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レッド・コンプレックス 中編
  〜Puzzlement〜                  written by トランペット  
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僕とアスカは中学2年生になった。
僕は相変わらずだけどアスカは凄く変わった。
僕が転校してきた頃のアスカは完全に消えてしまった。
顔立ちはさらに綺麗になった。以前は綺麗というより可愛いって感じだったんだけど最近じゃ気品さえ感じてしまう程だ。
みんながその事に気がついたのはアスカが小学校5年生になった頃からだ。
以前は馬鹿にしていた連達中も今では手のひらを返したように賞賛している。
けれどもアスカは全くそんな賞賛の声には耳を貸そうとはしなかった。
アスカはその声には一度も振りかえらなかった。

性格も僕と出会った頃には強がっていた性格……、でも本当は隠れて泣いたんだよね。
それが今で本当に前向きで明るい性格になった。

朝だっていつもは僕がアスカを迎えに行っていたんだ、でもいつだったか僕が熱を出してアスカを迎えに行けなかった時があったんだ。
そしたら次の日アスカは無理やり僕を叩き起こして学校へ引っ張っていった。
アスカはその日、キョウコおばさんに酷く怒られたらしいんだけど、その日から毎朝アスカが僕を起こしに来るようになった……。


「シンジ!私の話聞いてるの?」

「……………………………」

「コラーバカシンジ!!!」

「聞いてるよ、アスカ」

「もうすぐ学校よ!シャンとしなさいよね!」


そう今、僕とアスカに起こされていつものように一緒に中学校へ登校中だった。


バカシンジか………。
僕達が思春期と呼ばれる年頃になったころからアスカは僕が他の女の子と話してると猛烈に機嫌が悪くなるようになった。
いつだったかほとんど学校を休まないアスカが風邪をひいて学校を休んだ時があった。
だから学級委員長の霧島さんっていう僕によく話し掛てくる女の子と一緒にアスカをお見舞いに行ったんだけど……。
アスカは僕と霧島さんを見るなり

「バッカシンジ!!!」

って言って怒って泣き始めてしまった。
それからアスカに許して貰うまでに一週間は掛かったよ。
それからかなアスカが僕の事をバカシンジなんてたまに呼ぶようになったのは……。
それにしてもなんであの時、アスカは怒ってたんだろ???

でも僕はアスカにバカシンジなんていわれても悪い気はしない。
初めは可愛い娘だなってしか思ってなかったけどいつの頃からか僕は彼女の事が大好きになっていた。
いや本当はあの公園での出会いから僕はアスカのことが好きになっていたんだと思う。
思春期になってアスカへの思いが恋愛なんだと気がついた。
これからも普通の生活が続いてこのままずっとアスカと一緒に居られると僕は信じていた。

あの……、そうあのゲームに出会うまでは……。



<学校>


教室に入るシンジとアスカ。


「おはようさん!先生」

「シンジ、おはよう!」

「おはよう、トウジ、ケンスケ」

「なんや先生と惣流は今日も夫婦で登校かいな?」


この二人はトウジにケンスケ、僕の数少ない本当の親友だ。
僕はいつも通り、二人にアスカとの関係をからかわれて自分の席に着いた。
アスカは友達の洞木さんと二人で会話をしている。

トウジとケンスケか……。
そういえばあのゲームと出合ったのは確か僕とトウジとケンスケで学校の帰りにあるゲ
ーム屋に寄った時だったな。
アスカが日直で遅くなるから僕は二人と一緒に帰る事になったんだっけ。
あの日は急に雨が降りだして雨宿りに、たまたまゲーム屋さんに寄ったんだ。




「おい中古のゲームが安いぞ、シンジもこっちにきて一緒に見てみろよ」

「ホント、安いでシンジィ」


二人と一緒にゲームを見るシンジ。


なんだろ……。
山積みにされてるソフトにまぎれて妙に気になるのが一つ……。


シンジはそのソフトを手にとってみた


「ゲーム名はエヴァ……、300円か………」

安いな、買ってみようかな。


僕はそのソフトを買うと雨が止むのを待って二人と別れて家に帰った。
家に帰るとする事もないのでさっそくゲームを開けてみる事にした。


説明書を読むシンジ。

《チルドレン養成ソフト 君はエスパーになれるか!?》

なんだこのゲームは?
初めはそんな風に思ってたんだけど僕は引き込まれかのようにエヴァに夢中になっていった。
内容は自分がエスパーとして使徒とかいう怪物と戦う体験シュミレーションゲームだった。
僕はこのゲームをトウジ、ケンスケそしてアスカに紹介したがこのゲームはなぜか僕以外の人にはPLAYすることはできなかった。

YOU CAN’T PLAY THIS GAME. 

僕以外の人がPLAYしようとすると必ずこのメッセージが出てPLAYする事は不可能だった。
どうやらこのゲームはPLAYERを選択するらしい。

そのゲームの虜になって一週間が過ぎた頃、僕に変化が起こった。

ある朝、僕は寝ぼけててトーストを乗せていたお皿を落としてしまった。

落ちるな!!!
僕は瞬間そう念じた。

お皿は音をたてて割れるはずだった。

うっ浮いてる……。


「シンジなにやってんの?」

「アッ!」

ゴトン!

お皿は引力を思い出したかのように床へと落ちた。

「あんたお皿落としたのね、まだ寝ぼけてんじゃないの?」
「それにしてもお皿、割れなくてラッキーだったわね」

確かに僕は寝ぼけている、けどお皿は床の一歩手前で確かに浮いていたのも確かだ。

……僕の力なのか?



力は確かに存在した。
僕はその日から毎日自分の力を試してみるようになった。
確かに僕は物を動かす力を手に入れたようだ。
その力はあのエヴァっていうゲームの最初に手に入れる力だった。

最初はマッチ箱、続いてマンガと僕の物を動かす力は日に日に強くなっていった。
今では学校の机ぐらいなら簡単に持ち上げる事ができるようになった。
本当に僕はエスパーになってしまったようだ。
そしてあのゲーム、エヴァも昨日僕はクリアしたんだ。
そのエンディング画面に出てきたメッセージが僕を憂鬱にさせていた。



あなたはサードチルドレンに選ばれました 
君は君にしかできない君だけの仕事をする義務があります
これは運命です


っていうメッセージなんだ。
僕だけにしかできない、僕だけの仕事……、それに運命……。
あのゲームを手に入れてから僕はなにか見えない大きな力に動かされているような気がする………。


「ねえシンジ」

「…………」

「こらバカシンジっ!!!」

「…………え? あ、なにアスカ」


いつのまにかアスカは僕の隣の自分の席に座っていた。


「シンジあんたなにか悩み事でもあんの?最近なにか様子が変よ」

「なんでもないよアスカ」

「ふ〜〜〜ん、怪しいわねー」

「きっ気のせいだよ(汗)」

「まっいいわ、それより私が今朝話してた転校生の話覚えてるわよね」
「ヒカリの話じゃその転校生ってうちのクラスにくるらしいわよ」

「へーそうなんだ」


そうアスカは僕がエスパーになったって事を知らない。
もちろんこの事はトウジやケンスケにも秘密にしてある。

僕は何度かエヴァの事そして目覚めた僕の力の事をアスカに伝えようとした。
でも駄目だった、もしもその事を伝えてアスカに拒絶されたら……。
そう考えるとどうしてもアスカに伝えることはできなかった。


僕が一人で物思いに耽っていると先生が入って来てホームルームを始めた。


「えー、まずは今日からこのクラスに入ることになった転校生を紹介します」

先生はそういうと廊下にいた転校生に向かってこっちにくるようにジェスチャーをした。


教室に入ってくる転校生。


「綾波レイです みんなよろしくね♪」


彼女はそういうと一瞬、僕にウインクしたように見えた。

……かわいい。
彼女はアルピノっていうんだろうか肌がとても白くて髪の色が青いなにか不思議な感じの女の子だった。
僕はしばらく彼女に見とれてると隣から殺気を感じた。
 
僕が隣をみると殺気をはらんだ視線でアスカが僕を睨みつけていた。



                  ●

                  ●

                  ●     


綾波さんはとっても明るい子でアスカを除いたクラスのみんなとすぐ仲良しになった。
いつもは転校生がくるとまっさきに声を掛けてあげたりして気を使うアスカが、綾波さんにはなぜか冷たい敵を見るかのような視線を送っていた。

……機嫌でも悪いのかな?




<放課後>


放課後、僕にちょっとした事件が起こっていた。



自分の鞄をあさるシンジ。

…………ガサゴソガサゴソガサゴソガサゴソ…………………

エヴァがない!!!
きっと何処かに落としたんだ!


「シンジなにやってんの?早く帰りましょうよ」

「ごめんアスカちょっと用事があるんだ
 悪いけどアスカは先に帰ってて」


僕はそういうと急いで教室を飛び出しエヴァを探し始めた。
だけどエヴァは僕が思いつく所をいくら探しても何処にもなかった。
もうあきらめようか……。
そう思い始めた頃に綾波さんが僕の前に現れた。


「何してんの?探し物とか?」

「うん、けどもういいんだ……」

「探し物ってさ これだったりして」


彼女はそういいながら差し出したものはエヴァだった。





<屋上>

屋上に二人きりのシンジとレイ。


「どうして……
 なぜ綾波さんがそれを持ってるのさ」

「私が碇君のカバンから盗んだからよ」

ケロリと悪びれる様子もなく答えるレイ。

「……それにあなたと二人きりになる必要があったの」

「えっ!?」

「さて 碇君の力を見せてもらいましょうか?」

「へ? なんで君がそれを……」


綾波さんは僕の力を知っているのか?


「あれを見てちょうだい」


彼女が指差した所を見ると、そこにはアスカが立っていた。
どうやら僕を待っていてくれているらしい。
……凄く嬉しい。

「エイ!」

綾波さんがそういうといきなりアスカに向かってエヴァを投げつけた。
いや投げつけたというよりエヴァの方がアスカに向かって飛んでいってる感じだ。


よけろ!!!

僕がそう念じて力を使うとギリギリのところでアスカにぶつかる事は避けられた。

ふーなんとか間に合った。


……………一瞬沈黙する二人


「バカ!アスカになんて事するんだよ!」

「合格!」

「……合格???」

「やるわね碇君、さすがエヴァをクリアしただけの事はあるわ」


なんで僕がエヴァをクリアした事を綾波さんは知っているんだ、それにどうやら力の事も完全にばれてるみたいだ……。

僕が次第に落ち着きを取り戻してくると綾波さんはとんでもない事を僕に向かって喋りだした。
顔つきはまさに真剣そのものだった。


「さーて お遊びはここまで! 本題に入るよ」

「本題?」

「碇君も多分知りたかったことよ」
「エヴァと力との関係性、そしてエヴァとはいったいなんなのか?」

………僕は黙って綾波さんの話を聞くことにした。




「世界中にはチルドレンと言われる私達のような特殊な力を持つ人間が三人いる事がわかったの」

「特殊な力ってのはもう碇君も分かっていると思うけど超感覚的知覚………つまり超能力よ」


「……………………」


「つまり碇君あなたはエスパーなのよ!」

「そしてエヴァは超能力を持つ者にしか扱えないゲーム
 なぜならプレイヤーから超能力を吸い取って動くゲームだから」


…………………そうか 
なんとなく分かってはいた、アスカにもトウジやケンスケにもエヴァは使えなかったもんなぁ。


「突然だけど人間の指ってどうして長いと思う?」


僕は少し悩んで答えた。


「それは人間は道具を使うからさ 人間は道具を使わないと生きてはいけないよ」
 
「正解!でも人間だけじゃないわ 
 鳥が飛べるのもキリンの首が長いのもみんな生きる為に進化したのよ」


そういうと綾波は力を使って宙に浮いた。


「じゃあこの力は? なんのために? なぜ私達は存在するの?」

「これが人間に生きのびるために必要な能力ならば……何が人間の敵なの?」


人間の敵?この力を必要とするほどの?


「そうよ!!答えは自然現象!」

「えっ!? 僕は何も言ってないよ」


シンジの言葉を無視して話しつづけるレイ。


「私達の力は自然に対抗するためのものよ!この力があれば火山の噴火すら止める事ができるわ!
 でも私達の力が及ぶのは地球の中でだけ……スペースハザードに対しては手も足もでないの」

「スペースハザード?隕石の落下とかの事かな?」

「そうよ 知ってる?大きめの隕石って毎年500個ぐらい落ちてんのよ」
 隕石だけは私達にもどうする事もできないの……
 だから3年後に地球に落下する小惑星も止められないのよ!!
 その小惑星がもし落下したらどうなると思う?
 まず大気圏との衝突で衝撃波が生じて直径数百キロ以内のすべてを破壊し……
 落下点に生じるガスは大気圏外で固まって数億個の隕石になって人類のほとんどが間違いなく死滅するわ」


綾波さんの顔が真剣だ……………………。


「私達はそこである計画をたてたわ
 ざっと説明すると地球の公転を小惑星がぶつかる前に早めるの、
 つまり地球を動かして小惑星からさっと身をかわすってわけよ」


………本当なのか?そんな途方もない話、それにそんな事が起こるならニュースとかでやってるんじゃ。


「一般人はこの事は知らないわ、報道管制が行われているの この計画は世界中のおえら方の支持を受けているのよ
 そしてこの計画には三人のチルドレンが揃わなくていけないわ、二人では無理なのよ」

……………………。

「だから碇君には明日から二年間、ドイツで訓練を受けてもらうわ
 碇君はまだ力を完璧には使いこなせていないからね」

……………………。

「これはエヴァを手にした者の義務なのよ
 あなただってエヴァがただのゲームだなんて思ってたわけじゃないでしょ?
 いつか何かが起こると思ってたでしょ?
 それが今、起こったのよ 
 私と一緒にドイツへ来てくれるわね?」


「……そんな二年間も…………」


今のままの生活が永遠に続くと思ってた。 


ずっとずっと………


二年……二年も外国へ………?


いやだ!!!二年もアスカと逢えないなんて


けど行かなきゃアスカは……………………

 
…………………………………………………


…………………………………………………
 

短くそれでいて長い時間が過ぎた。



「あんたバカー!!!!!」
「シンジがそんなの行くわけないでしょーが!!!」



そこにはアスカが鬼のような形相で綾波さんを睨みつけていた。








To be continued.

 

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