医療費控除

・納税者又は納税者と生計を一にする配偶者その他の親族のために医療費を支払ったときは、
医療費控除の適用を受けることができます。

・別居している親に仕送りをして、親がその仕送りで生活をしている場合には、生計を一にする
親族になりますから、親の医療費を支払った場合には、医療費控除の対象になります。

医療費の範囲

医療費控除を受けられるもの 区分 医療費控除を受けられないもの
・治療を目的として医師・歯科医師に支払う
 診療費や治療費
・健康診断・人間ドックの費用で、重大な疾
 患が発見され、引続き治療を受けるとき
・虫歯、抜歯、歯槽膿漏の治療
・金歯、金冠、プラチナ、ポーセリンの義歯
 の挿入
・総入れ歯の費用
・不正噛み合わせ等の歯列矯正費用
・不妊症、人工授精の治療
・妊娠中絶の費用(優生保護法に基づいて
 医師が行う場合)
・痔の手術、RK手術(角膜切開手術)
・骨髄移植の提供者の手術費用
・臓器提供者の手術費用
・歯科ローンの借入金
・火傷や事故によるケロイドの整形手術
・自閉症の治療費
・病的なわきが症の手術費用
・人工透析費用
・急性アルコール中毒の治療費
・喧嘩による怪我の治療費
・海外旅行中に現地の医師等に支払う治療費
 (治療を受けた日の為替レート)
医師・
歯科医師
(外国の医師
等も含む)
・主治医や病院のナースセンターに対する
 謝礼金
・通常の健康診断、人間ドックの費用
・美容目的の歯列矯正費用
・美容整形手術、ホクロの除去、脱毛費用
・しみ、しわを取るための費用
・ラミネートベニア法の処置費(歯を白く
 する)
・歯垢除去費用
・眼科で検眼した費用
・予防接種の費用
・エイズの検査費用、パイプカット費用
・診断書作成料
・歯科ローンの金利、手数料
・交通事故の被害者への治療費
・獣医によるペットの医療費
・病気やケガの治療のための医薬品
 例:風邪薬、胃腸薬、湿布薬、傷テープ等
・ニキビ、水虫治療の塗り薬
・皮膚病治療のためのステロイド系の薬
・アトピー性皮膚炎のかゆみ止め、鼻炎用
 マスク(医師の指示があるもの)
・胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの治療薬
 H2ブロッカー(ガスター10など)
・家庭常備薬の補充費用
・医師の処方に基づく漢方薬、ビタミン剤
・下痢止めワクチン
・丸山ワクチン
・円形脱毛症の治療薬(フロジン液)
医薬品 ・疾病予防、健康増進、疲労回復のため
 の医薬品
・酔い止め、歯痛止めの薬
・アレルギー性鼻炎用のスプレー
・風邪の予防のためのうがい薬
・ウオノメ、タコの除去薬
・通常のビタミン剤、栄養ドリンク
・歯肉炎、歯痛のための薬品
・リアップ、バイアグラ
・通常の漢方薬、妊娠検査薬
・更年期障害の治療ホルモン剤
・自然食品、健康食品、低カロリー食品、
 薬用せっけん
・食餌療法のための食品
・育毛剤、使い捨てカイロ
・女性用生理用品、避妊具
・歯ブラシ、歯磨き剤の購入費
・コンタクトレンズ洗浄液
・やむを得ない事情がある場合の差額ベッド
 代金
・入院のための部屋代
・入院患者の食事代
・医師の指示による水枕、氷のう、吸い飲み
・病院のシーツ、枕カバーのクリーニング代
・家政婦の付添料
・家政婦紹介所の紹介手数料
・外国での入院治療費
・リハビリを受けるための温泉地等のリハビリ
 専門病院の入院費用
入院費用 ・本人の都合による差額ベッド代(個室を
 使用する場合等)
・入院患者の特別食、出前代
・親族に支払う付添料、食事代
・家政婦の食事代、謝礼
・パジャマ、下着、洗面具等の身の回り品
・パジャマ等のクリーニング代
・テレビ、冷蔵庫、電気の使用料
・医師や看護婦のお礼、心付け
・快気祝いの費用
・付添人の貸ふとん代
・輸血協力者への謝礼
・最低の用を足すための義手義足、松葉づえ
 補聴器、車イス
・治療のための保護メガネ、斜視用メガネ、
 眼内レンズ
・子供の弱視用のメガネ
・眼帯(ものもらい用)
・医師の指示に基づく血圧計
・医師の指示に基づく加湿器、空気清浄器
 など
・「ストマ用装具使用証明書」のあるストマ用
 装具の購入費用
・人工透析器の購入費用
・「おむつ使用証明書」のある寝たきり老人
 のおむつ代
・注射器の購入(インシュリン注射)
・心臓ペースメーカーの取付け費用、電池代
医療用器具 ・健康管理のための血圧計
・体温計、あんま器、空気清浄器・浄水器・
 加湿器
・難聴のための補聴器
・通常(近視、遠視、乱視、老眼)のメガネ、
 コンタクトレンズ
・介護のベッド、特殊ベッド、ウォーター
 ベッドなど
・筋力トレーニング用の器具
・腰痛治療の腰バンド
・身体障害者用の乗用車
・肩こり治療用マグネット
・磁気ネックレス、マットレス
・大人用おまる
・外反母趾を治療する靴
・家庭用医学書、かつら
・植毛、増毛の費用
・医師の送迎費
・通院のための交通費
・やむを得ない場合のタクシー代
・通院のための付添人の交通費
・遠隔地の医師の治療を受けるための交通費
・公費助成を受けている場合の交通費
交通費 ・一般的なタクシー代
・自家用車のガソリン代、駐車料金、高速
 道路利用料金
・入院患者に付添うため病院に通う場合の
 交通費
・長期入院患者の一時的な帰宅交通費
・湯治のための交通費、宿泊費
・遠隔地の医師の治療を受けるための
 宿泊費
・外国で治療を受けるための旅費、宿泊費
・転地療養のための費用
・化学物質過敏症(ホルムアルデヒド等に
 よる)を治すための引越費用
・治療のためのあんま、マッサージ、はり、
 灸、柔道整復などの施術費(マッサージ師
 などの有資格者が行う場合)
・接骨院の施術費
・医師や柔道整復師などが治療として行う
 カイロプラクティックの治療費
マッサージ・
整体等
・健康維持、疲労回復、ダイエットのため
 のはり、灸、指圧
・美容を目的とした、はり・灸など
・無資格者のカイロプラクティックの治療費
・旅館・ホテルでのあんま費用
・妊娠と診断されてからの定期検診、検査費
・出産のための分娩費用、入院費用
・流産による入院費用
・保健婦、看護婦等による世話の対価
・助産婦による分娩介助料
・出産後の保健指導料
・出産後の検診費用
出産等 ・妊娠確認のための検診料(非妊娠の
 場合)
・妊娠中の栄養補給のためのカルシウム剤
・親族に支払う看護料
・実家で出産するための帰省費用
・無痛分娩講座、母親学級の受講費用
・出産関連書籍、ビデオの購入
・おむつ、育児用品の購入費
・アレルギー用のミルク
・出産に伴う子供や家事のための家政婦
 費用
・食費、食事料
・特別食料、特別食加算、加工食加算
・室料、個室料、二人室料、室料差額(個室
 等は治療を受けるためやむを得ない場合)
・入浴料、入浴代
・通所者の長時間デイ・ケアにかかる老人
 保健施設療養費の額を超える費用
・「おむつ使用証明書」の交付を受けている
 おむつ代
老人
保健施設
・左記以外
・在宅療養の場合の家政婦の費用
・医師の証明のある温泉利用型健康増進
 施設(クアハウス)の利用料
・医師の証明のあるフィットネスクラブの利用
 料(週1回以上で8週間以上)
・B型肝炎の患者の同居親族が受けたB型
 肝炎ワクチンの接種費用のうち医師の
 診断書があるもの
・緊急を要する場合のヘリコプターなどの
 利用料
・指定訪問看護の利用料
・指定老人訪問看護の利用料
・施設介護は公的介護保険の自己負担額
 (食費を含む)の二分の一
その他 ・スポーツクラブの利用料金
・エステティックサロンの費用
・スピーチクリニック(言語訓練)の費用
・視力回復センターへの支払い
・有料老人ホームの利用料
・骨髄バンクの登録費用
・宗教家、心霊術による治療費
・断食道場の費用
・医師の資格を持たない人のカウンセリン
 グ費用
・遭難者の捜索費用
・遭難者が遺体で発見された場合の遺体
 の収容のための費用
・トイレの暖房工事費、温水洗浄便座
・家庭用入浴剤
・電気毛布


医療費控除の控除額

医療費控除の金額は、次の算式により計算します。控除額は最高で200万円までです。

総所得金額等 医療費控除額
200万円以上の場合 1年間に支払った医療費 − 保険金などで補てんされる金額 − 10万円
200万円未満の場合 1年間に支払った医療費 − 保険金などで補てんされる金額
                − 総所得金額等×5%


保険金などで補てんされる金額

医療費が保険金などで補てんされた場合には、その金額を支払った医療費から差し引かなければ
なりません。

医療費から差し引く補てん金 差し引かなくてよいもの
・健康保険制度から支給される療養費、家族療養費、
 高額療養費、移送費、家族移送費
・健康保険制度から支給される出産育児一時金
 配偶者出産育児一時金、付加金
・損害保険契約又は生命保険契約に基づく傷害費用
 保険金、医療保険金、入院給付金等
・医療費の補てんを目的として支払いを受ける損害
 賠償金
・その他任意の互助組織から医療費の補てんを目的
 として支払いを受ける給付金
・死亡したこと、重度障害の状態となったこと、
 療養のため労務に服することができなくなった
 ことなどに基因して支払いを受ける保険金、
 損害賠償金
・社会保険からの給付金のうち、出産手当金
 育児手当金、疾病手当金など
・使用者から支払いを受ける見舞金など(医療
 費の補てんを目的とするものを除く)
・所得補償保険にもとづく保険金等
・知人などからの見舞金

高額療養費は、一つの病院で月63,600円を超える自己負担の治療費があった場合に、被保険者
の請求によって給付されます。

<参考事項>

例:出産の場合 健康保険法 国家公務員共済組合法
地方公務員等共済組合法
内容 金額 内容 金額
被保険者(組合員)本人
が出産する場合
出産育児一時金 30万円 出産費 標準報酬月額の1月分
(最低30万円)
被扶養者である配偶者
が出産する場合
配偶者出産育児一時金 30万円 配偶者出産費 標準報酬月額の0.7月分
(最低30万円)

<保険金の額が確定していない場合>

・受取る保険金を見積り、支払った医療費から控除します。
・受取った保険金と見積額が異なった場合には、医療費控除額の訂正を行います。


その他注意点

・医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費の金額が適用の
対象となります。従って、治療等が年をまたがった場合であっても、支払いがその年中に行われて
いるものは、その年の医療費控除の対象になります。

・その年に治療を受けた医療費であっても、その年の12月31日現在で未払いの医療費は、医療
費控除の対象になりません。

・生計を一にする配偶者その他の親族とは、その後の身分関係、生計関係の異動によって生計を
一にする配偶者等に該当しなくなった場合でも、医療費を支出すべき事実が発生した時又は現実
に医療費を支払った時に生計を一にする配偶者その他の親族に該当すれば、その医療費は医療
費控除の対象とされます。

例えば、平成11年中に子供が結婚して生計を別にした場合でも、結婚前の期間(生計を一
にしていた期間)の子供の医療費については、医療費控除の対象になります。

・医療費控除の適用を受ける場合には、確定申告書に医療費の領収書を添付しなければなりま
せん。
領収書が無くても、家計簿、薬袋など、医療を受けた者・支払年月日・支払先・支払金額が明らか
にできる書類があれば、医療費控除の適用が認められます。

通院に利用したバス・電車の交通費は、元々領収書がありませんから、その明細を「医療
費控除の内訳書」
に記入します。

・健康保険組合等から受取った「医療費の内訳書」は、支払った事実を確認できる書類には該当
しません。