女神になんて
なれないまま
私は生きる


無名の人     2009.12.09





ありがとう。ありがとうございます、リリンのみなさん。115歳の誕生日がこんなにうれしいとは思わなかったわ。葛城ミサト、心から感謝申し上げます。お返しと言ってはなんだけど、ATフィールドによる体験共有形式で、リリンのみなさんにプレゼントをしたいと思います。

 つい先日、我がHendekatheon11神)がDodekatheon12神)に増えたことはご存じですよね。100年にわたって自分の心の中に自分を封印し続けたシンジ君が皆さんのご助力のおかげで帰還しました。ロンギヌスの槍の再生プロジェクト、事が済んだ後処分するという私たちの要望を理解してくれた上で遂行してくださったことにも深く感謝しています。

S2機関を有する身とは言え、シンジ君には今しばらくリハビリが必要ですが、幸いなことにアスカの支えが功を奏しているようです。彼にとっては「100年後の世界」である現代にも直に慣れて、皆さんの前にアスカと共に姿を現すことでしょう。それを見届けたら私はまた消息不明です。気ままに宇宙を散歩することにいたしますが、その前にあの時の様子を、みなさんご覧になれなかったことと思いますので、お伝えしようと思います。

 まずは皆さんの知っているシーンから

 

 VTOLから槍を受け取るとミサトはATフィールドで宙に浮き上がった。

 他の7柱の神々も各々の方向に飛び、かつてエヴァンゲリオン量産機が描いた陣を形作る。そのまま槍を掲げるミサトを中心に生命の木が蒼穹に現出した。

 (さあ、あの生命の樹の根っこを見てごらん)

 天に向かう根の浮かび出る空間から、かつて見たことのある光景、ディラックの海が開かれた。そして、中からあの時よりはずっと小さな黒い月が現れる。そして、その中に薄く磨かれた水魚石中の魚のように朧に見える人影。

 

 「アスカ、最後はあなたの力が必要よ」

 「何をすればいいの」

 「こっちに来て、あなたの本当の気持ちをシンちゃんに伝えるの。あなたにしかできないことよ」

 「……そんな簡単なことで」

 「そう。そんな簡単なことに100年もかかったの」

 『馬鹿、シンジ……』

 

If now(いまー)

「シンジ」

I know, I know I’ve let you down

「アスカ?

my dreams come true,(わたしのー)

…ひさしぶり」

I’ ve been fool to myself

「寝ぼけてんじゃないわよ。

I will try(ねがいー)

こっちに手を伸ばしなさい」

I thought that I could

「無理だよ

to get wings.(ごとーがー)

ずっと眠っていたからね

Live for no one else

ここだけが僕の居場所

It is my only hope(かなーうーなーらばー)

ここでなら誰も傷つけない」

But now through all the hurt pain

「馬鹿言ってんじゃないわよ」

and what I’m always dreaming.(つばーさーがーほしーいー)

「アスカだって分かっているはずだ

It’s time for me to respect

みんな、僕らを恐れ、最後には僕らを敬い始めた。

Just now(このー)

自分たちのために。

The one you love

誰も本当には僕らのことを考えていない。

give me white wings(せなかにー)

僕らの力を当てにしている。

Mean more than anything

兵器への愛だよ。

in the back(とりのー)

いざとなれば殺すことを求めてくるんだ。

So with sadness in my heart

だから僕は逃げた。

like a bird.(ようーにー)

壊すことしか

(I) feel the best thing I could do

「使徒」じゃないけど

I’m not an angel or(しろーいーつーばさー)

何もかも滅ぼすことしかできないんだ」

is end it all

「そうよ。本当は私たち神様じゃないもの。人間だもの。

a goddess but a creature.(つけーてーくーださーいー)

だからあんたは逃げた。

and leave forever

この大空の虚空の中に。

I’ll fly into the blue sky(このおおぞらーにー)

だけど、何かする度に悪くなるからと言って、

what’s done is done it feels so bad

自分の存在まで否定することはない。

without any tears in the eye(つばさをひろーげー)

うれしいことは続かないにしても、

what once was happy now is sad

悲しいことだって続かない

with the wings letting me fly. I(とんでーゆきたーいーよー)

ねえ

I’ll never love again

もう一度生きましょうよ。

will see the land in the sky(かなしみのなーいー)

悲しみがない世界なんてない。

My world is ending

すべてはいつか終わる。

where is no sorrow and sigh.(じゆうなそらーへー)

どんなに永くても。

I wish that I could turn back time

時計の針は戻せなくても、

I will try, I will fly to the sky,(つばさーはためー ( トゥ ) ( ) せー ( スカーイ )

前に向いて羽ばたくことはまだできる。

Cos now the guilt is all mine

アタシたち、一度世界を滅ぼしたけど、

fly high. ( フラ ) きた ( ーイ ) いー ( ハーイ )

また取り戻すことができた」

Can’t live without

I don't(いまー)

「自分を信じられない」

The trust from those you love

「なら、アタシを信じなさい」

need wealth, honor,(とみとかー)

「自分がしたことが忘れられないんだ」

I know we can’t forget the past

「忘れる必要はないし、忘れちゃいけないわ。

anything(めいよー)

ねえ、戻ってきても神さまの振りするだけなのよ。

You can’t forget love pride

本当の神さまになんてなれるわけがない。

else than wings(ならーばー)

それでいいのよ。

Because of that. It’s kill in me inside

今はそれが役目なんだから。

which I hope in my heart,(いらーなーいーからー)

いやなら逃げてもいい。

It all return to nothing, it all comes tumbling down,

アンタが逃げたいなら、アタシが一緒に逃げてあげる。

but I was dreaming so hard,(つばーさーがーほしーいー)

無に帰るのだけはやめて。

tumbling down, tumbling down

それはアタシたちが、どうしてもイヤなの。

when I(こどー)

お願い。

It all return to nothing, I just keep letting me down,

was a girl and(ものときー)

すねるのはやめて」

letting me down, letting me down.

「誰がすねているんだよ」

a woman(ゆめみー)

「アンタよ。

In my heart of hearts

誰も自分のことを本当には考えてないって思いこんで

wandering(たことー)

自分はこれだけ人に気を使っているのにって、いじけてる。

I know that I called never love again

傲慢なのよ。

who was on earth living(いまーもーおーなじー)

アンタの方こそ、本当は自分のこと神様と勘違いしてんじゃないの?」

I’ve lost everything

「僕の本当に考えていること、君には分かってもらえないんだね」

as one weak human being(ゆめーにーみーていーるー)

「言わなきゃ、分からない、って言うと思った?

Everything

アンタこそ、絶対に認めないだろうけど、全部分かるわよ。

I’ll fly into the blue sky(このおおぞらーにー)

それがまったくのガキの駄々っ子だってことも含めてね。

Everything that matters to me, matters in this world

アタシもそうだったもの。

without any tears in the eye(つばさをひろーげー)

だから、アンタがこっちに手を伸ばすのなんて期待してない。

I wish that I could turn back time

こっちから引っ張り出しに行ってやる。

with the wings letting me fly. I(とんでーゆきたーいーよー)

逃げるんじゃないわよ」

Cos now the guilt is all mine

「入って来れるかな?

will see the land in the sky(かなしみのなーいー)

ここは僕の内向きのATフィールド内。

Can’t live without

僕が引きずり込みたいものは入れるけれど、そうでないものは拒絶される。

where is no sorrow and sigh.(じゆうなそらーへー)

仮に入れたとしても、今度は出られないから、よしなよ」

The trust from those you love

「構わないわよ。

Fly me, wings. Fly me. Fly me. Fly−(つばさーはためーかーせー)

いい加減一人だけで女神様やんのには疲れてたの。

I know we can’t forget the past

ここらで休憩するわ。

I’ll fly into the blue sky(このおおぞらーにー)

腐れ縁のアンタなら、そんな狭いとこで一緒でも我慢できないことはないし

You can’t forget love pride

そろそろ首を絞められた貸しや

without any tears in the eye(つばさをひろーげー)

量産機に内臓を食われていても助けに来てくれなかった貸しを

Because of that. It’s kill in me inside

返してもらってもいいころだからね。

with the wings letting me fly. I(とんでーゆきたーいーよー)

覚悟なさい。

It all returns to nothing, it just keeps tumbling down,

お互い、半永久的に生きていられるんだから」

will see the land in the sky(かなしみのなーいー)

「僕はゆるされたくない

tumbling down, tumbling down

ここで息をひそめて自分を罰していたいんだ」

where is no sorrow and sigh.(じゆうなそらーへー)

「アタシだってゆるすつもりはない。

It all returns to nothing, I just keep letting me down,

永遠にあんたにへばりついて

I will try, I will fly to the sky,(つばさーはためーかーせー)

骨の髄まで

letting me down, letting me down.

愛してやる。

fly high.(ゆきたーいー)

それがアンタにふさわしい地獄よ」

 

 と、ここまでご覧になれましたか? では、あまり神々のいる世界観のなかでは座りが悪い記憶なので表面的には消去しますね。だけど、体験の根っこは皆さんの心に残って、いつか偽りの神々を必要としない時代が来た時、我々が人間に過ぎなかったことを思い出せるでしょう。それでは。

 

暗闇が破砕し、粉々になった暗黒の最後の一片が神々の放つ光の中に溶けっ去った後、居合わせたリリン達が見た者は、少年神を少女神が抱擁していた。この時、女神が男神に何を語り、封印から引き出したのか、神話は何も語らない。

 

 (ちょっと! 作者は誕生日記念のつもりらしいけど、この神話の中じゃ、私、ただのナレーターじゃないの! しかも、なかったことになってるし。マコト、いらっしゃい! 水がめ座あたりでやけ酒飲んでやる)


 
 
 
 
 
 

 

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