この作品は「新薬」「認知」「告白」の後日談です。

まずは、「新薬」「認知」「告白」をお読み下さい。

 今回は少しシリアスが入ってます。

 

 

 

平行世界 〜あの日、あの時に〜

 

Act.1 第15使徒襲来 その壱

   

 

「ねぇ〜、シンジ。二人で美味しい紅茶専門の喫茶店でも開かない?」

「あ、それいいかも」

「小さくてもいいからさ、静かな住宅街かなんかで」

「うんうん」

「私が紅茶煎れて、シンジがスコーンつくるの。ランチタイムもと〜ぜん大丈夫よね」

「夜は?」

「う〜ん、お酒出すような店にしたくないから、夕方まででいいんじゃないの?だから軽食程度でいいと思うの。あ、それと、喫煙禁止」

「え〜、それじゃ、お客さん少なくなるよ」

「ダ・メ。煙草で紅茶の香りが損なわれるでしょ。禁煙喫茶なの」

「夕方までと禁煙じゃ、儲からないなぁ」

「あ、何かむかつくぅ。どうしてアンタはそんなに現実的なの?」

「はは」

「ロマンがないのよね、アンタは。私はシンジとそんな生活がしたいの…」

「……」

「これは、本当のことなの…」

「アスカ…」

「毎日の生活さえできたらいいの。お客さんがいっぱい来てくれたら、そりゃあ嬉しくなると思うけど…。

 それもいいけど…、私はシンジとゆっくりとした時間を過ごしたいの」

「わかるよ…」

「ホント…?」

「うん、僕にはわかる。あんな時間を過ごしたんだから、僕も安らかな時間に憧れるんだ」

「シンジぃ…」

「あの時、もしアスカを助けることができなかったら…、そう思うと僕は今でも背筋が寒くなるんだ。身体の震えが止まらなくなるんだ…」

「……」

「ほら…」

 

 私は、シンジを抱きしめた。シンジは細かく震えている。

 

「大丈夫よ…」

「……」

「私は此処にいる。ちゃんといるよ。あの時、シンジが助けてくれたからだよ。

 ね、シンジ。私、嬉しかった。シンジが来てくれたとき、本当に嬉しかった。だから…、ね、シンジ。思い出して…。あの時のシンジを…」

 

 

 

 4年前。

 

 私は、第15使徒・アラエルの精神汚染攻撃に晒されていた。

 

 覗かれている…。心の奥底まで…。

お願い…。

 もう見ないで…。

 

 でも、負けられない。

 

 負けられないのよ!

 

 ここで負けたら、私とシンジの未来が!

 

 私たちの未来を守るために!

 

 こんな、Peeping Tom(覗き野郎)に負けるわけにはいかないのよ!

 

 でも…、苦しい…わ。

 

 結構、キツイわね。

 良かった、わ…、シンジとわかりあえていて…。私の過去は全部シンジに話したから…、シンジの過去も私全部聞いたから…。

 あ、あんたが…、今、得意そうに見ている私の…、心は、もう…、シンジが…、知ってるんだから…、全部…、知ってるんだから…。

 

 あぁ…。

 でも…。

 

 シンジぃ…。

 

 助けてぇ…。

 シンジ、私、まだ、そこまで強くなってないよ…。

 こんなの…、こんなの、いやぁ!

 シンジだけなの!

 私を全部見ていいのは、シンジだけなの!

 あんたなんか、厭!厭!厭!厭!厭ぁっ!

 

 あ、だ、誰?

 使徒が…、覗いてこない…どうして…?

 

『馬鹿者!レイ、離れるんだ!』

『駄目、お姉さんを助ける…、私が助けるの』

『初号機、出ます!』

『許さん!初号機を出すな』

『駄目です。初号機、こちらの信号を受け付けません!』

『暴走か?』

『アスカ!もう少し頑張って』

『お兄ちゃん…、アスカお姉さんは大丈夫…、私が守るもの』

『レイ!君が!ごめん!もうすぐ着くから』

『何て事だ!これでは3機ともやられてしまうぞ』

『零号機、レイ、ロンギヌスの槍を使え。地上からでは、それ以外は無理だ』

『待って下さい、司令。それではサードインパクトが』

『レイ!後少しで着くから、交代するんだ。そしてその槍を取りに行って!』

『わかったわ、お兄ちゃん』

 

あ…、レイ、レイなのね…!

レイが助けてくれたんだ…。

ありがと…、可愛い、私の妹…。

 

 

 

平行世界 〜あの日、あの時に〜

  

Act.1 第15使徒襲来 その壱

 

− 終 −

 

 

「平行世界」Act.2へ続く