物事には原因と結果が存在する。
そして原因と結果の連鎖がこの宇宙を成り立たせている。
例えば宙にペンを持っているとする。
そしてペンから手を離すと「手を離す」という原因が「ペンが落下する」という結果を導き、
「ペンが落下する」という原因が「ペンが床に落ちる」という結果を導くように。
さらに原因と結果の間には一定の法則がある。
ペンから手を離すとペンが落下するのが当然であるように。
この原因と結果の間にある一定の法則を因果律という。




 

 

原因と結果

 


 

no name        2004.09.20

 

 

 
 

「で、その因果律がどうしたのよ?」

ここはネルフのブラックボックスとの異名を取る赤木リツコの研究室である。
彼女、葛城ミサトはこの部屋の主にして親友に呼ばれていた。

「原因と結果の間に一定の法則がある。ということはどういう行動を起こせばどんな結果になるか予測できるの。」

「そんなのわかるわよ。用件は何なの?」

「このソフトは未来を予測したり、逆にある結果を出したいときにはどういう行動を起こせばそうなるか予測できるの」

数ヶ月前、使徒なる正体不明の敵に第三新東京市は攻撃されていた。
が、ネルフは汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンでこれを撃退。
全ての使徒を倒し、主要人物に死者を出すこともなくサードインパクトを防いだ。
その使徒戦の事後処理も一段落つき、以前よりは暇ができるようになったネルフ。
リツコは暇を見てソフトをプログラムするのが趣味となっていた。

「・・・私に実験台になれと?」

「察しがいいわね。そういうことよ。どうすれば加持君と結婚できるかなんかもわかるわよ」

ミサトは恋人、加持リョウジとそろそろ結婚という形に落ち着きたいと思っていたが、相手はまだ何も言ってこない。
そんなミサトにとってリツコの話は願ってもないものだ。

「どうすればいいの?」

リツコはソフトを起動してデータを入力し、計算させてみる。
数分後・・・

「37分後に食堂でビールを飲めばいいわよ」

「は?そんなのでいいの?」

ミサトはわけがわからない。それはそうだ。ビールを飲むことと結婚がどう考えても結びつかない。
酔った勢いで・・・とも考えられるが自他共に認める酒豪であるミサトにはありえない。
そもそも今は勤務時間中である。ビールの1、2本を飲むことはあっても酔うまで・・・というのはさすがにまずすぎる。
いくら非常識な―――中学生に面倒を見てもらっていたり、1週間の内に4日はパトカーを引き連れているような―――ミサトでもそれくらいの常識はある。
なら勤務中にビールを1、2本飲むのは非常識ではないのか?と普通は考えるが彼女にとっては常識の範囲らしい。

「連鎖というものは少しずつ変化して最終的に最初のものから見ると大きく変わっているものよ」

「つまり試してみろってこと?」

「そういうこと」











――――37分後の食堂――――

「本当にこんなことで結婚できるのかしら?」

半信半疑ながらもとりあえずは試してみることにしたらしい。

カシュッ

プルタブを引き、ビールを飲もうとする。
するとそこへ・・・

「葛城君。今は勤務時間中のはずだが?これはどういうことだ?」

ゲンドウが食事を取りに来た。

「い、碇司令!あ、あのこれは・・・」

ミサトは突然の事態に言い訳をしようとする。
が、現行犯なので言い訳できない。

「司令室まで来てもらおう」

ゲンドウがそう言うと黒服が現れ、ミサトの両脇を固めて連行していく。

「ちょっとリツコぉぉぉどういうことよぉぉぉ」

食堂にミサトの叫びが木霊する。
ミサトはこの後数時間に渡って説教を受けるはめになる。

研究室では・・・

「ミサトにはいい薬ね。でも結婚できるんだから感謝して貰わないとね」

どうやらリツコは監視カメラで食堂の様子を見ていたらしい。












――――葛城宅にて――――

「ミサトさん、遅いね。連絡ないし・・・」

「連絡ないんならまた何かやらかして説教されているんじゃないの?」

「・・・かもね」

ここ、葛城宅には使徒戦時の様々な特殊な事情により少年、碇シンジと少女、惣流アスカラングレーが同居している。
使徒戦が終わったから元々いたところに帰ってもいいのだが、
せっかく友達もできたし何よりも気になる異性がいるので同居を続けている。
シンジとアスカは使徒戦のときからお互いに意識し、今では好きだと自覚している。
だが後一歩が踏み込めず、友達以上恋人未満の関係に留まっているのだ。

「シンジ〜お腹空いた〜」

「じゃああと一時間して帰ってこなかったら先に夕食を済まそうか」

そう言うとアスカはリビングでテレビをつけて横になり、シンジはその隣で座ってテレビを見ている。
最近ではこれが定位置になっている。

一時間後・・・

「帰ってこないね。先に食べようか?・・・アスカ?」

返事がないのを疑問に思いアスカの方を見てみるとアスカは寝ていた。

「寝てるのか。こんな所で寝たら風邪引くよ?」

そう言ってシンジはアスカを起こさないようにタオルケットをかけてあげる。

「アスカ・・・可愛いな・・・」

シンジはアスカの無防備な寝顔に見とれてつい呟いてしまう。

(あれ?寝ちゃってたのか・・・)

目を覚ますアスカ。だがまだぼ〜っとしている。
しかしシンジの次の一言でアスカの頭は一気に覚醒することとなる。

「アスカ・・・好きだよ・・・」

「え?今なんて?」

いきなり起き上がりシンジに聞くアスカ。
シンジはアスカが寝ていると思っていたので慌ててしまう。

「え!?アスカ!?」

「それよりも今なんて?」

「好きだよ。アスカ」

「アタシも・・・」










――――数日後、研究室にて――――


「ったく、あれは何なのよ!司令に怒られるし家では毎日二人にあてられるし!」

「でもそれで加持君のところに逃げてプロポーズされたんでしょ?ならいいじゃない」

「確かにそうなんだけど・・・」

過程はともかく、確かに結果は出ているので強く文句を言えないミサトであった。
人間万事、塞翁が馬とはこのことである。








FIN


 


 

後書き

国語辞書を開いたときに「因果」という言葉が目に入り思いつきました。
「two contacts」よりも前に思いついたのですがこれを機に書きました。
書いてみた感想ですがこういった方が書きやすかったです。
それではこれで失礼します。

 

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 no name様の当サイトへの1作目。
 リツコがまたもやわけのわからないものを開発したのね。
 でもさ、これってよく考えたら私とシンジがラブラブになるって前提での予測じゃないの?
 てことは、そこから計算されてミサトが帰って来れないようにしたってことか。
 うんうん、そう考えたらリツコにしたらまともなもの開発したってことよね。
 世の中はLASを中心に回ってるってことよ!わかる?
 ホントに素晴らしい作品をありがとうございました、no name様。

 

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