それからいろいろなことがあった。旧東京市街は荒廃し、何もかもが崩れ果てていたし、生き物の姿は何もなかった。 
富士の噴火で全ては60cm以上も積もった降灰の下に埋もれていた。病院も住宅もビル街も粉塵が舞うばかりだったわ。 
それでも何とか先進医療センターを探し当てた。さすがに医療の中心だけあり、外部の粉塵は完璧に遮られ、医療区は健在だった。
やっぱり人影は一つもなかったけれどね。密かに期待していた私たちの落胆か大きかったけれど
最新の医療コンピューターにシンジをかける事ができた。分厚い処方箋。いくつかの可能性に沿った処方。
結論は出なかったが、このあたしがシンジをよく観察し、それに沿った薬物を与えていけばいい。詳しい指示も書かれていた。
今、これ以上の手段はない。それで処方と薬品を手に入れ東京を離れた。 またここを尋ねることもあるだろう。

その後に目指したのは松代だった。日本最大の産軍学政の複合都市。
ネルフの実験場も新設の半地下式の巨大都市もあり、人口も300万を越えていた都市だったがそこにも人はいなかった。 
シンジとあたしはそこで初めての雪を見ることになった。 


「アスカ、お誕生日おめでとう。」 

「ありがと、シンジ。どこから持って来たの、このケーキ。」 

「暇に任せて作ってみたんだ。この部屋にはオーブンレンジもあるんだから、つかってやらないとね。」 


秋に実ったせっかくの米は収穫することも出来ずに田で腐るに任せるしかなかった。 
だけど米はF1のハイブリッドではない。やせていくかもしれないが、毎年何十年かは繰り返し実り続けると思う。
ここには大学の実験施設としての完全水耕栽培式の無人プラントもある。
万が一時のために備えた、人口10万で100年間閉鎖してもやっていける 施設らしい。
また、各地の備蓄米はあたし達2人が食べていくだけだったら無尽蔵にあるといってもよい。 
もちろん電気の供給が暫く続けばだけど、火力発電が続かなくなっても水力や原子力発電所が動き続ける限り日本を照らし続ける。 
重要な軍事施設でもある松代に軍人がいないという事にあたし達は安心した。中央軍事管理室まで入りこんでも 人はいなかった。
組織的な軍が消えてしまったと言うことだけは確かだった。全ての武器はそのまま朽ち果てていくだろう。NN爆弾などの破壊兵器は
少なくともこの国に置いては全て管理されていて、全てにロックがかかっていた。そういうことも次第に分かったことだった。

簡単な軽飛行機程度ならあたしも整備や操縦が出来る。空からの偵察は爽快だった。 
シンジを載せて遊覧飛行をするのもなかなか楽しかった。 
そして、12月の声を聞き、あたしは今日、15歳になった。シンジは簡単な調理が出来る程度には指も回復した。 
こっちだって料理の腕は大分上がったわよ。なんと言っても春から冬までの間シンジの世話をしてきたんだから。 


なぜみんなはいなくなってしまったのか。
細菌とかウイルス、そして何らかの爆発にしても、この広い日本列島の隅々までそれがいきわたるなんて事があるだろうか。 
そして、世界中の人々までなぜ消えてしまったのだろう。突然の苦しみも悲しみもない最後の審判?
それは最後の審判ですらない。人がいなくなれば私たちが神と呼ぶ存在はいなくなってしまうのだから。

当たり前のことにふと気づいた。この現在のあたし達の日常は余りにも不自然だと言うことに。
なぜ、あたし達だけが残ったのだろう。 他の人たちと特別何か違うだろうか。
あたしは、この今の状況に陥って何か得をしたり、世界に何かを与えるような特別さを持っているだろうか。
シンジに聞いてみた。


「アスカはこの世界では僕の面倒を殆ど見なくちゃいけない。飛行機に乗っても、車で出かけても、必ず僕のところへ戻ってこなきゃいけないよね。」 


そんなの昔のアスカだったら我慢できるはずはないと思うよ、とシンジは私の問いをはぐらかすようなことを応えた。 


「昔だったら?昔のあたしと今のあたしはそんなに違うかな。」 

「アスカは、君と僕は兄妹みたいな物で、家族同然だって言ってたでしょ。僕のこと大事だって言ってくれた。」 

「う、言ったわよね。」 


確かに言ったから認めざるを得ない。


「あの時は僕も感激しちゃって、しがみつきあって泣いたりしたんだけど…」 

「なによ、嘘の感情だったって言うわけ?」 

「いや、確かにそういう感情もあるよ。だからこそあそこで泣けたんだけど、昔からそんな感覚を持っていたわけじゃないよね?」 

「何言い出すのよ。ずっと持ってたわよ。日本にやってきて、ネルフで一緒に活動を始めて、あんたに浅間で助けられて、そして…」 

「最初ははっきり嫌ってたじゃないか。」 

「ほ、本当は初めて出来た同い年の友達、仲間だったからもっと仲良くなりたいと思ってたわよ。でもいろいろあたしも意地を張るほうだから。」 

「僕はアスカのことを綺麗だとか可愛いなとかは思ってたよ。
なんていっても憧れの存在って言うか、眩しかった。その後アスカの中身を知るにしたがってもっともっと好きになって行った。」 

「す、好きって。何言い出すのよ。」 


あたしはシンジの顔を真っ直ぐ見れなくなって、俯いた。なによ、あたしともあろうものが普通の女の子みたいにっ!


「そうやって恥ずかしがったりするアスカは、前は見ることはなかったよね。
あの頃だったら、そんな君を見たら、どこか具合が悪いんじゃないかって心配したと思う。」

「ま、たしかにね。あたしでもそう思うわよ。」


口調だけは強気ね、あたし。


「僕をいつからそんなに大事だと思うようになったの?」

「だ、大事って。」


また、そんなことはないんだとか言いそうになったけれど、今更そんなことを言っても説得力はないと思い返した。
今のあたしがシンジを大切に思ってるって事は、シンジにも伝えてしまったことであり、今更撤回は出来なかった。


「この世界の最初の記憶、シンジを抱えて森を逃げていたときからよ。」


あの時は、シンジをどこか安全なところに隠して。自分が囮になっても守らなきゃってその事ばかり考えてた。その前の記憶は?
途切れていた。その前の記憶は、あのおぞましい復活した量産EVAに殺された瞬間の映像。
うっとうめき声を上げて、あたしは耳をふさいで口を堅く噛み締めながら、床にしゃがみこんだ。吐き気をこらえて体を震わせた。
確かだ。この後の記憶はいきなり森の中でシンジを担ぐようにして逃げていた記憶に繋がっていた。
あの白い機体によってたかって殺された記憶の前、それをあたしは思い出せない。いや、そこで起こったことは映像のように思い出せる。
それなのに、その時自分はどういう感情でその行為を行っていたのかそれがさっぱり思い起こせなかったのよ。
まるで、映画を見ているよう。

目の前で起こっている(架空の)現実は、その主人公であるあたしの外にある。当然その感情は分からない。
大体、自分の姿が自分の記憶の中に出てくるわけ無いじゃない。自分の表情が見えないから、人間は醜い行為を繰り返すことができる。
他人の行為は見えるが、自分のやっていることだけは見なくて済むのだから。その自分の醜い顔を見ないで済むから人は同じことを繰り返す。
そこで死ぬ前の自分の顔を思い出せない。自分の感情を思い出せない。シンジをどう思っていたのかも。


「どこまでも飛んでいけるのに、夕方には僕のところへ帰ってこなきゃいけない。帰ってきて食事を作り、洗濯をし掃除をして暮らす日常。」

「そんなこと、なんでもないわ。」

「僕の体が不自由だから、面倒を見なきゃいけないから。だから。」

「そうじゃないわ。同情や哀れみじゃない。」

「そうじゃないよ、この世界を形作っている意志の問題だよ。僕の体を不自由にしたのは誰か、君をここに括り付けているのは誰かってこと。」

「くくり、つけている、意志、ですって?何のことよ。」

「つまり、」


アスカをこの世界に引き込んだのは、君を失いたくない独占したい、僕の卑しい、惨めったらしいこころなんだ。そうシンジは言った。
君の本来の心を捻じ曲げ、僕に愛着させ、逃げられないような条件を自分の体に刻印した、自分自身なんだ。濡れた目をしてそう言った。
その、歪んだ君への執着が、君をここに縛り付けているんだ、と。

「馬っ鹿じゃないのっ!」あたしはシンジを睨みつけて言った。 


「たかが人ひとりの心が世界中をこんなに変えてしまうことなんて出来る分けないでしょっ。 
そんな事ができるのは、いるのかいないんだか分からない神という存在だけよ。あんた神様にでもなったって言うの?」 


もしそんなものがいるんだとすれば、それがシンジならば、あいつは寂しさのあまりあたしという今の存在を創り出したことになるじゃないの。 
まるで、アダムが神にイブを与えられたのと同じように、あいつに尽くすためだけの存在として与えられたことになる。 
それだったら、あたしにとってこの世界は創世記の世界だとでもいうの? 
最初の、追われている記憶は前の現実とつなげるための偽りの記憶だとでも?

たしかに、それだったら全ての記憶のつじつまがあう。

例えあたしがこの地球の上にいなくても、シンジがいなくても世界は変わりなく存在し続ける。当たり前のことだ。 
この世界が自分の心の中にできている世界、自分の世界だなんてことは妄想に過ぎない。 
シンジが言うように、この世界がシンジの妄想ならばもっともっとシンジにとって都合のいい世界のはずだ。 
あたし一人だけを自分のものにしたいが為の世界にしては、夢が余りに慎ましくささやかじゃないの。 

むしろいつでもシンジを自分だけのものにしたがっていたのはあたしかもしれない。 
レイはいなくなり、あたしをイラつかせるクラスメート達も消えた。 
束縛するミサトやリツコも消えた、ネルフが消え、エヴァも消えた。世の中の大人たち全てが消えた。他人は全て消えた。 
森の中であたしを追ってきたのはあたしが、あたしとシンジを隔てる有象無象から逃れる心象風景だったともいえるじゃない。 

第一あの温泉病院施設はエデンという名前だった。あたし達はエデンの東に置かれて追放さえたようじゃん。 
病院の名前はエデンの園。エデンの東に置かれたケルビム(つまり兵士達という虚像)達に追放され、あたし達は食料を捜し求めて苦労している。 
偶然にしては良く出来た符牒よね。聖書では追放された2人は次々に子どもを生み増えていく。 
あたし達は子供だからそういうことにはないけれど。でも、そのうち世界に二人きりの男女であれば自然とそうなってしまうと言うの? 
少なくともシンジを求めて世界を変えられるんであれば、あたしがその首謀者だと言う可能性だってある。 
シンジと2人きりの世界をあたしは決して嫌っていないのだから。と、いうより好んでいると言ってもいいかもしれない。 
だって、シンジの言う束縛、遠くへ飛んで行ったりしても夕方には戻らねばならないという束縛を、あたしは感じたことはない。
完全にシンジをあたしだけのモノにして、あたしだけをシンジが見つめてくれる世界。 
あたしこそ、この世界を作った張本人なのかも知れない。 
そんなにもシンジを欲していたのだろうか。そんなことを、あの時点では意識なんかしていなかった、はず。 

仮に妄想ではなく、あたしかシンジのいずれかがこの世界を望み、実現させたんだとしても、どちらの思いがこの原因なのかは分からない。
シンジもこの世界を望んだのだし、あたしが願っていた世界でもあるからだ。
もし、あたしとシンジが真に望んでいる事がもっと別にあったなら。
本心のさらに奥底で欲していることがあるのなら、それが全てかなえられた時こそ、この世界は完結するんだろう。
完結した先に何があるのか、あたしはそこから先を想像できない。
そう言ったらシンジは何故か落胆した顔をした。
だって、そこから再び動き出した世界が前の続きになるのか、新しい世界の産声が聞こえてくるのかは想像の外なんだからしょうがないじゃない。
あたし自身が、真に望んでいることもまだずっと先にあって、今の時点ではまだ思いついてもいないことなのかもしれないじゃない。
そんな風なことをあたしはシンジに話した。


「シンジ、この話が分かる?あたしの言ってる意味がわかる?」

「僕がこの世界で望んでいることは、アスカを僕だけのものにして独占したいってことだって、言ったじゃないか。」

「そう?それはもう実現してることじゃないの?この世界で、まださらにあたしに望みたい事が残っているって事?」

「そ、それは。」


何よ、そんなに真っ赤になっちゃって。この世界にあってなお、まだあたしに望む事があるの?随分贅沢な話じゃない。
あたしはもうあんたを放り出したりあんたから逃げ出したりするつもりはないわよ。
そう言ってみたけどシンジはますます赤くなるだけだった。一体何を考えてるんだろ、変な奴。
あたしは、きっともうシンジよりずっと先のことまで考えてるんでしょうね。だってあいつ、餓鬼だもん。
このまま、ずっとシンジと二人きりで生きていく可能性だって大きいのは分かってる。あいつが考えてることも薄々ね。
だけど簡単にわかってなんかやらないんだ。女の子にはそうする権利があるんだもん。そう思わない?
そうね、あと3年くらいはこうやって旅を続けながらリハビリしていくのもいいんじゃないかしら。

シンジが用意した楽園をあたしは否定する。むしろここはあたしが考えた世界。
だから、アンタはそんな体でなくてもいいの。自由に動き回って、アタシから逃げることができる世界だってかまわない。
でも、あたしは逃がさない。絶対に逃がさないもん。どこに隠れていたって絶対見つけ出しちゃうんだからね。
互いに好きになった二人にとって、そこにある世界は新たに生まれた世界。誰も存在しないのと同じ世界。
庇いあって、思いあって、求め合う。それでも誤解もあって、罵ったりひっぱたいたり、後ろめたかったりする世界。
この不便で障害だらけで危険な世界は、あたし達に取って完璧な世界なんだよね。


「シンジ。」

「何、アスカ。」

「そんなにあたしに執着してるの、それってどういう事なんだか、よく分からないんだけど。」

「ひ、ひどいよアスカ。」


頬を染め耳や首まで赤くしたままシンジは精一杯あたしに抗議したわけ。
でも、こういうことはきちんと区切りをつけてもらわないとね。


「だめよ、はっきり分かるように言いなさいよ。ちゃんと説明して!」


またもぐっとつまったシンジは、自分の口をこじ開けるように開いた。


「そっ、それは。僕が、アスカのこと。」

「うん、なに?」

「この世界全部と僕自身と比べてもいいくらい、」


あたしも意地が悪いなぁ、もうそろそろ赦してやろうか、と思ったときだった。


「アスカのこと、大好きなんだ。自分よりも好きなくらい。」


怒ったみたいにシンジは大声で叫んだ。誰もいないのが分かっているのにあたしは周りをとっさに見回して、
「ば、馬鹿、大声でっ!」なんて叫んでた。

シンジはそう言いながら、そのままあたしの両肩をつかんで唇を押し当てていた。あたしの、唇に。
不思議な感触。これが、キス?シンジの唇?


「バカッ!何すんのよっ。」


だだっと、払いのけながら2,3歩下がって叫んだ。


「謝らないからね、僕はアスカのこと好きなんだ。嫌だったら思い切りぶん殴っていいよ。」

「ひっぱたいていいよ、って言わないところがあんたあたしのこと良く分かってるわよねえ。」

「そりゃ長い付き合いだからぐはっ。」


綺麗にショートアッパーが決まってシンジはひっくり返った。そ、この場合ひっぱたくじゃ赦されないのよねっ。
もがいてるところにあたしは踊りかかってシンジを押さえつけた。
そして、目をシロクロさせているシンジの唇を奪ってやったわ。
あたしの唇を「奪う」なんて、けっこう情熱的じゃない。それがとても嬉しい気がした。当然やり返すっ。

他の奴なら絶対赦さないくせに、と自分で自分を可愛いと思う。
でも、ここから先は3年後だからね。あたしは唇をぬぐって立ち上がると、シンジを見下ろして笑った。


「ね、あたしがいつからシンジを好きだったか、知ってるの?」











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閉塞した世界にて −所謂妄想と呼ぶべきあとがき−

by ジュン

 世辞や社交辞令は文字数を増やすだけだから割愛。
 いきなり本論に入ります。さて、読後感は如何でしたか?
 この作品はいろいろな考え方ができます。私はこんな感じで受け取りました。
 まずこの世界を形成しているのは彼の言葉通りにシンジである、と。
 そして、彼らの目に見えているものが全て現実のものだろうかどうかと気になりました。
 何故なら形が変わるほど噴火している富士山。それはいつ噴火したのでしょう。サードインパクトの時?
 ならば赤い海のほとりで目覚めた時にはすでにそうなっていたということになります。
 でもそこまでの天変地異が起こって高速道路が寸断し火山灰が数十センチ積もる程度で済むかなと疑問に思います。
 何しろ4WDで東京まで行くことができるのですから。
 そういうことをベースに考えると、形を変えた富士山はこの世界の象徴ではないでしょうか。
 それだけの変化がこの世界に訪れたのだというビジュアル的効果をアスカに与えるためのもの。
 だが、アスカがシンジのために東京に向おうとする。戦車でも装甲車でもないのです。
 橋が落ちているだけでもう先には進めないではありませんか。何しろ身動きができないシンジを連れているのです。
 しかしアスカは目的地に到着しています。時間がかかっても。
 つまり彼女の意思は妨げられていないのです。
 東京から松代への行程も同様です。
 そしてさらにシンジの身体のことがあります。
 アスカが献身的にマッサージを続けることで筋肉を維持してきたとありますが、どうもそうは思えません。
 何かしらの力が作用して、動けないが、機能はまともにしないが、肉体的には問題がないのではないでしょうか。
 これは身体を動かすことができれば、何かとアスカと対立し喧嘩別れをしてしまうかもしれない。
 いや、それよりもこんな自分をアスカは見捨てることができるわけがない。
 だから、自分にいわば魔法をかけた。
 それを自覚していなかったのです。
 だが彼には考える時間が山ほどありました。身体を動かさないといけないアスカと違って。
 その間に彼は正解に行き着いたのでしょう。
 しかし、アスカにはその事実は認めることはできない。
 何故なら、これこそが彼女の望んだ世界でもあったからです。
 シンジは動けない。
 愛するものは彼女の元から去ることはできない。
 二人だけしかいないので身体的にはなかなかきついものはあるが、精神的には彼女にとって素晴らしい世界なのです。
 それがすべてシンジの作り出した世界だなどと誰が認めることができるでしょうか。
 いずれにしても、この閉塞された世界の中で二人は満ち足りているのです。
 でも…。
 この世界は現実なのでしょうか?
 何者の手を借りたのかわかりませんが、彼にそこまでの力があるのでしょうか。
 都合よくエデンの園の施設があり、そこから東の荒野に向う。
 この二人がアダムとエヴァであるなどと。
 アスカが言うようにあまりに符号が合いすぎています。

 ふと、思いました。
 この二人はもしかして終わらない夢を見ているのではないか、と。
 そして、もう絶対に大丈夫だ、二人は何があっても別れることができない。
 そんな彼にも彼女にも自信ができた時、二人は目を覚ます。
 それはあの赤い海のほとりかもしれません。
 一ヶ月ほど経過したネルフの病室かもしれません。
 そのように私は感じました。
 さて、皆様は如何ですか?
 二人の心が満ちた時に溶けていた人々が人間の姿を取り戻す?
 いや、アスカ自身のつくりだした世界でシンジはずっと牢獄(おい)の中?
 いくつもの考えかただできる作品です。

 因みに私の考えは当たっているのかな?
 まあ、正解を求めずともよしとしましょう。
 正解が明記されてない以上、読後の感想は読者のものなのですから。
 
 2006.9.17

 

 

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