「こぉら!惣流!てめぇ、いねむりするんじゃねぇっ!」
叫びとともに教壇からチョークが一直線に飛んだ。
青葉シゲルというこの新人教師、コントロールはなかなかよろしい。
チョークは赤金色の髪の毛に違わず命中した。
すると机に突っ伏していた髪の毛の塊りがむっくりと起き上がり、惣流・アスカ・ラングレーの白い顔が覗き見えた。
その蒼い瞳は細めた瞼の奥から、安眠を妨げたのは何者かと教壇の教師を睨みつける。
「こらっ、何だその目は!」
一喝されたアスカはようやく意識が夢の世界から戻ってきたのか、慌てて立ち上がった。
一番後ろの席なので彼女の椅子はその勢いでどたんと派手な音を立てて転がる。
「すみません!」
「おう、ようやく目が覚めたか。ん?」
青葉先生はニヤリと笑った。
「それでは、早速ですまんがこの答えは…」
「xが3で、yは1です」
「おおおおっ」
「こらっ、うるさいぞ、おめえら!」
さすがはクラス一の秀才である。
起き抜けでありながら、黒板に書かれた問題を即座に解いてみせた。
そんな姿にクラスメートは感嘆の声を上げる。
「誰がお前に解けと言ったよ、え?くそおもしろくもない」
ぼやく数学教師を見て、さらに教室が沸く。
「こら、惣流。お前、深夜放送もいい加減にしておけよ」
「はぁい」
「よし、座れ。今度居眠りしてたら、廊下に立たせるからな」
「……はい」
二度目の返事は不満がありありと見られる。
「何なら今から立ってるか?」
「けっこうです」
肩をすくめてそう言うと、アスカは転がった椅子を元に直して、溜息混じりに座る。
その前に彼女は軽く廊下側の方を見た。
その時視線が合ったような気がして、一番廊下側の席の中ほどに座っている少年はどきりとした。
一瞬胸がどきりと高鳴り、だがすぐに苦笑した。
彼女が自分など目にとめるわけがない。
学年一、いや学校一、いや宇宙一番に綺麗な人が…。
彼女に恋する碇シンジは小さく溜息を吐き、そしてちらっとアスカを盗み見る。
すると彼女は、はしたなくも鉛筆を口に咥え、反対側の窓の方に顔を捻じ曲げていた。
その曲げ方がいささか不自然なことに彼が気づくわけがない。
そして、そっと横目で見ていた彼がこっちを向いたので、慌てて顔ごと目を逸らしたことなど到底。
ー 1973 夏 ー
2007.07.08 ジュン |
「なんや、センセ。深夜放送聴いたことあらへんのか?」
「うん、寝るの早い方だから」
「さよか。ケンスケは聴いとるよな」
「ああ、セイヤングはずっと聴いてるぜ」
「せやったな、ミカンちゃんやったっけ」
「こら、トウジ。わざと惚けるなよ。レモンちゃんだよ、レモン」
「へへ、落合恵子やろ。べっぴんさんやからなぁ」
「あれ?ラジオなんだろ。どうして顔がわかるのさ」
シンジがそう言うと、友人二人は白い目を向けた。
3人が話をしていたのは通称“三角公園”と呼ばれる、中学校から東に3分ほど歩いたところにある小さな児童公園だった。
それぞれの住所は離れているので、下校時にここでしばらく談笑し、時にはゴムボールで遊んだりしてから、各々の家に帰っていたのだ。
因みに3人とも気楽な帰宅部なので放課後の時間はたっぷりあった。
今日は公園で遊ぶ小学生は少なく、3人はジャングルジムに登ってその上部で話をしていた。
黒ぶち眼鏡の相田ケンスケは呆れ顔で空を見て、そして学生手帳を胸ポケットから取り出す。
その中に挟んでいた写真は雑誌の切抜きだった。
「センセ、これがレモンちゃんや。ごっつい人気やさかいにこうやって雑誌とかにも出とるんや」
「そうなんだ」
「これや、全然興味あらへんねやからなぁ。なあ、センセ、好きな芸能人おらへんのか?」
「芸能人ってアイドルとか?うぅ〜ん、ジャクリーン・ビセットかなぁ」
「ジャ…って、なんや、映画女優かいな。まったくセンセは」
「そうか、シンジは外人が好みか。じゃ、惣流なんかがいいんじゃないか」
「アホか、あいつは見た目は外人やけど、中身は思いっ切り日本人やないけ」
「それでも金髪に青い眼だぜ。どうだ、シンジ。アイツに気があるんじゃないのか?」
執拗にからかうケンスケにシンジはその通りだと言ってしまいたかった。
しかし、彼にそんな思い切ったことができるわけがない。
愛想笑いを浮かべて力なく首を振るだけだ。
「そ、それよりも、トウジは聴くの?深夜放送」
話を逸らすべく、シンジは元の話題に戻した。
関西弁の友人はにんまりと笑った。
関東に引っ越してきてもう3年になるというのに、鈴原トウジは未だに関西弁がまるで抜けない。
「おう、わしはヤンタンからヤンリクの流れやな」
「ヤンタン?ヤンリク?何、それ」
「ははっ、これやから関東モンは困るんや」
トウジは人気DJすら知らない友人にもわかるように説明した。
“ヤンタン”とはMBSヤングタウンで、“ヤンリク”とはABCヤングリクエストの略称なのである。
ともに大阪のラジオ局が放送している人気番組だった。
そして二つの番組の特徴をざっと説明した。
“ヤンタン”も“ヤンリク”も若者向けの番組だが、後者は葉書によるリクエスト中心のものだった。
「はがきで当てよう!!車と1万円」というキャッチコピーがついており、どちらも関西発信の名物深夜放送として有名だったわけだ。
いずれにしてもシンジという名の少年には知られていなかったのだが。
「えっ、でも、関西のラジオがどうして聴けるの?」
「そんなん知るかい。とにかく夜になったら聴けるんや」
「電離層の問題だな。きっと」
「おっ、ケンスケ、物知りやのぉ。で、電離層って何やねん」
「馬鹿。余計な突っ込み入れるなよ」
「馬鹿言うな、馬鹿と。アホ言うてぇな」
「うるさい。お前は馬鹿だ」
「こいつ!」
この年頃の中学生男子はやたらにじゃれ合う。
友人に睨まれたケンスケはジャングルジムから飛び降りたが、追いかけてきたトウジにすぐにつかまった。
そしてトウジはケンスケをヘッドロックしているうちに、そして急に思い出したのである。
「おお、そうや。センセ。おもろいことがあったで」
「ん?面白いこと?」
「せや。ヤンリク聴いとったらな。センセの名前が出てきたんや」
「えっ、僕のっ?」
さすがにシンジは素直に驚く。
この素直さが故に彼は友人たちに友愛の念を抱かれていたのである。
ジャングルジムの上に座ったままだったシンジはゆっくりと鉄棒をつたって地面へ向った。
「馬鹿だな、そんなわけないだろ。同姓同名ってヤツじゃないのか。おい、トウジ、苦しいってば」
「アホ。絞めてへんわい。動くから苦しいんや。それがな、どうやらホンマにセンセみたいやねんで」
トウジはニヤリと笑って、小脇に抱えたケンスケの頭を解放した。
「ええっ、でも僕、リクエストの葉書なんて出してないよ」
「どういうわけだよ。話せよ、トウジ」
首をさすりながら、ケンスケも先を促す。
「おう、2週間前くらいや。11時10分になったから、“ヤンリク”の方にダイヤルを合わせたんや」
トウジの話を要約するとこうだ。
別に深夜放送を真剣に聴いているわけではない。
漫画を読みながら、雑誌を読みながら、まれに宿題をしながら聴いているのだ。
“ヤンリク”の特徴のひとつはリクエストした者の名前や住所をけっこう詳しく言うところにある。
この時、パーソナリティはこう言ったそうだ。
『リクエストは神戸市灘区高羽市場のリンゴ星さん。
それから、シンジ大好きさん。神奈川県是嶺市根瑠府が丘えるえーえすから。
あ、ラスと読めばええのかな?たぶん、女の子やね。
では、ポール・マッカートニーとウィングスで“マイ・ラブ”』
「へぇ、そりゃ確かにここは根瑠府が丘だよな」
「ああ、ここの校区は全部根瑠府が丘やさかいな。どや、センセ、心当たりないか?」
「えっ、と…、でも、僕じゃないよ、たぶん、きっと、絶対」
シンジは真顔で否定した。
「“マイ・ラブ”は好きだけど」
「そこや。まあ、中学2年のシンジやなんて誰も言ってへんさかいな、センセがそのシンジかどうかなんてわからへん」
「あ、なるほど、そうか」
シンジよりも先にケンスケがぽんと手を叩いた。
「え?どういうこと?」
「鈍いヤツだな。お前、この前の学級通信のアンケートで今好きな歌ってヤツにその曲書いただろ」
「あ、そうか」
「トウジは確か“赤い風船”だったよな」
「う、うっさいわい。美代子ちゃん可愛いやないか」
「えっと、ケンスケはウルトラマンタロウだったよね」
「あんなのはウケ狙いだろ。当たり前じゃないか」
本当にそうか?と言いたげにトウジは笑った。
この中学になってできた親友はやたら格好つけすぎるところがある。
そして2年になって友人になったシンジは逆に素直すぎるときていた。
背が高くもなく格好よくもない、このトリオは巧くバランスが取れているのかもしれない。
「まあ、ケンスケの言う通りや。わしもリクエスト曲のことでセンセのことやないかとピンときたんや」
「え…、でも…」
「羨ましいな!え!シンジよ!」
「わっ」
ケンスケは先ほどトウジにされたのと同じようにシンジをヘッドロックする。
しかし彼はケンスケのようにじたばたせずに、ただ呻いているだけだ。
「ホンマにセンセやったにしても、センセに惚れたのがどいつやって問題があるわな」
「そんなのへちゃむくれに決まってるぜ!」
「おい、ケンスケ。嫉妬はかっこ悪いで。ま、悪戯ってことも考えられるけどな」
「悪戯か。なるほどな。決まった、悪戯だ、これは」
「見苦しいのぉ、ケンスケよ。悪戯にしても何で“ヤンリク”なんやって疑問があるんやけどな」
「そうだな、悪戯なら“パック”あたりにリクエストするよな」
ケンスケの言うとおりである。
ここ神奈川県ならば、TBSラジオの“パック・イン・ミュージック”か文化放送の“セイ・ヤング”が悪戯の場としては順当だろう。
しかし情けないことにシンジは“パック”と言われてもまったくわからない。
同年代とは思えないくらいに深夜の世界についてはもの知らずである。
まずは深夜放送を聴かせてみることから始めよう。
トウジとケンスケはシンジに今日の夜に深夜放送を聴くように強要したのである。
「えっと、母さん。今日、深夜放送聴くけど、いい?」
碇ユイは息子にそう切り出され、飲みかけのお茶を吹いてしまった。
口に入れていたのが少量だっただけに惨事には到らなかったが、彼女はテーブルを拭きながら一人息子をまじまじと眺めた。
まったく素直というか、面白みがないというか。
育て方を間違えたのだろうか。
ユイはシンジに聞こえるような大きさで溜息を吐いた。
しかし、シンジとしては仕方がなかったのである。
彼の持っているラジカセではどうも電波の拾いようが悪いみたいなのである。
トウジに教えられた様に1010khzに合わせてみたが、ほとんど雑音しか聞こえないのだ。
(註:現在のABCラジオは1008khzである)
ここは母親が所持している大型のラジカセを貸してもらおうと思ったからなのだ。
因みにこの碇ユイという女性は洋楽が大好きで、子持ちでありながらビートルズに熱中していたのである。
彼らが来日した時には真剣に日本武道館を目指そうとして、深刻な夫婦喧嘩を引き起こしたこともあった。
まだ7歳だったシンジはその時のことをよく覚えている。
結局はチケットなど入手できるわけもなく、ユイは7月1日夜9時のテレビ放送を食い入るように見ていたわけだ。
(註:過去発売されていた武道館ライブは放送バージョンではないとのこと。視聴率は56.5%)
当然その日の夜は家事を完全放棄したのだが、実はその日のために碇家にはカラーテレビが導入されていた。
(註:カラーで放送されたのは日本テレビと読売テレビのみ。他のネット局はモノクロ放送)
無愛想で頑固な夫だったが、10歳以上若い妻にはやはり甘かったのである。
(註:六分儀ゲンドウは新入社員であった高卒のユイに見初められ、わずか数日後に婿養子となる羽目となった)
そのような女性なだけに、応接間にはステレオ、夫婦の寝室には大型のラジカセが鎮座していたのだ。
その大型ラジカセをシンジは拝借しようとしたのである。
「ふぅん、あなたが深夜放送ねぇ。11PM?」
「えっ、ち、違うよ!テレビじゃなくて、ラジオ、ラジオだよ!」
深夜放送の知識はなくとも、エッチな番組の知識はそれなりにある。
そこのところはシンジも健全な中学2年生というところか。
母親として息子の挙動はしっかりとチェックしている。
テレビの洋画劇場を見ていると、そういう際どい場面になった時にシンジが周りの目を気にしているのが物凄くわかる。
キスシーン如きでもそうなのだ。
もっともまだ二人目をあきらめていないユイその人も、映画のラブシーンにファイトを燃やすことがあるとこっそり付け加えておこう。
加えて、子供部屋の隣に位置する夫婦の寝室にラジカセがある意味については読者諸君の想像に任せよう。
さて慌てふためく息子を見て楽しんでいたユイだったが、結局ラジカセは貸さず仕舞いとなった。
何故なら、機械ものに疎い息子はAM放送の受信方法を理解していなかったのである。
ダイヤルさえ合わせればいいものだと思っていた彼は、ラジオ本体を移動することによって受信状態がすこぶる変わることに驚嘆した。
ユイは思ったものだ。
これって男親が教えるものじゃないのかしら?と。
そして、彼女は推理と妄想を楽しんだのである。
何故、シンジがわざわざ大阪発信の深夜放送を聴こうとするのか。
どうせ答など教えてもらえるわけもないから、彼女は奇想天外な話をでっち上げようと考えた。
その方が面白いからだ。
事実は妄想よりも奇なり。
とは言われていないが、実際にユイの妄想よりもこの後の展開は遥かに甘く、そして胸を熱くすることになった。
シンジが“ヤンリク”を聴き始めて10日が過ぎた夜だ。
彼の好きな洋楽がかかる可能性はやや低いが、それでも番組は結構楽しめた。
聴かず嫌いだった邦楽の中にも、いいなと思える曲もある。
番組のテーマソングもそうだった。
トウジに確かめてみると、岡本リサという歌手が歌っているらしい。
チェロを習っているだけにシンジは曲を覚えるのが得意な方だった。
数日聴いているうちに、テーマソングを歌えるようになったのである。
その日も時間より前に、部屋の中で一番受信状態のいい場所にラジカセを置きダイヤルを合わせた。
『葉書で当てよう。車と一万円』
11時10分になり、いつものキャッチコピーで番組がはじまる。
シンジはラジオに合わせてテーマソングを口ずさんだ。
♪星があなたにささやく夜も 小窓に雨が降る夜も…
トウジ曰く、エンディングテーマは歌詞が違うらしいが、放送終了の時間まで付き合ってはいられない。
午前2時まで起きていれば、おそらくシンジも授業中に居眠りをしてしまうことだろう。
居眠りの常習犯の惣流さんはやっぱり深夜放送でなのかなぁ…。
恋する少年はそんなことを思った。
碇シンジが惣流・アスカ・ラングレーという金髪の少女を見初めたのは昨年のことだ。
中学に入学した時に日本国籍だが白人の容姿を持った綺麗な子がいるとは聞いていたし、
その後何度か校内で見かけたことはある。
確かに綺麗な子だなとは思ったが、それだけのことで恋心には発展しなかったのだ。
それが秋の文化祭の時である。
無理やり出させられた、チェロの独奏を披露している時のことだ。
舞台で発表することは何度も経験しているが、何しろ学校の体育館で聴いているのは同級生たちなのだから
彼が緊張するのは当然だろう。
演奏前にシンジは大きく深呼吸をし、そして目線の置き場所を探した。
楽譜は完全に覚えているし、下手に譜面を見ると逆に間違えてしまうかもしれない。
そんな経験を持つ彼には、会場内のどこかをぼんやりと見つめることで演奏に集中するという癖ができたのだ。
そして、彼は一年生の席の前から15番目に周りから浮き立って見える少女を発見した。
それは当然だろう。
この時代、中学生の髪の毛の色は黒以外にはまず考えられない。
それだけに金色の長い髪はことさらに目立った。
最初は何となく、見ていただけだ。
だが、見ているうちに彼の気持ちに大いなる変化が訪れたのである。
彼女のためにチェロを弾いている気になってきた。
シンジは心を込めて弦を弾く。
この時はまだ彼女の名前すら知っていなかったが、これがシンジの初恋の始まりだった。
結果から言おう。
実はその時が惣流・アスカ・ラングレーの初恋の始まりでもあったのだ。
一人壇上でチェロを演奏する少年がじっと自分を見つめている。
小さい時から「綺麗だ」「可愛い」と周囲に言われ、中学に入ると何人も告白を受けた。
少しばかり自意識過剰気味だったアスカだったが、彼のこの攻撃にはかなりダメージを受けたのだ。
別に彼の容姿に嫌うような要因はない。
となれば、自分に向って(としか思えない)高尚な音楽を奏で続けられると胸が高鳴るのも道理かもしれない。
しかし、この時点ではまだ一目惚れでもなく、初恋のスタートラインに強制的に立たされただけとも言える。
それが己から恋心を覚えてしまったのはその後どれくらい経ってからだろう。
自意識過剰のアスカだったから、きっとあのチェロ男はそのうち告白しに来ると思い込んでいた。
ところがいつまで経ってもいっこうに彼は彼女の前に現れないのだ。
現れるのは呼びもしない男子生徒だけである。
アスカは焦れてきた。
好きならば何故告白しに来ない。
あんなに情熱的に、自分のためにチェロを弾いていたのではないか。
顔はどこかで見たような気がする程度だったが、プログラムで名前とクラスは確認していた。
ここ根瑠府が丘中学校は大規模なニュータウンに位置する。
一学年にクラスが10もある上に、アスカは1組で彼は9組。
体育や技術家庭の授業でも一緒になる機会はないし、そもそも教室も1フロア違う。
顔を合わす機会がほとんどないために、彼女は余計に彼のことを気にするようになってしまったのかもしれない。
その数少ない機会が訪れると、胸がどきんとした。
これまでは告白されても即座に返事することはしなかったのに、その後は即答で断る様になった。
だから中学に入学してから友人となった洞木ヒカリから、誰かを好きになったからではないかとからかわれたのである。
その時である。
もしかすると、そうなのかもしれないと思うようになったのは。
そんな意識を持ってしまうと後は雪崩現象だった。
まず彼女の部屋に貼られていた歌手・加持リョウジのポスターが消えた。
そしてゴミ箱に彼のブロマイドや雑誌の切抜きが捨てられているのを発見したアスカの母親は楽しげに笑ったのである。
どうやら娘は現実の男の子に興味を抱いたようだ。
しかもあの歌手とは似ても似つかない子に。
惣流キョウコは娘のためにその想いの成就を祈った。
そして2年に進級したその日、長女は学校から文字通り駆け戻ってくると、応接間に篭ったのである。
これまで見向きもしなかったビートルズのレコードをとっかえひっかえして聴き続ける。
ははんと察知したキョウコが自分の持っていたビートルズの本を貸してあげようかと言った時に、
アスカはまさに輝かんばかりの笑顔で感謝したのだ。
察しのいいキョウコは推理を組み立てた。
進級したクラスに想い人がいて、自己紹介でビートルズが好きだと言ったに違いない。
そして馬鹿な娘のことだから、自分の自己紹介の時にビートルズを好きだと言い切ったのだ。
(註:この当時は出席番号は男子が先である)
これまで洋楽にはまるで興味を持たずに、
ジュリーだ、ショーケンだ、尾崎紀代彦だ、にしきのあきらだ、加持リョウジだと言っていたのに。
ビートルズをコレクションしていた私に感謝しなさい、とキョウコは娘の背中に心の中で告げた。
そして、天才(努力家)であるアスカはこの日のうちにビートルズの発表したレコードと全曲名を記憶したのである。
さらに次のお小遣い支給日には、惣流家の長女はとんでもないものを購入してきた。
惣流家には一枚も存在しなかったクラシックのレコードである。
バッハのチェロのレコードを応接間で何度も掛けられて、弟たちは不満の声を上げた。
ビートルズなら我慢できるが、クラシックなど頭が痛くなると。
彼らの意見にはキョウコも同意だった。
だが恋する乙女は聞く耳を持たない。
彼女の耳はどうやら愛しい少年に関する方にしか機能していないようだった。
しかし、それだけの労力を費やているにも関わらず、アスカは自分からアプローチはしなかった。
告白を待っていたのではない。
自分から告白して振られてしまうのが怖かったのだ。
伝え聞いた話によると、彼は洋画も好きで女優の中ではジャクリーン・ビセットが好みだという。
何という事だ。
あの女優はイギリス女で髪はブラウンだし、何よりも顔立ちがまったく違うではないか。
(註:シンジはジャクリーン・ビセットがイギリス出身だなどまったく知らない)
自分はドイツ人の血が3/4で、しかもあんなにパッチリとした顔でもなく、そして胸もない。
これは大問題だと、彼女は思い込んだ。
本当に自分のことに興味があるならば、とっくの昔に告白しに来るに違いない。
それなのに彼は自分と目を合わせる事すらしないではないか。
せっかく同じクラスになったというのに!
さてさて、彼の方に話を戻すと、シンジにも言い分がある。
彼も一念発起して、アスカに告白しようとしたことがあったのだ。
ところが情報通のケンスケによると、彼女はあらゆる男性からの告白を断りまくっているらしい。
その中には学校一の人気であるテニス部のキャプテンや、
足の長い高校生、そしてスポーツカーに乗った大学生までいたとのことだ。
(註:テニス部のキャプテンは事実。後の二人は噂の域を出ない)
きっと誰かともう付き合っているに違いない。
東京かニューヨークに婚約した恋人がいるとも噂されている。
(註:いない)
シンジは愕然とした。
友人にさえその想いを隠してきた彼は、そんな途方もないハードルを乗り越える自信など微塵もない。
彼女が好きになる男性なんだから、とんでもなくカッコいい男なのだろうとシンジは悲しみにくれた。
(註:シンジはカッコよくはない。但しアスカの視点を除く)
そんな状況なのに、どうして振られることを承知で告白などできよう。
そんなことをするくらいなら、こうして遠くから見ているだけでいい。
視線を合わせて変な男だと嫌われたくもない。
だから彼女と目を合わさないように、彼は苦心していたのだ。
その代わり、遠足の時の集合写真の彼女とは毎日どころか机の前に貼って溜息混じりに眺めている。
この中の誰に気があるのか、掃除をする母親が検分しているとは露ほども知らず。
(註:ユイは正解していた。洋画好きだという息子の好みですぐに断定できたからだ)
因みにアスカの方もそうだ。
彼が大きく写っている写真を購入することもできず、集合写真で満足するしかない。
その写真を手にビートルズやチェロ曲を聴いているのだから、愛しの君はその中にいると母親にはすぐに知れた。
(註:キョウコはその中の誰かわからなかった。鎌倉の大仏前では誰も楽器など手にしていないからだ)
このような状況がベースになっていたのである。
そんなこととはまったく知らず、哀れな片思いと思い込んでいる少年は予習をしながらラジオを聴いていたのだ。
そして、とんでもない言葉が彼の耳に飛び込んできたのである。
「ええっ!」
勢いよく立ち上がったシンジは椅子を真後ろにひっくり返しただけではなく、机で両太腿を打ち、
その痛みに顔を歪めながらも必死にDJの言葉を聴こうと努めていた。
「センセ、昨日の聴いたか?」
「う、うん」
シンジは顔を赤くした。
あの後、何事かと部屋に飛び込んできた母親に言い訳を羅列したが、長年の経験からまったく信じられていないことはわかっている。
大阪発信の深夜放送に、息子の深夜の悲鳴に下手な言い訳。
それだけでもご飯を三杯以上いただけそうな題材である。
どうやら二番目ができたみたいで、最近食欲旺盛な碇ユイである。
(註:この一ヵ月後に産婦人科に行き2ヶ月だと診断された)
「どうした?またか?また出たのか?あれが?」
ケンスケは血相を変えてシンジに詰め寄った。
言葉だけなら幽霊か何かが出たような印象を与えるが、ケンスケの様子はただ事ではない。
こういう話題に敏感な世代でもあるわけだし、何よりも友人がその中心に位置しているのだ。
さらにその中に妬心も見え隠れするのは自然な流れで、仕方がないことだろう。
「うん。びっくりしたよ」
「わいも驚いたわ」
今日もまた3人が話をしているのは三角公園だった。
子供たちが三角ベースをしているので、彼らはブランコのあたりで話をしていた。
ケンスケとトウジがブランコに座り、シンジは斜めになったベースの鉄棒に背中を預けている。
「ほう、そうかい、そうかい。で、同じだったのか、前と」
「それがやなぁ」
シンジが真っ赤になり俯いてしまったので、トウジは嬉々として説明を始める。
その葉書が読まれたのは午前0時半くらいだった。
『次はジョージ・ハリスンの…』とパーソナリティの声が聞こえたとき、はっとしたのはシンジとトウジだけだろうか。
いやいやもちろん、リクエストの葉書を出した金髪の少女も息を飲んでラジオを見つめたはずだ。
しかしながら、ここでは当然彼女のことは誰も知らない。
したがって、ここはトウジの視点で語られることとなる。
ビートルズの関連の曲がかかりそうになると、やはり神経がラジオに向く。
これまで何十回となく肩透かしに終わってきたのだが、今回は違った。
『ジョージ・ハリスンの“美しき人生”。この曲にリクエストしてくれたのは八尾市駅前市場の小百合さん。
それから神戸市兵庫区有馬郡道場村のジョージ・張り扇くん。なるほど、張り扇ね。
そして、神奈川県神奈川県是嶺市根瑠府が丘エルエイエスのシンジ大好きさん、
あ、すんません、シンジ大大好きさんから。大がひとつ抜けてましたわ』
トウジ曰く、今回は前のパーソナリティとは違ったそうだ。
ともかく、悪戯にしろ本気にしろ、彼女は(もしかすると彼は)再び行動を起こしたのである。
話を聞き終わったケンスケは強く悪戯&犯人男性説を主張した。
その主張の最大の理由は、シンジがそんなにもてるわけがないということだった。
それに本当に好きならさっさと告白してくるだろうという意見も付け加えられた。
ケンスケの意見に反論したのはシンジではなく、トウジの方だ。
やはり悪戯というには、ABCラジオという大阪のラジオ局の番組を使うという点がどうしても解せない。
そこを突っ込まれるとケンスケも何も言えなくなってしまう。
確かにそこが不思議なのだ。
トウジは腕組みをしてきっぱりと言った。
「わしはな、センセに惚れとる女がおると思っとるんや。
このセンセはこんなんやけど、まあ、あれや、ええとこがあるからわしらも友達しとるわけや。
ちゅうこって、そのええとこを珍しゅう、あ、いや、すまんの、見抜いた女がおってもおかしゅうはないで」
「俺のいいとこはいつになったら…」
「日本沈没までにはなんとかなるやろ。
で、その女はな、まあ、何て言うたらええんか…」
トウジに軽くいなされて、ケンスケは不満顔だがそれでも神妙に関西弁の推理を拝聴している。
シンジの方は真剣この上ない。
「そうやな、まあ例に出すと惣流みたいな女やあらへんってこっちゃ。絶対にアイツみたいなタイプやない」
(註:思い切り間違えてます)
「えっ、そ、そうなの?」
「金髪美人の好きなセンセには悪いけどな」
すべてを見抜いているかのようにトウジはいやらしく笑った。
「あんなはっきりとした女がこんな神妙なことするわけないで。
ホンマに惚れたならすぐに告白するやろし、悪戯やったらもっと大っぴらにしよる」
「ああ、そうだな。てことは、おとなしそうなヤツが犯人ってわけか」
「ああ、そや。それと関西に関係しとるやっちゃな。引っ越してきたとか」
「なるほど。それなら、ホシはすぐに浮かびそうだ」
「ほな、これからわしのことはボスって呼んでもらおか」
「何、お前が裕次郎か?じゃ、俺は…」
ケンスケは一瞬考えて、剛毅にも主役を選んだ。
「マカロニだな、マカロニ。ショーケンだぜ」
(註:この1ヵ月後マカロニ刑事が殉職してしまうことをケンスケは知らない)
「シンジは長さんだな」
「待ちぃや、長さんは子持ちやで。
まあ、不本意やけど今の状況から考えて、しゃあないけど、殿下、やな」
「なにっ、殿下だと!」
「せや、モテモテの殿下や。くっやしいけどの」
「えっと、何のこと?」
去年放送開始した『太陽にほえろ!』をシンジはまるで見ていない。
国産アクション刑事ものにまったく興味がない上に、その時間はNHKか映画劇場を見ている彼なのだ。
(註:1ヵ月後には彼もこの番組に熱中する。女の影響というものは恐ろしい)
「ま、ええからええから。とにかく容疑者を割り出さないといけないな、マカロニ」
「了解、ボス」
長くもない前髪をかきあげたケンスケは明らかにカッコをつけている。
「あ、あのさ、いい?」
なりきっている友人たちにシンジはおずおずと声を掛けた。
「ええで、センセ…やない、殿下」
「な、しっくりこないだろ」
「まあ、ええやないか、で、何や?」
「うん。あのさ、あれも手がかりにならないかなぁ」
「あれって何や?」
「ほら、住所のところに、最後についてただろ」
「おお、あれか」
トウジは落ちていた手ごろな枝で地面に字を書く。
L A S と。
「あれはやっぱりこう書くんやろな」
「間違いないのか?これで」
「たぶんな。最初は“らす”言うとったさかいな」
「で、意味があるのか?これに」
ケンスケはつま先で文字を差す。
「あのさ、辞書で調べたんだ」
おずおずとシンジが切り出した。
うむうむそれでと二人が見るが、彼は寂しく微笑みながら調べた結果を披露する。
LASというそのものズバリの単語はなく、Lash、Lass、Lastというのが似た単語だ。
「ラッシュって鞭かいな。ラッシュアワーって鞭の時間ってことか?」
(註:間違いです。rush hourが正解)
「鞭を振り回す女に惚れられたってことか?災難だな、シンジ」
からかうためなら、悪戯だ、男だ、という自分の意見は棚上げにする。
このケンスケの節操のなさはこの時期の少年としては正しいかもしれない。
その時、シンジは微かに笑ってしまった。
惣流・アスカ・ラングレーという少女は乗馬鞭を振り回しそうなイメージもあったからだ。
そういう意味なら大変結構だと彼は思った。
何しろ彼の辞書には“SM”などという単語は記載されていないのだ。
だから彼がイメージしたのは草原で馬を駆る、そんな古い洋画に出てきそうな光景だったのである。
「Lastは最後って意味だよな。Lassはなんだ?」
「少女とか若い女って意味だって」
「ふぅ〜ん、なんかつまんないよな。でも、それか?」
そうなんちゃうか、とトウジも応じた。
確かにそういう意味なら何の手がかりにもならない。
シンジは落胆した友人に自分の考えた回答の一つを漏らそうとはしなかった。
こんなことを言えば、何という思い上がりだと袋叩きに遭うかもしれないからだ。
シンジが考えたのはこうだ。
LASとは、ラングレー、アスカ、惣流、ではないかと。
そのことを思いついたとき、彼は狂喜した。
しかし一時の狂騒が収まると、その回答に大いなる欠陥があることに気がついたのだ。
彼女が自分に恋をするはずがないことを。
同じことを友人たちも主張するに違いない。
身の危険を感じ、そして自分の馬鹿さ加減に呆れて、彼は口をつぐんでいた。
その夜のことだ。
“ヤンリク”を聴きながら、シンジは考え込んでいた。
LASの件は自分の気の迷いというか、願望というか、妄想というか、そういったものだと得心している。
気になるのはその事ではない。
自分のことを好きだと言ってくれている相手についてだ。
その人の気持ちに応えることはできない。
何故なら自分には好きな人がいるからだ。
そしてこの事件がきっかけになって、金髪の同級生に対する恋心は日増しに強くなってきている。
叶わぬ恋ではあるけれど、自分はこの想いを生涯通すのだとシンジは固く誓っていた。
だからこそ、リクエストをしてくれている人には謝ってあきらめてもらわないといけない。
その理論は少しおかしいかもしれないが、彼の中では一本筋が通っている。
恥ずかしがり屋の彼だが、これだけは勇気を振り絞ってやらねばならないと決意した。
しかし、その相手は何処に?
シンジは自分もリクエスト葉書を出そうと考えた。
読んでもらえるかどうかわからないが、相手が誰かわからない以上、それしかない、と。
彼はまず葉書を入手しないといけなかった。
それには明日の放課後を待たねばならない。
この時代、夜中に開いている“コンビニ”と後に称される店などない上に、夜間外出など親にぶたれるのがオチだからだ。
一日一枚。
ちょうどその時間、その一枚にすべての思いを込めてリクエスト葉書を書いている少女がいた。
二文字三文字書いては、机の前の遠足の写真を見つめ想いをさらに高める。
(註:彼女が見つめているのはその写真の一点だけだ)
彼女は恋の辻占をしていたのである。
3回葉書が読まれれば、この恋は叶う。
勝手に決めたルールだったが、何ともう二回も読まれたのである。
これは奇蹟に違いない。
これまで何度も葉書を出したのに、一度も読まれた事がなかったのだ。
それが“シンジ大好き”の内容にした途端に、番組でリクエストを読まれた。
神様が後押ししてくれているに決まっている。
アスカはさらに一日一枚のルールで書き続け、そして2枚目が読まれることになる。
彼女の鼻息が荒くなるのは仕方がないことかもしれない。
“ヤンリク”を聴いたのは神戸にいたときだった。
父親の仕事の関係で昭和44年と45年に惣流家は神戸に居住していた。
(註:昭和45年といえば大阪万博でしょう。作者の傾向からして)
その時にこの深夜番組を聴く習慣ができたのだ。
関東に帰ってきた際に、まさかと思いダイヤルを合わせてみれば予想外にクリアーな音でテーマソングが聞こえてきたのである。
それ以降、周囲の者は誰も聴いていないであろう、この番組を聴くことにしたのである。
自分だけのラジオ番組のような感覚で楽しかったからだ。
恋が叶うはずの3枚目を目指して、アスカは全身全霊を込めてボールペンを動かしていたのである。
そして、10日後。
とんでもないことが起きた。
昭和48年6月29日金曜日午後11時48分。
神奈川県是嶺市根瑠府が丘というニュータウンに点在する4箇所の家で、時を同じくして奇声が上がった。
惣流家、碇家、鈴原家、そして相田家のそれぞれ子供部屋で、である。
惣流家の長女はあわあわと口をパクパクさせながら、部屋の中をくるくると走り回っていた。
問題の箇所を耳にした時に、偶然持っていたのが団扇でそれをぱたぱたさせながらだから、
もし見ていた者がいるならば、明らかに彼女は発狂したものだと決め付けていたことだろう。
団扇をあわただしく動かしながら、パジャマ姿で6畳間を駆け回る金髪の少女。
実にシュールな光景である。
鈴原家の長男は叫びとともに椅子ごと真後ろに倒れた。
その大きな物音に驚いた家族一同が扉から顔を覗かせても、彼は倒れたままの姿勢で、
しかしニヤリと笑ったのである。
センセ、やりよった、と。
相田家の長男はカメラの手入れをしていた。
だから問題の葉書が読まれた時に、驚いたあまり手にしていた望遠レンズを落としそうになり、
やっとのことで大惨事を防いだ。
そしてレンズをケースへと大切に収めた後、机を叩いて大笑いしたのだ。
シンジのヤツ、絶対にドジ踏んだに決まってる、と。
碇家の一人息子は顎を外しかけた。
それほど開いた口が塞がらなかったのである。
郵便ポストに投函したのは、こんな内容の葉書ではなかったからだ。
彼は悲鳴を上げたきり、ぴくりとも動かなかった。
心配した母親が声をかけても返事すらできない。
もう、終わりだ。この世の終わりだ。
彼は人類の未来に絶望してしまったのである。
パーソナリテイはこう葉書を読んだのだ。
『ビートルズの“オール・マイ・ラビング”にリクエストをくれたのは、
神奈川県是嶺市根瑠府が丘2丁目の碇シンジさん。
ええっと、僕は惣流さんのことが大好きなんだ、と書かれてますよ。惣流さん、すごいなぁ、彼は本気やで。
ではシンジ君の愛をぜぇ〜んぶこめて、“オール・マイ・ラビング”いってみよか!』
シンジは頭を抱えてしまった。
確かにそういう文面の葉書を書いたのは事実だ。
最初の一枚をそう書いて、これじゃまずいとゴミ箱に放り込んだ。
惣流さんなんて書いたなら、みんなに秘めた恋心がわかってしまうではないか。
だがくしゃくしゃに丸めたりしなかったから、もしかすると…。
しかし住所はしっかり書いたが、名前を書かずにいたはずだけど…。
ゴミ箱を片付けるのは自分ではない。
自分でしなさいと言われているが知らぬ顔をしているので、母親がぶつくさ言いながらゴミ袋に移しているのである。
「おぉ〜い、シンジ?どうしたの?」
頭を抱えたままの彼は、声をかけてきた母親に質問した。
「あ、あのさ、ゴミ箱に入ってた葉書。まさか…」
やっとの思いで問いかけたのだが、返事はあっさりと最悪の形で戻ってきた。
「ああ、あれね。ゴミにしたらいけないでしょ。書き損じなら郵便局に持っていって切手に換えないと。
まあ、書き損じたところはなかったから、あ、違ったわね、名前は書いておいたわよ。
あれって車が当たるんでしょう?ちゃんと名前を書いておかないともったいないじゃない」
立て板に水とはこの事か。
碇ユイは息子を絶望のどん底に流し込むかのように言葉の洪水をもたらせた。
もはやシンジにできることは、「もう放っておいてよ」と小声で呟いてドアを閉めることだけだった。
その夜、彼は失ったものの大きさにまんじりともしなかった。
ところが、その6時間後。
まだ、6時45分にもならない、土曜日の早朝である。
碇家のチャイムが鳴った。
インターホンなどという高機能な設備は碇家には導入されていないため、愛妻弁当製作中のユイが玄関に歩を進めた。
(註:週休2日などどこの世界の話かと大人は会社へ子供は学校へ)
扉を開けた彼女は、朝日に輝く赤金色の髪の毛を門のところに確認した。
その一瞬、ユイはすべてが巧くいくことを直感したのである。
その後の数分、アスカは胸が破裂しそうなほどどきどきしていた。
彼の母親は優しく微笑んで、「少し待っててね」と言ってくれた。
その数分間でシンジの部屋では大騒動が勃発している。
明け方まで眠れなかった彼はうとうととしていたところを叩き起こされ、
そして客人が玄関先で待っていると告げられたのだ。
それが金髪の美少女だと教えられ、シンジは慌てふためいた。
(註:アスカはきちんとユイに挨拶している。名前を伏せたのは演出効果をユイが狙ったためだ)
パジャマ姿で出て行こうとして、母に窘められ、急いでカッターと学生ズボンを着用する。
ボタンを嵌める手ももどかしく、ズボンのファスナーも忘れて注意される始末。
もちろんこの時の彼は自分にバラ色の未来がすぐそこに待っているなどとは思いもしていない。
あの失礼なリクエスト葉書の事を誰かに聞いたに決まっていると決め付けていた。
だから彼は悲壮な表情で支度を急いでいたのだ。
彼女に言い訳すべきか、自分の気持ちを正直に告げるべきか。
本当は言い訳したくて仕方がないのだが、そんなことをすれば一生悔いを残すような気がする。
(註:目の前の障壁から逃げがちの彼としては大英断である)
ユイはそんな息子の姿を嬉しそうに眺めていた。
最初は情けない表情を浮かべてうろたえていたが、次第にいい顔に変化していっている。
男はこうでなくっちゃとユイは腕組みをしながら思っていた。
絶対にこれは夫に一切合財報告しないといけない。
しかし、愛妻弁当の方はどうするのだ、碇ユイ?
シンジは一階に降りた。
まだ靴を履いていない。
その前に玄関の扉を見つめてしまったからだ。
目の前にある木製の扉の向こうには彼女がいる。
彼女に謝らないといけない。
しかし何と言えばいいのか、未だに言葉が浮かんでこない。
でも彼女を待たすわけにはいかない。
この場から逃げる気はない。
彼は唇を噛みしめると運動靴を履いた。
そして、掌の汗を学生ズボンで乱暴に拭うと、シンジは大きく頷き扉のノブに手をかける。
ゆっくりと向こう側に扉が開かれると、2mほど離れた門のところに彼女はいた。
真っ直ぐにこっちに向って。
惣流・アスカ・ラングレーは腰に手をやり、仁王立ちをしていたのである。
こんな様子で待っているなど、シンジの想像の域をはるかに越えていた。
何を最初に喋ろうかと考えてもいなかったくせに、彼は喉元まで出掛かっていた言葉を失ったような気がした。
失ったも何も、唇を開く前に、ぴしりと指をさされてしまったのだ。
「遅いわよっ!」
「ごめんなさい!」
これこそ条件反射というものか。
実はこの二人、これまできちんとした会話をしたことがない。
挨拶程度の関係なのだ。
しかし心の中では妄想という名の会話を試みてきている。
そこでのシンジはもっとカッコよく、またアスカはしおらしい。
それは仕方がなかろう。
だが、これからは現実の相手と対することになる。
別にペンフレンドというわけではなく、毎日のように教室での姿を見てきているのだ。
妄想と現実のギャップに気づいている上で、相手を美化していたに過ぎない。
もちろん、二人ともに“もっとはっきりしないと”“もっとおとなしくしないと”と思っていたのも事実だ。
逆に素のままの自分が最初から出てきたのは、これからの二人にはよかったことと言えよう。
「い、碇君。一つだけ質問があるわ。嘘ついたら許さないわよ」
この時、シンジは初めて彼女に呼びかけられた。
名前でなく姓であったが、初めて自分を一人の人間として見てもらえたような気がして、彼の胸は熱くなった。
しかし、この時は熱くなる一方で、大いに緊張していたのだが。
「う、うん。わかった」
「“ヤンリク”のリクエスト、ホントにアンタが書いたの?書いたことはホント?惣流さんってアタシのこと?」
何が一つだけの質問だろうか。
瞬く間に3つの質問がシンジに襲い掛かった。
しかし問いかけは3つだったが、彼は一つの答だけで充分だった。
「うん!そうなんだ!ごめんなさい!」
アスカにとっては最後の謝罪が余計だった。
瞬間大きく膨らんだ歓喜があっという間にしぼんでしまったのだ。
謝るということは、この男は誤解をしている。
彼女は大きく息を吸い込んだ。
詰問してやろうかとも思ったのだが、せっかく自分に好意を持っているという大いなる喜びを得たばかりなのに
興奮して変なことをし嫌われてしまっては大変だ。
アスカは精一杯心を落ち着かせ、彼の誤解を解こうとした。
「エルエーエスって知ってる?」
シンジははっとした。
返事がなくともその表情がアスカに肯定を伝える。
「あれの意味はわかる?」
少し声が震えてしまった彼女はシンジの様子を窺う。
まさかあれの意味まではわからないだろうが、彼の意識はわかる。
自分に好意を持っているならば、その返事に何かの兆候が見えるのではないか?
いや、そこまで考えてはいない。
単純に知りたいだけだ。
考えに考え抜いた、恋の成就のためのおまじないの言葉を彼がどう理解しているのかを。
しかしシンジは返事に途惑っていた。
それはそうだろう。
彼はあのリクエストをした女の子がアスカだと確信できていないのだから。
アスカは短気である。
いくら嫌われたくないと思っていても、目の前でこういう態度をされるとうずうずしてくる。
で、言ってしまった。
「さっさと答えなさいよ!3秒以内に答えないと、酷い目に合わすわよっ!」
「えっ、あ、あの、ラングレー、アスカ、惣流……。あ、いや、つまり、だったらいいなって」
「へ?」
その切羽詰った返事を聞いて、アスカは唖然とした。
正解ではない。
そんなことは考えてもいなかったのだ。
なるほど自分の頭文字に見事に合致している。
逆様だから気がつかなかったのではなく、思いついた方の考えが彼女的にあまりに素晴らしく、
別の考え方に気が回らなかったのだ。
それにしても間が抜けている話だ。
そう思うとアスカはおかしくてたまらなかった。
「はははっ、アンタ、間違えてるわよっ、で、でも、そうよね、ははっ、おっかしい!」
身体をくの字までに曲げなかったが、それでもお腹を押さえてアスカは笑った。
この回答の方が大いに自然ではないか。
あんなに考えに考え抜いた判じ物など誰にもわかるはずがない。
「ご、ごめんなさい。惣流さんの名前を勝手に…」
「待ったっ」
アスカはにんまりと笑った。
そして、碇家の門と玄関の間の地面に指で縦に“L”“A”“S”と書く。
彼女の白い指が汚れてしまうので、シンジは慌てて棒切れを探すが家の周りにあるものではない。
「さてと。確かに真ん中の“A”は正解よ。ここにはアスカが入るの」
彼女は再び指で“A”の右にSUKAと続けて書く。
「でも、“L”と“S”は別の字よ。わかる?」
シンジは一生懸命に考えるが、わかるはずもない。
「仕方ないわねぇ、ヒント。“S”は誰かさんの名前」
「鈴原、…じゃないよね」
「あのねっ。そんなの考えてもみなかったわよ、まったく。アスカに合わせるんだから、姓じゃなくて名前よ、名前」
「う、う〜ん」
どこまで鈍感なのか、この男は。
しかし、自分の名前が入るなど完全に考慮の枠外のようだ。
アスカはくすくす笑いながら、“S”の隣にHを書き加えた。
「ほら、サービスよ。後4文字」
「ま、まさか…」
「Hの次は?言ってみなさいよ」
「あ、あい?」
そうか、“I”は“あい”と読むんだっけ。
愛 みたいでいいわねぇ。
アスカは少し頬が熱くなってきていた。
「正解っ。じゃ、アンタが続きを書きなさいよ」
もう後には引けない。
シンジは蹲ると、Hの後に自分の名前のスペルを書き加えた。
「はい、これで“S”は完成したわよっ。残るのは“L”ね!」
アスカの声が上ずった。
さすがに恥ずかしい。
恥ずかしくて恥ずかしくて、たまらない。
こんなの自分で言えるわけないし、彼だって一生気がつかないに決まっている。
さてさて、どうしたものかと困ってしまったアスカであった。
シンジの方はもうヒントはくれないのかと彼女を見やるが、アスカはもう視線を合わせることができなかったのである。
不自然な姿勢でそっぽを向いてしまったアスカを見て、シンジは途方にくれてしまった。
“L”で始まる言葉は“LOVE”しかないのではないか。
正解を察知しているにもかかわらず、度胸不足のシンジはその答えを切り出せない。
そこに神様の使いが現れた。
ごほん!
咳払いとともに扉が開き、スーツ姿の男がゆっくりと出てくる。
「ふん、邪魔だ。除け」
「と、父さん、惣流さんに失礼じゃないか」
「ふんっ。お前たちのおかげで今日は弁当がないのだ。迷惑千万だ」
「はい?」
思わず振り返ると、玄関口で母親が手を合わせていた。
ああ、弁当を作らずに立ち聞きしてたな、と息子は直感した。
しかし今文句を言う余裕などない。
早く“L”の続きを答えないといけないからだ。
「ここはこうに決まっておる。ふんっ」
太い指がぬっと伸びた。
シンジの父はとんでもない長身だが、190cmもある父親で慣れているアスカにとってはさほどの驚きではない。
ただこの時は、地面まで指だけが伸びてきたような錯覚を覚えたのである。
その指は乱暴に土の上を動いた。
“L”の右に、OVEと書き加えたのである。
そして、手をぽんぽんとはたくと「行ってくる」と歩いていった。
おそらく彼の頭の中では格好をつけているのであろうが、子供たちには通じていない。
「ご、ごめん。父さんが勝手に」
「し、仕方ないわよ。正解だし…」
アスカの言葉にはっと息を飲んだシンジが彼女を見ると、赤金色の長い髪の毛がその表情を隠している。
背を向けて立っていたのだ。
正解ということは、そういうことなの?
嘘じゃないよね、夢じゃないよね、本当に本当?
シンジの溢れ出した想いは言葉にはならなかった。
胸がいっぱいで何も喋ることができなかったのだ。
彼がそういう性格ではないかと思いながらも、アスカはやはり何か声をかけて欲しい。
そのまま数十秒時が過ぎる。
そうなってしまうと顔を見合わせていないだけに、会話のきっかけがつかめないものである。
玄関の三和土でちょこんと座ってみていたユイだが、結局お節介を焼くことにした。
別に二人の恋路がおかしな方向に進んでしまうとは思ってもいないが、今はもう時間がない。
このままでは8時になろうが、12時になろうが、二人はこのままの状態でいるかもしれない。
よいしょと、ユイは立ち上がった。
「アスカちゃん、だったわね。指が汚れてるわよ。それに朝ごはんも食べてないのでしょう?
うちで食べてから学校へ行きなさい。ほら、シンジも朝ごはん食べるの。あらら、あの人ったら大事なものを忘れてる」
つっかけを履いたユイは、夫の書いた文字の横に人差し指でハートマークを付け加える。
べらべら喋る彼女につられて振り返っていたアスカは、その甘美なマークを見て頬を真っ赤に染めた。
「か、母さんまで!」
「アスカちゃん、うちは和風の朝食だけどいい?玉子焼きにちりめんにお味噌汁。
嫌いなものがあっても食べてね」
アスカはぷっと吹き出した。
「きもはないですよね。あれはだめです」
「あら、残念。次は用意しておくわね」
「もうっ、母さん、そんな意地悪……えっ、つ、次ぃ?」
「うぅ〜ん、じゃ食べられるように練習しないと。碇君の家は通学する途中なんですよね、うちは2丁目だから」
アスカはにっこりと笑った。
その笑顔はとても素敵にシンジには見えたが、それでも異議は唱えずにはいられない。
「えっ、2丁目なら学校には遠回りじゃないか」
素直に口を挟んできた息子の頭をユイはごしごしとかき回した。
「こういう馬鹿なのよ、いいの?こんな馬鹿で」
「アタシ、馬鹿が好きなんです。あ、普通の馬鹿は大嫌いですよ。特別な馬鹿が大好きなんです」
アスカはきっぱりと言い放った。
そんな彼女がシンジには眩しい。
「あら、そう。馬鹿シンジがいいのね」
はっきりとユイに言われ、金髪の少女は頬を染め、そしてそれはもう楽しそうに笑ったのだ。
「それ、いただきっ。これから、碇君じゃなくて馬鹿シンジでいきます」
「ええっ、馬鹿シンジだってぇ?」
「アタシのことはアスカって名前で呼んでもいいからね」
「ははは、いいわね、若いって。ほら、入りなさい。学校に遅れるわよ」
「てめぇらっ!揃って居眠りたぁ、いい根性してんじゃねぇかっ!」
白いチョークがふたつ。
真っ直ぐに目標に飛んでいった。
2時間目までは二人とも何とか耐えた。
しかし3時間目の数学の半ばで、示し合わせたかのように船を漕ぎ出したのである。
漕ぎ出した先は甘美なる未来の海か。
ところがその航海を邪魔したのは青葉先生だった。
生徒たちはチョークの到達場所を確認し、その一方の的が想像外の人物だったことに驚いたのだ。
惣流・アスカ・ラングレーはチョークの当たった場所を撫でながら立ち上がったが、
そんな彼女は毎度のことなので驚くに足りない。
だが、碇シンジは優等生といわないまでも、問題を起こすような男子ではない。
彼はチョークを当てられたことも気づかないくらいに机に突っ伏している。
「おい!碇っ!おめぇっ!」
教壇を降りてきた青葉先生だったが、シンジの机に達する前に邪魔が入った。
すっかり目覚めたアスカが駆け込んできたのである。
そして、根瑠府が丘中学校に永遠に残る伝説を彼らはその目で見ることになった。
「馬鹿シンジに何すんのよ!アタシのシンジに指一本でも触れたらただじゃすまさないわよっ!」
立ち止まった青葉先生は口をパクパクし、クラスメートたちは彼女の言葉の意味を一生懸命に咀嚼した。
碇シンジが惣流・アスカ・ラングレーの“もの”になった。
ということは、その逆は?
「ええええええっ!」
教室中がどよめいた。
さすがにシンジもその騒動の中で安眠を貪ってはいられない。
まことにのほほんとした顔をもたげた。
そして目をぱちくりしながら、眼前の状況を見渡した。
すぐ前にはアスカの背中。
彼女は大きく手を広げて、何者からか自分を守っているかのようだ。
「えっと、惣流さん?」
彼が言葉を発したと同時に、背中はくるりと回転し青い瞳がこちらを向いた。
「もうっ、アタシのことはアスカって呼びなさいって言ったでしょうがっ。アタシたちは恋人どうしなんだからっ」
「ええええええええええっ!」
もはやどよめきのレベルではなかった。
机を叩く者、足を踏み鳴らす者、口笛を吹く者、大声で騒ぐ者。
戸惑いから回復した青葉先生が「てめぇら静かにしろ!」と叫ぶが、もう収拾はつきっこない。
両隣のクラスから、先生が様子を見に来ても尚騒ぎは続いた。
結局、当事者二人は職員室に連行され、状況説明をさせられたのである。
しかし不純異性交遊に関しては、今朝彼氏彼女になったばかりでその喜びのあまり、アスカが喋る喋る喋る。
昨年の文化祭で恋に落ちたことから、深夜放送へのリクエスト、
それから昨晩から今朝にかけての一連の事実を彼女はすべて喋った。
そして教師たちからの注意を彼女は胸を張って了承したのである。
深夜放送は二度と聴かないと、アスカは宣言したのだ。
何故そんなに簡単に?
友達たちに詰問された彼女は笑って語るのだった。
「だって、これから毎日お弁当を作って、それから馬鹿シンジを迎えに行かないといけないんだもん。
深夜放送なんて聴いてる暇ないわよ。もう深夜放送は卒業なの。ねぇそれより、男の子ってどんなお弁当が好きなんだろ?」
しかし、その日の放課後。
アスカの家にお呼ばれしたシンジともども、二人は一枚のリクエスト葉書を仕上げた。
ビートルズの“キャント・バイ・ミー・ラブ”をリクエスト曲にした二人は、
過去の放送で葉書を読んでくれたから彼氏彼女になれました、と感謝の言葉を書き加えた。
ありがとうございますと書かれ、二人揃って郵便ポストに投函されたその葉書が、
“ヤンリク”で読まれたのか否か、夜中のラジオを聴かなくなったアスカとシンジは知らない。
ただ、その後根瑠府が丘中学校では深夜放送が空前のブームになったことだけは付け加えておこう。
(おわり)
<あとがき>
ABCヤングリクエストのテーマの歌詞を書きたいところですが、
何かと問題がありますので、興味のある方、懐かしい方は、ネットで検索してください。
“ABCヤングリクエスト 星があなたにささやく夜も”で検索すれば、
2番ともの歌詞のあるサイトが見つかるでしょう。
因みに私は有名な奥村チヨバージョンよりも、岡本リサバージョンの方が好きです。
バックの男性コーラスが良かったんですよねぇ。
私は“ヤンタン”派ではなく、“ヤンリク”をたまに聞く程度でしたね。
むしろレコードを聴いている時間のほうが長かったと思います。
“ヤンリク”のパーソナリティの喋りについては、再現してません。
道上洋三にしても他の人にしても関西弁をわかるようにはなかなか書けませんからね。
ご存知の方は脳内変換してください。
さて、二人が書いた最後のリクエスト葉書ですが、おそらく読まれなかったでしょうね。
そんなに簡単に読まれるものではありません。
だから2回も続けざまに読まれたアスカの場合は奇跡的なことだったのです。
感想などいただければ、感激の至りです。作者=ジュンへのメールはこちらへ 掲示板も設置しました。掲示板はこちら |