有価証券の譲渡

株式などの有価証券の譲渡による所得は、平成元年3月31日までは、原則として非課税と
され一定の要件に該当する継続的取引などが課税の対象でした。
しかし、平成元年4月1日以降の有価証券の譲渡による所得については、原則として課税
対象とされ、下記のように分類されます。

有価証券の譲渡による所得 申告分離課税
源泉分離課税(申告分離課税との選択)
総合課税 譲渡所得
事業所得又は雑所得
非課税
土地等の短期譲渡として分離課税

※ 源泉分離課税制度は、平成13年3月31日で廃止されます。

申告分離課税

次の有価証券の譲渡による所得については、他の所得と分離して20%の税率により所得税
が、6%の税率により住民税が課税されます。

<公開株式等の特例>

上場株式や店頭登録銘柄株式で、上場等の日(最初に上場された日又は最初に店頭登録された日)
における所有期間が3年を超えるものを、上場等の日以後1年以内に証券業者への売委託に基づき
又は証券業者に対し譲渡する場合には、その所得の金額の2分の1に相当する金額に対して20%
の税率により所得税が課税されます。

1.有価証券の範囲

・株式(株式の引受による権利、新株引受権を含む)
・特別の法律により設立された法人の出資者の持分
・合名会社、合資会社、有限会社の社員の持分
・協同組合等の組合員、会員の持分
・転換社債及び新株引受権付社債
・日本国有鉄道清算事業団法に規定する特別債権
・協同組織金融機関の優先出資に関する法律に規定する優先出資
・私募証券投資信託及び特定株式投資信託の受益証券

2.所得金額

株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額 = 収入金額 − ( 取得費 + 譲渡費用 )

株式等の譲渡が、営利を目的とした事業として行われている場合には事業所得、事業では
なくても継続的に行われている場合には雑所得となります。

株式等の譲渡に係る事業所得の金額 = 収入金額 − 必要経費
株式等の譲渡に係る雑所得の金額  = 収入金額 − 必要経費

株式等の譲渡による所得が譲渡所得になる場合の取得費、事業所得又は雑所得になる場合
の必要経費は、株式等の取得の区分に応じて次の取扱いになります。

取得費
必要経費
1払込み、購入 払込金額又は 購入代価+購入費用
2相続、贈与 被相続人等の取得価額を引き継ぎます
3信用取引等 その取引価額
4概算取得費 上記1、2、3の価額より収入金額の5%相当額が多い場合には、
収入金額の5%相当額

3.損益通算(損失が出る場合)

同じ所得からのみ控除

株式等の譲渡に係る譲渡所得の損失は、他の株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額からのみ
控除します。(事業所得、雑所得も同様)

損益通算の注意点
1 株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額のうちに公開
 株式等に係る譲渡所得等の金額があるときには、その損失の金額は、まず公開株式等に係
 る譲渡所得等の金額から控除します。
2 損失の金額の通算をしてもなお損失の金額が残る場合には、その損失の金額はなかった
 ものとし、他の所得と通算することはできません。
3 株式等の譲渡による所得以外の他の所得から生じた損失の金額を、株式等の譲渡による
 所得から控除することはできません。
4 株式等の譲渡に係る譲渡所得等の損失は、翌年に繰り越して各年分の所得金額から控除
 することはできません。
5 <例外> エンジェル税制
  特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失については、翌年以後3年間、株式等に係る
 譲渡所得等の金額から繰越控除することができます。

4.確定申告の手続

確定申告書に「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に関する明細書」を添付しなければ
なりません。
又、明細書は株式等の譲渡による譲渡所得、事業所得又は雑所得のそれぞれについて作成
することを要し、次に掲げる項目を記載しなければなりません。

譲渡所得 収入金額  株式等の譲渡による収入金額及びその他の収入の別
取得費
譲渡費用
 株式等の取得費及び株式等を取得するために要した負債の利子の額、
 株式等の譲渡のために要した委託手数料、その他の経費の別
事業所得
雑所得
収入金額  株式等の譲渡による収入金額及びその他の収入の別
必要経費  株式等の取得価額、株式等を取得するために要した負債の利子の額、
 株式等の譲渡のために要した委託手数料、管理費、その他の経費の別


源泉分離課税

次の有価証券の譲渡による所得については、「源泉分離課税の適用を受ける旨の選択届出
書」を提出したときは、申告分離課税に代えて譲渡利益金額に対し、20%の税率による源泉
徴収だけで課税関係が完了する源泉分離課税を選択することができます。
但し、この源泉分離課税制度は、平成13年3月31日で廃止されます。

1.有価証券の範囲

証券取引所に上場されている株式等
店頭売買登録銘柄として登録された株式又は店頭売買転換社債
外国有価証券市場において売買されている株式等

※上場株式等のうち、上場等の日以前に取得した株式等について、上場等の日以後1年以内
 に譲渡するものについては、源泉分離課税の選択はできません。

2.譲渡の範囲

次の譲渡が該当します。

証券業者(外国証券会社を含む)又は銀行への売委託による譲渡
証券業者に対する譲渡
端株又は単位未満株式の買取請求制度による発行法人への譲渡

3.譲渡利益金額

源泉徴収の対象となる譲渡利益金額は、譲渡の区分に応じ次の金額になります。

上場株式等の譲渡 上場株式等の譲渡対価の額の5.25%に相当する金額
(平成8年4月1日から平成13年3月31日までの譲渡)
転換社債、新株引受権付社債
日本国有鉄道清算事業団特別債権
その譲渡対価の額の2.5%に相当する金額
信用取引による譲渡又は決済の
ために行う譲渡
これらの決済に係る差益に相当する金額

4.選択手続

源泉分離課税を選択する場合には、その適用を受ける旨その他所定の事項を記載した選択申告書
を、証券業者又は銀行の営業所を経由して、その申告書を提出する者の納税地の所轄税務署長に
提出しなければなりません。

選択申告書は、源泉分離課税の選択を受けようとする上場株式等の譲渡の時までに提出しな
ければなりません。

5.源泉徴収税額の納付

源泉分離課税の適用を受ける上場株式等の譲渡の対価の支払をする証券業者又は銀行は、その
対価の支払をする際、その上場株式等の譲渡利益金額に20%の税率を乗じて計算した所得税を
徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。

6.支払調書

源泉分離課税の適用を受ける上場株式等の譲渡をする場合には、本人確認及び支払調書の
提出は要しません。


総合課税

次の有価証券の譲渡による所得は、総合課税となります。

事業所得又は
雑所得
有価証券の先物取引
原則として
譲渡所得
株式出資形態によるゴルフ会員権等
特定の割引債等(ゼロクーポン債(国外で発行される長期の外貨建割引債)、
ディープディスカウント債、デファードペイメント債)の国内での譲渡
特定の短期国債等


非課税

公社債(転換社債、新株引受権付社債、日本国有鉄道清算事業団特別債権を除く)、
証券投資信託(特定株式投資信託を除く)及び貸付信託の受益証券の譲渡による所得
は、非課税になります。


事業譲渡類似株式等の譲渡

次の株式等を譲渡した場合で、土地の譲渡に類似する株式の譲渡になる場合は、土地等
の短期譲渡所得として課税(申告分離課税)されます。

 資産総額のうちに、その年1月1日現在で所有期間が5年以下である土地等の価額の占める
割合が、70%以上となる法人の株式
 資産総額のうち土地等の価額の占める割合が70%以上となる法人の株式で、その年中に
取得したもの又はその年1月1日現在で所有期間が5年以下のもの