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「独奏は寂し過ぎるだろ」


こめどころ       2005.10.10(発表)
                                                 10.13(改定)


















 

 台風が日本海に抜け去った次の日。朝から空は天上が見えそうな程高く澄んでいた。


 ドイツから戻ってすぐに、娘は全国大会に出場すると言い出した。
私としてはまだ無理なのではないかと思ったのだが、医師はよほどの事がなければ大丈夫だと言うし、
何よりも本人の希望が頑ななまでに強かったため、渋々出場を許可したのだった。
ドイツの可動ギプスは大変良く打撲をフォローしてくれたようだ。
碇の息子はその決定にはかなり不満だったらしく、激しく抗議してきたが一蹴した。
反面よく言ってくれたと言いたいという部分もあるので彼にたいする私の感情はかなり好転した。
幾らかは全国大会での娘の勇姿を見たいといういささか親ばかな気持ちと、自分の青春時代を重ね合わせた
喜びなどもあったかもしれない。
しかし根本には、娘にねだられるとからきし駄目、という事があるのが情け無い。
いや待て。
という事は、もしアスカがあの男とどうしても一緒になりたいなどと言い出したら――考えたくもないわ!


「どうしたんです、そんなに不機嫌そうな顔して。」


心の動揺は顔に出ないタイプなのだが、ワイフにだけは隠しようが無い。


「いや、アスカを大会に出したのはやっぱり無理があったんじゃないかと思ってな。」

「一昨日から出かけてるのに今更何言ってるんです。午後からはTV放送もあるんですよ。」

「何で日曜にやらないんだ。午後は絶対休んでやる。」

「あらあら。大事なお仕事があったんじゃなかったんですの?」

「当たり前だ。これがなかったら最初っから休暇をとって京都に行ってるわい!」


だから出世なんかしたくなかったんだ。まったくサラリーがほんの1%上がると時間は10%無くなる。
どうしても行きがかり上、今日の午前中にしか会えない顧客と、決済書類が待ち構えているのだ。
まとめて正拳一発で粉みじんに出来ればどんなにかすっきりするだろうか。
呆れ顔でワイフは顔を引っ込めた。さて、そろそろ出かけなくては。
時計はまだ6時半だが早く出かけないと事務処理が終らない恐れがある。TVさえ見れなくなる。
立ち上がるとネクタイを絞り、上着を羽織った。


「おい、出かけるよ。」

「はい、鞄はこっちに出しましたよ。放映は1時からですからね。」

「うん。帰れない時は連絡入れるからな。」

「録画しとくんでしょ。わかってますよ。」


さすが我が妻。良く分かっている。私は安心して玄関を出た。
何時もより大分早い朝。秋の気配が日々濃厚になってくる。この並木の坂道が私は好きだ。
この桜の花に包まれていた、あのちびの中学生だったアスカが、あっという間に高校生だ。


「おはようございます。ラングレーさん。」

「ああ、おはよう。いつもより早くて済まない。」


毎朝迎えに来てくれる会社差し回しのハイヤー。その運転手といつものように挨拶を交わす。
後部座席に腰を降ろすと、運転手が話しかけてきた。


「今日はお嬢様が全日本選手権に出場なさるそうで。おめでとうございます。」

「お転婆娘にも困ったものさ。もう少し女らしくしてもらいたいと思うんだがね。」

「いやいや、何事に付け全日本クラスとなれば一流です。さぞご自慢なことでしょう。」

「たいしたことはないさ。」


日本の習慣に従って一応謙遜し、娘を嘆いて見せた。だがそうとも、うちの娘は一流の武道家さ。
顔がにまにまと崩れそうになって、慌てて新聞を広げた。







 全国高校柔道選手権。広い会場は全国の代表校で溢れていた。
その合間を縫うようにマスコミの記者と整理係が走り回り、電源コードがいたる所に渦巻いている。
銀色のレフ板を掲げたTVスタッフの前でレポーターが会場の様子や解説をしている。

私達は一昨日から京都に入り、近くの道場を借りて軽く試合の準備をしていた。
怪我をした後の精神的な問題はほとんどなし、肉体的な障害はマヤの電位チェックでも問題なかった。
県予選は生憎の雨だったが今日は綺麗に晴れた。
冬の制服を着たアスカとシンジ君を引率した私は、意気揚々と都ホテルから会場にタクシーで乗りつけた。
つい3年前に完成した国立京都総合武道センター。
丘陵の国有地を贅沢に使ったここは、西日本では武道系全てのナショナルセンターとしても機能している。


「いつ見ても壮観よね。この広い会場に人が溢れてるのは。」

「ちょっとミサト。どうでもいいけど少しは作戦とか考えてくれたんでしょうね。
あたしの方は何の予備知識もないんですからね!」


濃紺ワンピース型の制服に同色のブレザー、銀紺の斜め縞ネクタイ。えんじ色のベレー。
一頃より少し短くなったスカートはこの見るからに活発そうな女生徒に良く似合った。


「やっと出てきたあなたに作戦立てると無理して怪我するんじゃないかと思ってね。
とにかく好きにやりなさいな。」

「そんなぁ。せめて傾向と対策とかってあるでしょ。」

「大丈夫よ、シンちゃんがちゃんと調べてるから。」

「え、シンジが?」


アスカが振り返った先にはパソコンを抱えたシンジ君が立っている。
わたしの集めた資料を質量ともに軽く上回る彼のデータは文句のつけようが無かった。
早速2人は額をくっ付けるようにして画面を覗き込んでいる。


「最初の相手は岩手県一関私立第三高校の岩雄一蔵選手。身長176cm体重79Kg。
県大会優勝1回。得意は返しわざなんだって。技をかけるときには慎重に。鋭い一連の動きで責めないと。」

「うん、わかった。」

「足の調子は。この選手足技もうまいよ。」

「万全だわ。」


シンジ君はアスカを椅子にかけさせると、靴を脱がし、手で包むようにして踝のマッサージを始めた。


「シンジ、いいよ。恥ずかしい。」

「なんだい今更。必要な事をしてるだけじゃないか。アスカが恥ずかしがったらやり辛いだろ。」

「う…わかった。まかせるわ。」


頬を染めてアスカに言うシンジ君の初々しい事。アスカの方も同じ反応だけどね。
かーっ!もう見てるこっちの方が全身痒いわよ!

ドイツから戻って以来、校内なんかではこの二人、周りの事をあんまり気にしなくなった。
ごく自然に、二人が一緒にいるのは当たり前、みたいに周囲の子達に思われるようになってるよう。
自然にそう見えるっていうのは結構すごい事よね。だってこの二人まだ高校生なんだよ。
それがもう、長年一緒にいる兄妹か夫婦みたいに馴染んでるの。
お姉さんとお兄さんはいまだに何かギクシャクしてるってのに、先を越されたって感じ。
(考えたら合宿だ何だって、最近私はあいつとキスすらしてないのよね。加持の奴!)
このふたり、多分、今だにせいぜいたまにデートするくらいの関係よね。
ドイツで何があったか知らないけど、自然に寄り添ってる姿は悔しいけどわたしの負け。


「何か身体中がぽかぽかしてきた。」

「そりゃよかった。もうすこしね。」


観客席の椅子を幾つか占領し、うつ伏せにしたり仰向けにしたりして足のマッサージを続けてる。
薄手のスポーツタオルを掛け、特に足を庇って負担がかかる腰や怪我と反対側の腱をほぐしていく。
シンジ君はすっかり汗だくで、ブレザーを脱ぎ、ワイシャツを腕まくりしている。
どこでスポーツマッサージの指導受けたのかしら。これってなかなか簡単に習得できないのよ。
それにしたって、こんなに一心に揉まれたら、どんなにか気持ちのいい事だろう。


「さ、そろそろ着替えにいきましょ。シンジ君、後はよろしく。」

「選手席の後ろ側に場所をとってます。そこで会いましょう。」

「了解。」

「ああ、身体中が楽。足も軽いわ。シンジありがとね!」

「落ち着いて行こうね。」

「アスカ・ラングレーに今更何いってんの。ばっちりよっ!」


ぽんとシンジ君の肩を叩いて明るく笑ったアスカ。そう言って私達は階段を降りていった。
朝ラウンジでシンジ君と合流するまでは、出るのは無理だったかもとかみんな強そうだとか言ってた癖に。
そんな私の目つきを見たアスカは急に身体を縮めた。可愛いんだから。ふふふっ。


開会式の後はすぐに試合が開始された。男女混合無差別は20分後からB−2コート。


「いい、アスカ。あんたは一応病み上がりなんだから、無理に負荷をかけてまで粘らない事。
体力の消耗を防ぐには、出来るだけ組まないことね。第一あんたの打突の範囲は相手のリーチ内なんだから、
一撃離脱になるのはしょうがない。その代わり隙を突いて数を稼ぐことよ。」


少なくとも2回戦まではそれでいけると思うわ。
岩手も次の中央九州と北東北の勝者も、いずれも私達の予選地区よりずっと楽に出てこれる地区なんだから。
最初の相手、岩雄選手は予選からの決め技は、大内刈り、体落とし、小外刈り、出足払い、袈裟固め。
正統派の柔道をやってくる相手。打突系を最初から使うタイプではない。柔道を仕掛けてくる相手だ。
アスカにとっては与し易いタイプかもしれない。
それにしても暑い。クーラーは入っているのかしら、ここ。
血気盛んな選手や応援の子供達がこれだけ集まれば無理ないか。
傷には暖かい方がいいのだが、体力的には涼しい方がよいわけで。後は出たとこ勝負ってことね。


「ミサト、あんたまた出たとこ勝負しかないわねとか考えてるんじゃないでしょうね。」

「えっ、そ、そんなことないわよ。岩雄君は正統派の柔道家だから想定外の攻撃は無いだろうって、」

「まぁ、そうでしょうね。組ませないうちにある程度打突でダメージを与えたいとこよね。」

「そうそう、そういう事。崩れた所を巻き落とし、関節技に入れれば。」

「幸いシンジのおかげで動きは普段通り行けそうよ。」


試合用のひっつめ髪に結い上げ、きらきらした笑顔でアスカは答えた。
そして厳しい表情になり会場に向かって立った。何時もの事ながら、この子の試合前の集中力は凄まじい。
まるで野性の獣が敵と出会った瞬間のように、身体が膨らみ、毛が逆立った様にさえ見えるほどだ。







 試合の展開は、あたしのほぼ予想通りだった。組む直前の下段関節蹴りが完璧に決まった。
あたしが足を引き上げると逆に岩雄選手は呻き声と共に左膝を庇うように上体を沈めた。

「はっ!」

そこにさらに逆足で前蹴りを打ち込み、体を捻り、襟を取って低位置から体落とし状に巻き込んだ。
その一瞬。2人の身体は背中から畳に落ち跳ね上がり。腕ひしぎの体勢をとっていた。
あまり鮮やかに決まりすぎてこっちが拍子抜けしたくらい。


「いっぽんっ!」「いっぽーんっ!」「いっぽんっ!」


3人の審判が同時に叫んだ。直後に大きな歓声があたしを包んだ。関節蹴り、特に膝は骨が折れやすいので
少し心配だったが、相手は顔をしかめながらも何とか自力で立ち上がったので安心した。


「見事だったよ、アスカ。」

「ナイス、アスカァッ! 」


タオルを広げ息を弾ませたシンジと、ニコニコ顔のミサトがあたしを迎えてくれた。
その時になって全身から汗が噴き出してきた。


「彼、ちょっと油断してたみたいね。対応が遅かったもの。だから踏み込みがちょうどカウンターになった。」

「え、そんなことないと思うよ。アスカの踏み込みが凄く早かったんだ。あれはちょっと逃げられないな。」

「凄い凄いアスカ。また一段とスピードが上がったんじゃない?」

「自分じゃあまり変わったように思えないけどな。練習も今回大分休んでたし。」

「暫く休んだのが返ってよかったのか。あるいは両足のバランスが取れて安定してたということかしら。
いずれにしろ、ドイツへ行く前より速くなってるように私にも見えたわ。」

「あのギプスはめて動いてたからかな…」


あの最新鋭の可動ギプスが左右バランスを整えてくれたってこと? 
さすがは世界に冠たる――ってパパの口癖映ったかな。パパのドイツ贔屓は会社でも有名らしいけど。
どっちでもいいわ、とにかく勝ったんだから。まずは一勝!
この勝利は、シンジとのチームワークの賜物ね!






さぁこの勢いで次の試合も貰っちゃうわよ!と張り切って望んだ2戦目。

この相手はなんと昨年5位の中部九州の熊沢健治選手。岩の様な体格をした、九州一の猛者だ。
シードになっている昨年1〜4位選手の他では一番の強敵という事になる。
向かい合った熊沢選手の目は明らかにあたしを格下と見ているのがわかった。
勝てる!と思った。挑発してやるっ。
無造作に伸ばしてきた差し手の内側を猫手で思い切り打ち払った。かなり応えたはずだ。
むっとしたのか、顔が真っ赤になった。激しい刺し手争い。
さらに2回の投げを、相手の背中を片手で押して浮き、いなした。ツカミが甘いってのよ。
試合場の範囲を一杯に使って、つかもうとする手をかわし続ける。相手の次の動きが手に取るようにわかる。

熱くなった相手はだだだっと体を崩しながらあたしの道着を強引に巻き込み、もつれ合って畳に崩れ落ちた。
相手は潰した事に安心したのか、薄笑いを浮かべて押さえ込みにかかった。

「きゃああっ。」

応援席から悲鳴のような歓声が上がった。
身体がまだ撥ね上がっている間に、腕拉ぎを一瞬速く決めたのはあたしの方だった。
馬鹿、差し手の方が押さえ込みより速いに決まってるじゃないっ!それと一緒に周囲の喧騒が消えた。
誰だってこういう場面で意識せず一瞬躊躇うのだが(普通の人間ならあたり前よね)肘を捻り上げ力を一気に掛けた。
みしっと嫌な感触がした途端、相手選手は真っ青になって畳を叩いた。躊躇いなく本気で折ろうとしたんだ。

「がぁっ!」

「一本っ!」の叫びが耳に届いた瞬間、どっと戻った大歓声と一緒に自分もやっとそのことに気づいた。
一瞬遅れていたら完全に彼の肘関節は砕けていたろう。その瞬時の殺気が相手に伝わったんだ。
良かった、折らずに済んだ。一瞬だけそう思った。
それでも対戦者は蹲ったまま腕を押さえて呻き声を上げていた。救護員が試合場に駆け上がった。

無差別級はスポーツではない。
実際骨折などの怪我は3試合に1試合の割で発生する。
これが古武道たる柔術、関節技、打突ありのフルコンタクトの恐ろしさということなのよね。
何とか立ち上がった相手選手はやっと礼をすると再び蹲った。
両脇から救護員が再び彼を抱えて降壇し、担架に乗せて連れ去った。その時にはもう相手のことは忘れていた。

あたしはなぜこんな危険な試合にこだわり、出場を躊躇わないのか。
シンジだって、パパだって、このクラスにあたしが出ることに内心反対なのはわかっている。
だけどあたしは止められない。
男子との体力差が日々開いていく事はわかっている。
その格差を埋め続け、さらに技の向上がなければいつかあたしは負ける。
他所の選手だけじゃない、シンジにだってきっといつかは負けてしまうだろう。
だけれど、今のあたしは強い相手と当たれば当たるほど、我を忘れてその試合にのめりこんでしまう。
36校による1回戦、2回戦も何とか突破した。幸いシードとの対戦は無く、次はベスト4への挑戦だ。
とうとうあたしは3回戦、準々決勝にまで進出したんだ!
降壇したあたしをミサトは肩に乗せて高々と担ぎ上げた。


「さあっ!次は準々決勝よおっ!」

「うおおおっ!」


ミサトはあたしを肩に担いだまま応援団の前で吼えた。大波のような拍手、歓喜の声、叫び。
そんなものがあたしに、一塊になって降り注いだ。校旗が打ち振られ、怒濤のような応援の渦。
肩の上で伸び上がってあたしもその声援に答え、手を振り、大声で叫んでいた。
身体中が火のように燃えていた。戦いを求める血が全身に滾り、ぐらぐらと音を立てているようだった。
あたしは負けない、誰にも負けない。
あたしの前に立ちはだかるどんな奴でも打ち砕いて進んでみせるわよっ!







 僕は応援団やアスカ達の騒ぎを少しはなれたところから見ていた。
僕自身もアスカを迎えた所までは興奮して叫んでいたんだ。
アスカの頑張りと、ドイツから帰って間もなく、リハビリも練習も十分にする事ができなかったのに、
勝ったよ!凄いぞ!やっぱりアスカは天才だって、喜びが胸から溢れて叫ばずにいられないでいた。
でも、何故だろう。僕はみんなの騒ぎの中のアスカを見つめているうちにわけのわからない不安を感じてたんだ。
今のアスカは、ためらいもなく相手の選手の肘を折ろうとした。
そうだ全然躊躇いもなく。どんな猛者でも、人間の腕を折るわけだ。一瞬のたじろぎはあるもの。
今の技には、全くそれが感じられなかったんだ。
あれは試合に向かった途端に冷たく厳しくなるアスカの瞳の色に感じる不安だ。




『確かにアスカは一種天才的なところが有ると思うの。
でもそれがあの子にとって決して良い方に働いていないのね。あの子の格闘技には何か悲壮なところがあるのよ。
戦って何かをもぎ取ろうとでも言うような、丁度、レイが弓によって年に似合わない何か全能感の様なものを
人に与えるのと全く逆なものなの。もしアスカが自分には何か大切な欠落があると気づきかけていて…』




不意に、誰かに昔そんな事を言われた事が甦った。
そうだ。あれはずっと前のことだよ。僕自身ずっと忘れていた事。それをたった今思い出したんだ。




「今日のアスカは何かおかしいわね。」



僕の後ろで誰かが呟いた。



「洞木、来てたんだ。」

「まあね。あたしは新聞部の記者でもあるって事、お忘れなく。ベスト8進出は目出度いけど。」

「おまえ、どこにでも現れるんだな。」

「何よ、人を不快害虫みたいに言わないで頂戴。それでどうなのよアスカは。」

「絶好調、といえば絶好調だけど。」

「だけど?」

「どこか、違うような気がする。何時ものアスカと。」

「武道って言うのは、殺し合いの技術だからね。特に無差別はその色が濃い。何でこんな階級が出来たのかしら。」


洞木は何か知っているような目つきでアスカ達と応援団とのやり取りを見ている。


「誰が本当は一番なのかって決めたがるのは人間の性(さが)みたいなもんなのかしら。」

「でも、アスカはそれとは違う気がするんだ。」

「それは恋人の事ですもの。碇にわからなければ誰にもわからないわよね。」


洞木はどうなんだよ。その事をずっと前に僕に警告してたのはお前じゃないか。
何でそんな事が分かるんだ。僕らは同い年だろ何故そんな事が分かるんだよ。


「洞木、ずっと前にきみがぼくに言ったこと、憶えてるかい?
アスカの戦い方には何かおかしな部分があるって言ってたよね。」


じっと洞木さんを見つめていたら、彼女はにやりと笑って目を瞬かせ頭を掻いた。


「まいったわね。まさか今の今まで憶えてるとは思わなかった。」

「やっぱりお前、何か知ってるのか?」

「何も知りはしないわよ。ただ、あんた達より少しばかり勘がいいとでも思ってればいいわ。それじゃ駄目?」

「別に構わないよ。今はお前の正体より、アスカのほうが心配なんだ。」

「私もまさかこの情況でアスカが出場するとは思っていなかったのよね。失敗したわ。」


アスカの怪我が、この情況に影響してるってことなのか?
一体洞木は何を知ってるって言うんだ。


「たった一人で舞い続ける娘。――魅惑的だけど寂しすぎるよね。 私、ソロって嫌いよ。」





















第46話へつづく

『もう一度ジュウシマツを』専用ページ

 

もう一度ジュウシマツを(45)「独奏は寂し過ぎるだろ」 10−13−2005 komedokoro






「もう一度ジュウシマツを」第45話です。
4ヶ月ぶりなんですねぇ。
まず読者の方々には私がお詫びいたします。私本人が仕事の多忙と夏バテで自分のことで手一杯となり、
こめどころ様のお尻を叩けませんでした。
しかしこうして続きを書き始めたということで改めて催促の鬼編集を復活しますのでご安心を。
以上、宣言しましたのでこめどころ様?御覚悟の程を。

さて、今回は正直予想していませんでした。
ドイツでおばあさんを見送って、この大会への出場は諦めたと思っていました。てっきり何ヶ月か月日が
流れると思いきや、やはりこの作者殿はただものではありません。あ、褒め言葉ですよ(笑)。
しかもただ出場しただけではなく、アスカになにやら秘密が出てきました。
ヒカリの謎めいた言葉。躊躇いもたじろぎもなく相手をねじ伏せようとするアスカ。
まさか、サイボーグ!…なんて展開になったらただでは済ましませんよ(笑)。まあ、これは冗談ですが
いつも予想を裏切っていただくこめどころ様ですから次回が楽しみです。
今回はアスカをマッサージするシンジがいいですね。大会出場までの話を端折ってますから二人の間での
葛藤は想像するしかありません。おそらくは大喧嘩をしたことでしょう。でもアスカの意思は少しも曲が
ってくれない。仕方無しに出場を認めるしかなかったシンジが気持を切り替えて、ならば愛する人を少し
でもサポートするんだ!という決意を固めたことでしょう。そこでマッサージを学んだ。これだけで1話
書けますよ(笑)。ともあれ、そういう二人が背景になっていますからあそこの場面は微笑ましくも愛情
がいっぱいつまっています。
さあ、次回はどうなるのか?申し訳ないですが試合の勝ち負けよりもアスカの謎に関心が移ってしまって
います。ああ、次回は!(あとがきで次回催促を連発するのは如何なものか:汗)
ご投稿、ありがとうございました、こめどころ様。
(文責:ジュン)

 

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