ママ、あのね。

幼稚園でね、いじめられてる女の子がいるんだよ。

僕ね、僕…。うん、わかってるよ。

こわいけど、がんばる!

アイツ、おっきな身体だけど、僕、逃げないよ!

 

 

 

 

1000HIT記念SS

勇気を出して、シンちゃん


ジュン     2002.12.21

 

 

 

 

 

 その数日後、第3東京市の、とある幼稚園は緊急父兄会が催されていた。

 議題は、先生と園児の暴力行為について。

 “シンちゃん”は頑張ったんだけど、相手が悪かった。

 息子の父が過保護な弁護士で、訴訟を起こすと怒鳴り込んできたのだ。

 園長がまず、事の次第を説明するのだが、何分お年よりだから話がくどい。

 そこで、こちらで簡単に事情を説明しよう。

 編入してきた女の子がたまたま外国の子で、赤の強い金髪で青い目をしていたのだ。

 日本語は喋れるし、読み書きも他の園児よりできるくらいなのだが、

 グローバルな時代にもかかわらず、狭い幼稚園の世界ではその子は異端児だった。

 先生は必死に止めてはいたのだが、彼女のいないところでいじめが繰り返された。

 といっても、いじめているのはもっぱら2人の園児。

 例の弁護士の息子。(悪徳)サラ金会社の社長の息子。肥満体とガリの対照的な二人だけど、身体が大きい上に腕力も口も立つ。とくに肥満体は先生や親の前で猫を被るから性質が悪く、他の園児からは嫌がられていた。ガリは暴力をふるうから怖がられていたのだが、金髪の子が転入してきてからはその子を集中していじめたから、内心他の園児はほっとしていたのだ。

 その金髪の子は泣かない。泣かないから、さらにエスカレートする。

 何をされても我慢するから、余計にいじめられる。

 そんな日が、もう半月続いていた。

 “シンちゃん”は最初は見て見ぬ振りをしようとした。でも、女の子のことが可哀相で仕方がなかった。

 その子の容姿に惹かれていたのだ。それは運命なのか、DNAのせいなのか…。

 そこで、こっそりと先生に話に言ったのだ。

 女の先生はさらに監視を強化したけれども、やはり限界があり、いじめは止まらなかった。

 ある秋の日の夕方のことだった。

 “シンちゃん”は結構一人で歩き回るタイプなので、その日も公園で遊んで、家に帰ろうと神社の森を抜けていこうとした。人通りのない森だから、ママが知ったらこっぴどく怒るだろうけど、“シンちゃん”はマイペースである。

 森の中に小さな祠があり、そこを通るときはいつもお参りをしていく“シンちゃん”だった。

「晩御飯がハンバーグでありますよ〜に」

 そう手を合わせて拝んでると、どこかから声が聞こえてきた。

 エイ!ヤッ!という気合なのだが、その声はひどく可愛らしい。

 “シンちゃん”は声のする方へ…祠の裏手に回った。

 そこは少し開けた場所になっていて、真っ白な胴着を着た女の子が空手の練習をしていた。

 そしてその女の子の髪の色は、幼稚園でいつも見る、赤の強い金髪だった。

「あ!」

 思わず声を上げてしまった“シンちゃん”を女の子は振り返って見つめた。

「なんだ。アンタか」

「あ、ごめんね。練習してたの?」

「うん」

「何?空手?」

「そうよ。ずっと小さい時からしてるの」

「へえ、凄いんだ…あれ?」

「何?」

 首を捻って考えてる“シンちゃん”の前に、女の子が立った。

「何かおかしい?」

「あのさ…じゃ、どうして苛められても何もしないの」

「はん!私が手を出したら、あいつら大ケガするもの。絶対にケンカするなってパパに言われてるから」

「へえ…そうなんだ」

「別にあれくらい我慢できるもん。修練の場と思えばいいのよ」

 難しい言葉を使うので、“シンちゃん”は目を丸くした。凄いや、この子。

「ねえ、しゅうれんってなぁに?」

「……」

「……」

「わかんない」

 そして、二人は笑い出して、あっという間に仲良しさんになったのだ。

 色々おしゃべりしているうちに、“シンちゃん”は女の子のことをいろいろ知った。

 ママが死んでしまっていること。パパも仕事で遅いから、いつもお弁当を一人で食べていること。

 “シンちゃん”はパパもママもちゃんといる自分と比べて、この子が可哀相になった。

「ねえ、これから晩御飯は僕んちで食べない?」

「ううん、いいわ。アンタんとこに迷惑だから」

「ママもパパも何も言わないよ。言うのは妹のレイくらい」

「妹いるの?」

「うん。来年幼稚園に入るんだ。やかましいんだ、いつも」

「へえ、いいね。家族いっしょで」

「うん、だから、ね?」

「ありがと。でも今日はいいわ。もうお弁当買ってるし」

「じゃ、明日」

「う〜ん」

「ね?明日、うちにおいでよ」

 女の子はにっこり笑った。

 “シンちゃん”は女の子が笑うのを始めて見た。

 まるで、ママと同じくらい綺麗だ、なんて幼稚園児上級の癖に思っていた。

「うん、じゃ明日ね」

「やった!あ、明日の幼稚園、何もって行くの?」

 明日は、自分の宝物を持ってきて、絵を描く事になっていた。

「ん?アンタは?」

「僕はね、ママに作ってもらったお猿さんのぬいぐるみ」

「わ!私も!私もママに作ってもらったお猿さんのぬいぐるみなの!」

「じゃ、一緒だね!」

「うん!」

 

 そして、その夜、“シンちゃん”はママに自分の決心を告げたのだった。

 その子を守ると、胸を張る我が子にママは涙をボロボロと流していた。

 “シンちゃん”のママは感情の起伏が激しいのだ。

 

 ところが、事態は“シンちゃん”の甘い予想を大きく裏切って、ハードな展開を示すのだった。

 ガリが女の子の持ってきた、お猿さんのぬいぐるみの首を引きちぎったのだ。

 それは一瞬の出来事だった。

 “シンちゃん”は女の子の眼に、深い悲しみと激しい怒りを見た。

 そして、床に倒れていた女の子がゆっくりと立ち上がったとき、昨日の女の子の言葉を思い出した。

 

私が手を出したら、あいつら大ケガするもの

 

 ダメだ。女の子に手を出させては。

 そう思った次のときには、“シンちゃん”はガリの身体に思い切りぶつかっていた。

 不意をつかれたガリは、後ろに飛ばされたが肥満体がクッションになって、それほどのダメージは受けなかった。

 むしろ肥満体の方が床に頭をぶつけて、べそをかき出した。

「やりやがったな!」

「のきなさいよ!」

 女の子が“シンちゃん”の身体を押しのけようとする。“シンちゃん”は女の子の方を向いた。

「だめだよ。手を出したらだめなんだろ?」

「うるさい!もう許さないんだから!」

「なに言ってんだ?この馬鹿!」

 そう怒鳴ると、ガリは“シンちゃん”の背中を思い切り押した。

 “シンちゃん”は女の子を下敷きにして、床に倒れる。

 その背中をガリはグーで殴りつける。

「ちょっと、アンタのきなさいよ!」

「ダメだよ、ね。ケガさせたら、ダメだよ」

「だって、アンタがケガするよ…」

 そう言うと、女の子は目に涙を浮かべた。

 背中は凄く痛かったけど、“シンちゃん”は幸せだった。

 その時、マユミ先生が職員室から走ってきて、ガリの頬にびんたを一発お見舞いして、その場は収まった。

 

 しかし、翌日、幼稚園を休んだガリと肥満体の親が、怒鳴り込んできたのだ。

 叫んだり恫喝するのは、ガリの親の(悪徳)サラ金会社社長。

 柄の悪そうな社員を連れてきている。

 それを抑えるように見せかけながら、肥満体の父親の弁護士はじわじわと園長とマユミ先生を責める。

 しかし、あくまで非を認めない園側に、まず緊急父兄会を催すことになったのだ。

 

 やつらの作戦は、まずサラ金組の連中に恫喝させ、場を自分たちのペースにし、

 そして、最終的にはマスコミの力を使って、示談にして賠償金を得ようとしていた。

 そのため、園内暴力だと新聞社に連絡して、記者とカメラマンを来させるようにしている。

 しかも時間を30分わざと遅らせて連絡しているので、それまでの間に騒がせようというのだ。

「すみませんが、あなたはご父兄では…」

「何ゆうとんねん。わいは坊ちゃんの兄貴や。父兄って字には兄も入っとるやんけ!」

 会が始まる前から、サラ金組パワーは全開である。

 悪の権化二人はそれぞれの子供を横に座らせて、ほくそ笑んでいる。

 肥満体とガリは大げさに包帯でグルグル巻になって、にやにや笑っていた。

「せや、坊ちゃんにケガさせたんは誰や?そこの暴力教師と、あ〜、暴力園児はどこにおるんや」

 ガリの兄こと、悪徳サラ金社員は大阪弁で怒鳴った。

 真っ青な顔をした女の子は、隣に座っている“シンちゃん”の手を握った。

 “シンちゃん”は少し怖かったけど、手を握ってもらって、勇気が湧いてくるような気がした。

 そして、“シンちゃん”がイスの上に立ち上がって、僕だ!と叫ぼうとしたとき、

 頭を優しく撫でる、大きな暖かい手があった。

 その手の持ち主は、無言で立ち上がって、大阪弁悪徳サラ金社員をじっと睨みつけた。

 髭にサングラス。威圧感たっぷりのその姿に、彼は黙り込んでしまった。

 “シンちゃん”のパパの貫禄勝ちである。

 手下の情けない姿に、社長が立ち上がろうとしたが、弁護士がそれをとどめてゆっくりと立った。

「おやおや、そういう姿で私たち被害者を威圧しようというのですか?

 いやはや、暴力園児の親ともなれば、所詮このレベルですな」

 弁護士が連中を抑えたのは、新聞記者の姿をホールの入り口に見かけたからだ。

 これからは頭脳戦だ。あんなヤクザまがいのヤツに私が負けるはずがない。

「まずは、問題をはっきりさせましょう。あなたの息子さんに私の息子が怪我をさせられたのは間違いありません。

 この通り、診断書もあります。ことの是非を問う前に、まず謝罪をしていただきたいですな」

 “シンちゃん”のパパは唇の端で薄く笑った。

 そして、サングラスを指で押し上げ、低い声で言うのだった。

「ふっ…問題ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バシィィィィ〜ンッ!

 

 

 

 

 

 

 ホールの扉が大音響とともに、大きく開かれた。

 そして、扉から入ってきて仁王立ちした、その女性の美しく長い金髪が勢いで靡いている。

 眦は逆立ち、への字につむっている唇からは今にも火を吹きそうな感じだ。

 

「アンタ馬鹿ァ!何してんのよ!」

 

 彼女は“シンちゃん”のパパを怒鳴りつけた。

 心配げに“シンちゃん”を見た女の子に、“シンちゃん”は優しく微笑み、

 そして、パパを見上げて言うのだった。

「ね、僕の言った通りだろ。ママを騙すことなんてできないよ」

「う〜ん。やっぱり無理か…」

 パパの声はさっきの低音はどこに行ったのかと思うような、優しげな口調に変わっている。

 “シンちゃん”のママはつかつかと3人の席の方へ歩いてくると、

 いきなりパパの髭を毟り取った。

 場内がどよめく。

 そしてパパの前で腰に手をやり、ぐっとにらみつけるのだった。

 パパはサングラスを取って、優しげな瞳をママに向ける。

「ご、ごめん、アスカ…」

「アンタね、司令の真似してど〜すんのよ。こんなことしても何にもならないでしょうが!」

「は、はは…。できれば穏便にと、思って…」

「何が穏便よ!大体司令の形見をこんなことに使わない方がいいわよ!

 司令が見てたら情けなくて泣き出すわ、きっと!」

「ひ、酷いこと言うなぁ…。あ、店は。店はどうしたんだよ!」

「はん!レイに任せてきたわ!」

「れ、レイに?!」

 パパ−碇シンジは悲鳴を上げた。

「お、おい!レイはまだ4歳だぞ!」

「だ〜いじょうぶ!レジの打ち方も知ってるし、一人で歯だって磨けるわ!ヒカリを呼んだから大丈夫よ!」

「いや、だから…」

「大体、どうして私にこのことを黙ってたの?」

「だって、アスカ、いつも滅茶苦茶するし…」

「あ〜!いつ、私が滅茶苦茶したっていうのよ!」

 場内は黙り込んで、碇家夫婦の口喧嘩を鑑賞していた。

 二人の目には回りは見えていないようだ。

 他人そっちのけで言い合う二人に、あちらこちらで含み笑いが始まりだす。

 そして、その波は全体に広がり、ついにみんな遠慮なく笑い出したのだった。

 全く変わってしまったホールの雰囲気に、アスカはにやりと笑った。

「あ、さては、アスカ。計画的にケンカふっかけたな」

「と〜ぜんじゃない。アンタとは頭の出来が違うのよ。馬〜鹿シンジ」

 そう言って、アスカは背中のデイバッグからお猿さんのぬいぐるみを出した。

 昨日の夜に、“シンちゃん”から預かっていた女の子のぬいぐるみだ。

 アスカは女の子の前にかがんで、膝の上にぬいぐるみを優しく置いた。

 ちゃんと首が繋がって、綺麗に直してある。

「あ…」

「はい、大事なお猿さん。もう大丈夫だからね」

 にっこり微笑むアスカに、女の子は慎重に言葉を選んでお礼を言った。

「ありがとうございます。おねえさん

 それを聞いて、アスカの顔は笑み崩れた。

 

「あ!喫茶『ASUKA』のマスターと奥さん!」

 新聞記者が二人を指差して叫んだ。カメラマンが条件反射で二人にフラッシュを浴びせる。

「はい?」

「あ、ほら。いつもモーニング食べに来る」

「あ!あ、どうも」

 もはや観衆と化した父兄たちの頭越しに挨拶が交わされる。

 すっかり和やかになってしまった場内の雰囲気に、これはいかんと悪徳サラ金社長が立ち上がった。

「こら、新聞記者!お前、顔なじみだからって、ごまかすんじゃねえだろうな!」

 指を指して怒鳴るその姿にもフラッシュが浴びせられる。

「いえいえ、記事にはしますよ。いや、いい記事になりそうだ。

 見出しはこうです。『エヴァに戦いを挑んだ馬鹿』どうです?」

「お、おい!馬鹿って俺のことか?!」

「ち、ちょっと待て。エヴァってどういうことだ」

 頭に血が上った社長を抑えて、弁護士が叫んだが少し血の気が引いている。

「ああ…だって、碇さんご夫婦は、あのエヴァのパイロットだったんですよ」

 その言葉にホール中がどよめいた。

 驚かなかったのは、碇家の3人と、入園時に事情を聞いていた園長だけ。

 女の子は“シンちゃん”の手を握ったまま、目を丸くして尋ねた。

「シンちゃんのパパとママが、エヴァに乗ってたの?私、絵本で読んだよ。すっご〜い!」

「うん。それでね、仲良くなったんだよ、パパとママ」

 女の子は憧れの眼差しで、アスカを仰ぎ見た。

 当のアスカは、いや、アスカもシンジも照れまくって真っ赤な顔をしている。

 いやはや30歳を越しても、この二人は…。

 その時、大阪弁悪徳サラ金社員が血相を変えて、二人の方へ走りだした。

 さすがに条件反射でファイティングポーズをとる二人の前に、彼は土下座をした。

「へ?」

「えらいすんません!わしが悪うございました!

 わし、あん時まだ7つで、使徒やらゼーレやらと戦ってくれた人に憧れて…。

 こんなんになってしまいましたが、今、眼からうろこが落ちました!こんな仕事もうやめます!」

「え、えっと…」

「もう、馬鹿シンジ。相変わらず、反応が鈍いわね。 さあ、顔を上げてください。もう昔の話ですから」

「いやそんな!もったいない」

「ママ、この人、いい人なんだね」

 シンジ譲りの“シンちゃん”ことシンイチの笑顔は絶品だ。

 大阪弁悪徳サラ金社員はシンイチと女の子にぎこちない笑顔を向けて、

「えらいすまんかったな。怖かったやろ」

「だいじょうぶだよ」

 彼は立ち上がると、社長に向かって叫んだ。

「社長!会社、やめさせてもらいます!すんません!」

「お、お前!」

「大体、診断書も医者脅して書かせたんでしょうが!」

 身内の裏切りに社長はおろおろ始めた。

 頼りの弁護士もこれから先の展開が読めるだけに、ひざがガクガク震えるのを止められない始末。

 事情のわからない、馬鹿息子たちは親そっちのけで話している。

「シンイチってすごいんだ」

「うん、エヴァの絵本、おれ大好きだぜ」

「ぼく、いい子になろっと。これじゃぼくたち、わるもんだもん」

「おれも!しとにされるのやだぜ」

 子供は楽である。簡単に悔悛できる。引っ込みがつかないのは、親二人。

 場の雰囲気から完全に孤立してしまっている。

 居たたまれない気持も手伝って、撤収を決めたようだ。

 嫌がる息子を抱えて、退場を始めた。

「おい!シンイチ!あした遊ぼうな!」

「うん!もういじめないでね!」

「もうしないよ!じゃあね!」

 赤面社長&弁護士コンビは、すっかりいい子に変身した息子を引きずって姿を消した。

 

 さて、この騒動に関する限りはもう終局である。

 この調子ならいじめは起こらないだろうし、記事にもしないと記者は約束した。

 今までエヴァのパイロットだったことを黙って暮らしてきた二人だったが、しばらくは周囲が煩いことだろうが。

「ま、仕方ないわね。この子達のためだったんだから」

「でも、やっぱりアスカにはかなわないや」

「ふふふ、ここが違うのよ」

 アスカは人差し指でこつこつと自分の頭を叩いた。

 実は弁護士の出方を予想して、新聞記者を先に自分で呼んだのだ。

 つまり、アスカの登場以降はアスカのシナリオ通りだったと言う事。

 大阪弁悪徳サラ金元社員の懺悔だけは予想外だったけど。

 二人は閉店した後の店に立って、客席に向かい合って座るシンイチと女の子を暖かい目で見つめていた。

 店番をしていたレイは疲れたのか、奥の部屋でもう眠っている。

「ねえ、あの女の子の名前知ってる?」

「あ、そういや、聞いてなかったよ」

「あのね、びっくりしないでね。キョウコっていうの…」

 アスカはそう言って、シンイチとスパゲティーを食べているキョウコを見やった。

 亡き母の名前の、自分と同じような容姿をした女の子。

 しかも、どうやらシンイチはその子を好きになったようだ。

 感慨にふけっているアスカをシンジは背中から優しく抱きしめた。

「あ…」

「シンイチは告白するかな?」

「どうだろ。私たちの子だから…素直に言えるかしら?」

「じゃ、リツコさんに薬作ってもらう?」

 笑いながらからかうシンジのわき腹に、軽くアスカは肘うちをした。

「ちゃんと告白したでしょ。薬の効果は切れてたの」

「ははは、ありがとう、アスカ」

「さてさて、我が息子は、素直に告白できるのでしょうか?」

 シンジの胸に背中を預けて、アスカは呟くのだった。

「勇気を出して、シンちゃん」

 

 

 

 

〜 The End 〜

 


<あとがき>

 こんにちは、ジュンです!

 1000HIT、ありがとうございます!

 まさか、こんなに早く1000HITが来るとは思っていなかったので、仕上げるのが大変でした。

 しかもネタバレしたら仕掛けがおじゃんという書き方で。どの辺りで気付きましたか?

>“シンちゃん”は最初は見て見ぬ振りをしようとした。でも、女の子のことが可哀相で仕方がなかった。
>その子の容姿に惹かれていたのだ。それは運命なのか、DNAのせいなのか…。

 ママそっくりだから気にもなるし、パパの子だから好みも似るのでしょう。ここを読み流していれば、私の勝ち。
 ん?と思われてしまうと、私の負け。わざとここにこの文を挿入しました。勝敗は掲示板で。

 1000HIT記念作だというのに、外伝だぁ!外伝といってもどれだけの人がわかるでしょうか?
 ターム様のところに投稿した、私の処女作の外伝です。
 『新薬』『認知』『告知』『平行世界』『夢のお店』と続く連作の外伝になります。

 あのシリーズでは文章が横に伸びて、読みづらくてすみませんでした。
 完全にど素人だったもので、HTMLが理解できていませんでした。

 このお話は『夢のお店』のラストから、9年後になります。
 シンジとアスカは、34歳。あ、すみません。アスカに怒られます。シンジが34歳で、アスカは33歳でした。
 ということで、シンイチくんはアスカ27歳のときの初産&長男となります。 

 もし、興味を持たれたら、是非ターム様のサイトでお読みください。ターム様のサイトはこちらからどうぞ。
 ジュンの原点がそこにはある!と宣伝をしておきましょう。読みにくいのは、ごめんなさい。

 作中で、「エヴァの絵本」という小道具を使いましたが、読んでみたいので誰か描いて貰えませんか?
 もちろん、最後のページは絵本の定石<そしてお姫様と王子様は結婚して、いつまでも幸せに暮らしました>で。
 そんな絵本をアスカは、シンイチくんやレイちゃんに読んであげてるんでしょうか?

 よもやの短期間での1000HITでしたので、大作の準備ができませんでした。
 掌品ですけれども、あの後の二人の姿をご覧いただけるのはライター冥利に尽きます。
 サイト再開してよかった。 

 ところで、このシリーズ。シリーズ名がないんですよね。
 『新薬』1作だけ書いてみようかな?から芋づる式に書き連ねたので、シリーズ名を付けてなかったんですよ。
 でも、人に説明するとき面倒やから…。なんかええ題名ないですか?あれば、教えてください!

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