「うわぁ! あの子髪の色が赤色だ! 変なのー」

「えー? 不気味だよね、気持ち悪いなー」


アタシは髪の色が赤いの
………平気だよ そういわれてるのは慣れてるから
 
 
 

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レッド・コンプレックス  前編
  〜めぐり逢い〜                    written by トランペット  
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<渚公園>

「そろそろ寒くなってきたなぁ」

AM 4:00

朝の公園は寒くて人影が少ないから毎朝早起きして私は散歩するのが習慣なの。
ここはとある公園の中にある通り
ライトアップされた木々が美しくて夏は人気の場所

「綺麗だなー 紅葉した木は…………」

でもそれは植物だから綺麗に見えるのよね……。
小学校2年生のアタシは髪が赤いの。
学校のお友達…… いえ学校のみんなは髪は黒いのにアタシだけ赤色
アタシは学校でその事を馬鹿にされ苛められ毎日泣いていた。
そんなアタシにママは

「アスカちゃんはクォーターだから仕方ないのよ。お友達と違うからって恥ずかしい事
  ではないの」

なんて言って泣いたアタシを慰めてくれた。
それからアタシはみんなから仲間はずれにされたり苛められても泣かない事にした。
仲間はずれにされても平気な振りをしている。

「あの娘の髪、変なのー」

「赤鬼だ!赤鬼!」

「あっち行けよ!」

でも慣れたなんてウソ……。
ホントはいつだって傷ついてる。隠れて泣いている。
ママやみんなの前では強い女の子を演じてる。
だからまだうす暗い朝の公園は私のお気に入り
人通りも少ないし、それにまだ暗いから私の髪の色を隠してくれる。
ママはお仕事で今日も家に帰ってきてない。
そんな日はアタシは公園に散歩に行くのが日課なの。

あっ!人がいる。
めずらしいな、アタシと同じ位の男の子だ。
こんな時間に人と会う自体、珍しいのに……。
綺麗な目をしてるなー。


アスカはその目に惹かれるように少年に近づいた。


するとその男の子はなんと私に話し掛けてきた。

「ごめん、コンフォートっていうマンションってどっちにいったらいいのか知ってる?」

えっ!アタシが住んでるお家じゃない!

「……知ってる」

「えっと……、ごめんよかったら案内してくれないかな?」

「……いいわよ、それよりこんな朝早くになにしてんの?」

「僕、昨日こっちに引越してきたんだ、それで今日から学校なんだけど緊張して眠れなくて……
 君は?」

「君なんて言わないでくれる、アタシにはアスカって名前があるの
  アタシが公園にいるのは暇つぶしよ、あなたの名前は?」

「僕はシンジ、シンジって呼んでよ、よろしくねアスカちゃん」

「あたしもアスカって呼んでいいよ」

綺麗な笑顔だなぁ。アタシはシンジのその笑顔に一瞬赤くなった。


互いにはにかみながら握手を交わすアスカとシンジ。


アスカを先頭にシンジを連れてコンフォートへと歩きだした。
初対面だからだろうか会話のないまま歩く二人。
そしてコンフォートマンションが見え始めた頃、シンジは口を開いた。

「ねぇ、アスカの髪はどうして赤いの?」

シンジもみんなと一緒か……。
初めて会う子はいつもそうやって興味を持って馬鹿にするのよ。

「………………アタシはクォーターなの、生まれつき髪は赤いの」

「ふーんとっても綺麗だね」


歩みを止めるアスカ。


「どうしたのアスカ?」

「………………………………」

「アスカ?」

「………………………………」

アタシは生まれて初めてパパとママ以外の人から髪を綺麗といわれた。

「アスカ、なんで泣いているの?」

気がつくと私は泣いていた。もう泣かないって決めたのに……。

「アスカどうしたの?」


オロオロするシンジ。


「………………アリガト」

アタシ恥ずかしくて走ってシンジから逃げてしまった。
とっても嬉しかった…………。
けどいきなり走って逃げちゃったからきっと変な女の子って思われちゃただろうな。




<アスカの家>

「アスカまた公園に散歩に行ってきたのね!」
「危ないから一人で朝早くからでかけちゃ駄目っていつもいってるでしょ!」

アタシが家から帰るとママが帰っていた。
ママの名前はキョウコっていうの。
ママはネルフとかいう会社で研究者をして家を留守にする事が多い。
そしてパパは海外で仕事をしていて家には、ほとんど帰ってこない。
だからパパもママも家で一人になる事が多いアタシは心配の種らしい。
今日は特別強く注意されてアタシは朝の散歩はもうしませんと誓わされた。

「ごめんなさいママ」

素直に謝る、するとママは優しくアタシの頭を撫でて許してくれた。
ママはアタシの気持ちを分かってくれてるのね、きっと。

「さっ朝食を食べて学校の準備をしましょ」

「うん!」
                              
 

        
<小学校>

教室のドアを開けるアスカ。


ザワザワザワザワザワザワザワ
ザワザワザワザワザワザワザワ
ザワザワザワザワザワザワザワ

なんだか教室が騒がしい。いつものアタシへの悪口も聞こえてこない。

いつもは朝アタシが学校へ行くとムサシっていう男の子を中心とした子達がアタシを苛
めるのに・・・。
そういった時、アタシは黙って堪える事にしている。
泣いたら余計馬鹿にされるもんね。


とりあえず自分の席に座るアスカ。


本当にどうしたんだろう。
赤い髪で馬鹿にされてるアタシは当然この疑問に答えてくれる友達はいない。
本当は学校なんて行きたくない。
けどアタシが学校へ行かないとママが心配するから我慢している。
1年生頃はよく学校を休んでいた。そして家でずっと泣いていた。
そうして毎日泣いていたらママも一緒に泣いた。アタシは更に悲しくなった。
アタシは大好きなママの為、そうママの為に泣くのをやめた。

しばらくするとアタシの近くの席の女の子から今日、転校生が来るらしい事が聞こえて
きた。

「転校生かぁー」

アタシは一人で小さく呟いた。
アタシが住むこの第三新東京市は来年から首都になるらしい。
最近では一ヶ月に4人程、転校生がやってくる。
ん!そういえば朝、公園で出会ったシンジも今日から学校とか行ってたわね。
ひょっとして転校生ってシンジの事かしら。
もしそうだったら嬉しいなぁ。
シンジとは友達になれそうよね。
でもアタシなんかと一緒にいたらシンジも苛められちゃうだろうな。
そしたらシンジもみんなと一緒の私を苛めるようになるんだろうなー。


しばらくすると先生が教室に入ってきてホームルームを始め噂の転校生を教室へよんだ。

「はじめまして碇シンジです みんなよろしく!」

転校生はやっぱりシンジだった。
シンジの席はアタシの隣に選ばれた。
シンジは小さな声でアタシにお礼を言ってくれた。

「朝はありがとう」

アタシはまだ朝の事が恥ずかしくてシンジに返事を返す事ができなかった。
唯恥ずかしくて下を向いて固まってしまった。

シンジの席には休み時間になるとみんなが集まってシンジを質問攻めにしていた。
シンジはそれを一人一人の質問に丁寧に受け答えしていた。
そうしてシンジは昼休みの時間にはクラスに溶け込んでいた。

アタシといえばクラスのみんながシンジに注目していたからあからさまな苛めを受けず
にいた。
そう放課後の時間までは。




<放課後の教室>

その時シンジは職員室に呼ばれて教室にいなかった。



「おい!赤毛がこっちにきたぞ、みんな逃げろ!」

「俺、目が合ったよ、青い目って気持ちわりぃーなー」

「近づくなよ、赤髪菌がうつるだろ!」


アタシはいつもどうり無視していた。無視して堪えていた。

「おい赤毛なに無視してんだよ!」

するとアタシにムサシが突っかかってきた。
それでもいつもアタシは無視続けるが今回はそうはいかなかった。
ムサシはアタシのランドセルにつけているぬいぐるみのサルのストラップをアタシから
奪った。
それは誕生日にママがアタシに作ってくれた大切なアタシの宝物。

「返して!返してよ!」

「こんなサルのストラップを大事にして馬鹿じゃねーのか!」

サルのストラップを踏みつけるムサシ。

「ヤメテヨ!」
「ヤメテ!!!」

ムサシはサルの首をちぎってしまった。


アタシはこの時、涙腺が壊れてしまったかのように泣きくずれてしまった。






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<帰り道>

「シンジ、あのムサシって男の子を怪我させたのはよくないわ、分かるわね」

「………うん、ごめんなさい」

「けどねシンジあなたのした事は誇れる事よ、母さんとっても嬉しいわ。父さんもアナ
  タのした事をきっと誇りに思うわ。」

「ありがとう母さん…………」




職員室から帰った僕はムサシがアスカのサルのストラップを壊したのを目撃してムサシ
に飛び掛っていった。
唯、アスカを泣かせたムサシが許せなくてムサシを馬乗りになって殴り続けた。先生が
止めるまでムサシを馬乗りになって殴り続けた。ムサシの口は血だらけになっていたと
思う。

それから僕はムサシを怪我させたという事で転校初日に母さんを学校に呼ばれるはめと
なってしまった。事情を聞いた母さんはムサシの両親、学校の先生達を含めて大論争を
繰り広げたんだ。ひとにらみで犯人を黙らせる警官の父さんを尻にしいてる母さんを学
校の先生達が論破できうるわけがない。僕はおかげでムサシに一言謝るだけで帰宅を許
された。


そして今は僕と母さんとでコンフォートへの帰り道を歩いている。
その後ろでは泣きじゃくりながらアスカがついて来ている。
どうやら職員室へ僕が呼ばれたのを見てずっと待ってくれていたらしい。


「もう泣かないでよ、アスカ」

「グスン、グスン アリガト グスン でもおサルさんがぁー ウワ〜〜ン!!!」

いくら言ってもアスカは泣き止んでくれない。さっきからこの会話の繰り返しだ。
僕がほとほと困っていると母さんが助け舟を出してくれた。

「アスカちゃんそのおサルさんオバサンに貸してくれないかしら?」

「グスン グスン ウン」


母さんにおサルのストラップを渡すアスカ。


「これなら大丈夫よ、すぐ治せるわ!」

「グスン グスン ホント?」

「ええ本当よ、帰りに私達の家に寄っていきなさい。10分もあれば綺麗に治るわ」

「グスン、グスン ウワ〜〜ン!!!ウワ〜〜ン!!!」


するとアスカは安心したのか更に泣き出してしまったんだ。


「あらあら困ったわね」



それから僕たちの家に着き母さんがおサルさんを治すまでアスカは泣き続けたんだ。






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アタシは嬉しかった。
歓喜の涙を私は止めることはできなかった。




<シンジの家>

シンジのママにおサルさん治して貰ってアタシはやっと泣き止んだ。
そこでアタシはシンジとシンジのママに赤い髪で今まで苛められていた事
アタシの悩みを話した。

「アスカの髪は本当に綺麗だよ!」

「そうよ、学校のみんなはその事にまだ気がついていないのよ!」


シンジとシンジのママはアタシの髪は本当に綺麗な髪だと、自分に自身を持つようにと
アタシに言ってくれた。

それからアタシ達はいろんな事を話し合った。
シンジの以前に住んでいた街の事
シンジのママとアタシのママは同じ職場で友人同士だという事
シンジのパパは街を歩くと人相が悪いので自分が警官なのに職務質問されてしまう事
そして泣き止んで気がついたけどアタシとシンジの家は隣同士だという事。
本当に楽しい時間だった。

もう暗いからとアタシが帰るときシンジはあたしを玄関までお見送りしてくれた。
っていっても隣だったんだけどね。
そして私に少し照れくさそうにこう言ってくれた。

「約束するよ今日から僕がアスカを守るから!」




<アスカの家>

アタシが家に帰るとママがアタシを出迎えてくれた。
アタシはママの顔を見ると今日の事で胸が一杯になってまた泣いてしまった。
ママは泣く付くたしをずっと抱いててくれたわ。

※あとから聞いたんだけどシンジのママがこっそりアタシのママに事の成り行きを話し
  てたらしいわ。

アタシはその日、ママと一緒に枕を濡らして寝たわ。







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次の日からシンジはアタシを守るという言葉を実行してくれた。
一人ぼっちだった登下校もシンジが一緒にいてくれた。
アタシが苛められると本気でアタシを庇ってくれたわ。
シンジとアタシはあれからずっと一緒だった。
アタシにとってシンジは太陽のような存在になった。

以前のアタシはママを安心させる為に心を隠していた。
心を隠すことでアタシは強い自分でいようとしたわ。
本当のアタシはいつも泣いていた。

けどシンジがアタシと一緒に居てくれるようになって、シンジはアタシの隠した心を照
らし出してくれた。シンジが居てくれたらアタシは本当の自分でいる事ができる。
そしてシンジと一緒の本当のアタシは笑っていた。

シンジがアタシと仲良くするようになって、それまでアタシが苛められてるのを見てる
人達もアタシと会話するようになった。
遂にはアタシを苛めていたムサシ達もアタシに謝ってきた。
アタシはなかなか許す気持ちにはなれなかったけど・・・、許してあげたわ!
ムサシ達はあれからクラスのみんなから無視されてたし、それにムサシはシンジに殴ら
れて前歯が無くなってクラスで馬鹿されていた。
自業自得だけどちょっと可哀想よね。
そしてアタシはみんなと笑顔で話すようになったわ。

そんな小学3年生の春、シンジは私に言ってくれたのよ。

「やっぱり笑ってるアスカ、元気なアスカが僕は一番好きだよ」


それはアタシが初めて恋というものを知った瞬間だった。








To be continued.
 

 

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<アスカ>トランペット様のデビュー第1作目よ!
<某管理人>おおきに、ありがとさんです。
<アスカ>これはその前編ね!
<某管理人>アスカはん、いじめられてますなぁ。
<アスカ>はん!いいの、シンジに会えたんだもん。
<某管理人>そりゃあ、会えないままじゃ大変なことになってしまいますわなぁ。
<アスカ>どういう意味よ!
<某管理人>そのうち逆ギレしたアスカ様が大暴れして…。
<アスカ>アンタ、馬鹿?作品が違うわよ!
<某管理人>わ!すんません!

 
 さぁて、トランペット様のデビュー作。
 まずは、こんなサイトでデビューしてくださってありがとうございます。
 詳しくは、後編でお話しするわ。とりあえず、ここはこれだけでごめんね。

 トランペット様、素晴らしい作品をありがとうございました!
  

 

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