同族会社と税務

日本には200万社以上の法人がありますが、その大部分は同族会社と言われています。
特に中小企業では、社長は父、副社長は母、息子は専務というように、経営者が株主の家族
や親族で占められている場合が多くあります。

同族会社とは

同族会社とは、株主等とその同族関係者 (株主等と特殊の関係のある個人や法人) を1つの
グループとし、これら3つのグループが所有する株式や出資金額の合計額が、その会社の発行
済株式総数又は出資金額の50%以上に相当する会社をいいます。

(注1)同族会社の判定では、株主等について必ずしもその持株割合の大きいものから順に選定する
   必要はありませんから、例えば 大きいものから順に株主等を選定した場合には同族会社となら
   ない場合であっても、 その選定の仕方を変えて判定すれば同族会社となるときは、その会社は
   同族会社に該当します。

(注2)自己株式を有する法人について同族会社であるかどうかを判定する場合には、「株主等」 には
   その法人を、「発行済株式総数」にはその自己株式の数を、それぞれ含みます。

(注3)株式の種類は問いませんから、議決権のない株式も含まれます。

(注4)株主等は、株主名簿や社員名簿に記載されている株主等によりますが、その株主等が単なる
   名義人であって、その株主等以外の者が実際の権利者である場合には、その実際の権利者を
   株主等とします。

★ 同族関係者 ★

<特殊の関係のある個人>

株主等の親族
株主等とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
株主等個人の使用人
1から3以外の者で、株主等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者
2から4に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

親族とは民法上の親族であり、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族をいいます。

「生計を一にする」 とは、日常生活の資を共通にしていることをいいますから、必ずしも同居
していることを必要としません。


<特殊の関係のある法人>

1.株主等の1人(個人である株主等については、その1人及びこれと上記の特殊の関係の
 ある個人、以下2、3において同じ)が、ある会社の発行済株式総数又は出資金額の50%
 以上を有する場合のその会社(B社)

A社  ← 30%  → 50%  B社
← 20%

2.株主等の1人と上記1の会社が、ある会社の発行済株式総数又は出資金額の 50%以上
 を有する場合のその会社(C社)

A社  ← 30%  → 50%  B社
↓20%
            → 30% C社
← 20%

3.株主等の1人と上記1、2の会社が、ある会社の発行済株式総数又は出資金額の50%
 以上を有する場合のその会社(D社)

A社  ← 30%  → 50%  B社
↓20%
C社
←50%
            → 30%
← 20% D社


同族会社を巡る税務

同族会社は、株主等(オーナー)と役員(経営者)が一致している場合がほとんどであり、会社
といっても個人的色彩が強く、その経営にあたっては税負担の回避などを目的に恣意的な行為
が行われやすいため、法人税法では同族会社に対し、1.行為計算の否認、2.留保金課税、
3.役員の認定および使用人兼務役員の制限という、規制が設けられています。

規 制 内 容
同族会社の
行為計算の
否認
 税務署長は、更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、
これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められ
るものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところ
により、法人税の課税標準、欠損金額又は法人税の額を計算することができます。

 同族会社は少数の株主等により意志決定がなされるために、通常ではあり
得ないと思われる経済的合理性のない租税回避行為が行われる可能性が有
ります。そこでその防止策としてこの規定が設けられています。
同族会社の
留保金課税
 会社は税引後の利益から、利益処分によって株主へ配当金を出したり、役員に
対して賞与を出したりします。
これらの配当金や賞与は、その配当金や賞与を受取る株主や役員の配当所得や
給与所得となり、所得税や住民税が課税されることになります。

 同族会社ではこのような事態を回避するために、利益を社外に流出させな
いで会社内に留保することが容易ですから、一定額以上の留保利益について
は通常の法人税額に加え留保利益の10%〜20%の税率で課税されます。


 平成12年度税制改正により、一定の会社については、2年間留保金課税を適用
しないこととなりました。
役員の認定
及び使用人
兼務役員の
制限
 法人税法では、商法上の役員以外の者についても役員とみなす旨の規定があり、
同族会社の使用人でその会社の経営に従事している者のうち、一定の要件を満た
す者は役員とみなされます。
このみなし役員は通常の役員と同様に取り扱われ、使用人としての職制上の地位・
職務があっても使用人兼務役員とはされません。

 従って、このみなし役員に支払った報酬の過大部分や賞与は、損金の額に
算入されません。