当SSをお読みになられる場合の注意点

 

 

先に500HIT記念SS「行け!アスカ 宇宙を越えて」を読んでね!

この作品は続編になります。

未読の方はこちらへどうぞ

 

 

 

 

 

 


 

ずざざざざあぁ〜んっ!!!!

 

 とんでもない大音量で、宇宙船は砂漠に不時着した。

 先端部分は…というより、全体の1/3が砂に埋まってしまっている。

 あの勢いでは、宇宙船の乗員は酷いことになっているかもしれない。

 そして、その乗員といえば…。

 

「あっちゃぁ〜、計算どおりにいかなかったわね」

「酷いよ、アスカ。絶対大丈夫だから、安心して座ってなさいって言ったじゃないかぁ!」

「ごっめぇ〜ん、シンジ、怒った?」

「い、いや、怒ってないよ。うん、全然怒ってない。まったく、怒ってない」

「何そのものの言い方は。人がせっかく可愛く謝ってんのに!」

「だから、怒ってないって言ってるじゃないか。怒らないでよ、アスカ」

「あら、どうして私が愛するシンジを怒らないといけないのかしら?」

「いや、だから、ほら、少し膨れ面を…」

「もう!甘えて膨れた顔してんのと本当に怒ってる顔との見分けぐらいつけてよ。

 もう何年恋人をしてると思ってんのよ!」

「えっと、1年と8ヶ月くらいだったっけ」

「ひっど〜い!4129年じゃない!」

「いや、それは地球時間で、僕が言ってるのは実際にアスカと僕が過ごしている時間のことで…」

「私とシンジは4000年という時を超えて愛し合っているというのに、

 シンジは私のことに飽きてしまったんだわ」

「いや、あの…飽きるも何も、僕の周りにはアスカ以外の女性はいないんだし」

「あぁ〜!じゃ、もしここに他の女性がいたら、私なんかどうでもいいんだ!」

「そんなことは言ってないじゃないか。僕の言いたいのは…」

 

 愚にもつかない言い争いをしながら、アスカは手馴れた様子で計器を操作している。

 周囲に生物反応はなし。

 宇宙船の装備の損傷は。

 その他もろもろ。

 

「あ!」

「何よ!」

「アスカ、おでこに怪我してる!」

「ふん!痛くないもん」

「駄目だよ、ほら。じっとしててね」

「う、うん…」

 治療をされている間、アスカは幸せな気分に満ち溢れていた。

 こんな虫に刺された程度の傷なのに…。

 シンジ、大好きだよ…。

 

「アスカ、ここに降りちゃったってことは、もう他の星には行けないんだよ」

「そうね」

「大丈夫なの?確かに空から見た風景には町も何も建造物っぽいものはなかったけどさ」

「その上、自然はいっぱいで空気も大丈夫。いいことづくしじゃない」

「でもさ、ほらみんな地底に住んでるとか」

「は?こんな綺麗な自然があるのに?どうしてみんなもぐらなのよ」

「いや、可能性の問題で。降りちゃってよかったのかなって…」

「何をいまさら。もう降りてるんだし。それにもう飛べないじゃない。

 いまさら騒いでも仕方ないの。わかる?」

「それはわかるけど、僕が何言ってもアスカ聞く耳持ってなかったじゃないか」

「だって、ピピ〜ンと来たんだもん。この星で私たちは幸せになれるんだって」

「ピピ〜ン?」

「そう、ピピ〜ン。シンジを見てピピ〜ンと来たときと一緒」

「ああ、あの時の」

「そう、あの時の」

 それはアスカにとっては運命の出逢い。

 シンジにとっては青天の霹靂。

 アスカによるシンジ強奪大作戦の始まりとなった、その一瞬である。

   (注:詳しくはこちらへ:500HIT記念SS「行け!アスカ 宇宙を越えて」

 とにかく、アスカの(野生の)本能により選ばれたこの惑星で、

 二人はどんな生活を送るようになるのだろうか?

 

 

 

 

 

50000HIT記念SS

惑星LAS建国記

−その壱−

 

2003.08.19   ジュン

 

 

 

「すっご〜いっ!ほら!あんなに緑がいっぱい!」

「でも、あんなに遠いよ」

「うっさいわね、行くのよ。こんなところにずっといるわけにいかないでしょ」

「じゃ、小型ジェット機使おうよ」

「駄目」

「どうしてさ。あれ使ったらあっという間に着くじゃないか」

「あのねぇ、こういうシチュエーションの場合は歩きなの。歩き」

「あのさ、ひょっとしてアスカ、航行中に見ていた昔の映画の影響受けてない?」

「何言ってんのよ、あれって案外まともなのよ」

「へ?」

「一瞬で飛んでいったら、探索にならないでしょ」

「でもさ、例えば砂の中から何か出てこないかな…」

「何かって?」

「怪獣…、とか、さ」

「アンタ馬鹿ぁ。あ、わかった!シンジ、あのへっぽこ映画の影響うけてるんじゃないの?」

 先ほどから二人の間で話題になっているのは宇宙船に積まれていた膨大な映像資料だった。

 ドキュメンタリーなどの地球を紹介する映像と共に、文化資料として映画も数十万タイトルが見られた。

 まだ子供といっていいくらいの二人である。

 感動モノよりも、面白そうな映画を見始めた。

 そして、二人の今いる環境から、SFモノがメインになったのは当然の結果といってもいい。

 超大作SFから超おバカSFまで、二人の意識にかなりの影響を与えたわけだ。

「いや、どっちかっていうと影響というより、常識的な判断だと思うんだけど」

「どこが常識なのよ。怪獣なんて非常識極まりないわ」

「あのさ、こんな全く見知らぬ星で地球の常識は通用しないと思うんだけど」

「はん!そんなのわかるもんですか。こんな美しい星に…」

 砂漠の向こうを指差したアスカは、ぎょっとしてその目を見開いた。

 指の先の砂漠がうねっているのだ。

 そして、そこに見え隠れする巨大な背びれ。

「鮫…?」

「みたいだね。鯨より大きいみたいだし…砂の中だけど…」

「……」

「ね、言っただろ。だから…」

「さ、ジャイロで飛ぶわよ。それと、レーザー銃とソードも忘れないでね」

 格納庫に向かうアスカの背中を追いながら、シンジは思った。

 君子は豹変す…。

 

 ジャイロはソーラーパワー充電式のをアスカは選んだ。

 変に空気を燃やす方式の移動様式を好まなかったから。

 微妙なところで繊細なんだから…。

 シンジはそう思いながら、アスカを手伝っていた。

「ここの1日は地球時間で27時間相当になるわ」

「でもさ、アスカ。ここで暮らすことに決めたんなら、地球を基準にすることないんじゃないの?」

「それもそうね。でもまだデータが揃うまでは、地球の単位で計測とかする方がいいわ」

「どうして?」

「だってあんなのがいるんだもん。地球の常識は通用しないわ。だからデータ収集が最優先よ」

 地球の常識が通用しないって僕のセリフだったと思うんだけどな…。

 相変わらずマイペースのアスカに巻き込まれてしまう自分に苦笑いしてしまうシンジだった。

 

 砂漠の向こうまで、ほんの数分の飛行で済んだ。

 その間、例の背びれを数匹見かけたが、アスカの顔は少しこわばっていた。

 もしあのまま歩いて行っていたら…。

 でも、そのこわばりもシンジが助言してくれて助かったということを考えると、思わず頬が緩んでくるのだ。

 ジャイロが着陸できる草原に着地すると、二人は希望の星の地面に降り立った。

 この星で…シンジと生活する。

 新世界で…シンジと、そして私たちの子供たちで幸福に暮らすの…。

 念願の大地に足を下ろし、真っ赤な顔で妄想にふけるアスカ。

「ねえ、アスカ。どうするの?」

「……」

 アスカは完全にまだ見ぬ明日にトリップしていた。

 それを見てシンジは首を左右に振ると、周囲の調査をはじめた。

 碇シンジ。パイロット養成訓練校の男子生徒ブービー、469人中の468番の成績であったとはいえ、

 世間に出ると超エリートであった。

 いつもは主席のアスカに任せてはいても、自分でしなければいけないことくらいはわかる。

 シンジは落ち着いた様子で、周りの土や植物を調べ始める。

「へえ…地球と似てる。いや、もっと環境がいいかな。でも…ちょっとだけ放射線物質が…」

「ホント。人体には影響ない量だけど。確かにあるわね」

「わ!お、おかえり、アスカ」  

「いちいち驚かないでよ。いい加減慣れてよね」

「ご、ごめん」

「これって自然のものなのかな…それとも、使われたのか…」

「使われたんなら、知的生命体がいるってことだよね」

「または、いた、かね」

「滅んだってこと?」

「可能性よ。可能性」

「そっか…」

 二人は何度となく話し合った知的生命体がいた場合のことを思い出した。

 もし着陸した星に知的生命体がいたら、何とかして居住させてもらう。

 その大方針に間違いはないのだが、方法がわからない。

 コミュニケーションのやり方すら見当がつかないのだから。

 でも、二人にはこの星で住む以外の選択肢はない。

 あの宇宙船はもう飛べないのだから。

 そのとき。

 ざざざざざ〜っ!

 砂漠の方から、例の背びれが迫ってきた。

 凄いスピードで砂煙を上がっている。

 高さが10m以上ありそうだ。

 アスカは真っ青な顔でレーザー銃を構えた。

「シンジ、逃げて!」

「何言ってんだよ、アスカ!」

「駄目よ!あなたは死なさないわ!」

 背びれは砂漠の端まで来るとピタリと止まった。

「はぁ…、そうよね。こっちには来れないわよね」

「あれ?アスカ!」

 信じられないことだが、背びれは草原にまで侵入してくる。

「そんな!」

「アスカ、あれ見てよ」

 シンジが指差した先には…。

 背びれの下に10本の小さな足があった。

「何、あれ?ひょっとして足?」

「みたいだよ。ほら、歩いてるじゃないか」

「ちょっとこっち来るわよっ!」

「どうして背びれだけなんだ?」

「そんなの、わかるわけないじゃない!」

 二人は呆然と近づいてくる背びれを見つめることしか出来なかった。

 この銃を撃って、かえって暴れられたら…。そう思ったためである。

 数メートルの場所に近づいたとき、シンジがすっとアスカの前に立った。

 うわぁ…、私もう死んでもいいわ…ううんっ!駄目駄目。私はシンジと幸せに暮らすの!

 神様!って、この星の神様は知らないけど…とにかく神様!

 背びれは二人の直前で止まると、その短い足を折った。足が見えなくなると、まるで置物のようだ。

 そのまま灰色の背びれはぴくりとも動かない。

「どうしよ…」

「うん、困っちゃったわね」

 その時、背びれの前方、下から2mくらいの場所に、突然目が現れた。

「うわっ!」

「げっ!」

 直径30cmくらいの大きさで、睫毛とかそのようなものは何もない。

 そして、白目の部分はほとんどなく、まん丸な赤い瞳が二人をじっと見ている。

「目だよね、これって」

「何よ、こんなの、非常識じゃない!」

「あ、アスカ。だから地球の常識は…」

「で、これは敵?味方?」

「いや、そんないきなり…。多分あっちもそれを考えてるんじゃないかな?」

「言葉…通じるわけないよね。あ、でもこういう場合、テレパシーでさ」

「アスカ、映画の見過ぎ。そんな都合のいい話あるわけないよ」

「そうよね…」

『ガヴァはおとなしい生き物だよ』

「シンジ、アンタ勝手に名前付けないでよ」

「え?今の僕じゃないよ」

「何言ってんのよ。日本語喋れるの、この星で私とアンタ以外にいるわけないでしょ」

『へぇ、それって日本語って言うんだ。僕も覚えようかな?』

「はい?」

 アスカはシンジを睨みつけた。

 日頃気のきいた冗談もいえないくせに、こんな状況で馬鹿言わないでよ。

 そんなことを考えていたアスカの目がぎょっと見開いた。

「ど、どうしたんだよ、アスカ。僕じゃないってば」

「シンジ…ちょっとアンタの左肩見て御覧なさいよ」

「え…」

 アスカの口調に何か恐ろしいものを感じたシンジがゆっくりと首を曲げる。

 そして、自分の肩の上にちょこんと座っている20cmくらいの生き物を見た。

『やあ、シンジ…くんっていうんだ』

 それは人間だった。

 人形くらいの大きさで、背中に羽が生えているが、外見は人間そっくりだ。

「あ、あああ…」

「それって、人間?それとも…」

 羽のある人間はアスカの方を見てにこりと笑う。

『何なんだろうね。僕は僕なのさ』

「ぼ、僕って…!どうして言葉が…まさか、テレパシー」

『テレパシーって…?ああ、そういうことか。そうだよ、これは君たちの言葉でいうテレパシーってことさ』

「アスカ、この…えっと、この人は…人でいいのかな」

『僕は僕さ、シンジくん』

「え、じゃ僕さんは…」

 アスカはこのおマヌケは…とシンジを見た。

『おやおや、アスカさんはシンジくんのことをおマヌケだってさ』

「うへっ!」

『ねえ、おマヌケって何だい?……ああ、そういうことか。随分酷いこと言うんだね』

「ちょっと、コイツ、何よ!心読めるの?!」

『そういうことになるね。シンジくんが思った通りさ。へえ、そうなんだ。アスカさんは僕が気持ち悪いんだ』

「もう!止めてよ!そんなの気持ちいいわけないでしょ!」

「アスカ、落ち着いてよ」

『ふ〜ん、そうなんだ。シンジくんはアスカさんを大好きなんだね』

 アスカの思考は停止した。

 心を読まれたシンジも同様である。

 二人の思考が停止した所為で、シンジの肩の“僕”は唇を尖らせて二人を見渡した。

『おやおや、こいつは…僕が心を見えないなんて…いや、違うね。あ、そうか、二人はラブラブなんだ』

 アスカの心の中はシンジの本心を知って“二人はラブラブ”がリフレインしているのだ。

『で、ラブラブってなんのことか僕に教えてくれないかなぁ…』

 

 “僕”はガヴァの前に浮かんでいる。

 別に羽を動かしてるように見えないのだが、高さ80cmくらいの場所をゆらりゆらりと左右に揺らいでいる。

 その前に並んで座る、アスカとシンジ。

「でさあ、僕さんは…」

「シンジ、それ変。アンタ、名前は無いの?」

『僕は僕さ。アンタじゃないよ』

「何かいちいち癇に障る言い方するわね、アンタ。で、名前が無いわけ?」

『名前ってなんだい?……ああ、そういうこと。シンジとかアスカっていう固体そのものを言い表す名前か』

「そうよ。何か馬鹿にされてるみたい」

『そういう意味の名前は無いんだ。この星ではね。僕は僕だし。このガヴァはみんなガヴァさ』

「区別はつけないの?」

『つける意味が無いのさ。みんなそれぞれ別々だからね』

「シンジ、言ってる意味わかる?」

「わかんないよ。アスカは?」

「ぜんぜ〜ん」

『簡単なことなんだけどな。どうしてわからないのかな?』

「それに話してるときにわかりにくいじゃない、誰に向かって話してるのか」

「うん、心に直接じゃないからね」

『なるほど、それじゃ君たちには不便だね。じゃ僕のことは…どうしようかな?』

「なんか好きな名前ないの?」

『ふふふ、無いよ』

「なに笑ってんだか。じゃ名前付けてあげるわ。そうね…」

「カヲルくん…」

「へ?誰それ」

「あ、日本にいたときの友達」

『そうか、僕はカヲルって名前か。ありがとう、いい名前だ』

「何よそれ。シンジ、アンタどういう関係だったのよ!そのカヲルってヤツと!」

「関係って、友達じゃないか。それに、カヲル君は男だよ」

「はん!男だって怪しいもんだわ!」

『なるほど、アスカさんは嫉妬深いんだ』

「くっ!……そうよ!私は嫉妬深いのよ!シンジのことだったら、アンタにだって嫉妬するわよ!」

『怖いねぇ。シンジ君はそれでいいのかい?』

「僕は…」

『ふ〜ん、そうなんだ。おかしいねぇ』

 アスカは目を吊り上げた。

 カヲル(仮称)はシンジが今考えたことを読み取ったのである。

 気になる。

 凄く気になる。

 シンジが自分の嫉妬についてどう考えているのかが。

「ちょっと、アンタ」

『アンタじゃないよ、僕はカヲルさ』

「くぅっ!」

『酷いなぁ、アンタなんてカヲルじゃなくて蛙で充分よだって。で、蛙って何だい?』

「どうせ頭の中読まれるんなら教えてあげるわよ。蛙ってのはね…」

『ああ、もういいよ。わかった。そうか、蛙ってそんな生き物なんだ。君は随分な人なんだね』

「かぁっ!面白くないわね、アンタ。会話の楽しさってのがないじゃない!」

『楽しい?話すことがかい?』

「そうよ!相手が喜ぶように話題を考えたり、相手を気遣って言葉を選んだりするの!

 それが会話の楽しさってやつじゃない!そうよね、シンジ!」

「あ、うん。それはそうだと思うよ」

「ほら!シンジだってそう言ってるじゃない!」

『へぇ…そうか。そんなことは考えたこともなかったね。なるほどね』

「そうか、カヲル君たちは生まれてからずっと心を読むことが普通になってるんだ」

 アスカは肩をすくめた。

「そんなの面白くないわね」

『でも、知りたいんだろ?君は』

「へ?」

『シンジ君が君のことをどういう風に思っているのか』

「ああ、それかぁ」

 シンジは顔色を変えた。

 酷いことを考えた覚えはない。

 でも、100%の自信はない。

 心優しきシンジも人の子だ。

 時にはアスカのことを腹立たしく思う時もある。

 そんなシンジの顔をアスカはちらりと見た。

「いいわ。何も言わないで」

『どうしたんだい。あ、そういうことか。見かけと違って優しいんだね、君は』

「アンタ!誉めてんの?それともけなしてんの?!」

『ははは、照れてるんだね』

 アスカは顔が真っ赤になった。

 そして口を開いたのだが、随分と低い口調である。

「アンタねぇ、捻り潰されたくなかったら、少しはその口をつむんでおきなさいよ」

『おやおや、野蛮なことを言うねぇ。そんなことできないくせに』

「あああっ!もうっ!」

 アスカは地団駄を踏んだ。

 この妖精もどきにかかれば、唯我独尊空前絶後のアスカ様が普通の女の子にされてしまう。

「カヲル君、頼むよ。アスカを苛めないでよ」

『僕は苛めてなんか…』

 そう言ってから、カヲル(仮称)はニヤリと笑った。

『わかったよ、シンジ君。君の大好きな女の子に向かって失礼な事をしたよ』

「あっ!」

 慌てるシンジを見て、アスカはニッコリ微笑んだ。

「そっか、そっか。そうなのか」

 途端に機嫌がよくなるアスカ。

 それはそうだろう。

 シンジが大好きなのが自分だという事を知ったのだから。

『やれやれ、君たちは随分とやっかいな種族なんだね。秘密にしたり、秘密を知りたがったり』

 カヲルは二人の周りをふわふわと飛び回る。

「もう、うっさいわね。ところでさ…」

 アスカはこの変な生き物をシンジの命名したカヲルという名で呼ぶことに決めた。

 まあ、命名したのがシンジだからであろう。

「アンタじゃなくてカヲル。アンタの仲間は?」

『ああ、同じ種族ってことかい。それなら、あと一人だけいるよ』

「え?一人だけ?」

「じゃ、アンタたち、たった二人だけって事?」

『そうさ、君たちと同じだね』

「で、そのもう一人って…」

『呼んだ?』

 心の中にさらに別の声が飛び込んできた。

「誰?誰よ!」

『私は私。くすくす』

 名前をつける必要のある存在がもう一人、いつの間にかシンジの肩に座っていた。

 カヲル(公称)と同じ赤い瞳をしているが、髪の毛の色は少し青みがかかっている。

 ニヤニヤ笑っているカヲル(公称)とは対照的に、澄ました表情でアスカを見つめている。

『やあ、君も名前をつけてもらったらどうだい?』

 アスカは溜息を吐いた。

 本当にここが希望の星だったのだろうか?

『そうよ、ここはあなたたちの星。名前だって自分でつけたらいいの』

「え?それってどういうことなのよ」

『ああ、そういうことになるね。君たちはこの星の神になるんだ』

「はい?」

「か、神様?」

 愛する二人の希望の星と信じて着陸した星で、いきなり神様になるのだといわれたアスカとシンジ。

 唖然とした二人の横で、ガヴァが目を閉じて寝息を立てだした。

 

 

 

 

惑星LAS建国記 −その壱− おわり

 

その弐に続く

 


<あとがき>

 ああ!すみません、すみません、すみません。(ガンパレアニメ田辺風味)

 「惑星LAS建国記」を始めてしまいました。でも、散々書き直した割にはパワー不足ですね。ぐすん。

 次回は7万HITで掲載しようと思っています。

 

2003.08.15  ジュン

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