第参百壱次、定期報告。

以下は作戦課所属葛城ミサト三佐に義務付けられた、セカンドチルドレンの監督日誌である。

尚、この資料の流用はA10神経接続に関する技術担当のみに認められるものとする。



Nerv総司令碇ゲンドウ




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       セカンドチルドレン監督日誌  -File1-       報告者・葛城ミサト三佐
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2015年×月×日



セカンドチルドレン、惣流アスカラングレーに太平洋上で接触。

場所の詳細は、弐号機及びセカンドを移送する太平洋艦隊オーバーザレインボー空母の上部デッキである。

セカンドは前任者からの報告どおり、勝気で高慢な性格。

多少、人嫌いのきらいが見受けられるが、同伴者の特殊監査部所属、加持一尉には心を寄せている模様。

同時刻、私に同伴したサードと接触。

セカンドはサードをその自尊心から毛嫌いしているとの報告を受けているが、

やはり、ここでもその通りの対応を示す。

セカンドはサードを弐号機の保管場所に連れる。

私はその後、艦長への挨拶へ赴くが、使徒が出現。

その場に居合わせたサードが同乗し、苦しみながらも目標を撃破。

弐号機は胸に中破を負い、セカンドの病院への緊急移送が懸念されるが、

我々の予想を裏切り、フィードバックの大半をサードが負担。

サードはそのままヘリで病院へ直行。

セカンドはその事実に憤然とするが、

加持一尉の説得により、予定到着時刻より2時間遅れて第三新東京市のホテルへ到着。







2015年×月○日



太平洋から使徒が襲来。

前回とは違い、今回の目標は上陸型であった。

先の使徒戦で迎撃システムの稼動が40%に満たないことから、

上陸直後に殲滅すべく、海岸線に網を張る。

担当機は初号機及び弐号機、つまりサード及びセカンドである。

一時はセカンドの先制攻撃でその雌雄を決したものと思われたが、

目標は二対に分裂、直後敗北を喫し、撤退を余儀なくされる。

我々は指揮権を日本政府に譲渡、その後、N2航空爆雷で数日間の目標の足止めに成功する。

その間、我々は技術課を中心に目標を分析。

生態にはコアが二つ存在し、これの二点同時突破を目指すこととなる。

方法は初号機及び、弐号機のユニゾンによる二点同時荷重攻撃に決定。

そのため、セカンドをホテルから呼び寄せ、私、葛城一尉の自宅にサードと共に同居させることとなる。

セカンドは嫌がったが、命令の旨を伝えると、しぶしぶ承知した。

即日開始されたユニゾン訓練は、サードの鈍重さも極まり、難航。

セカンドはそのサードに非協力的態度を取るので、そのプライドを揺さぶる意味もあり、

サードとファーストによる作戦展開をセカンドに示唆。

これには行き過ぎた感があり、セカンドは涙をこぼしながら逃走。

なお、この件に関しては作戦課資料S28-09にその教訓と対策を提示済みである。機密はA。

その後、サードがセカンドの説得作業に当たり、即日和解。

この説得の内容は、諜報部のR74-01-02に録音済みである。機密はAAA。

その後はセカンド、サードの仲が急速に高まり、順調な訓練成果を示し始める。

数日後の使徒戦では見事作戦を成功、目標を撃破する。







2015年△月×日



浅間山火口付近で、羽化前の使徒を発見。

サンプル取得のため、危険を承知で目標の捕獲を試みる。

D型装備の対応フレームの点から、担当は弐号機及び、セカンドに決定。

予想到達深度を40超えた場所で目標を発見。

一旦は目標の捕獲に成功するが、火口内で羽化を開始。

そのため、捕獲を断念し、作戦を目標殲滅に移行。

目標の生態は火口内で口を開くという驚くべきものであったが、

熱膨張を使用したセカンドの機転により、目標を撃破。

しかし、到達深度と戦闘による消耗でケーブルが断裂。

弐号機は火口内に沈むものと思われたが、初号機及びサードが身を挺し、セカンドを救出。

サードはまたもセカンドのために負傷したが、幸いにも軽度の火傷で済む。

サードは病院に移送、待機命令を無視しセカンドはそれに付き添う。

前回の戦闘からセカンド、サードは互いを戦友として信頼し合うようになっていると思われ、

それは今回の点からも立証されるものではなかろうか。







2015年△月○日



Nerv本部が停電に陥る。

おそらくこれは第三者機関の妨害工作と思われる。

その間、不幸にも使徒が襲来。

ファーストは本部で待機中だったため、事なきを得たが、

セカンド及びサードは本部に出頭途中であった。

ファーストのみでの作戦展開も考慮されたが、両名は即時に発令所に到着。

これを受け、初の三機同時展開を立案し、有人作業によりエヴァを出撃。

セカンドが盾となり、すぐさま目標を殲滅。

見事なチームワークであった。

その後、盾となったセカンドを心配したサードが少しばかりの混乱に陥るが、

精神汚染までには発展せず。

そんなサードに、不思議とセカンドは満更でもなさそうだった。

その後、彼らは三人で双子山の丘へ移動し、語らった模様。

チルドレンは互いに良好な人間関係を築いていると推測される。







2015年△月□日



衛星軌道上より使徒が本部を目指して落下。

作戦課は使徒をエヴァ三機で受け止める作戦を立案する。

なお、この作戦に関しての詳細は作戦課資料D-11に保管済みである。機密はAA。

目標に最初に接触したのは初号機、続いて弐号機、零号機が到着。

初号機及び零号機が目標のATフィールドを中和、その間に弐号機が目標を殲滅。

この作戦は成功度が非常に低いものであったため、

成功時には私のポケットマネーからチルドレンに食事をご馳走する予定であった。

が、セカンドからの猛反発にあい、あえなく中止。

セカンドは食事の代わりに、私に一日家を空けるように言った。

意図は読めない。

至急、彼女のプロファイルを再要求する。







2015年○月○日



本日はセカンド及びサードの授業参観があった。

これは前々から予定されていたもので、学校での彼らの実態を掴んでおく必要があったからだ。

この件に関しての情報は、諜報部E-22-A-01に保管済みである。機密はA。

セカンド及びサード、特にセカンドはこれに来るよう、私にせがんだ。

これは同居人、上司、または一人の人間として私を信頼しているものと受け止めるべきである。

個人的感情をあえて表記するならば、このような彼らの態度は非常に喜ばしい。

私は所要があり、授業開始に5分ほど遅れたが、セカンドは私が来るや否や、急に張り切りだした。

授業はセカンドの得意な理科分野ということもあり、彼女の独壇場がしばしば形成され、

他の父兄に少々申し訳がなかった。

セカンドには遠慮という日本の美徳を教えたほうが良いかもしれない。

授業後はファーストも連れ、四人でラーメンを食べる。

私、ファースト、サードの三人は慎ましくラーメンを食したが、

セカンドはフカヒレチャーシューの大盛りを一人で平らげてしまった。

あの細い体のどこにそんなものが入るのか。

至急、彼女の身体検査を再要求する。



…しまった。仕事を忘れていた…。







2015年○月×日



本部でMAGIの更新作業があり、それに合わせチルドレンも召集される。

目的は裸で模擬態に入り、ノイズなしの正確なデータを得るためであった。

なお、この実験の詳細は技術課のローカルファイルA-01に保存済みである。機密はSS。

実験中に細菌サイズの使徒が潜入。

一時はMAGIにハッキングを受けるが、

技術課の赤木リツコ博士が考案した自滅促進プログラムで目標を殲滅。

チルドレンが乗ったエントリープラグは芦ノ湖に射出済みであったので、

MAGIの簡単な確認作業の後、回収。

チルドレンたちは健康状態を保っており、精神汚染の可能性は否定された。

なお、サードに若干の心労が見られたが、これは通信回線を開いたセカンドの口撃を

数時間にわたって受け続けたためと思われる。

緊急時であったため、この会話のログは完全に消失。

回収後、ファーストは熟睡、サードは赤い顔をしており、

セカンドは独り言で「よし!いけるわ!」などと言っていたのが諜報部により確認されたが、

何がいけるのかは定かではない。







2015年○月△日



シンクロテストでサードがセカンドのそれを超えた。

当初、それはセカンドの自尊心の点から、彼女最大の懸念事項だったが、

一瞬、悔しそうな顔をしただけで、サードに「次は負けないわ。」と軽口を叩いた。

サードもそれに呼応するように「僕も」と笑顔で答える。

今のところ軋轢は感じられず、一緒に帰って行った二人を見れば、

メンタルケアは必要ないのかもしれない。







2015年○月□日



第三進東京市上空に突如として使徒が出現。

目標は黒い球体を我々の眼に晒した。

これまでの使徒とは違い、目標は侵攻しようともせず、ただ空中に浮いていた。

エヴァ三機を所定の位置につけるが、事を焦ったサードが独断により先行する。

中距離からの射撃は空を切り、初号機及びサードは使徒が形成する

ディラックの海と呼ばれる虚数空間に飲み込まれてしまった。

なお、ディラックの海に関しては技術課のローカルファイルY-39に閉じられている。

この後、初号機及びサード救出のため、エヴァのATフィールドとN2航空爆雷を使った

ディラックの海への強制介入作戦が立案される。

これはあくまで初号機の回収を最優先としたものであって、

パイロットの生死は問わないという無慈悲な作戦であった。

このような事態を招いた責任はサードの保護者兼、監督者たる私が負うものであり、

現に減給六ヶ月を言い渡されたが、それは当然の措置だと反省することしきりである。

セカンドはその作戦を知ると、すぐさま泣き叫び、暴れだした。

その行動は鬼気迫るものがあり、司令本部からダミープラグの使用も検討されたほどだった。

彼女はついにエヴァに乗ることを拒否し、エヴァの前でうずくまってしまったが、

なんと、そんなセカンドをファーストが優しくたしなめ、事は万事収まったのである。

エヴァに乗ることを決意した二人の顔は悲壮なもので、それがとても悲しかったことを覚えている。

そして作戦開始30秒前、初号機は自力で使徒の中から這い出した。

これは先にもあった暴走行動と思われ、原因の追究を技術課に要請する。

サードは気を失っていたものの、精神汚染の後遺症もなく、数日間の入院で済んだ。

その間、セカンドがサードを看病する様子が幾度となく見受けられたが、

どういうわけか、彼が目覚めてからはそれはピタリと止んでしまった。

その代わりかどうかは知らないが、今度はファーストが彼の病室へ赴くようになる。

それをセカンドに知らせるたびに、彼女は機嫌を悪くしたが、一体どういうことだろうか。







2015年□月○日



以前、セカンドとの約束で「家を一日空ける」というものをしたが、

それを本日実行することとなった。

というのも、私は私で外せない私用があり、ちょうど良かったという大人の事情が背景にある。

基本的に私はインドア派なので、せっかくの休日に用もないのに外に出るのは御免被りたい。

私は午前11時に自宅を出発し、帰宅したのが午後12時であった。

私が家に戻ると、そこには何やら甘いとも切ないともいえる雰囲気が醸し出されており、

その根源たるリビングに行くのを躊躇したほどだ。

リビングにはセカンドとサードが離れた場所に座ってテレビを見ていたが、

その目は虚ろで、どこか余所余所しい。

私の姿を確認しても、おざなりの挨拶を交わすだけで、何かがおかしかった。

私は監督者としてその原因を究明するため、

作戦課の権限を使って機密レベルAAAの諜報部の資料に目を通した。




カメラの映像は午後八時を示し、そこにはお風呂上りのセカンドとサードが見える。

しばらくはただの雑談が続いていたが、やがてセカンドはサードに何か声をかけた。

それはよほどの小声で喋ったらしく、集音マイクもそれを拾いきれない。

セカンドは顔を赤らめ、もじもじしながらサードに近づき、正面を見据えた。

サードはそんなセカンドに驚いたのか、何か顔を真っ赤にして硬直してしまった。

彼は目をこれでもかというほど見開き、唾を飲む音が集音マイクに拾われたほどだ。

そして、セカンドはサードに一歩近づき、顔を寄せると…

























これは…、一大事だ!








尚、これ以下はファイル2に続くものとする。





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<アスカ>rego様からの投稿の第4弾よっっっ!くわぁっ!
<某管理人>わっ、サイトを開設して忙しいときに!すみませんっ!
<アスカ>そういう感謝の気持ちは大切よねぇ。
<某管理人>あら、珍しく殊勝な…。
<アスカ>私はいつも
殊勝で謙虚じゃないよ。
<某管理人>はぁ、首相が検挙でっか。
<アスカ>また受けもしないことを!
<某管理人>あは、すんません。もう言いません。
 
 
くわっ!ミサトのヤツ、いつの間にこんなものを!
 
で、で、で…、あの時のこともしっかり見られてたって事?
 って、あの時のことってどんなこと?自分のしたことなのに全然覚えてないよぉ!
 ああ、早く次のレポート!
 
 ホントに素晴らしい作品をありがとうございました、rego様。

 

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