前作までの設定を引きずっております。先にそちらをお読みいただけると幸いです。
 タヌキ
 

 

LASから始まる
 
新たな戦い
 

 


 

タヌキ        2004.08.02

 

 










「三時には帰って来て。さみしいの。待つのは、いや」


 ゆっくりと離れていく唇を追いかけるようにアスカが言う。


「わかっているよ。おみやげ、そうだ、新強羅駅ビルに京都の和菓子屋さんが新しく
入ったと言うから、アスカの好きな三色団子を買ってくるから」


 シンジも名残惜しそうに体を離す。


「じゃ、行ってくるね」


 エアの抜けるような音がして病室のドアが開き、シンジを飲みこんで閉まった。


「はあ」



 アスカはため息をついた。火曜日にシンジから中国からの留学生呂貞春の招きに応じて
いいかと聞かれ、作戦の都合上許可を出したが、アスカにとって唯一の男を他の女の罠に
向かわせるのは辛い。


「しんじぃ、大丈夫だよね。きっとアタシのところへ帰ってきてくれるよね」


 先日リツコが口にしたことがアスカの心に暗い影を落としている。シンジはアスカを
女としてではなく、家族として見ているのではないかと言われたことが。
 家族があんな濃厚なキスを交わすはずなどないのだが。



 ドアが開いて看護師姿の諜報部別班班長水城一尉が入ってきた。シンジが出ていくのを
見たのだろう。


「三佐、4名出しました。すでに南強羅駅、新強羅駅には第三班が展開しています」


 水城一尉の報告にアスカが満足そうに頷く。


「で、中国の動きは? 」

「確認されているだけで12名が新強羅駅に」


 アスカの問いに水城が答えるが、確定の口調ではない。


「未確認があるということね」

「はい。おそらく、新強羅駅前商店に相当数と……駅ビルに」


 水城がちょっと口ごもったのをアスカは聞き逃さない。


「駅ビルは狙撃担当ね。拉致に失敗したときはシンジを抹殺か。ふん、そんなことさせる
わけないじゃない」


 アスカは嫌みな笑いを浮かべる。


「ミサト、そこにいるんでしょ、入ってきなさいよ」


 ドアが再び開いて、ネルフの制服に身を包んだミサトが現れた。


「相変わらず鋭いわね、アスカ」


 ミサトがアスカの勘に感心した顔を見せる。


「ふん、いざとなったらアタシやシンジを殺そうと考えているからね、アンタは。殺気を
表に出し過ぎなのよ。加持は一切気配を漏らさなかったわよ」


 数日前に和やかな夕食を囲んだとは思えない、アスカは辛辣である。


「…………」

「図星か。シンジは人がいいから。ちょっとアンタたちを許したようだけど、アタシは
甘くないわ。まあ、今はアンタをいびっている場合じゃないからね。ミサト、空対地ミサ
イルを積んだ車両を用意して」

「アスカ? 」


 ミサトが驚いた顔を見せた。


「まさか、駅ビルごと……」

「シンジの命に比べればビルの一つや二つ安いものよ」


 アスカはあっさりと言ってのける。


「冗談言わないで。駅ビルには何人の人間がいると思っている……」


 ミサトの言葉をアスカは遮った。


「それがどうかした? シンジが死ねば日本は滅びるのよ。あなた達大人の好きな大の虫
を生かすためには小の虫を殺す。それをやろうというだけじゃない」


 アスカの言葉にミサトが絶句する。


「さっさと行きなさいよ。シンジに傷一つでもつけたら、アタシがどうこうする前に宇宙
にある初号機が暴走するわよ。ひょっとしたらリリスの復活もあるかもね」


 ミサトが一瞬アスカを睨み付けて病室を出て行った。


「三佐」


 水城一尉が唖然としながら声をかけてきた。


「ねえ、水城一尉。アンタ、アタシの味方になってくれる? 」


 アスカの声から固さが消え、歳相応の寂しげなものになる。


「はい。わたくしは三佐の部下であります」


 水城一尉が背筋を伸ばした敬礼を見せる。


「そんなんじゃないのよ。一人の男の子に恋して、その人のことが命より大切な乙女の
味方をしてくれる? 」


 アスカの心細げな声音に水城一尉が、軽く目を見開く。アスカの変わりように驚いたの
かもしれない。
 水城一尉が、にっこりと笑った。


「恋の経験者、女の先輩としてわたしは、惣流さんの味方ですよ」

「アリガト」


 アスカが晴れやかな顔を見せる。


「さっきのようなことをアタシが言っていると知ったらシンジは怒るわ。あんな醜い
アタシはシンジに見せたくない。でも、ああでも言わなければミサトは本気にならない」


 アスカの顔が再び引き締まる。


「作戦部はよくやっていると思いますが」

「甘いわ。火曜日のアメリカの襲撃を防いだはいいけど、まったくその後を追えてない。
今日もそうでしょ。今のネルフ作戦部の仕事はシンジの防衛よ。なのに陣頭指揮を執る
べき作戦部長が、アタシの病室の盗み聞きしているようでは困るの。アタシが動けるなら、
絶対にシンジの側を離れないんだけど。自業自得とはいえ、情けない身体だわ」


 アスカがやせ細った手や足に目を向ける。


「三佐、焦られる気持ちはわかりますが無理はかえって治癒を遅らせます」


 水城一尉がアスカをなだめる。


「わかっているわ。でも悔しいのよ、自分の一番大切な人をおとりに使わなければならな
いことが。そしてその人をアタシが直接守れないことが」

「惣流三佐」


 アスカの目に涙が光るのを見て水城一尉が息をのむ。


「一般人を巻き込むことなんてしちゃいけないと言うことはわかっているわ。必ず泣く人
がでるもの。でもアタシ、それでもシンジを失いたくない。その両方を果たすためには、
ミサトにいくら憎まれようが、嫌われようがかまわない。シンジが助かるなら、アタシが
代わりに死ぬぐらいは平気よ」

「そのようなこと、口にされるべきではありません」


 水城一尉が厳しい声でアスカをたしなめた。


「でもあなたもわかるでしょ。愛した男のいない世界で生きていくことの虚しさを。
そして自分がいなくなった世界で愛した男が別の女をその手に抱くことへの恐怖と
憎悪を」


 感情をほとばしらせるアスカに水城一尉が驚きを表情に出す。まだあどけない容貌を持
つ少女が、すでに女であることを思い知らされたのだろう。


「水城一尉の彼氏ってどんな人? 」


 アスカが問うた。


「ふつうのサラリーマンでした」


 水城一尉の態度でアスカにはわかったらしい。


「サードインパクトで還ってこなかったのね」

「あの前日、アメリカへ出張したままでした」


 LCLに溶けたまま、再びATフィールドを身にまとわなかった人々のほとんどが男で
あった。羊水に等しいLCL、胎内回帰願望は男に強いという証明なのかもしれない。
あるいは単に男の方が女より傷つけ合うことに弱いだけなのか。


「ごめんね。無神経なことを言い過ぎたわ」


 アスカの激情は去ったのだろう。素直に頭をさげた。


「いえ、惣流三佐のお心うちを知れてよかったです」


 水城一尉が背筋を伸ばした。


「わたくしの忠誠は三佐に」

「ありがとう。頼りにしているわ。なにも報いてあげることはできないけど」


 アスカがベッドから半身を起こして礼を述べる。


「惣流三佐、一つだけお願いがあります」


 水城一尉が身体の力を抜いて微笑んだ。


「なに? アタシにできることなら何でもいいわ」

「お二人のご結婚式に招待してください」

「よろこんで。アタシの親族として来てもらうわ」


 水城一尉の願いにアスカは応えた。


「では、狙撃手は必ず排除して見せます。お任せください」


 かかとを鳴らして水城一尉が病室を出て行く。


「シンジ、アタシのできることはここまで」


 アスカはそっと目を閉じた。


「ファースト、いえ、レイ、お願いシンジを守って」





 たった一駅にリニアに乗るほどのことはない。リニア料金は高いのだ。シンジは各駅
停車に乗った。
 おのれが世界の覇権の鍵を握っているなどとつゆ思わない少年が、JRの新強羅駅に
着いたときには、待ち合わせの時間を5分、そう、ちょうど別れ際にした濃厚なキスの
時間分過ぎていた。


「よっ、遅かったな」


 すでに改札で待っていたケンスケが手を挙げる。ケンスケの周りにはマリア、イリーナ、
フランソワーズが立っている。結局あのとき一緒に弁当を食べていた全員が参加すること
になっていた。


「ごめん、待たせたね」


 シンジが詫びる。


「ワタシも今来たところです」


 フランソワーズが少しだけはにかむ。柔らかな笑顔にシンジも微笑み返す。フランソワ
ーズの顔が真っ赤になる。


「女を待たすなんてサイテイ」


 笑顔をフランソワーズに向けられたのが気に入らないのか、マリアがシンジを睨みつけ、
その迫力におびえたのか、シンジの腰がちょっと引ける。


「ひょっとして、身体のお具合でもお悪いのではございませんか」


 マリアから逃げた分距離の縮んだイリーナがシンジの側に近づき、すっと左手をシンジ
の額に添えた。


「大丈夫だから……ね」


 シンジがオーバーにならない程度に身体を下げ、イリーナの手から離れる。


「あちゃあ、駅の監視カメラの映像も見られるよな。惣流が荒れてなきゃいいけど」


 ケンスケの独り言は小さすぎてシンジたちには聞こえなかったが、それはしっかり真実
を言い当てている。
 病室でイリーナの行動を見たアスカが低い声で呟いていた。


「アタシのシンジに触れたわね。死刑宣告よ。ふふふ、どんな殺し方してあげようかしら?
刺殺、撲殺、それとも縊り殺す? そうね、寝ているところを後ろから毒殺なんていい
わね」


 つじつまの合わないことを口にする。どうやらまだアスカは壊れているようだ。


「まっ、みんな揃ったんだ。行こうぜ。時間もそうないしな」


 ケンスケにうながされて5人は駅前商店街へと足を向ける。
 新強羅駅、別名第三新東京市駅は、セカンドインパクトによる津波で完全に崩壊した
新幹線の代わりに敷設されたリニアモータートレインの首都駅として発展した。
 駅の北側には大きな商業施設や新都心ビルなどがそびえ立ち、昼夜を問わず人の姿が
とぎれない。
 しかし、駅の南側は、かつて小田原と呼ばれていた頃の面影を残し、少し駅を離れると
旧態依然たる商店街が軒を連ねる。サードインパクト前までシンジとアスカがミサトと
住んでいたコンフォート17マンションから近く、よく買い物に来たところである。


「おいおい、道知っているのか? 」


 シンジの三歩前を歩くマリアにケンスケが声をかけた。


「そんなもん、知らないわよ。ふん、客を招いたんだから案内ぐらい出しなさいよね、
気の利かない中国娘だわ」


 マリアがシンジの横に下がった。すでにシンジの右隣には歩く揺れによっては身体が
ふれあうほど側にイリーナが陣取っている。フランソワーズは、マリアと逆にシンジから
三歩さがったところにいる。


「うらやましいというより、かわいそうだぜ、ここまで来ると。シンジの奴西洋系に
絡まれる運命なんだな。前世で西洋人によほど恨まれるようなことでもしたんだろうよ」


 ケンスケが小さなため息を漏らす。


「惣流に憧れた時期もあったが、やっぱり俺には合わないぜ。綺麗なバラには棘がある
って言うけど、有りすぎだよ。シンジ、惣流を選んだおまえを尊敬するぜ。茨の道どころ
か、素足で地獄の針の山を登るようなものだ、それって」


 小声の独り言だったが、ケンスケの胸ポケットにあるネルフ特製ペン型高性能集音マイ
クは、きっちりと拾っている。病室でそれを聞いたアスカは、ケンスケへのお仕置きを
決定していた。


「それにしても凄い人の数だな」


 商店街は人で溢れている。ケンスケが目をむく。


「本当だね、こんなこと今まで無かったね」


 そう応えるシンジとすれ違ったのは、彼女と腕を組んだデートを装った飯田一尉と水城
一尉の部下である。
 よく見ていれば、ときどきマリアやイリーナが目をあたりに配っていることに気づくが、
ケンスケもシンジもそこまでまじまじと彼女たちの顔を見ているわけではない。


「駅前銀座商店街を入って二筋目の右側だよな、北京亭って」


 ケンスケがシンジに問いかける。


「そうだね。たしか黄色の看板だったと……ああ、あれだよ。呂さんが店の前に立って
待ってくれている」


 シンジの視線の先で呂貞春が大きく手を振っていた。笑顔を浮かべてシンジも小さく
振り返す。マリアとイリーナの目つきがきつくなり、フランソワーズの目がさみしげに
伏せられる。


「遅れたかな」


 シンジが呂に笑いかける。


「い、いいえ、ちょうどですよ」


 呂が笑った。そう、シンジにだけ向けて。


「に、似合ってます? 」


 呂がシンジの顔を伺う。今日、呂は青い絹のチャイナドレスを身にまとっている。腰近
くまで入ったスリットから伸びている足がなまめかしい。欧米系の白さとは違って、東洋
系の持つ暖かみは、どこかほっとするものがある。


「う、うん、すごく綺麗だ」


 シンジが口ごもりながらほめた。


「シルエットを美しくするために、し、下着はつけないのが本当なんですよ」


 ほほを染めながら呂が、シンジを上目遣いに見上げる。シンジが真っ赤になった。


「どうぞ、叔父も楽しみにしているんですよ」


 呂の先導で北京亭に入ったシンジたちは、客が一人もいないことに驚いた。


「お昼なのに、他のお客さんは? 」

「か、貸し切りなんです、碇さんのために」


 最後に入ってきた呂が、かちゃりと音をさせて北京亭の扉に鍵をかけ、「本日休業」の
札を表向ける。


「鍵をかけるって、なに考えてんのよ、アンタ」


 マリアがいきり立つ。


「あの、邪魔者が入らないように……って、最大の邪魔者は中に入ってますけど」


 呂が三人の留学生を見る。マリアはにらみ返し、イリーナは胸を反らせ、フランソワー
ズは、まつげを揺らす。


「しまったわ」


 病室でアスカが唇を噛んだ。土曜日のお昼時に中華料理屋が休むとは考えなかった。
これでは、諜報部の人間を客としてむかわせられない。それに商店街までは監視カメラで
追えたが、さすがに店の中まではわからない。ケンスケの音声だけが頼りの状況にアスカ
が焦る。


「まずいな」


 さりげなくシンジのあとをつけてきた飯田一尉も呟く。


「クローズになってますね」


 にこやかに恋人へ向ける笑顔をみせながら諜報部別班の女性曹長が応えた。


「どちらにしろ、碇二尉を連れ出すには、この店からでなければならない。周囲をしっか
り固めるしかなさそうだ」

「じゃ、まずは周囲の出歯がめを掃除しましょう」


 女性曹長に引きずられるようにして飯田は北京亭を後にした。 


「なにをする気だ? 」


 ケンスケが、呂に問うた。シンジは何のことかわからないのか、呆然としている。


「お約束通り、碇さんにご馳走するんです。わ、わたしを」


 顔を真っ赤に染めた呂がさっとシンジの手を取ると店の奥へと走りこんだ。


「あっ、待て」


 マリアが叫び声をあげたが、呂の動きはそれをまさっている。厨房手前の階段を駆け
あがっていく。追いかけようとした四人の前に厨房から厨房衣を来た男たち五人が立ち
はだかる。手には中華包丁や中華鍋を持っている。


「おどきなさい」

「邪魔するなら容赦しないわよ」

「どいてください」 


 イリーナ、マリア、フランソワーズからすさまじい殺気がたちのぼる。


「ふん、小娘どもが」


 中華包丁を持った男がイリーナに斬りかかった。真っ向から切り下ろされた遠慮会釈の
ない一撃は、戦闘力を奪うものではない。明らかに命を奪うためだ。
 イリーナが半歩身を引いてそれをかわす。


「ふっ」


 半身になりながら小さく息を吐いて一歩踏みだしたイリーナが右肩を入れるように相手
の胸骨に肘打ちを放つ。いやな音がして男が崩れる。さらに踵で喉を潰す。


「スペツナズ格闘術」


 ケンスケが驚愕の声を上げる。ロシアがかつてソビエトといっていた頃、その悪名高い
情報部特殊部隊が遣ったという体術である。


「乳だけじゃないようね。あんただけにいい格好はさせないわよ」


 マリアが殴りかかってきた中華鍋を持つ男の手首をつかむとそのまま相手の身体に押し
つけるようにして、肘を浮かせる。そこへ手のひらを押しこむようにして突きあげた。


「ぎゃあ」


 肘の関節を砕かれた男が悲鳴を上げてのたうつ。その脇腹へ、すかさずつま先を食い
こませる。


「アメリカ海兵隊のマーシャルアーツ」


 ケンスケが呆然とつぶやく。言うまでもない。世界一実戦経験豊富な軍隊の格闘術だ。


「素人じゃないようだな」


 指揮官らしい男が刃渡り三十センチはあろうかという包丁を手に進み出た。


「どきなさいよ。いまなら見逃してあげるわ」


 マリアが両手を腰に当て胸を張る。


「碇さんにあの女の唾液ひとつでもついていたら、許しませんよ」


 イリーナが腕を組む。凶悪な膨らみがより一層目立つ。


「お願いですから、通してください」


 フランソワーズが泣きそうな顔をする。



「未経験カップルの初めてだ、一発で決められまい。ことをなすに1時間は必要だろう。
なあ、おまえたちもそうだろ。好きな相手との初めてを、無粋な横恋慕女達に邪魔された
くはないだろ? 」


 男が笑った。ケンスケはその笑い顔にふるえた。にじみ出る気迫が先ほどの二人とは
格が違う。さすがのイリーナ、マリアも動けない。


「ふざけんじゃないわよ。あいつの相手はアタシに決まっているのよ」

「碇さんを癒せるのはこのわたくし」


 マリアとイリーナが叫び、フランソワーズが涙を見せるが、男は眉一つ動かさない。


「貞春とサードチルドレンの仲を祝福してくれるなら、寛大な我が国は君たちの亡命を
受け入れる用意があるが。どうだね、好きでもない男に身を任さなければならない任務
など捨てて優秀な我が民族の男を選んでみては? 」


 男がじわじわと間合いを詰めてくる。イリーナもマリアも気圧されて下がる。


「ちょ、ちょっと、呂さん、どうしたの急に」


 下での争いなど知らずにシンジは北京亭の二階でとまどっていた。引きずり込むように
シンジがつれてこられた部屋には、大きなベッドが一つ有るだけである。


「い、碇さん、結婚してください」


 逃げられないようにとドアの前に陣取った呂が、口を開いた。


「はっ? 結婚って、誰と誰? 」

「あ、あなたとわたしです」

「僕と呂さんが結婚って、あの結婚かな。男と女が一緒に生活する? 」


 シンジが確認する。


「はい」


 呂がきっぱりと頷く。


「ごめん、それはできない。僕にはもう一生を伴にする人がいるんだ」


 シンジが静かに頭をたれる。


「セカンドチルドレン、そ、惣流アスカさんですか」


 呂が小さな声で訊いた。


「うん」


 幼い返事ながらシンジはきっぱりと応えた。じっとシンジの瞳を見つめていた呂が、
ふと目をそらした。


「やはりわたしでは勝てませんか。じつは、わたし国に帰らなければならなくなったん
です。結婚はあきらめます。碇さんは初恋なんです。お、思い出に一度だけ、わたしを抱
いてください」


 そう言って呂は、身につけていたチャイナドレスの紐をほどく。女になりきれていない
裸身がシンジの目を占領した。
 


 アスカの病室に水城一尉が入ってくる。


「三佐、狙撃手六名を無力化しました」

「それどころじゃないわ。シンジが中国娘にさらわれたのよ」


 アスカがわめく。


「このままじゃ、シンジの貞操が……アタシがもらうはずのシンジの初めてが……。シンジが
知っていい女はアタシだけなのに」

「惣流さん」


 水城一尉が妹を思う姉のような表情を見せて声をかける。


「大丈夫ですよ。男は女と違って無理矢理と言うわけにはいきませんから」


 さりげなく凄いことを言う。


「でも、でも、シンジここ四ヶ月性欲の処理をしてないのよ。理性に本能が負けたら…」


 アスカも暴走している。


「惣流さん、いえ、こういうときはアスカさんと呼んでいいわね」


 水城一尉がアスカに了解を求めるような目を向ける。アスカが頷いた。


「思春期の男の子が四ヶ月も我慢できるというのがどれだけ凄いことかわかってます? 
猿になってもおかしくない年頃、それも初恋で一番大好きな女の子と同じ部屋で、顔を
見て、会話をして、吐息を嗅いでいるのに我慢できていると言うことは、碇二尉、いえ、
シンジくんはそれだけアスカさんのことを大切にしているの。アスカさんがシンジくん
を受け入れることが出来る日が来るまで待ってくれているの」

「本当? 」

「ええ。アスカさんが、一生を任せていいと選んだ相手でしょ、信じてあげなければ」


 水城一尉が笑う。


「そうね。この世界の至宝、惣流・アスカ・ラングレーさまが、生涯の伴侶だものね。
四ヶ月や一年や十年ぐらい我慢できて当然よね」


 アスカの顔が明るくなる。水城一尉の頬も弛んだ。


「でも、十年は、いくらなんでも可哀想じゃないかな」


 水城一尉のつぶやきが聞こえたかどうか、アスカは顔を引き締めた。


「現状はどうなっているの? 」


 恋する乙女アスカから、ネルフ諜報部長惣流三佐への切り替えは早い。


「飯田一尉が、現場にいます。突入の時期をはかっているのでしょう」


 水城一尉も口調を改める。


「対空警戒を厳にさせて。空撮写真で確認したら北京亭の屋上は商店街のアーケードを
貫いて外に出ているわ。ヘリをつかって脱出の可能性がある。あと、海上自衛隊に命じて
相模湾で潜水艦捜索を」

「了解」


 アスカの命令を受けて水城一尉がでていく。


「現場の判断は任せたわよ、飯田」


 再びモニターにアスカは目を落とした。



「こんな事はよくないよ」


 一糸まとわぬ姿を手で隠そうともせず近づいてくる呂にシンジは後ろに下がるしかな
い。シンジとて思春期の男の子である。据え膳が嫌いなはずはない。アスカへの愛情、
アスカへの恐怖が理性を押しとどめている。


「碇さん、わたしのこと、き、嫌いですか? 」


 そう聞かれてはいと答えられるシンジではない。
 人に嫌われたくない、それを座右の銘としていた気弱な十四歳を辞めるように努力し
始めてまだ四ヶ月なのだ。四歳で父親に捨てられて以来十年かかってしみこんだ性根は
そう変わりはしない。


「嫌いじゃないよ」

「じゃ、わたしの身体、み、魅力無いですか? 」


 呂がシンジの視線を誘うように両手を拡げてみせる。


「そんなことない……」


 シンジは最後まで言えない。小柄で胸も大きくはないが、くびれた腰にきめの細かい肌、
なによりも甘い言葉を囁く唇はシンジの目を掴んで離さない。
 元々シンジの女性の好みはマザーコンプレックスから形成された。だから、記憶の底に
沈んでいた母の面影と重なった綾波レイに惹かれた。それを根底から崩したのが、アスカ
である。優しくシンジを包み込むどころか、シンジを殴る蹴る怒鳴る。下僕同然の扱いを
受けたシンジにとって、男なら誰でも手に入れたいと思う美貌とスタイルをもつアスカは
異性ではなかった。
 それをひっくり返したのがユニゾン訓練の夜にアスカが漏らした「ママ」というつぶや
き。被保護欲に支配されていたシンジの中で眠っていた保護欲が目覚めたのだ。
 恋は盲目というが、一度異性として意識してしまうとどんな欠点も美点に見える。
 アスカの暴力は照れ隠しに、シンジに浴びせる罵声は、思慕の裏返し、アスカのきつい
性格は前向きな姿勢と脳内変換され、ついにシンジはアスカを生かすために人類の進化を
止めてしまう。


「では、わたしを碇さんの、も、ものにしてください」


 欧米系のアスカと全く違うが呂も可愛い少女なのだ。ベッドだけの部屋に全裸の美少女
と二人きり、それも相手は全身でOKの三連呼。鴨がネギ背負ってどころじゃない。鴨が
ネギと豆腐に鍋、コンロ、皿にだし汁まで用意して来たようなものだ。その上、シンジは
四ヶ月の断食中。


「ごめん、一回きりだからできないよ」


 シンジがなんかとんでもない科白を口にする。アスカが聞いていたらシンジのあそこは
殲滅されるに違いない。幸いなことにケンスケはまだ階下にいた。


「どういうことですか? 」


 呂が、とまどったように訊く。


「そう言う関係になるというのは、遊びじゃいけないと思うんだ。お互いに一生を重ねて
いくだけの覚悟が出来ていないと。だって、男の僕は何があるというわけじゃないけど、
女の子はひょっとしたらお腹に赤ちゃんが出来てしまうかもしれない。一緒にいたなら、
子育てとかの苦労を分かち合えるけど、離れていたんじゃなにもできない。ましてや遠く
に行ってしまう呂さんだよ。妊娠したことさえ僕は気づかないかもしれない」


 シンジが呂の目を見て話をする。


「や、優しいんですね、碇さん」

「違うよ。優しいんじゃない。臆病なだけなんだ。もう、何もしてくれなかったくせにと
言われたくないんだよ。だから、ごめん」


 シンジが頭を下げて謝った。



 小さな音と振動が携帯電話への着信を報せる。


「なに? 」


 新強羅駅ビルの屋上で指揮を執っていたミサトが通話ボタンを押した。


「ミサト、南から超低空でヘリが侵入してくるわよ。ステルス装備みたい。アスカから
警戒するようにって言われてなければ気づかなかったほどの最新鋭よ。レーダーホーミン
グや赤外線追尾方式では落とせないタイプね」


 電話の向こうはリツコである。


「直接照準しかないっていうことか」

「そういうこと。持って行ってるでしょ、09式歩兵携行型地対空ミサイル」


 リツコの言葉にミサトが足元を見る。二の腕よりちょっと太めで2メートルほどの筒が
転がっている。


「あるけど、これって直接照準できたの? 基本はアクティブレーダーホーミングじゃな
かったっけ? 」


 ミサトがリツコに問いかけた。


「発射筒基部のコンピュータースリットを開けて。そこに携帯電話の内蔵コードをつない
で頂戴。改変プログラムを送るから」


 ミサトは言われた通りに携帯電話と基盤をつなぐ。30秒ほどで処理は終わる。


「じゃ、あとはミサトの射撃センスに期待してるわ」


 携帯電話からリツコの声が聞こえる。


「地対空ミサイルの目視発射なんてやったこと無いわよ」


 ミサトが電話に向かって文句を言う。


「がんばんなさい。うまくやらなきゃ、アスカに殺されるわよ。監視カメラを切らされた
から病室のことわからないけど、いまごろアスカ、カリカリしているはずだから」


 リツコが電話を切った。


「簡単に言ってくれるわねえ」


 ミサトが発射筒を右肩に担ぐ。照門と照星がついているだけましである。


「あれね」


 ミサトの視界に小指の爪ほどの黒いものが入った。



 大きな爆発音が新強羅駅前商店街を揺らした。


「あったりぃ」


 09式の筒を振りあげてミサトが歓声を上げる。
 使徒戦役を生き残った商店街のアーケードはちょっとした装甲板である。吹き飛んだ
ヘリの破片で突き破られるほど弱くない。


「なにが? 」

「なんなんですか? 」

「なんなのよ? 」


 イリーナ、フランソワーズ、マリアが、驚きの声をだす。


「ちっ、しくじったか」


 北京亭一階で三人娘の攻撃を防いでいた指揮官が、唇を噛む。くるりと振りかえると
二階への階段を駆けあがっていく。
 唖然としているケンスケの携帯電話が鳴る。


「あっ、相田くん、今から突入するからちょっと待っててね。いろいろ有ってね、障害
の排除に時間かかっちゃって……」


 商店街のあちこちで格闘戦や銃撃戦が行われている。日系人や顔の区別の付きにくい
東洋系を遣っているのだろう。アメリカやロシア、フランスの工作員と一般人の区別が
付きにくい。ネルフ作戦部、諜報部は苦戦していた。


「葛城二佐、敵の指揮官らしいのがシンジの元へ……」


 ケンスケがあわてて話す。


「まずいわね。失敗を悟ってシンジくんを殺す気だわ」


 ミサトが焦りを電波に乗せた。


「シンジを殺す」


 ケンスケが悲鳴を上げる。それを聞いた三人娘がとびだした。邪魔をしようと出てきた
中国工作員北京飯店支所の残存二名は、マリアの拳、イリーナの足に一瞬で倒される。
 三人が階段口に消えたとき、北京亭の扉が外からふくらむようにして吹き飛んだ。飯田
一尉が扉を蹴破って入ってくる。


「碇二尉は? 」


 飯田一尉がケンスケに問う。ケンスケは上を指さすのが精一杯であった。


 爆発の衝撃はアーケードから突き出た形の北京亭二階を大きく揺らした。


「きゃっ」

「うわっ」


 倒れた呂をかばうようにシンジがその上に被さる。向かい合っていたままの姿勢だったの
が幸いした? のかシンジの顔は呂のおしりに抱きつく形になる。


「きゃあ」


 シンジの鼻が微妙なところに触れたのか、呂が先ほどと声の色が違う悲鳴をだす。


「わっ」


 あわててシンジが起きあがろうとしたところへ天井から照明器具が落ちてきた。


「ぐっ」


 直撃されたシンジがうめく。


「碇さん」


 シンジの背中でバウンドして落ちた照明器具を見て、呂が目を大きくした。


「大丈夫ですか」


 再び密着したシンジの背中に呂がそっと手を回す。


「うん、たいしたこと無いよ。ちょっと背中を打っただけだから」


 シンジが体を離そうとするのに対し、呂がしがみつく。


「わたしを守ってくれたんですね」

「そんなたいそうな事じゃないけどね」

「しゃべらないでください、くすぐったくて」


 呂にそう言われてシンジは目の前に接近している景色に意識が向く。あっという間に
シンジが真っ赤になる。


「ご、ごめん」


 逃げようとするシンジに呂が囁く。


「もうちょっとこのままで、お願い。これ以上のことはもう望みませんから」


 ぎゅっと目をつぶったシンジは、匂い立つ呂の香りに気を失いそうであった。


「わたしでは駄目なんですね、やっぱり」


 呂が、シンジのどこを見てそう言ったかは謎である。



 そのとき、ドアの取っ手が音を立てる。シンジを逃がさないために呂が鍵をかけていた
のがシンジを救った。


「開けろ」


 指揮官が、ドアを叩く。


「劉陸佐」


 呂がシンジを解放した。


「そうか、今の爆発は迎えのヘリね。第一作戦失敗、ならば次は、碇さんの抹殺」


 呂の顔色が変わる。立ちあがったシンジを見つめる。


「逃げてください、ここにいたら殺されます」


 呂が窓を指さす。シンジは穏やかに微笑んだ。


「ありがとう、助けてくれようとするんだね。でも、もう逃げるのは嫌なんだ」


 シンジが礼を述べる。


「碇さん」


 裸と言うことを忘れたのか呂が、じっとシンジを見つめる。


「開けろ、開けるんだ。命令だ、碇シンジを殺せ」


 ドアがきしみだした。そうは持たない。


「そうだ、このベッドを。手伝って」


 シンジが唯一の家具であるベッドのマットをはずし、ベッドの底に手をかける。呂
も反対側を持つ。


「よいしょ」


 ベッドがドアに立てかけられた。ドアが大きく廊下へときしむ。


「裏切る気か」


 劉の罵り声が扉を突き抜けた。


「碇は殺させないわ」

「わたくしと華燭の典をあげるまで碇さんに死んでもらうわけにはいきませんの」

「碇さんに傷をつけないで」


 追ってきた三人が劉に迫った。だが、素手で立ち向かえる相手ではない。しかし、劉も
三人の攻撃を警戒しなければならず、ドアを蹴り破る事は出来なくなった。


「お嬢さんたち、代わってくれ。騎兵隊ただいま到着」


 飯田一尉が駆けつける。三人が飯田を見て下がる。


「降伏しろ、もう、おまえたちの作戦は全て破綻した」


 飯田一尉は拳銃を手にして降伏勧告を劉に告げる。


「やかましい。まだ望みはある。これを見ろ、呂の衣服に仕掛けた自爆装置のスイッチだ。
これを押せば、碇も共に……」


 劉は最後まで言わせてもらえなかった。飯田が手にしていた拳銃の引き金をためらい
なく引いたのだ。額に大きな穴を開けて劉が崩れる。


「悪役の科白を最後まで聞いてくれるのは、ドラマの中の正義の味方だけさ。俺たちの
ように汚れた人間にそれを求めるなよ」


 飯田一尉が劉の手から落ちた自爆装置を拾いあげる。


「おまえたちを捕まえて背後関係を吐かせる必要などないのさ。碇二尉を狙うものは排除
する。それが俺たちの仕事だ」


 飯田一尉の言葉は背中にいる三人の留学生へも向けられている。


「もう、子供達に銃口を向けたくないんだよ」


 飯田一尉の声は苦いものを含んでいる。三人が息をのむ。


「状況終了」


 飯田一尉が携帯電話に告げた。



「おつかれ、シンちゃん」


 割れた二階の窓からミサトが入ってきた。


「ミサトさん」


 シンジが押さえていたベッドから手を離し、喜びの顔を向けた。


「あなたが、呂貞春さんね。ネルフ作戦部長の葛城よ」

「はい」


 ミサトに問われた呂が頷いた。


「とりあえず、なにか着てくれない。あたしはいいけど、シンちゃんの命にかかわるからね」


 ミサトがシンジにウインクする。シンジはあわてて呂から目をそらす。

 
「はい」


 呂はチャイナドレスではなく、ベッドのシーツを剥がして身体を覆う。


「シンちゃん、今度のことは、ネルフへのテロなの。シンちゃんはネルフの象徴であるエヴァ
のパイロットとして狙われたのよ。そして、シンちゃんと同級生だというだけで呂さんは利用
された。ここ北京亭の主人一家を人質にされたのよ」

「葛城さん、ワタシは……」


 なにか言いかけた呂を制してミサトが続ける。


「人質は解放したし、相田くんや他の留学生たちも無事よ」

「それはよかった。でも、ミサトさん、パイロットを狙ったということは、アスカは大丈
夫なんですか? 」


 シンジがアスカの身を気づかう。それを呂は悲しそうに見ていた。


「もちろん、ネルフ医療施設は自衛隊の基地よりも警備は確かだから。じゃ、呂さん、
事情を聞きたいからつきあってくれる? 」


 ミサトにうながされて呂が歩きはじめる。


「じゃ、また学校で」


 シンジが呂に小さく手を振る。


「さ、さよなら、碇さん」


 呂はさみしそうな笑顔を浮かべて背中を向けた。





 シンジたちが北京亭から出たのは、それから2時間後である。それだけ排除に時間が
かかったのだ。穴だらけの商店街の中までネルフの車が入ってくる。
 ケンスケ達とは別の車で送られたシンジが病院に帰ったのは、3時半を回っていた。


「遅い、遅刻」


 病室に入ったシンジを迎えたのはアスカの膨れた顔である。


「ごめん、ちょっと事故に巻きこまれて」


 シンジはアスカに心配をかけまいとして嘘をついた。


「事故? 大丈夫だった? 」


 シンジが背中に打撲を負ったことは水城一尉からの連絡で知っている。アスカは心底
心配そうな声で訊く。


「うん、ちょっと背中を打ったけど、もう大丈夫だよ」


 シンジがアスカに笑いかけた。


「じゃ、おみやげちょうだい。三色団子は? 」

「あああああ、忘れた」


 ねだるアスカを見てシンジは土産を買い忘れたことを思いだした。


「可愛い彼女のおみやげを忘れたですって、こんの馬鹿シンジ」


 怒鳴りながらもアスカの顔は嬉しそうである。



 その日、303号室は消灯までシンジをいじめるアスカの声と謝り続けるシンジの泣き
声が続いた。





 翌朝、いつものようにシンジは寝汗を気にするアスカの身体の清拭をしていた。


「やっぱり、形も色も、匂いも違うや」


 無意識ながらシンジが呟いたのをアスカが聞き逃すはずはない。


「なぁんですってぇ。誰のと比べた、この変態、痴漢、浮気者、殺してやる」


 アスカの怒声が病棟を揺るがした。   




            続く
 

 


 

 

後書き
 ここまでお読みいただき感謝してます。
 中国編(ちょっと違うような)終了です。次はロシア編です。たぶん。
 で、ジュンさま、これってRじゃないですよね?
 ご意見、ご感想などいただければ幸いです。



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 タヌキ様の当サイトへの6作目。
 シンジの馬鹿っ!
 レイの胸揉みとミサトとの大人のキスは5万歩下がって許してあげるけど。
 今回は許さないわよっ!
 しかもこの私と比べたわね!
 一生許してあげないんだから!
 ま、これで中国娘は片付いたから、あと三人ね。
 続きがすっごく楽しみっ!
 ホントに素晴らしい作品をありがとうございました、タヌキ様。

 

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