不服審査及び訴訟

税務当局の行った更正、決定、差し押えなどの処分に対して、不服がある場合の救済手続きは、
納税者の利益が不当に損なわれることのないように、原則として「国税通則法」により不服申立
ての制度が設けられています。

国税通則法による不服申立ては、異議申立て審査請求の二審制になります。
税務署長などの処分に不服がある場合、納税者は第一段階として税務署長などに異議申立てを行い、
その決定についてなお不服がある場合には、第二段階として国税不服審判所に対して審査請求をする
ことができます。
しかし、国税犯則取締法による通告処分に対しては、不服申立てを行うことはできません。

なお、地方税についても行政不服審査法の規定により、地方公共団体に対し同様の不服申立て
を行うことができます。


異議申立て

異議申立ては国税についての不服申立ての第一段階であり、国税庁長官、国税局長、税務署
長が行った処分について異議がある場合には、その通知を受けた日の翌日から2か月以内に、
その処分をした国税庁長官、国税局長、税務署長に対して異議申立てをすることができます。

異議申立てのできる者は、処分の相手方ですが、相続人などが共同して不服申立てをする場合には、
その総代又は代理人などを通じて不服申立てをすることができます。

異議申立ては、処分の通知を受取った日の翌日から原則として2か月以内に、異議申立書を
提出して行わなければなりません。
異議申立書には、異議申立人の住所、氏名、異議申立てに係る処分、処分があったことを知
った年月日、異議申立ての趣旨および理由、異議申立ての年月日などを記載して提出します。

尚、異議申立てを行っても、原則として徴収は猶予されませんが、国税徴収のために差し押えた財産
の換価は、不服申立ての決定又は裁決があるまではすることができません。
また担保を提供した場合は差し押えはされず、あるいは差し押えは解除されます。

(注)
青色申告書に係る更正については、異議申立ての段階を経ずに、直接国税不服審判所長に
対して審査請求をすることができます。


審査請求

異議申立てについての決定を経たあともなお不服がある場合には、不服申立ての第二段階
として、審査請求をすることができます。

★ 国税不服審判所 ★

・国税不服審判所は、納税者の権利や利益を守るために設けられた、税務署や国税局などの行政
 執行部門から独立した機関です。
 東京にある本部のほか各国税局と沖縄事務所の所在地に12支部が設置されており、裁判官や検
 察官などの学識経験者を含む国税審判官が、その審査にあたっています。

・審査請求は、異議申立てについての決定の通知を受けた日の翌日から原則として1か月以内に、
 国税不服審判所長に対して正副2通の審査請求書を提出して行わなければなりません。
 但し、異議申立てをしてから3か月を経過しても決定がない場合は、決定を待たずにいつでも審査
 請求をすることができます。

・審査請求書が提出されると、国税不服審判所長は、処分を行った税務署長などに副本を送付して
 正副2通の答弁書を提出させ、この副本を審査請求人に送付して、実質的な審理に入ります。審査
 請求事件の実質的な審理は、担当審判官1名と参加審判官2名からなる合議体により慎重に進め
 られます。
 そして、審理が終了すると合議体の多数決により議決が行われ、これに基づいて国税不服審判所
 長が裁決をし、その結果を裁決書謄本により審査請求人に通知します。


訴訟

審査請求に対する裁決に不服がある場合は、審査請求についての裁決の通知があった日
から3か月以内に裁判所に処分の取り消しの訴えをすることができます。すなわち、納税者
は税金に対する不服についても、最終的には憲法により最高裁判所においていずれが正当
かを決することのできる権利が保障されています。

但し、税務に関する処分の取り消し、変更を求める訴えにおいては、原則として不服申立前置主義
をとっているので、審査請求についての裁決を経たあとでなければ、訴えを提起することができない
ことになっています。

尚、税務訴訟は国税通則法、行政事件訴訟法その他一般の行政事件訴訟に関する法律に基づい
て審査され、裁判所が当事者または参加人の主張を聞いて裁判することになることは、一般の民事
についての訴えの場合と同様です。