2003HITきねんSS 「人の途絶えない村」 前編
辺り一面の草原。道はぽつんと一本通っているだけ、そんなところに村がありました。
とても小さく、特になにかあるわけではなく、そこら辺の村とあまり変わりません。
自給自足、その生活をもう何年も続けてきた村です。
その生活のリズムが崩れたのは今から15年前、一人の少女の誕生でした。
あたり一面の草原。晴れた太陽の下で鬱蒼と茂る雑草。辺りの草全てが緑で彩られている。そこにぽつんと一本のみ通っている道。そこだけが茶色い土を剥き出しにしている。その道を進む一台の車、ルノー。
道は、果てしなくまっすぐなので、最高時速で突っ走っている。青く彩色されたボディはぼろぼろで、色なんかかなりはげかけている。時々、石にぶつかり車が上下にゆれる。
「何も無い道だと思っているだろう?」
「・・・・・・・・・・・うん」
最初に声を発したのは運転席に座る銀髪の少年。髪の間から掛けている真新しいゴーグル、ゴーグルを通して見える青い瞳、茶色く彩色されたジャケット、腰にはベルトに収められたナイフが見えている。
女性が見れば誰もが振り返る美貌の持ち主だ。
そして、それに答えた少年、黒髪、黒い瞳。こちらは黒で彩色されたジャケットを着ている。こちらは腰にリヴォルバーが二丁収められている。
こちらも、横には劣るものの、美少年と言えるだろう。
「うん・・・・・・・・ってまた素っ気無い・・・・・・・・・・・」
「いや、だってそうじゃないか」
黒髪の少年が答えると、銀髪の少年はニヤリと笑って、
「実はね、レイから聞いたんだけど・・・・・・・・・・・」
黒髪の少年はレイ、という代名詞が耳に入ったと同時に顔をしかめた。
「また、レイ?前は酷い目にあったよ・・・・・・・・・・普通の人ならまず死んでいるよ・・・」
「ははは、僕たちは普通じゃないから大丈夫だよ。まぁ、最後まで聞いてよ」
隣で耳を塞いでいる黒髪の少年をなだめるように言う。
「この道をねずっと、ずっとだよ、まっすぐ行くとある村にでるらしいんだ。その村にはね、十五年前から、ずっと人が途絶えない町、ということで有名なんだ」
「人が途絶えない町?」
「あぁ、村の前にずっと人が行列のようにできているんだ。」
「・・・・・・・何のために?」
黒髪の少年が興味を持ち始めたように、隣の顔を見る。
「参拝だよ。参拝。十五年前に、少女が生まれたんだ。その少女は生まれつきある『力』が宿っているらしいんだ。いろいろ噂はあるけど、だいたい未来予知とか癒しとかだね。まぁ、おそらく、僕らと同じEVAだと思うけどね」
言い終わった後、興味がわいたかい?と黒髪の少年に聞いた。黒髪の少年は、うん、とうなずいた。
銀髪の少年は、そう、と微笑んでから、
「それじゃぁ、下りてくれるかい?」
少年の顔を見ずに言う。
「何で?」
「・・・・・・・・・エンスト・・・・・・・・・」
空は、オレンジ色に染まり、太陽は沈みかけている。
太陽に照らされて、草原の緑は、赤を帯びる。茶色い土にも赤を帯びさせる。
「この人たちはなんだろうねぇ?もしかしてここらへんで宇宙人と、はぁーと言いながら交信している危ない人たちかな?」
銀髪の少年が間の前で自分たちを囲んでいる男たちを見ながら隣にいる黒髪の少年に尋ねる。
男たちは十人くらいだ。
「僕の知識が確かなら『とうぞく』か『やとう』っていう類だと思うけど」
目の前の男たちは、少年たちにライフルや刀を向けている。
男たちはじりじりと詰め寄ってきている。
「話す余地なし・・・・・・・・・・・か」
少年たちの目が真紅に染まる。
黒髪の少年と、銀髪の少年が少しずつ後退していき、背中がぶつかり合ったとき、囲んでいる男たちの後ろからいかにもリーダー格のごつい男が、
「殺れ!!」
叫ぶと同時に刀を持った奴だけが切りかかってきた。銃だと味方に当たる恐れがあるからだ。
少年たちは上へ飛んだ。信じられないほどの跳脚力だ。
「!!!」
盗賊たちの顔に緊張が走る。
上に跳んだ少年たちは腰につけているそれぞれの武器を抜き放つ。
盗賊たちは銃を持っている奴は全て、上を飛んでいる少年たちに向ける。
そして、銃を向けた奴全てが、銃を撃つ前に血まみれになって倒れた。
黒髪の少年が脳天を撃ち抜いていた。わずか1秒足らずも間に・・・・・・・・
「!!!」
そして残りのものは驚きの声をあげる前に切り刻まれていた。
銀髪の少年のナイフは、赤く染まっている。
リーダー格の男は戦慄に震えた。
「ひっ、ひぃ!!」
チャキッ、
「たっ、助けてくれ」
カチャッ
「たっ、頼む!」
ドン!!
「・・・・・・・・・・・・・・」
「今までの人の恨みだよ」
「これはなんだろうねぇ?」
盗賊たちの馬車の中を漁っていた銀髪の少年が黒髪の少年に尋ねる。
黒髪の少年がどれどれ、と見てみる。
「・・・・・僕には、赤の強い金髪の、年は14,5くらいのとても綺麗な女の子に見えるけど・・・・・」
そこら辺から奪ってきたようなものがいろいろごろついている中に黒髪の少年が言うような少女が寝ていた。
「どうする?」
「どうするって言ってもなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・」
黒髪の少年と、銀髪の少年は焚き火の周りで談笑していた。
空はもう月が出ており、空は青く染まる。
少女はむくりと起き上がった。
「おっ!起きたみたいだよ」
少女が起きたことに最初に気づいた銀髪の少年は、黒髪の少年にそのことを告げる。
「大丈夫?」
黒髪の少年が少女に近づくと、少女はビクッと体を震わせてから、立ち上がり逃げるように走り出した。
だが、逃げようとした少女は後ろから手を黒髪の少年に掴まれて、逃げることはできなかった。
「ちょっと、落ち着いて、ねっ?どうせ囲まれてるんだし・・・・・・」
それを聞いた少女はえっ?て顔で振り向いた。
「ほら、あそこ、かすかだけどあれはランプの光だよ」
黒髪の少年は、草原の先を指差した。
少女は目を細めて見てみる。
わずかだが、黒髪の少年の言うとおり、ゆらゆらと揺れながら移動するランプの赤い色が見えた。
「ほら、落ち着いて、まぁ座りなよ、何もしないから」
黒髪の少年は、少し落ち着きを取り戻した少女に座るように薦めた。
少女は、素直に従い、焚き火の近くで座る。
「さてと、僕は碇シンジ、こっちで馬鹿食いしてるのは渚カオル」
シンジはよろしくって具合に握手を求めた。少女はそれに応え、シンジと呼ばれた少年の手を握った。
カオルと呼ばれた少年の方は、串で刺された肉をむさぼりながら、少女の方にやぁ、という感じで手をあげ、2人は一通り自己紹介をした。
「君は?」
シンジが聞く。
「わ、私はアスカ、惣流アスカラングレーです」
「アスカ?・・・・・・・・・」
アスカという名前を聞いたカオルは何かを思い出すように考え込む。手は休んではおらず、口に食べ物を持ってきている。
「ところで、どこに住んでいるの?」
考え込んでいるカオルを気にせずに聞く。
「この先の村です」
「この先って言うと・・・・・・・・人が途絶えない村って有名な?」
シンジがそう言うと、アスカは少し顔を曇らせ、
「そんなに噂は広がってるんですか・・・・・・・・・・・・」
と独り言のように呟いた。
「そりゃぁもう、レイが知ってるくらいに」
「?・・・・・・レイ?」
「あぁ、情報家のこと、ほとんど僕達が旅をするときはレイの情報を使ってるね」
「旅人なんですか?」
「そうだよ」
そういうと、アスカは目を輝かせ、
「すっごーい!あたし憧れなのよ!!」
そう言って目を輝かせている。話し方が先ほどと違う。
「・・・・・・・・」
「あっ、いえ、憧れなんです!いつかあたしも旅にでたいなーって」
シンジの視線に気づき、口調を戻す。
「別に、その口調でいいよ」
「いえ、気にしないで下さい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沈黙。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沈黙
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・旅の話、聞く?」
シンジが言うと、アスカは、すぐさま
「はいっ!」
シンジは、アスカと焚き火を囲み旅の話をしている。
カオルはもうすでに寝ている。
「シンジさんは、何故旅をし始めたんですか?」
アスカが聞く。
シンジは少し思い出すように間をおいて、
「いろいろあったよ、理由は、でも一番強かったのは、自分の場所がここではない、と感じたからかな?」
「何歳のときですか?」
「七歳」
「七歳!?」
アスカは驚いたような声を出す?
「凄いですね」
「んーー、まぁいろいろあったからね・・・・・・・・・・それより惣流さんは旅にでたいって言ったけど、何で旅にでないの?」
シンジが尋ねる。
アスカは顔を明らかに曇らせ、
「でれない理由があるんです」
「ところで、お姫様は寝たかい?」
「あぁ、ぐっすり眠っているよ」
シンジは、『やとう』から奪った馬車の中で寝息を立てながら寝ているアスカを見ながら言う。
「そう・・・・・・・・・・・シンジ君、今、思い出したんだけどあの子があの例の村の子だよ」
カオルが静かに言う。
シンジは驚いた様子も無く。
「だろうね」
「わかってたの?」
カオルが尋ねる。
「いや、だけど、旅の話をしているときに、口調が少し乱れた。元々の口調の上に足したような、丁重な言葉使い。小さな村でそんなことはまずさせない。させるとしたらかなり重要な人物。しかも無理やりにだろうと思ってたからね」
「さすが、・・・・・・・・・・・で、どうする?」
カオルが尋ねる。
「村に帰そう」
「いいの?話を聞く限り、村を出たそうだったけど・・・・・・・・・・・・・」
シンジは静かに、
「でれない理由があるらしい・・・・・・・・・・・・」
カオルは、ふーんとうなずいてだけで、もうそれには触れなかった。
「・・・・・・・・・相変わらず、真剣になると、口調が変わるね」
「親の影響だよ」
そう言って、カオルは手をあげる。シンジも同じく手をあげる。
すると、後ろから、
「ご理解早くて助かります」
男の声がした。
「僕たちは、『やとう』から助けてあげたんだけど・・・・・・・・・・」
振り向くことなく言う。
周りからは、先ほど確認した包囲していた人たちが詰め寄ってきている。
「・・・・・・・・・失礼。あなた方は、アスカ様を助けていただいたというのに、疑ってしまって・・・・・・・・・・お礼といってはなんですが、私たちの村に招待したいと思います。如何でしょうか?」
丁寧な口調で話す。
2人とももう手は下ろしている。
「カオル君、どうする?」
シンジがカオルに尋ねる。
「あの村ではね、旅人とか、参拝者を泊めないんだ。これは悪くない申し出だよ」
カオルがそう言い、暫く考えてから、
「それじゃぁ、招待されようかな?」
茶色く剥き出しになった道には、多くの人が並んでいる。
その横を一台の馬車が通り過ぎる。
門番が止めたが、何か手渡すとすぐに通した。
村の中は、面積こそ小さいものの、町、といっていいほどの町並み。
「凄いでしょう?」
リーダー格の男がシンジに尋ねる。
「惣流さんのおかげですか?」
シンジは逆に尋ねる。
「ええ、そうです」
それ以降、何も尋ねたり尋ねられたりしなかった。
暫く進むと、一軒の大きな教会が見えてきた。
「我々の村は、本来人を泊めません。そのため、宿屋が無いのです。唯一人を泊めれるような場所といえばこの、教会くらいです」
そう言って教会の扉を開ける。
中は、神秘的な感じがするように、いろいろと工夫がされている。
「さぁ、こちらです」
そう言って、案内された場所は、なんというか、普通に人が寝れるようにベットが三つ置いてあり、それ以外は特に無い。
シンジとカオルはとりあえず、荷物を適当な場所に置いた。
「ところで、何泊されますか?」
男が聞く。
カオルはシンジの顔を見る。
シンジは暫く考えて
「三日・・・・・・・・・・それと、二日目には参拝をさせてもらえないでしょうか?」
「かしこまりました。手配しておきます。あと、食事はどうなさいますか?」
「朝と夜だけお願いします」
それを言ってからシンジは確認するように、
「タダですよね?」
「ええ」
そう言って男は部屋を出た。
男が出たあとで、
「さて、僕らは町を見学しに行こうか?」
最近、金遣いが荒い愚者の後書き
えー中途半端ですみません、ここらで切っとかないと長くなりそうだったので、
さて、ところでこれは、ジュン様のサイト、2003HIT記念SSです。
1000HIT記念もまだなのに・・・・・・・・・・
まぁ、気にしないで下さい、いつか書きます。
んーー、まぁ後半も期待してくれたら嬉しいです。
作者の河中様に感想メールをどうぞ メールはこちらへ |
<アスカ>2003HIT記念が来たわ!
<某管理人>そっか、2003年やから2003HITか。こら気がつかんかったわ。
<アスカ>アンタが馬鹿だって証明よね。
<某管理人>せやから馬鹿はやめてゆうとるやん。アホにしてえな。
<アスカ>はいはい。で、アップロードの準備は?何、お雑煮食べてんのよ!
<某管理人>は?これは七日がゆゆうて、日本では…。あわわわ、わかりました!さっさとさせてもらいま!
<アスカ>やっと馬鹿が動いたわ。じゃ、私がコメントするわね!
ターム様のサイトでご活躍の河中様からの2003HIT記念SSが来ました!
異世界のお話で、私が奇蹟を生む少女なのよ!なんだかいいお話で次回が楽しみだわ。
<レイ>私は出ないのね、名前だけなの?
<アスカ>今、ぼそっと言ったの誰?ヒロインは一人で充分なのよ。そういや、コメディエンヌを募集してたから受けてみたら?
さあ、籠の鳥になっている絶世の美少女の運命はいかに?私を知らない世界に連れ出して…。
違うわ。アンタじゃないの、銀色オ○マ。シンジ、私のプリンス!待ってるからね!