天体観測 第4話





限りなく広い宇宙・・・・・・・・・・・・・そんなものはいつまで続いたのか?

見上げても、見下ろしても、前を見ても、後ろを見ても、必ず終わりがある。

肉眼で見える距離ではないが、実際に証明されている。

人々の記憶に残されている地球。

つまり、その「終わり」の部分の場所はまさしく地球の表面だ。

砂漠があり、森があり、ビルがあり、海があり・・・・・・・・・

しかし、そこにすむことは出来なかった。

360度、その表面に閉じ込められているからだ。その上無重力と来た。

かつての人々は、その無重力を生かし、その中の空洞の部分をかつての宇宙空間と同等とし、そこに移住区などいろいろ作った。

移住区の中は、回転による重力や、人工発生の無重力などあったが、そこにすむ限り、そんな些細なことには気づかないため、とにかく人々はそこで暮らした。

しかし、暫くして、大きな戦争があった。

ことの発端など人は覚えてはいなかった。

その戦争は移住区ごとに独立し、手を組まずに戦ったため、収集のつかないほどの乱戦になった。

そのため、二度とその移住区を離れることが出来るほどの技術力を失った移住区もあった。

今だ、生き延びていた移住区は、「これでは流石にまずい」と感じたのか、生き延びていた移住区に休戦を申し入れ、そして、そのなかで一つのまとまった組織が出来た。

ゼーレ、と呼ばれるその組織は、わかっていただけで1500を超える移住区のうち、500のみの移住区で結成された。

それ以外は、もうすでにたいした技術力は持ち合わせていなかった。

そのゼーレではまず、今ある移住区以外はこの組織への参加を拒否した。二度とあんな戦争がおきないためである。

そのために、「未開惑星保護条約」というのが出来た。

規定の水準以下の移住区に干渉をしないこと、水準以上の技術を持ち込ませない条約だ。

次に、いろいろと決めた。

決める基準となったのは「ガンダム」の世界観。

自分たちの置かれている世界と著しく似ているのが理由らしい。

ゼーレの本拠地である移住区の名前をゼータTという名前にし、その移住区、つまりそのコロニーより、西にあるほうをサイド1〜サイド294と名づけ、東にあるほうをフロンティア1〜205と名づけた。

今はそれぞれが違う名前を提示しているが大体は今だサイド、フロンティアの影響が強い。

そして、それ以外の惑星は名前すらもつかなかった。

ただ座標軸を基準にy−45とか呼ばれたりする。

ちなみに西、東という基準は、「終わり」にある日本とブラジルらしき大陸が基準だ。

そして、休戦より約10年、暦を宇宙世紀と名づけた。

宇宙世紀0000年から0100にかけてMSの開発が行われたが、宇宙世紀0154年実際に発表されたのはMSではなくESだった。

エヴァシリーズ。

MSと全然違うこの機種が何故開発されたのかは不明だ。

ともあれ、人はあの戦争を忘れ穏やかに暮らしていた。

だが、再び戦争は始まる。NERVという組織とゼーレの対立だった。


 


                  「我らの世界」より一部抜擢


「やぁ、僕の名前は『運命を見定める者』。何?大仰だって?仕方ないじゃないかそうなんだから、

これからお話する話は一言で表すなら「狂」ん?わからないって?僕もわからん。

名前倒しだって?まぁまぁそんな顔するなよ仕方ないだろ?一人一人が持つ運命、そう、その運命を一つの旋律としよう。

その一人一人が持つ旋律は鮮やかで綺麗で美しい。一つだったら・・・・・・・・・・

だが、運命と言うのは人の数だけ存在する。つまり流れる旋律が一つという事はありえないのさ、

絡み合うと、綺麗な旋律を崩す。

スタッカートが妙に多く、ピアノやフォルテッシモがまったくなってない。

そう、もはやただの雑音だ。

そんな雑音を僕に見定めさせろって?意味を見出せって?そいつは無理だ。

そんな雑音を君は好き好んで聴くかい?

君はその雑音の中に何かを見出すのかい?

まぁいい、僕は語るだけだからね、君がすることだ

さぁ、始まるよ、

救いがあるのかもしれない、絶望しかないのかもしれない、希望はあるのか、絶望しかないのか、

前置きはなしにしよう、さぁ、心して聞いてね、うまく絡み合うことの出来ない旋律たちを!

耳障りな不協和音を!!



                「ディソナンス」序章より






「レイ」






「どうします?このデータ」

マヤがリツコに聞いた。

今、発令所にはこの二人しかいない。

他の人たちは、怪我した人は医療室に、無事な人は修復や雑務に駆り出されている。

マヤが聞いたのは先の戦闘で偶然に取れた零号機のデータだ。

偶然といってもマヤにはそんな気はしないが・・・・・・・・・・

「公開して構わないわ」

「わりました、ですが初号機のデータはどうします?」

リツコは少し悩んだ。

リツコが言葉に詰まるとは珍しいことだ。

常日頃豊かな知識で的確に指示を出していく、だが、このことに関しては少しやりづらいという感じだ。

「どうしてあの子はあのままなんでしょうね?」

指示ではなく疑問が返ってきた。

あの子、正確には子とはわからない、これは多分偶然だと思う。

初号機との通信が途絶えたときなにやらシンジが初号機の中で誰かと話していた。

そのこのことを言っている。

「あのまま?とは?」

マヤは聞き返した。

「そのままの意味よ、私にはあの子、運命を変えたい・・・・・・いや未来を変えたいようだけど、何で自分で行動しないのかしら?私にはあの子はそれだけのことが出来る存在とは思うけど・・・・・・・・・・」

うーん、と考え込む。マヤも考えてみる。

「無理だとわかってるんじゃないんでしょうか?」

「そう・・・・・・・・かもしれないわね、だけどそうでないかもしれない・・・・・・・・機会をうかがってるのかしら?」

「・・・・・・・・・・・報告はどうします?」

少し考えて・・・・・・・・・・・

「やらないでいいわ、原因不明と伝えておいて」

「はい」






星の輝きなど無縁な話。

宇宙とはいえ、宇宙でないこの場所では星霜などなく、ただ、コロニーからもれる光がかすかに届く程度。

そんななかを一隻の巡洋艦が通っている。

エスメント、先の戦闘の被害は目に見るより明らかで艦の外部はところどころで穴が空いている。

「しっかし、先の大戦は酷かったわね」

発令所、呟くのはミサト。

「そうですね・・・・・・・・・生きてるのが不思議なくらいですね」

「シンジ君に感謝っすね」

現在オートにしているため暇なオペレーター諸君。

マヤはリツコの付き添いで初号機の修理に当たっている。

「しかし・・・・・・・・・・」

そこで口に入れていた「この夏限定カルビ味」のおにぎりを一気に飲み込んだ青葉は、

「まさか、敵のパイロットを連れてくるとはね・・・・・・・・・・・・・」

「そうそう、しかもあの紅い彗星ときたもんなぁ・・・・・・・・・・しかし、それに勝つシンジ君もすごいよなぁ・・・・・・・・・・・・」

パチパチとコンピューターを動かし、先の戦闘のシンジのデーターを出す。

「シンクロだぜ?シンクロ。まさにニュータイプだな」

「ほぉーどれどれ?」

覗き込む青葉

「シンクロ率、41,3%、ダミーですら10そこそこだと言うのに」

肩をすくめながら言う。

ダミーですら10%・・・・・・・・・・つまるところは機体の性能を10%しか引き出せてないと言うことになる。

それに対しシンジは約4倍、まったくたいしたものだ。

ミサトは心の中で感心した。

「ん?何これ?」

青葉は画面の一角を指して言った。

「フィードバック指数。まぁ、機体のダメージがそのままパイロットに行く値。大体単純計算でシンクロ=フィードバッグだけど、この機体はOSがあるからOSがいかれないかぎりシンジ君に痛みは行かないと言うこと」

「で、今回どうだったの?」

「あぁーそれが・・・・・・・・」

頭を掻く日向

「最後で頭部を貫かれただろ?そのときからシンクロ、フィードバックともに観測不能でわかんないんだ」

「ふーん、でシンジ君は?」

「元気だよ、外傷や精神になにがあるというわけでもなくいたって健康、嘘みたいだろ、零号機とあれだけの・・・・・・・・・」

そこで日向は「あっ!」といい

机の引き出しをぶっきらぼうに開けると、中から一枚のフロッピーディスクを取り出した。

「なにそれ?」

「マヤちゃんがあの零号機のデータ−だって」

「零号機ってあの自爆した?よく取れたわね」

感心したように呟く。

日向はそのフロッピーを差込、立ち上げた。

画面の一角に今度は別なのが表示された。

その画面を見た瞬間、三人の顔に驚きが浮かんだ。

「シンクロ率42,2%・・・・・・・・・・・・だけどそれよりも・・・・・・・・・・フィードバッグ指数82%!?」

「それって倍以上の痛みが来るんじゃないのか?」

「あぁ、流石に痛みだけとはいえ、悪ければ発狂死するぞ・・・・・・・・・これは」

そう言い、日向はさらにフロッピーから情報を搾り出す。

「明らかに仕組まれてるな、どういうことだ?」


どういうことだ?


その問いに答えられるものはいまこの場所にはいない。

階級が一番高くこの間の指揮者であるミサトですら答えることは出来ないだろう。

歯車の流れる先を知っているとしても歯車が絡み合う形を知っているわけがない。

その歯車を構成している一つ一つなら話は別だが・・・・・・・・・・・・・・・






かちゃ、と小さな音を立てて扉が開いた。アスカだ。

アスカのいるこの部屋には先の大戦でシンジがつれて帰ってきたレイが今だ眠りから覚めず静かに眠っている。

今いる場所は、白く彩色された病室のような部屋だ。そこまで広くない部屋、白いベット、その横に机、机の上に、一輪の花が飾られている。シンジだろうか?

花瓶の中に入っているそれは、目が覚めるほどの赤、ふんわりするような紫がその赤の周りに色づいている。

見方によっては悲しい色だね、という人もいるかもしれないし、優しい色だねと言う人がいるかもしれない。

アスカはそれを見て何も思わなかった。

今じゃないとき、この場所でない場所、今目の前にいる人が違っていたらあるいは何かしら感想を持ったかもしれない。

アスカは静かにレイの寝ているベットの手前まで進んだ。

レイは寝ている。

レイの身体につけられている色々な機械がそれを画面に表している。

特に身体に外傷があるとかそういう訳で眠っているわけでは無さそうだ。

アスカはレイの顔に手を触れた。

そっと、そっと、

そして、なぞるように唇、鼻、目のところでその手を止めた。

瞼が閉じてる目を、無理やり開けさせる。

すると、確かに眼球があった。

あるにはあるのだが普通のと少し違う。

眼球の右下のほうに小さく、注意してみないと・・・・・・・・・・いや注意してみても見逃す。

明らかにそこにそれがあると確信をもって見なければそれには気づかないだろう。

眼球の下にあるそれは文字と数字だった。

とても細いのにしっかりと刻印のように刻まれていた。

A−Y−18と・・・・・・・・・・・・・・・

「私と同じか・・・・・・・・・・・・・」

アスカは静かに呟くと手を離した。

そして、暫くレイの顔を見ていた。

見ていたのだが、その瞳が映し出しているのは果たして今この場所にいるレイを映しているのか?



暫くして、アスカは見を翻しレイのいる部屋から出ようとしたが、机の上に花瓶以外の何かを見つけ踏みとどまった。

手にとって見ると、それは、錠剤だった、カプセル式の。

アスカはそれを見て、関係なさげに机に置き、再び出ようとしたが、なにやら思い直したらしく、再びその薬を手にとって見た。

そして、カプセルの中身を少しだし、手につけて軽く舐めてみる。

すると、アスカはやっぱり・・・・・・・・・・・という顔をした。

そして、アスカはその薬を残らず手に取り、部屋を出て行った。

「貴方がいなければシンジ様は運命に巻き込まれなかったかもしれない。そう思いたかったけど・・・・・・・・・・・・やはり仕組まれてるんですね・・・・・・・・・・・」

その後、アスカはその薬を全て捨てた。






かちゃ、と小さな音を立てて扉が開いた。シンジだ。

シンジがいる部屋にはシンジが先の大戦でつれて帰ってきたレイが眠っている。

先ほどの戦闘でのレイが嘘のように静かに寝息を立てながら寝ている。

シンジの手には一輪の花が花瓶に入っている状態で持っている。

目が覚めるほどの赤、ふんわりするような紫がその赤の周りに色づいている。

シンジはレイの寝ているベットの近くにある机の上にその花瓶を置こうとしたが、机の上になにやら乗っているようなので、手で隅のほうに寄せてから花瓶を置いた。

やけに多い薬だな・・・・・・・・・・とも思ったが、特に気にするようなことはしなかった。

レイの寝ているベットの前に立つ。

「この花は僕らの星、『地球』君から見るとただの未開惑星の花なんだ。「夢切花」といってね、この花は寿命が近づくと紫が赤を飲み込むように広がるんだ。情熱の輝ける未来を夢見ている赤が、ただ可憐に迫り来る紫がそれを終わらせる。そんな意味を持っているから「夢切花」哀しい感じだけど、この花の花言葉は「諦めない夢」なんだ。たとえ、赤、自分の夢が、紫、終わろうとしても最後まであがき続ける、その間とても赤く綺麗に咲く花なんだ。だから「諦めない夢」これを教えてくれたのは多分・・・・・・・・・・・・・・・」

シンジは、静かなレイの寝顔を見た。

なんとなくなんとなくだがお母さんという感じを覚えた。

実際、シンジは親の顔を知らない。

父も、母も・・・・・・・・・・・・・

気づいたときには一人暮らしをしていた。

どういうわけか働いているわけでもないのに貯金通帳には十分に暮らしていけるだけのお金が振り込まれていた。

そのため、お母さんがどんな人か?お父さんがどんな人かまったく知らない。

だけど、何故かレイにはお母さんという感じがした。

「なんなんだろうね?なんで僕は綾波がお母さんて感じがすると思ったんだろう?敵なのに、命をかけて戦った相手なのに」

シンジは空を仰いだ。

シンジの瞳に写るのは白く小奇麗な天井。

自分の母はどこにいるのだろう?自分の父はどこにいるのだろう?

この世界にいるのだろうか?それとも終わりを越えた本当の宇宙にいるのだろうか?

「父さん・・・・・・・・・・母さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ただ空に向けて・・・・・・・・いや、この巡洋艦エスメントの人工重力の働いている方向の逆に向けて呟いた。






「しっかし、シンジも敵さんつれてこんてもええのに」

「ま、シンジのことだしな・・・・・・・・・・・・敵に情けをかける気持ちもわかるよ」

トウジとケンスケは今、エリア3の通路を通っている。

先の大戦で壊れたエリア11からエリア60までの通路はとりあえず直っているがいささか不安が残る。

「しかし敵やで?しかもPES仕掛けてきた。そのうえ紅い彗星と来た」

「いいんじゃない?可愛いんだし・・・・・・・・・お、『紅茶伝説』」

ケンスケは目ざとく販売機にある「紅茶伝説」を発見し、ポケットから小銭を取り出して買おうとしている。

関係ないが「紅茶伝説」はマイナーだ。紅茶といえば、「激しい紅茶」か「激優しい紅茶」がメジャーだ。

トウジも紅茶伝説を飲んだことがあるが・・・・・・・・・・・甘い。甘すぎる。

パッケージを見てみると、350mlに対し砂糖が100gも入っていた。

ケンスケ曰く「普通だろ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・まぁたしかに」

先ほどの可愛いということに対し静かにトウジは同意した。

そしてトウジも販売機に近寄りコーラを買おうとしたが・・・・・・・・・・・・

どん!

販売機が何者かの手により叩きつけられた。

「「なんだ!?」」

二人が同時に疑問の声をあげると同時に危機を察し、後方に跳ぶ。

見ると一人の男が販売機を叩きつけながらこちらを睨んでいる。

見たところここの作業班らしいが、制服が違う。

マークがエスメントではなくボリーズになっている。

「おまえボリーズの・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「そうだ!!あの綾波レイ!いや、あの紅い彗星にやられた哀れなボリーズ艦の乗員だ!!」

ヒステリックに叫ぶ。

「なのに貴様らは何故あいつを連れてきた!?それが許せん!!」

言うと同時に殴りかかってきた。

「うわっ!?」

いきなりの事に驚くが身体はしっかりと避けていた。

トウジもケンスケもパイロットをやってる以上は護身術を十分に習っている。

突き出された拳を紙一重で避け、重心の乗ったその一撃を利用し相手の懐に入り込むと足を浮かし、背負い投げをかます。

どん、と仰向けに倒れる。

受身がろくに取れていなかったためダメージは十分のはずだが、すぐに起き上がってきた。

執念という奴だろうか?懲りずに殴りかかってくる。

今度は技をかけず、避けたり受け止めたりしている。

「あいつが、あの紅い彗星が許せん!!」

「なら俺らを狙うのは場違いというやつじゃないのか?」

「貴様らがあいつを連れてきた。だから貴様らも許せん!!」

「結局のとこ・・・・・・・・・・・誰でもいいんやな」

右のストレートを左腕の甲で軽く弾く、左からの横薙ぎを身体を沈めて避けるとがら空きになった腹の部分にトウジは容赦なく掌底を食らわす。

「ごっ!・・・・・・・・・・・・・」

かなりダメージはいった。

普通なら倒れてもおかしくないが、相手は気合で踏ん張りさらに蹴りを繰り出す。

さらに身体を沈めかわすと、すかさず背面を取り、延髄の部分を狙って手刀を下ろす。

どん、と今度こそ倒れた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「気にするなよ」

ケンスケが言うがトウジは拳をわなわなと握り締めている。

「気にせんへんわけがないやろ、確かに可愛いがあいつは確かにボリーズ艦を撃沈させたんやで?あの艦には何百人と乗っとった。ワイらの知り合いだっていたんやで?こいつの気持ちもいとうほどわかるわ」

倒れた男を見下ろしながら言う。

「・・・・・・・・・・・・・・・それが戦争だろ?」

「なんやて!!?」

トウジがケンスケの襟を掴む。

「もういっぺんゆうてみ!」

「ああ、言ってやるよ。これが戦争だ。トウジ、君と僕はまだここに来て一週間そこらしかたってない。戦ったのもあのPESだけだ。だが、こいつは何年、もしくは何十年もここにいたかもしれない。今まで何人の敵を殺してきたと思う?」

「知るか!」

「そう、俺にだってわからない。けど確かに殺してる。戦争だからな、何十人、何百人・・・・・・・敵にだって今の俺たちと同じ境遇の奴がいるだろ!!」

「だからどうした!!だから仕方ないことなのか!?だからあいつを許せとでもいうんか!?」

「許せ、とは言わない。ただ、敵のほうも見ろ。戦争は有無を言わさず自分の属する立場のほうしか見えないからな。こいつも人を殺す。敵も人を殺す。俺も、シンジも、委員長も、ミサトさん、青葉さん、マコトさん、伊吹さん、赤木博士、マユミ、惣流、綾波レイ・・・・・・・・・・・そしてトウジ、お前も人を殺す。その数だけ今の自分と同じ境遇の奴がいることを忘れるな」

「・・・・・・・・・・・・・ちっ!」

トウジは掴んでいたケンスケの襟を放すと、販売機を殴りつけた。

「すまんかった・・・・・・・・・・せやけどワイは・・・・・・・・・・・・」

「どうしてシンジは綾波レイをつれて来たんだろうな?」

急にケンスケは話題を変えた。

考えても仕方のないことだよと言わんばかりに。

「えっ?ああ、せやな、自爆する寸前に危険を顧みずに零号機のエントリープラグ抜きよったもんな・・・・・・・・・・・・」

そこで、よくよく考えてみるとトウジは当たり前のあることに気づいた。

「なんでそこまでするかいな?よほどなにか理由でもあるんやろか?」

ケンスケは気づいてなかったのか?と驚いた顔をしたがふぅ、と肩を上げ、殴られへこんだ痕が目立つ販売機から『紅茶伝説』を買った。

「ここの資料室を漁ってたんだが、『旧約新世書』というのがあった。いままでのこの世界の成り立ちについて書いてある本だが、他のやつとだいぶ違った。その本には『神』と『白の執行者』たちの一つにまとまりつつあった世界を人を『紫の堕天使』が壊したため、再び別れ、痛みが、苦しみが、憎しみが、悲しみが再び生まれた。とかそう言うかんじで書かれていた」

「で?」

「話は最後まで聞けよな」

『紅茶伝説』のプルタブをあけた。

「『神』に裏切りし、三体の天使『紫の堕天使』『赤の堕天使』『青の堕天使』そいつらは何故か本のなかじゃ、シンジ、アスカ、レイと呼ばれていた」

『紅茶伝説』のありえないほどの甘さを堪能しながら語った。

「まさか、それがシンジやあの綾波レイ、惣流というんじゃないよな?それにシンジ、アスカ、レイだってそうそう珍しい名前じゃないやろ・・・・・・・・・・・あの「アムロ=レイ」だってレイやし・・・・・・・・・・それにその本に書かれていることが正しいわけじゃないだろ」

「そこだ」

ケンスケは良くぞ気づいたと言わんばかりに眼鏡を光らせ、飲み終わった『紅茶伝説』の缶をゴミ箱に振り向かずに投げた。

もちろん入るわけはなかった。

「確かに、その本の信憑性は薄い。だけど、見方によっては酷似しているともいえないか?「紫」「赤」「青」「白」・・・・・・・・・・・・」

うーん、とトウジは考える。

その間にエコロジーなケンスケは落ちた缶を拾い、今度は狙って投げた。

また入らなかった。

「なんやねん?一体?」

お手上げらしくケンスケに尋ねてきた。

いいかげん諦めたエコロジーなケンスケは、手で取ってちゃんと投げずに入れた。

今度は入った。

「敵のESの基本カラーリングは「白」こっちは「白」「黒」「銀」があるとはいえ、「赤」「紫」「青」がほとんどだろ?」

「あっ、たしかに」

手をポン、と叩いた。

「せやけど・・・・・・・・・・・・・」

ケンスケは先回りして言う

「ああ、あくまで可能性の話だ。信じるなよな。まぁ、こう言う話をしたんだがシンジなりに綾波レイをつれてきた理由があるんだろ?それが解ってからでも怒るのはいいんじゃないか?」

「・・・・・・・・・・・・せやな」

ケンスケは満足そうにうなずくと、

「そんじゃま、こいつを運んでやるとするか・・・・・・・・・・トウジが持てよ」

「何でワイが・・・・・・・・・・・」

「気絶させたのお前だろ・・・・・・・・・・・」

「ちっ、しゃあないな」

トウジは気絶している男を担ぐと、医療室まで進んでいった。






綾波レイは静かに目を開けた。

まず写ったのは白い天井。

見るからに天国ではないので、自分がまだ生きていることを確認する。

ずきり、と頭が痛い。

なにやら頭の許容量を超えるほどのいろんなものが入ってくるような痛さだ。

頭を抑えるが気休めにもならない。

「い、痛い・・・・・・・・」

苦痛にゆがめた顔で言う。

言葉からも痛みが伝わってきそうなぐらいだ。

「く、薬を・・・・・・・・・・・」

普段から服用している薬を探した。

着替えさせられた自分の服には入ってるわけもないので、机の上を這い蹲るように探した。

とん、とガラスのような感触が手にした。

見てみると、ガラスの花瓶の中に一輪の花が刺さっていた。

目が覚めるほどの赤、ふんわりするような紫がその赤の周りに色づいていた。

綺麗な花だな・・・・・・・・と見惚れていたが、また痛みに襲われ、小さく悲鳴をあげる。

はぁ、はぁ、と息が荒い。

先ほどの痛みよりも激しい痛みのため、たつ気力さえもない。

机によたれかかるような感じで手探りで薬を探した。

探した・・・・・・・が見当たらない。

念のため机の中まで気力を振り絞り探したが見当たらない。

考えられる可能性は一つ・・・・・・・・・・・・・・

ぷしゅ、とエアロックが開くような音がした。

レイが振り向くとそこには黒い髪の少年と、赤の強い金髪の少女、黒髪の女性が立っていた。

レイは見た瞬間残る可能性に賭けた。

「薬・・・・・・・・・・・・・」

「へっ?」

三人の中ですっきょとんな声をあげたのは黒髪の少年。

いかにも何がなんだかわからないと言う表情だ。

他の二人は静かに表情を変えずに立っているが、黒髪の女性のほうは少し困惑しているようにも見える。

レイは金髪の少女が何かを知っていると、経験が言った。

「私の薬・・・・・・・・・持ってるんでしょ?・・・・・・・・返して・・・・・・・・・・返してぇ!!」

レイは凄い剣幕で少女、アスカの襟を掴んだ。

だが、アスカは動じない。

ただ静かにレイを見ている。

「捨てました」

小さく、しかしこの場にいる全員に聞えるほどの音量で呟いた。

「えっ?・・・・・・・・・・・・・」

レイはアスカの顔を見上げた。

聞き返したのは聞えなかったからではなく信じたくなかったからだろう。

「捨てました。残らず」

静かに告げた。

「そんな・・・・・・・・・あれがないと私は、私は・・・・・・・・・・・」

かなりショックなのだろう。

見るからに狼狽している。

だが、そうさせたアスカは少しも悪びれる様子もなく先回りして静かにとても静かに・・・・・・

「生きていけない、ですか?」

「「えっ?」」

レイとシンジの声がダブった。

ミサトも表情を隠すことなく驚いている。

「アスカさん!知ってるんならどうしてそんなことを!」

アスカは答えず、ポケットの中から一錠のカプセルらしき錠剤を取り出した。

「それは!!」

「葛城一尉、舐めてみてください」

レイが必死に取り戻そうとするが、アスカが拒み、そのうちにミサトに渡す。

受け取ったミサトは中身を少しだけ舐めてみた。

その瞬間、驚いたような信じられないと言う表情をした。

「そう、精神強化剤です」

「そんな・・・・・・・・・・・」

シンジは呟いたが、レイは信じられない、いや、信じたくないという表情のまま固まっている。

唇を必死に動かし、なにか言葉を紡ごうとするが、痛みと驚きでまともに言葉に出来ない。

そのうちまた痛みに襲われたのか小さく悲鳴をあげ倒れこむ。

「使われていたんですよ、ゼーレに、ただ戦うためだけの戦争の道具として」

「酷い・・・・・・・・・・」

シンジが呟くが聞えていたのはアスカとミサトのみ、レイはすでに身体中を内側から針で刺されるような痛みで失神しかけている。聞えるはずもない。

それでもまだ「薬・・・・・・・・薬」と呟いている。

「あなたは今中毒です。一週間もすれば身体から薬が抜けるでしょう。それまでは我慢してください」

聞いていない。

荒い息遣いだけが返ってくる。

気を失っているが寝ていても、夢の中でも痛みに、悪夢に苛まれるだろう。

安眠と言う言葉はない。



「酷いじゃないか・・・・・・・・・・・・・」

出ようとしていたアスカだが、シンジの言葉に振り返った。

シンジの拳が震えていた。

「なにがですか?」

「なにが?・・・・・・・・なにがじゃない!!酷いじゃないか!!こんなことするなんて!!」

シンジが叫んだ。

明らかに怒っている。

アスカは動じない。

「これ以外に方法があったとでも?薬を与えて、一時的に痛みを逃れさせたほうがいいとでも?」

むしろ冷ややかに言う。

「そうじゃない!そうじゃないけど!・・・・・・・・・・・・・」

「何か方法でもあるんですか?」

「それは・・・・・・・・・・・・・」

「ないんですね?」

「・・・・・・・・・・・・だけど、別な・・・・・・・・・・」

そこでシンジの言葉はアスカの張り手により遮られた。

ばちん・・・・・・・・といい音が響く。

「ないんだったら言わないでよ!!あんた自分で何とかできると思ってるの!!?とんだ思い違いよ!!自分がなんでもできると思ってるの!?苦しみのないことがいいことだと思ってるの!!?明らかに違うわ!優しさと甘さは違うのよ!!」

いつもと口調が違う。

人は感情が高ぶると本音が出る。素が出るとかいうが、この場合この喋り方がアスカの本当の喋り方なのだろう。

アスカは明らかに怒っている。

シンジは殴られたのを気にせずにアスカのほうを睨んでいる。

「・・・・・・・・・・・じゃあ、僕には何も出来ないのかよ!!綾波にしてやれることはないのかよ!!」

「自分にやれること、やりたいこと、できること、すべきこと、これらがわかったうえで最善だと思う行動をとればいいわ、それだけよ、それがまだわからないなら何もしていないほうがましよ!!」

「くっ!」

シンジは顔をうつむかせると一目散にこの場から逃げ出した。

シンジにはこれ以上この場にとどまれなかったのだろう。

それはアスカにとって、ありがたいことだったのかもしれない・・・・・・・・・・・・・

「ううぅ・・・・・・・・・・・うっ」

拳を震わせて泣いている。

シンジだけでなくアスカだって辛かったに違いない。

「仕方ないじゃない・・・・・・・・・・・・・仕方ないじゃない、これしか方法がないんだから、これ以外に苦しまなくてすむ方法があれば喜んでしてるわよ・・・・・・・・あたしにはそんな方法なんて考えられない、多分出来ない・・・・・・・・・・・だけど、あなたには出来るかもしれないのよ・・・・・・・・・碇シンジ・・・・・・・・・・・・あなたになら」





愚者の後書き




えー、LASです。LASのつもりで書いてます。LASじゃないかもしれないけど最後にはLASになる(はず・・・・・・・・)


はい、第四話目です。最初のほうがちょっと調子に乗ってますね、特に意味があるわけでも・・・・・・・・・・(意味は見出してください・・・・・・・・・・どうにかして)


アスカの性格が違うのは理由があります。レイも同じ、シンジも


はい、この小説基本的に支離滅裂。(後書きすらも)


大目で見て欲しいです。


では、いるかいないか瀬戸際(多分いないだろう)僕のファンの皆さんまた会いましょう。

 

 作者の河中様に感想メールをどうぞ  メールはこちら


<アスカ>『天体観測』の第四話が来たわ!
<某管理人>おおきに。ありがとうございます。
<アスカ>ゼーレとNERFが対立してるのよね。
<某管理人>わし「ガンダム」系はよう知らへんねやわ。
<アスカ>アンタ馬鹿?アニメ好きなら、基本じゃないの。
<某管理人>すんません。せやけど、知らんわしでもおもろいでぇ。
<アスカ>知ってれば、もっと面白いわよ。ほら、さっさと勉強してきなさいよ。
<某管理人>そ、そんなこと言われても、今は中世ドイツの勉強が…。
<アスカ>ああっ!アンタ、まだリクエストSS書いてないんじゃない!とっとと書きなさいよ!