私が通っているのは、聖ネルフ学園。 まだ入学したばかりなんだけど、毎日30分の通学はとても楽しいの。 隣に住んでいる、同級生の綾波レイといつも一緒に通っているから。 だって、彼女と私は愛し合ってるんだもん…。
……。 ごめん。説明不足だったわ。 これじゃ、私が同性愛のように勘違いされちゃうわね。 私には相思相愛の彼がいるの! ちょっと待ってね。わかるように説明するわ。 私は、惣流・アスカ・ラングレー。 れっきとした女の子で、しかも自分で言うのもなんだけど美少女と断言してもいいはずよ。 金髪で碧眼、西洋人と東洋人の血が巧みにブレンドされた容姿も抜群。 入学早々、お姉さま方からラブレターをたっぷり頂いたけど、その気はないわ。 私は女になんか興味はないし、男だって彼しか見えないもん。 あれ?何の話だったっけ? そうそう、私が付き合っている人のことよね。 彼の名前は、碇シンジ。 私と同い年の幼馴染。 よくわからない研究をしている、おじさまとおばさまの一人息子。 中学1年まで私の家の隣に住んでいて、おじさまの研究のために一家3人でアメリカに引っ越しちゃったの。 そのときのことを書き出したら、凄く長くなっちゃうから、要点だけね。 えっと…恥ずかしいんだけど、別れる前の日に、き、き、キスして…。 それから、永遠の愛を誓ったのよ! ち、違うわ!言葉で誓ったのよ、言葉で! き、キスだけで、そ、それ以上のことは…。 わ、私はアイツだったら、別に…。 って、何言わせるのよ!この馬鹿ッ! はぁ…はぁ…。
シンジがアメリカに行っちゃってから毎日、 浮気していないかチェックのメールをやり取り。私は画像メールを毎日送ったのよ。 アイツったら恥ずかしがって、画像メールは最初の数回だけでその後は全然送ってこなかったけどね。 私はシンジがいつ帰ってくるかわかんなかったから、高校は女子高を選んだのよね。 聖ネルフ学園。ミッション系の、ま、どちらかというとお嬢様学校ぽいトコね。 だって、共学は男子が煩いから。私の心はシンジだけのモノなのよ。 ところが、入学して1ヶ月もたたないうちに、シンジからメールが来たの。 日本に帰ってくるって…。 あ〜ん、それなら共学にしておけばよかったわ。 それならそうと言ってくれてたらよかったのに! でも、シンジが帰ってくる嬉しさの方が勝っちゃうのよね。 私は嬉しくて嬉しくて、鍵を預かっているシンジの家を隅々まで掃除したの。 とくにシンジの部屋はそれから毎日掃除したの。 お布団も干して、枕カバーとかシーツも洗った。
そして、アイツの帰りを指折り数えて待ったわ。
それは、シンジの帰国する前夜のことだった。 午後11時を少し過ぎていたわ。 満月は真っ白な光を湛えてた。 私は部屋のベランダに出て、シンジの家を眺めようとしたの。 だって、待ち遠しくて、待ち遠しくて、たまんないんだもん。 あの微笑みが…シンジの微笑みがもうすぐ見られる。 そう思うと、胸がどきどき、きゅんきゅんして眠れやしない。 ベランダに立って、嬉しさに緩みきった顔をシンジの部屋に向けると、 窓のカーテンが開いていて、そこに人影が見えたの。 はっとなって、目を凝らすと、それは見知らぬ少女だった。 一瞬見えたのは、銀色に輝く髪の毛と、赤く光る瞳。 少女は私に気付くと、慌ててカーテンを閉めたわ。 私はシンジの家の鍵を持って、当然超速ダッシュ! 当り前じゃない!誰もいないはずのシンジの家に、誰かが入り込んでいるのよ! 自分がパジャマ姿だってことも気がつかなかったし、 少女が幽霊だとか、他に誰かいるとか、そんなことは考えが回らなかったの。 だから、友達に「アスカはいのしし座」だって言われるのよね。 ドアの鍵は閉まってた。 私は鍵を開けて、勝手知ったる、愛するシンジの部屋に突入したわ。
そこに立っていたのは、さっきの少女。 ううん、少女といっても年恰好は私と同じくらい。 私は照明のスイッチを入れた。 白いワンピースを着て、青白い髪に赤い瞳。 髪の毛と瞳の色はおかしいけど、充分美少女って言えるわ。 私には負けるけどね。 「アンタ、誰よ!シンジの部屋に、ううん、他人の家に勝手に上がりこんで!」 少女は哀しそうな眼を私に向けたの。 その瞬間、私の胸はキュンと締め付けられた。 な、何よこれ。 これって、シンジのことを考えてたらよくなっちゃう、胸キュンじゃない。 どうして、こんな娘に見つめられて、胸キュンにならなきゃいけないのよ! ちょっとうろたえた私が何か喋ろうとした時、少女が口を開いたの。
「ただいま…アスカ」
……。
声質は女のものだった。 間違いなく、女性の声。 でも、私にはすぐにわかったわ。シンジだって。 恋するものの本能ってのよ。きっと。 そして、その本能は大正解だった。 信じられないことに、その少女は、私の愛する碇シンジ本人だったのよ!
序章 「シンジが帰ってきた!」 −終−
<あとがき> ちょっと、短めで説明も不十分ですが、まずは序曲みたいな感じで。うん、アヴァンタイトルですね。 どこで発表しようか、散々悩みましたが、結局自サイトでの発表となってしまいました。 10回前後で完結させようとは思いますが…どうなりますことやら。 基本はドタバタで、少し哀しくってのを狙おうと考えています。 それと、この作品の更新はこれまでの更新スピードを期待しないで下さいね。 し、しかし、大きな問題が一つだけ…。そう、女子高ってどんなん? 2002.12/25 ジュン |
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