雪割草

 角川文庫 令和3年4月25日

雪割草 本文562P

 幻の長編。
 婚姻直前に母親の不逞の子とわかり破談となった有爲子は真実の父親を捜すため東京へ向かう・。
 平成の世に入り、横溝正史に幻の長編が存在することが判明した。捜索の結果、新潟日日新聞にて昭和16年6月から12月にかけて新聞連載された作品であることが判明した。※単行本出版後に昭和15年6月から京都日日新聞で連載されたものが初回であることがわかる。
 
(おそらく)横溝正史唯一の通俗小説。戦時下のため探偵小説の執筆ができず、さらに人形佐七シリーズまでも中断の通告を受けた時期、どういう経緯かは不明ですが執筆欲と収入(大事)を充足するために書かれた小説と思われます。その後、通俗小説を執筆していないことを考えると、作者的には“しんどい”分野だったのかもしれません。

 作品の内容的には…うん、通俗小説です。石坂洋二郎大好きな私には少し重いかな?

 

 戎光祥出版から平成30年に単行本として出版された時の表紙は『雪割草の絵』でした。その3年後に角川文庫として文庫本化されるという情報を目にした時、これは!!!と期待するのは当然でしょう。その期待通りに杉本画伯の表紙絵!眼福です。
 今回も帯がある無しで雰囲気が大きく変わります。帯があると紅い唇に目が行ってしまうのですが、全体でみると帯に隠れている、お辞儀をして背を向けた雪割草がいい味を出しているのです。そして何故か帯があると目立たなくなってしまう髪飾り(おそらく唇のインパクトが強いため?)がしっかりと自己主張しています。

 

 

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