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レッド・コンプレックス 後編
  〜微笑みは風の中で〜                       written by トランペット  
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私とシンジは中学2年生になった。
シンジと出逢ってから私は自分でも実感できるくらい明るい女の子になったわ。

「やっぱり笑ってるアスカ、元気なアスカが僕は一番好きだよ」

この言葉をシンジに言ってもらったから私はシンジの前では頑張って明るい女の子でいられる様にしている。
そう大好きなシンジの前ではいつも一番素敵な私でいたい。

ちなみにシンジといえば颯爽としたさわやかな好青年に成長していたわ。
前から美形で優しくて女の子の間じゃ密かに人気があったんだけど最近じゃ凛々しさっていうのかな?
つまり男らしさも加わって本当にかっこよくなった。

そんなもんだから私のシンジにちょっかいかけてくる女子が中学校に上がる頃には現われるようになった。
私はそのほとんどをシンジには気付かれないように追い払っていた。
そんな女子達の中でも特にしつこかったのが霧島マナ!
こいつは私がちょっとでも目を離すとすぐシンジに自分をアプローチしていた。
そんなもんだから私は少々体調が悪くてもほとんど毎日学校へ行っていたわ。
だから不覚にも風邪で学校を休んだ時にシンジがマナと一緒に私をお見舞いに来た時はとてもショックだった。
確かあの時からかな?
私がシンジの事をバカシンジなんて呼ぶようになったのは……、けどそれはシンジも責任があるのよ!
いつまでたっても私の気持ちに気付いてくれないシンジにもね。

そんなニブチンシンジなんだけどここ最近シンジの様子がとてもおかしい。
いつもなにか考えことしているみたいだし私が呼びかけてもうわの空だし絶対なにかある!
人生の半分をシンジと一緒に過ごしてきた私にはわかる、シンジは私になにか隠し事をしている。

 
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「ねえシンジ」

「…………」

「こらバカシンジっ!!!」

「…………え? あ、なにアスカ」

ほら、やっぱりおかしい。

「シンジあんたなにか悩み事でもあんの?最近なにか様子が変よ」

「なんでもないよアスカ」

「ふ〜〜〜ん、怪しいわねー」

「きっ気のせいだよ」

「まっいいわ、それより私が今朝話してた転校生の話覚えてるわよね
  ヒカリの話じゃその転校生ってうちのクラスにくるらしいわよ」

「へーそうなんだ」


先生に呼ばれてでて来た転校生は私もビックリするほどかわいい女の子だった。
隣のシンジをふと見るとボーっとその娘に見惚れていた。
私はおもいっきしシンジの事を睨み飛ばしてやったわ。
でもニブチンシンジの事だからなんで私がシンジを睨んだかなんて分かんないでしょうね。

転校生………いえ綾波さんはとっても明るくてすぐにみんなと仲良くなっていった。
けど私は見逃さなかった彼女がシンジに何度も視線を送る姿を…………。


放課後に入るとシンジがなにか慌てて何かしていた。

「シンジなにやってんの?早く帰りましょうよ」

「ごめんアスカちょっと用事があるんだ
  悪いけどアスカは先に帰ってて」

シンジはそういって私をほっておいて急いで教室を飛び出ていってしまった。
シンジはああ言ってたけど私は放課後にシンジの隠し事について問いただしてやるつもりだった。
だから学校に残ってシンジを待つことにしたわ。

          
                 

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私は校庭でシンジが戻って来るまで待つことにした。

シンジ遅いなー。

なんて考えてると凄い勢いで何かが私に飛んできた、私はとっさの事で避ける事ができなかった。
ギリギリの所では私にぶつからなかったんだけど飛んできた物を見ると、
それはシンジが大切にしているエヴァっていうわけのわからないゲーム機だった。
飛んできた方角を見てみるとなんと屋上でシンジと転校生の綾波レイって娘が二人並んで立っていた。

私は胸の奥底からグッと沸きあがる嫉妬と嫌な胸騒ぎを感じた。

シンジ〜〜〜〜!
いったいどういうつもりか知らないけどこの私をほっておいてあの娘なんかと一緒にいるなんて〜〜〜〜!

私は猛ダッシュでシンジ達がいる屋上へと駆け上った。




                  ●




屋上のドアまでたどり着くとシンジと綾波さんの話声が聞こえてきた。

「つまり碇君あなたはエスパーなのよ!」

「そしてエヴァは超能力を持つ者にしか扱えないゲーム
 なぜならプレイヤーから超能力を吸い取って動くゲームだから」

飛び込んでってシンジに文句を言ってやろうと思ったけどその会話を聞いて私は隠れてその様子を見守ることにした。

………………………?
なにを話しているの?
シンジがエスパー?
シンジってエスパーなの?

「突然だけど人間の指ってどうして長いと思う?」

しばらくしてシンジは答えた。

「それは人間は道具を使うからさ 人間は道具を使わないと生きてはいけないよ」
 
「正解!でも人間だけじゃないわ 
 鳥が飛べるのもキリンの首が長いのもみんな生きる為に進化したのよ」


そういうとなんと綾波さんは宙を飛んだ
これが超能力!?

「じゃあこの力は? なんのために? なぜ私達は存在するの?」

「これが人間に生きのびるために必要な能力ならば……何が人間の敵なの?」

人間の敵……
たぶん自然現象ね 地震、カミナリ、竜巻、津波……

「そうよ!!答えは自然現象!」

「えっ!? 僕は何も言ってないよ」


彼女はそっと私にウインクをした。


……あの娘…………私の心を読んだの!?

「私達の力は自然に対抗するためのものよ!この力があれば火山の噴火すら止める事ができるわ!
 でも私達の力が及ぶのは地球の中でだけ……スペースハザードに対しては手も足もでないの」

「スペースハザード?隕石の落下とかの事かな?」

「そうよ 知ってる?大きめの隕石って毎年500個ぐらい落ちてんのよ」
 隕石だけは私達にもどうする事もできないの……
 だから3年後に地球に落下する小惑星も止められないのよ!!
 その小惑星がもし落下したらどうなると思う?
 まず大気圏との衝突で衝撃波が生じて直径数百キロ以内のすべてを破壊し……
 落下点に生じるガスは大気圏外で固まって数億個の隕石になって人類のほとんどが間違いなく死滅するわ」

「私達はそこである計画をたてたわ
 ざっと説明すると地球の公転を小惑星がぶつかる前に早めるの、
 つまり地球を動かして小惑星からさっと身をかわすってわけよ」

私は呆けてしまった……あまりのスケールの大きな話に……。
私がしばらく呆然としてるとあの子はさらにとんでもない事を言った。

「だから碇君には明日から二年間、ドイツで訓練を受けてもらうわ
 碇君はまだ力を完璧には使いこなせていないからね」

「これはエヴァを手にした者の義務なのよ
 あなただってエヴァがただのゲームだなんて思ってたわけじゃないでしょ?
 いつか何かが起こると思ってたでしょ?
 それが今、起こったのよ 
 私と一緒にドイツへ来てくれるわね?」


「……そんな二年間も…………」

シンジはそういって黙りこんでしまった。


…………………………………………………

 
…………………………………………………


…………………………………………………


嫌よ!嫌よ!嫌よ!嫌よ!嫌よ!
私はシンジと二年間も離れ離れになるなんて耐えられない!!!
お願いシンジそんなの断って!!!

「あんたバカー!!!!!
  シンジがそんなの行くわけないでしょーが!!!」


私は沈黙に堪えられずおもわず飛び出て叫んだ。




                  ●



「僕は行くよ」


私が飛び出したその後、シンジは私にそう言い放った。
私はその言葉を聞くと屋上から飛び出して急いで家に帰った。
自分の部屋に入りベットに飛び込むとそれまで我慢していた涙が溢れ出してきた。
こんなに泣いたのはシンジが私の事を庇ってくれた時以来だと思う。
私はいつのまにか泣きつかれてそのまま眠っていた。



AM 4:00

私が目を覚ましたのはもう朝日が昇ろうかというような時間だった。
私は悲しい気持ちを抑えてもう一度シンジの言葉を思い出してみた。


「僕は行くよ」


その言葉の意味は私なんかがいなくなっても
シンジは私なんかいなくても全然平気だということ。

もしも違う意味があるのならあそこに来てくれるかな。

シンジが私の傍にいてくれるようになって私は本当に強くなって友達もたくさんできた。
だけどそんな明るくなっていった私に心無い言葉を浴びせてくる人達がまだ残っていた。
表面上は全然平気な振りをしてたけど心の中は傷ついていた。
そんな日の学校の帰りはシンジは私の気持ちを察していつもあの私とシンジが出逢った
公園に寄ってそっと優しく私を慰めてくれた。
シンジならきっとあの公園で私を待っていてくれる。


私はそう考えると渚公園に向かっていって走っていった。


夜明けが近くて

こんなに寒いけど

いてほしい!!!

冬の人気のない公園に一人だけ

私とシンジの出逢った場所に!!


私がその場所に着くとシンジは……いてくれた!!!

「…………シンジ」

私が小さな声で呼びかけるとシンジは私に気がついた。

「アスカ…………」



……………………………………………長い沈黙…………………………………………



沈黙を打ち破ってシンジが私に話し掛けてきた。

「懐かしいね、僕達が初めて出逢った時もこんな感じだったね」

「…そうね」

「……………………………………………」

「……………………………………………」


再び沈黙する二人。

今度は私からシンジに話し掛けた。


「シンジはどうしてここに来たの?」

「アスカに逢うためだよ……、アスカはどうなの?」

「私もシンジに逢いたかった……………………………
 それでねシンジに二つ質問があるの、答えてくれる?」

「…いいよ」

「じゃあまず一つ シンジ、本当なの?シンジがエスパーっていう話?」

「…………本当だよアスカ
 そしてゴメンその…今まで僕がエスパーって事をアスカに黙ってて」

「今までどうして私に話してくれなかったの?」

「………怖かったんだ、アスカにこの事を話してもしも拒絶されたらって考えるとどう
 してもアスカに話せなかったんだ」

「こぉのバカシンジ!!!
 私がそんな事でシンジを拒絶なんかしたりするはずないでしょーが!!!」

「…ゴメン」

そうもしシンジが世界中の人々を敵にまわしても私だけはシンジの味方になれる。
あの日、シンジが私を守ってくれたように私はシンジの為ならなんでもできる!
これだけは絶対に間違いなく断言できる。


「その事はもういいわ、二つめの質問をするわ
 なんでシンジがドイツなんかに行かなきゃいけないのよ!!!
 シンジがエスパーだったとしてもなんでわざわざ危険な計画に参加しなくちゃいけな
 いの、別にシンジじゃなくても他に誰かシンジの代わりのエスパーがいるわよ!
 …………それにその計画に参加するとシンジは私と二年間も離れ離れになるのよ!
 私なんかいなくなってもシンジは平気なの?」

私は今まで抱えてきた気持ちを全てはきだすようにシンジに問いかけた。

「平気なほど僕は冷血じゃないよ」

私は手を伸ばしてシンジの着ているセーターをぎゅっと握りしめた。
シンジをどこにも行かせないように。

「じゃあ…………どうして?」

半泣きになって問いかける

「もしも本当に小惑星が地球に激突するとしたら…………
 僕はどうしても行かなければいけない
『行きたくない』なんて絶対に言えないよ」

「………………………………」

「……それにこの地球上には幸せな人も不幸な人もいて
 50億人いれば50億通りの考えがあって
 そのほとんどの人はまだ死にたくないはずだよ
 ……そしてその中にはアスカもいる」

シンジ………そうか………
その50億人の中にはシンジもいるんだ
私もシンジやママやパパそしてヒカリ達が死ぬなんて考えたくない。
きっと私とシンジの立場が逆だったとしても私も間違いなくドイツへ行くと思う……。

「それに約束しただろ僕はアスカを守るって」

その言葉を聞いて私は両腕をシンジの背中に回し、強く抱きしめた。
するとシンジも私の体に腕を回したを強く抱きしめてくれて私達は堅く抱き合った。


数秒か,数十秒か………。二人にとっては永遠に感じられた時であった。


突然にシンジは抱きしめていた両手を離し、ガッ、とアスカの両肩を掴んだ。


「アスカ!実は僕は君のことをずっと…」

「待って!!!」

「……待ってよシンジ
 その続きはシンジがドイツから帰ってきてから聞かせてくれる?」

もし私の期待通りの事をシンジが言ってくれたら私はまたシンジを引きとめたくなってしまう。

「その替わりに………」

―――ちゅっ。

私はシンジにいきなりキスをした。
ファーストキスは涙で少ししょっぱい味がした。




 
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この日……
シンジの家に高級車に乗った人達がやってきてシンジのご両親と何やらお話したみたい。

政府のおエライさんだと思う。

次の日の朝、シンジはその人達に連れられてドイツへ旅立っていった。





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シンジがいなくても

時間って過ぎるもので

鈴原や相田達も結構楽しくやってんだけど……

みんなやっぱり何か物足りなさを感じている。

私はというとだいぶ枕を濡らすことはなくなってきたけど

毎日がどうしようもなく寂しくてたまらない。

お願い早く帰ってきて

シンジ…………。





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『臨時ニュースをお伝えします………
 暦のうえではまだ二月なのですが今日、日中の気温が30度をこえました
 この原因を追求したところ何と信じられないような事が………
 なんと地球の公転が六か月分早く動いたため冬から夏になったそうです
 ですが気象庁の見解ではこれによる地球環境への影響はないとのことです』


あれから二年と少し

だいぶ雪の多い冬………

雪を降らせた雲が去って行った。

太陽の位置がかわり

真夏の日ざし

成功したんだね

シンジ!!!


帰ってくる……!

帰ってくる!

帰ってくる!

帰ってくる!

帰ってくる!

帰ってくる!

帰ってくる!

シンジが帰ってくるんだ!!

渚公園で待っていよう!!!




そしてシンジは立っていた。
私とシンジが出逢ったあの場所に

私はシンジが好きと言ってくれたとびっきりの最高の笑顔で話し掛ける

「続きの言葉…聞かせてくれる?」






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僕は帰ってきた。

アスカの待つ日本に

アスカに僕の思いを伝えるために

そしてその愛しい彼女は今、僕の目の前にいる。

流れ行く夏風に思いを乗せて僕はとびっきりの笑顔で答える。


































「大好きだよ アスカ!」


























FIN.




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後書き。

みなさん初めまして、トランペットと申します。
今回は私のデビュー作品であるレッド・コンプレックスなるヘッポコ小説を最後までお読み頂き大変ありがとうございます。
実はこの作品は集英社で出版されている藤崎竜先生のサイコプラスという漫画を参考に書き上げたのですが……見ての通り支離滅裂な文章になっています。

そこでみなさんが疑問に思われたであろうセカンドチルドレンは誰だ!?という疑問にお答えしたいと思います。
実はセカンドは渚君の設定にしてありました。渚君も登場させる予定でしたが諸事情で
そこまで手がまわりませんでした。本当にすいません。

他にもいろいろ疑問に思う所があると思います。その場合はメールで私に連絡を下さい。
必ずお返事いたします。

またこのような作品を登載して下さったジュン様には大変に感謝しております。
ありがとうございました。



 

 作者のトランペット様に感想メールをどうぞ  メールはこちら

<アスカ>トランペット様のデビュー第1作目の後編、完結編よ!
<某管理人>おおきに、ありがとさんです。
<アスカ>私もエスパーになれると思ったのにぃ!
<某管理人>アスカはん、セカンドやありませんでしたな。
<アスカ>はん!いいじゃない。私は普通の女の子で、シンジの帰りを健気に待ってたんだもん。
<某管理人>何をにたぁと笑ってるんでっか?
<アスカ>シンジが2年間も浮気をせずにがんばってたのよ。嬉しいじゃない。
<某管理人>そうでんなぁ。レイはんとカヲルはんとずっと一緒にいたんやさかい。間違いが起こらん方が…。
<アスカ>ちょっと、何よその言い方は。
<某管理人>あわ!ちゃいます!何もありませんよってに!

 
 さぁて、トランペット様のデビュー作の完結編。
 私はただの少女。あっと、“美”が抜けてたわ。私は普通の美少女ね。
 セカンドの名前もアイツに取られちゃったけど、こういうのもいいわよねぇ。
 一人シンジを信じて、待ち続ける私。
 くぅぅっ!すごくビジュアル的に決まってると思わない?
 ま、空白の2年を埋めるためにもこれからラブラブになってやるんだから!

<レイ>公転を戻さないといけないの。またシンジ君を借りるわよ。ぽっ…。

 何?今の何?ダメよ。もう絶対にシンジは貸さないからね! 

 トランペット様、素晴らしい作品をありがとうございました!

 また、よろしくねっ!
  

 

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