使途秘匿金とは、法人が支出した金銭(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする
金銭以外の資産の引渡しを含む)で、その支出した相手先やその目的・内容を明らかにしなか
ったものをいいます。
具体的には競争相手の情報提供者への謝礼金、総会屋・政治家への裏金、ヤミ献金等が該当します。
使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
法人(公共法人を除く)が、平成6年4月1日から平成14年3月31日までの間に、次の要件に
該当する使途秘匿金の支出をした場合には、使途秘匿金の支出額は損金の額に算入されず、
通常の法人税のほかに使途秘匿金の支出の額に40/100の割合を乗じて計算した金額に
よる重課税が課せられます。
この特例は、赤字法人においても同様に課税されることになります。
この特例は、法人がその相手方を明らかにしないような支出は、違法ないし不当な支出につながり易く、
ひいては公正な取引を阻害するおそれがあるので、このような支出(使途秘匿金の支出)を極力抑制
するという政策的見地から、設けられています。
・ |
法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所
又は所在地、その事由をその法人の帳簿書類に記載していないこと |
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資産の譲受けその他の取引の対価の支払いとしてされたもので、その支出に係る金銭又
は金銭以外の資産がその取引の対価として相当であると認められないもの |
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相手方の氏名等をその法人の帳簿書類に記載していないものがある場合において、税務
署長がその記載をしていないことが相手方の氏名等を秘匿するためでないと認めたもの以外
のもの |
・ 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例は、内国法人である公益法人等又は人格の
ない社団等の収益事業以外の事業に係る金銭の支出については、適用しない。
・ 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例は、外国法人の国外事業に関連した金銭の
支出や外国法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業又は国外
事業に関連した金銭の支出については、適用しない。
・ 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例を適用する場合において、法人が金銭の支出
の相手方の氏名等をその帳簿書類に記載しているかどうかの判定は、その事業年度終了の
日 (中間申告書を提出すべき法人の事業年度開始の日から同日以後6か月を経過する日
までの間の金銭の支出については、6か月を経過する日)の現況によるものとする。
・ 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例を適用する場合において、法人が金銭の支出
の相手方の氏名等をその帳簿書類に記載している場合においても、その金銭の支出がその
記載された者を通じてその記載された者以外の者にされたと認められるものは、その相手方
の氏名等がその法人の帳簿書類に記載されていないものとする。
・ 法人が金銭以外の資産を引き渡した場合におけるその金銭以外の資産に係る使途秘匿金
の支出の額は、その引渡しの時における価額によるものとする。
・ 外国税額控除限度額の計算の基礎となる法人税の額には、この使途秘匿金の支出がある
場合の課税の特例による税額を含まない。
・ 同族会社の留保所得課税について、留保金額から控除する法人税額には、使途秘匿金の
支出がある場合の課税の特例による法人税額を含む。
・ 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除の限度額の計算の基礎とされる法人税額には、
使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例による法人税額を含まない。
・ 電子機器利用設備を取得した場合等の税額控除の限度額の計算の基礎とされる法人税額には、
使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例による法人税額を含まない。
その他注意点
・ 使途秘匿金を情報提供料や売上割戻しとして処理しているときは、支出額の40%の課税
の特例のほかに、取引の仮装・隠蔽があったとして重加算税が課され、青色申告の承認取
消しが行われることもあります。
・ 使途秘匿金の支出は費途が明らかでない支出であることから、消費税における課税仕入
にも該当しません。
<確定申告書 別表一(一)>の記載
別表一(一) |
記載要領 |
法人税額計10 |
使途秘匿金の支出の額の40%相当額をこの欄の上段に外書として記載
百円未満端数切捨て |
控除税額12
差引所得に対する
法人税額13 |
「控除税額12」及び「差引所得に対する法人税額13」の欄の記載に
当たっては、この外書きをした金額を「(10)」に含めて計算する |
・ 予定申告の場合の基準となる前年度の法人税の額には、使途秘匿金の支出がある場合の課税
の特例による法人税額を含まない。
・ 仮決算をした場合の中間申告書には、使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例による法人税
額を含めた法人税の額を記載する。