が大好きなのっ。

でもさ、コイツ何だか嬉しそう。
1万…えっと何歳だっけ?
そんだけ生きてきて恋が初めてだなんてホント信じらんないわっ。
アタシなんか14歳だもんねぇ。
へっへっへぇっだ。
何だか凄く得した気分。

アタシは思った。
コイツ、案外いいヤツかも。

そして、アタシは確信する事になった。
コイツ、センス悪い。

だって、嬉しそうにマントを脱いだのよ。
初めてボディペインティングしたって。
アタシゃ、目が点になったわよ。
それから、シンジが起きてなくてよかったって。
これはカッコいいとは誰も思わない。
思うのは、いやらしいって感じ。
真っ白なボディに、胸のところ、両方の乳首のあたりに小さな黒い丸が二つ。
そして、スーパーハイレグにしか見えない下半身の黒い三角形。
煽情的と言わずしてどう言えばいいのよ!

「アンタ、本気でこの格好で戦うつもりなの?」

センスの悪い正義の味方はこくりと頷いた。
はぁ………。
よい子は応援できやしない。
お母さんが見ちゃダメ!って目を手で蓋をするわよ。
アタシは口を酸っぱくして説得に取り掛かった。
どうしてこんなに必死になるのかはよくわからなかったけど、
まあシンジの知人だし、仲人みたいなもんだからこれくらいの面倒は見てやってもいいかと思う。
でも、説得の決め手には笑ったわよ。あ、心の中でね。
その意中の人に絶対に嫌われるって断言してやったの。
そしたら顔面蒼白。
あ、元々真っ白だから青ざめたって方がいいかも。
急にうろたえちゃって、アンタ本当に1万年以上生きてるの?
随分と殺風景な人生送ってきたみたいね。
あ、だから正義の味方ってやたら恋愛沙汰に走るの?

それから私はボディペインティングに夢中になった。
コイツは正義の味方だけどイメージカラーは赤じゃなくて青の方がいいわね。
アクセントに銀色を使って、う〜ん、これはいい出来!
アイツも鏡で自分の姿を見てまんざらでもなさそう。
鏡の前でくるくる回ってみたりして、けっこう可愛いじゃないコイツ。

「あ、マントの色も変えなさいよ。黒とか紺とか、青が映えるようにね」

うんうんと頷かれる。
正義の味方にレクチャーするなんてアタシくらいなもんよ。
やっぱアタシは天才ねっ。

「でもさ、アンタ、あんな怪獣と戦うの?」

かなり真剣に心配したのに、あまりにも気軽に頷かれてしまう。
だって、それが宿命なのだって。
でもさ、女の子なのよって、子でいいのかなぁ?
アタシより1万何千年も年上なのに。

「大丈夫。私、強いから」

「ええ〜、信じらんない」

これは本音。
だって、この容姿で取っ組み合うなんて。
相手は怪獣なのよ、怪獣。
でも、相手はにっこりと微笑むだけ。

「今日も戦ったの。見えなかったでしょうけど」

「えっ、あれ、アンタっ?」

光が満ち溢れただけにしか見えなかった。

「ええ、あれくらいなら簡単。でも、さっきの姿で出なくてよかった」

真剣な顔で言わないで欲しい。
この子が真剣な顔をするとどこかおかしくなっちゃう。
でも、今の発言には同意。
恥ずかしくて二度と出られなくなるところじゃない。

「じゃ、2匹目は?あれもアンタがやっつけたの?」

ふるふると首を横に振る。
そして、また微笑んだ。

「あれは仲間。新しいカプセル怪獣」

「ええっ!あんな不細工がぁっ!」

「不細工じゃない。可愛いの」

あらま、物凄く膨れてる。
でも、やっぱりコイツのセンスは変だ。
あんなのが可愛いなんて。
そう思っていたら、説明してくれた。
実物で。
どこからともなく出してきたカプセルをぽいっと投げる。

「ゲンドー、出なさいっ」

出た。
あの暑苦しいのが。
身長は80cmくらいになってるけどね。

「大丈夫。発熱は抑えてるから」

「あ、そうなんだ」

安心して、アタシはそいつをしげしげと眺めた。
やっぱり可愛げなんかありゃしない。
見るからに無愛想この上ないもん。
時々、むぅ、とか、うむ、とか変な唸り声上げたりして。
大体、あのサングラスみたいな目がダメなのよ。
アタシの視線を追って、アイツはふふふと笑った。

「それね、こけおどし。目が凄く可愛いの。ゲンドー、グラスを外しなさい」

ゲンドーと呼ばれたカプセル怪獣は滑稽なほど嫌がった。
でも結局ご主人様には逆らえず、サングラスみたいなのを外す。
……。
可愛いっ!
何よ、このつぶらな瞳はっ。
それにうるうるしちゃって。

「ね、いいでしょう?私、この目を見て決めたの。カプセルセンターで」

何となく目に浮かぶ。
もっともそのカプセルセンターなんて見たこともないから、
私のイメージじゃペットショップね。
目が合っちゃって、もう決めずにはいられないって感じ?
まあ、この目じゃコイツの気持ちもわかるわよ、うん。

「さっそく役に立つなんてよかった。いい子ね」

頭を撫でられて怪獣は発熱を始めてしまった。
慌てて一度カプセルに戻ってもらう。
こんな場所であんなのになったら火事になっちゃうわよ。
でも、あのサングラスもどきを置いていってたからもう一度呼び出して、
二人でさんざん玩具にしちゃった。
あの髭みたいな装飾物も頭のトゲトゲもみんな見せ掛け。
全部取っちゃったらけっこうつるんとしておどおどして見える。
あはは、ちょっとシンジみたい。
あ、まさかコイツ、その理由でこれ…ゲンドーだっけ?このカプセル怪獣選んだんじゃないでしょうね!
それからあと3つのカプセル怪獣も見せてもらった。
みんなどこか愛嬌があって可愛い。
それでも今度のカプセル怪獣はみんな攻撃型なんだって。
ま、シンジたちは人間型で諜報用だったものね。
今回の任務に合わせたわけか。
しかしまぁ、同じ家の中でこんなに盛り上がってるのに、シンジは起きてこないのよね。
これもまた不思議のひとつ。
寝つきがよくて、熟睡して、鼻をつまんでも目を覚まさなくて、それでいて時間になるとぱっと目を覚ます。
どうやらそれはカプセルやってた習慣みたい。
結局、アイツは明け方までこの部屋に居座って、そして突然「じゃあね」と言い残しベランダから姿を消した。
いいなぁ。
アタシも自分の力で空飛びたい。
で、アイツはどこに行ったのよ。









「綾波レイです。14歳ですっ」

アイツは14歳を強調して言った。
アタシは思わず立ち上がってしまった。

「はいはぁ〜い、惣流さんはど〜して立ったのかなぁ?
 ひょっとして綾波さんはシンちゃんの元カノぉ?」

4月から担任の色気ババァが余計なことを言う。
当然、私の斜め二つ前の席の馬鹿シンジもそれに反応する。
がたんと椅子を倒して立ち上がると、こう叫んだのよ。

「ち、違います!彼女じゃなくてご主人さ…」

ばこんっ。
ちっ、遅れた。

「あ、あ、アンタ馬鹿ぁっ!な、何てこと言うのよ!」

「う、嘘ぉっ!ご主人様って、それって、ええええっ!」

ヒカリの叫びは教室のみんなを代弁してたと思う。

「こ、こら、レイ!アンタも何とか言いなさいよ!
 みんな誤解するじゃない!」

あ、レイって名前で呼んだ。アタシ。
そのレイはあの独特のアルカイックスマイルを浮かべた。

「でも、それは事実。
 碇君は私の可愛い…」

「ば、馬鹿!ど〜してそこで言葉を切るのよ。
 余計に誤解を招くでしょうがっ!」

「ふふふ、そうね。それに碇君だけじゃなく…」

「よっしゃっ!ナンやよ〜わからんけど、とにかく今から仲間が増えたってことや!
 そ、そらっ、みんな拍手や、拍手っ!」

鈴原が慌てて立ち上がって怒鳴った。
くっ、自分に飛び火するのを瀬戸際で防いだわね。
バンバン拍手する鈴原に見習って当然ヒカリも手を叩く。
遅れて教室は拍手の渦。
その中でアイツ…改めレイは満足そうに微笑んでいた。

「はっはっはぁっ!何だか面白そうねぇ、あんたたち。
 ま、綾波さん、楽しくやんなさいよ、ねっ、青春、青春っ。私も青春っ!」

シンジが肩を落として席に着く。
仕方ないのでアタシも椅子に座る。
ああ…、これってすぐに校内に広まっちゃうわよねぇ。
ヤだ、ヤだ。
三角関係とか何とか。
あ、でもレイと隣のクラスのアイツをセットしてしまえば…。
よしっ、これっきゃない!

「はぁ〜い、じゃ授業を始めるわよ。綾波さんはそ〜ねぇ、惣流さんの隣。
 惣流さん、教科書見せてあげてね」

「はぁ〜〜〜〜い」

思い切り気のない返事をしてやった。
レイは滑るように歩いてくると、右隣の空席にちょこんと座った。

「ほら、机くっつけなさいよ」

「うん」

がたごとと机を寄せてくる。
くっついた二つの机の真ん中に教科書を置く。

「でさ、ど〜してアンタここにいんのよ」

「することないから」

「この嘘吐き。惚れた男を追いかけてきたんでしょうが」

アタシはにやりと笑ってやった。
レイは黙って頬を染めうつむいてしまった。
こ、このぉ、可愛いじゃないのよっ。
1万何千年も生きてるおばあちゃんの癖してっ。

「ま、それはいいけど…」

ホントにいいと思ってる。
だって、恋する乙女の感情は何モノにも優先するのよ。

「こんなとこにいて、怪獣退治はどうなんのよ」

「大丈夫。あの人、うちの作戦部長」

レイの視線を追うと、その先には色気ババァ。
げっ。
あれも、光の国の使者?

「もう4万年…いえ、もうすぐ5万年かしら?」

こ、こいつらって…。
まあ、ババァであることは確かだってことか。
その割にはさっき「私も青春!」なんて吐かしてたわよね。

「それから後任者が地球防衛軍の科学部長に就任したから、
 怪獣出現の情報はすぐ来るの」

「世界中の?」

「まさか。今回は主要な場所に配置されてるの。私は極東担当」

「ふ〜ん、それは大変なことで」

「いいの。あの人のいる星を守るんだから」

わっ、またぽってホッペが赤くなっちゃってるよ。
初々しいわねぇ、まったく。
アタシたちなんか好きなときにキスなんかできちゃうもんねぇ、いいでしょ、へへへ。
その先はしたくてもできないんだけどさ。
あ、コイツも絶対知ってそうだから口止めしとかないと!

「で、アンタどこに住むのよ」

「お隣。よろしくね」

「げっ」

「それから朝ごはんと晩ごはんもよろしく。碇君のおいしいから」

レイはいけしゃあしゃあと言ってくれた。
この女なら平気でそうすると思う。
やばいわよ、これは。
アタシとシンジのラブラブスポットなのにぃ。
でも、レイがいないと怪獣とか侵略者とか出てきたら困るし…。
少なくとも壁の穴を塞いでおかないと。
そのままにしておかなきゃよかった。
物置代わりに使ってたから。

「あ、あの穴…。塞いでも無駄。また開けるから」

はいはい、そ〜ですか。
うぅ〜ん、こうなりゃどうする?

あ、閃いた。





ひとつ、レイと隣のクラスのアイツをくっつける

ひとつ、レイに料理を習わせる。あ、先生はと〜ぜんヒカリね。

ひとつ、レイの手料理をアイツに毎日食べさせるように仕向ける。
     もちろん、レイの部屋で。

ひとつ、そんな二人をあの穴から思い切りからかってやる。

ぐふふ、こうなったら、流石のレイも恥ずかしくなってあの穴を塞ぐはずよ!
よしよし、見事な計画よ、うんっ。
やっぱアタシは天才美少女ねっ。
あ、でも4つの誓いって何だか中途半端ねぇ。
なんかひとつ付け加えとこっと。

んんん〜。

ひとつ!天気のいい日は、シンジといっしょにお散歩すること!…って、
こんな調子なら5つどころか5万くらいでも足りなくなっちゃうわよ。
仕方がないわね、ここは…。

ひとつ!18歳になったらシンジと結婚すること!

ま、こんなもんでいいわ。
よし、5つの誓い完成。
さあ、がんばんなきゃ。
あの穴を塞ぐために!

「あ…」

「どうしたの?」

レイが真剣な顔になってる。

「また、あの冷凍怪獣が出た」

「あらま」

「こらぁ、そこの二人、いつまでお喋りしてんのよ、二人とも廊下に出て立ってなさい」

「はい、了解」

レイがすくっと立った。
は?二人とも?

「アタシも?」

「そう、惣流も」

レイはさっさと廊下に出て行く。
ど〜してアイツが怪獣退治でアタシはそのとばっちりくうわけぇ?

「ごみんね。地球平和のために協力してよ」

近くにやってきた作戦部長がアタシに囁く。
はっ、とんでもないわよ。
協力ってレイが消えるたびにアタシがごまかせってこと?

「やぁよ、この5万年ババァ」

大声で叫ばないところはアタシも大人よねぇ。
アタシの囁きにまるで化粧がバリバリと崩れそうなほど眉が上がった。
周りの生徒たちは顔を突き合わせて小声で言い合っている二人を声もなく見守っている。

「5万年ですってぇ…」

当然、声は落としている。
たぶん20代だって称しているはずよねぇ。

「あんた…こら、ラングレー星人、ばらすわよ」

「ふんっ、アタシはアンタたちと違って変身も何もしてませんよ〜だ。
 正真正銘の14歳だしねぇ。ふふん」

大声で笑ってやりたかったけど、ここは敵にだけわかる笑いで。
でも、5万年ババァは逆ににっこり笑い返してきた。
げっ、反撃?

「そうねぇ、あんたは見た目は第三惑星人とまったく同じだもんね。見た目、は」

ぎくっ。
まさか…。

「その服の下。特にスカートの下がどうなってるのか、私は知ってるのよン」

………。

「シンちゃんは知ってるみたいだけど。他の子にも教えてあげようかなぁ…」

「わかったわよ。廊下で立ってりゃいいんでしょっ」

アタシは即答。
間髪もおかず。
あったり前でしょっ。
アタシだって花も恥らう中学3年生なのよ。

「そのかわり二度とシンジのことをシンちゃんなんて言わないでくれる。ぶっ殺すわよ」

「ああ、怖い怖い。りょ〜かい。じゃ、よろしくねン」

超低音で凄みを効かせたアタシにへらへら笑って5万年ババァは教壇に戻る。
アタシは心配そうに見ているシンジににっこり笑って手を振った。
あ〜あ、これからどうなっちゃうんだろ。



廊下に出たアタシはさっきの誓いを変更することにした。
だって、アタシとシンジが結婚するのは全宇宙のジョ〜シキだもんね。

ひとつ、5万年ババァをギャフンと言わせてやることっ!

アタシは拳を天井に突き上げて、そして大きく頷いた。


















空想非科学シリーズ
帰ってきたウルトラエンジェル

第一話
「第3新東京市氷河期」
改め

「アスカ5つの誓い」

− 終 −





− 次回予告 −

冷凍怪獣ペンペンがまた第3新東京市で大暴れするよ。
教室を飛び出したレイちゃんは
まずは灼熱怪獣ゲンドーを立ち向かわせるけど…。
さあ、どうなるだろうねぇ。
次回、帰ってきたウルトラエンジェル、第二話。
『ペンペン大逆襲』
さあ、次回もみんなで読もう!

嘘です。冗談です。もう書きません。許してください。


 


 

<あとがき>

 ごめんなさい。
 笑えなかった人には特にごめんなさい。
 ネタがわからないと笑えませんもんねぇ。
 ネタがわかっても面白くない?
 すみません。ちょっとストレスがたまったので、他の連載を書くと展開が暗くなってしまいそうでしたので。
 お馬鹿な作品を書いてしまいました。
 本当は前半で終わるはずでしたが、献辞の方(笑)に挑発されたので
 クリックした時に笑ってもらえるかとそれだけで続きを書いてしまいました。
 これ以上はダメです。もうネタがありません。
 

 

SSメニューへ

感想などいただければ、感激の至りです。作者=ジュンへのメールはこちら

掲示板も設置しました。掲示板はこちら