written by 夏侯惇
古代中国に淳于こんという人物がいた。 彼の家は貧しく、大勢の兄弟がいたために彼は奴隷として売られてしまった。 兄弟の中でなぜ彼だけが奴隷として売られたのか、その理由は彼が醜かったからである。 顔が醜いだけでなく、身長も1メートル前半であったようだ。 そんなわけで彼は両親からも愛されなかったらしい。 醜い上に奴隷にまで身を落とした彼だが、 後に彼は数千人の大学者達が集まる斉の学士院(儒学の孟子もここにいた)の院長にまでのぼりつめた。 普通ならこのような事はありえない。 では、なぜ彼はそこまで上り詰めることができたのか? それは、ひとえに彼の特殊な能力ゆえであった。 彼は人の心が読めたのである。 誤解のないように言っておくが、この彼の能力は超能力などではない。 相手の表情から心を読む、いわゆる読心術の才が飛び抜けていたのである。 どんな無表情な人間の思考でさえも、わずかな表情の変化から読み取ってしまったらしい。 そんな彼の才能に初めて気付いたのは彼の妻であった。 彼の妻も奴隷で、奴隷を増やすために奴隷主に結婚させられたのだ。 当然、そこに奴隷達の意思など存在しない。 彼の妻は奴隷ではあったが美しく、賢い女性であったらしい。 そんな彼女が醜男でしかも背が低い淳于こんとの結婚に不平を持たないはずがない。 当然彼女は(なによ、この醜男)と思った。 勿論、内心で思っただけで表情には表さなかった。 彼女はポーカーフェイスには自信があった。 しかし淳于こんは 「君は『なんだこの醜男は』と思っているだろうが、これは主人の命令なんだから私を恨まないでくれよ」と言う。 これを聞いた妻は内心を見透かされて驚いたが、とりあえず頭は悪くなさそうだと安心した。 しかし今度はこんな顔ではどんな子が生まれてくるのかと心配になった。 すると 「心配することはない、私は醜いが君は美人だ。だからそうひどい子はうまれないだろう」 またしても心を読まれてしまった。 「なぜ私が子供のことを心配しているかわかるの?」と妻が尋ねると、 表情からわかると言う。 その後も何度も心を読まれて妻はある確信を得た。 それは、『この能力はかならず役に立つ』という確信である。 「あなたの人の心を読む術はかならず役に立つわ! これをうまく使えば奴隷の身分からも解放されるかもしれない」 淳于こんにとってこの妻と出会ったことは幸運であった。 妻が賢い女性でなければ、彼の才能は埋もれたままになっていたはずだ。 もちろん、人の心を読むだけでは何にもならない。 淳于こんは妻の勧めで学問を始めた。 かくして彼は博覧強記、滑稽多弁と称される学者へと上り詰めていったのである。 斉の学士院には大学者が集い、日々激論を交わしていた。 しかし、それでも大きな騒動が起こらなかったのは人の心を読むことに長けた 淳于こんの対人関係の調節のおかげだったのではないだろうか? そして、それこそが淳于こんが学士院の院長となりえた所以かもしれない。 なぜ、彼はこのような能力を会得できたのであろうか。 もちろん、生まれつきということはないだろう。 だれかが特殊な才能は特殊な環境から生まれると言っていた。 貧しい家に生まれた醜い子供、しかも両親にも愛されなかった彼は常に他人の顔ばかりうかがっていた。 その結果、彼はどのような小さな表情の変化からでも感情を読み取れるようになったのだろう。「と、言う訳よ」 冬月から借りた本を閉じながらいうアスカ 「なにが『と、言う訳よ』なの?アスカ」 「だからぁ、アンタも人の顔色ばっかりうかがってるのになんでアンタはそう鈍感なのよ」 「僕って鈍感かなあ?自分ではそうは思わないんだけど・・・」 「はぁ・・・」 思わずため息が出るアスカ 「で、言いたい事はそれだけなの?」 「まだ終わりじゃないわ!シンジ、アンタもこの淳于こんを目指すのよ!」 びしっ!と効果音がなりそうな勢いでシンジの目の前に右手人差し指を立てるアスカ もちろん左手は腰に当てられている 「ええ、なんで?」 「もう使徒が来ないと言っても世界各地ではまだ紛争が起こってるし、アタシ達はまだNERVに所属している必要があるわ 将来もNERVに仕官することになるだろうし、幹部になったら対外交渉なんかもしなきゃいけないかもしれないじゃない そんな時に相手の気持ちがわかる能力があれば有利でしょう?」 「なるほど・・・」 「と、言う訳で手始めにアタシの心を読めるようになるのよ!アンタも同じような境遇なんだからできないはずないわ」 「ど、努力はするよ・・・」 この日からアスカはわざと口数を少なくし、シンジの読心術の訓練を開始した シンジはアスカの表情や仕草にとても気を使うようになった はじめのうちは意志の疎通ができずアスカから殴られることもあったが次第にその回数も減っていった そして・・・ 「シ〜ンジ、アタシが今なに考えてるかわかる?」 「もちろん、僕はアスカがなにを考えてるかみんなわかるよ」 「へへへ〜、アタシもシンジが考えてることわかるよ」 訓練の成果によってシンジはアスカの考えていることが全てわかるようになった。 しかし、結局シンジがわかるのはアスカのことだけで、他の人間の考えを読めるようにはならなかった。 結果、読心術の会得は失敗し残されたのは一組のバカップルのみ いや、もしかするとこれはアスカの思惑通りだったのかもしれない・・・
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<アスカ>夏侯惇様の当サイトでの1作目よ!
<某管理人>おおきに、ありがとさんです。
<アスカ>エヴァサイトへの投稿は初めてですって!
<某管理人>いやぁ、うちみたいな弱小のトコでええんでっか。
<アスカ>何言ってんのよ、弱小だから応援してくれてるんでしょうが。
<某管理人>あ、そうか。いやいや、ホンマにありがとうございます。
<アスカ>ご本人さんは短いから…なんて謙遜してたけど、だ〜れかさんみたいに長すぎるのもねぇ。
<某管理人>あの…、年取るとくどうなると言うでしょ。
<アスカ>夏侯惇様から若さのエキスでもいただいたら?
<某管理人>あ、それよろしいなぁ。じゃ、行ってきま!
さぁて、夏侯惇様第1作目。
嬉しいじゃないの。エヴァサイト処女作がうちにいただけるなんて。
私とシンジは何も喋らなくてもすべてが分かりあえるの。
うっふっふ。
どんなことをわかりあってたかは、ヒミツよ、ヒ・ミ・ツ。
でも、ちゃぁんとお喋りもするのよ。
相手のことを考えた上でお喋りして…。くふぅ…、またシンジのとこ行ってこよっと。
夏侯惇様、素晴らしい作品をありがとうございました!