− 10 − 春風の乗り方教えます リンカ 2005.6.7(発表) |
「春になると変なのが出るって言うけどねぇ・・・」
いかにも少女らしい柔らかな黒髪のおさげをふわりと揺らしながら、
チャーミングなそばかすが印象的なヒカリは呆れたように呟いた。
彼女の視線の先には、引き締めようとしてもどうしてもそれが出来ないといった感じの
ニタニタと崩れた表情をした親友の顔があった。
春休みが終わって学校が始まったのがそんなに嬉しいのだろうかといぶかしみながらも、
親友の使命として、彼女は一応その心の内を問い質してみることにした。
「何かいいことでもあったの?」
そのシンプルな問いかけに、ヒカリの親友である赤毛の少女の顔は益々崩れた。
お砂糖を一杯にまぶして真夏のお日様の下に放っておいたみたいな顔ね、とおさげ髪の少女は思った。
「えっへっへぇ、聞きたいっ?」
「・・・別に」
何となく読めた。何故なら彼女の嬉しさに垂れ下がった目が、
今は昼休みで人が疎らなこの教室のとある席の方を見たからだ。
ひょっとして今の彼女には世界がサクラ色に見えてるんじゃないかしらと、
教室の窓から見える校庭の見事に咲き誇った桜に目を細めた。何て綺麗なのかしら。
「ああん、そんなこと言わないで聞いてよぅ」
赤い髪に赤い頬をした少女が強請るようにして桜に見惚れる親友の腕に縋りついた。
どうしても自分の幸せを他人と分かち合いたいらしい。
そんな幸せ一杯の人間に特有の傍迷惑さを存分に発揮している親友の重みに体を傾けながら、
ヒカリはこれも親友の義務かと観念して、彼女の報告を拝聴することにした。
頬っぺたに桜の花をくっ付けたみたいな顔をしている親友の顔をきちんと見て優しく促してやる。
早く喋りたいとうずうずしていた彼女の唇が、いいの?言っちゃうよ?と今にも訴えてきそうだった。
「あのね、あのね、この春休みの間にアタシ、アイツの家にお呼ばれされたのと
外の公園とで、2回も会ったのよ!」
「・・・それだけ?」
ヒカリの反応の冷淡さにもめげず、少女は更に言い募った。
「だってこれは昔からするとスゴイ進歩なのよ。この短い間に、しかも学校もないのに。
ね、ね、アタシ達ってとっても親密な関係になってきてると思わない?」
頬を色付かせて瞳を輝かせている親友には悪いのだが、
ヒカリには彼女が余りにささやかな幸せに浸り切っているような気がしてならなかった。
そして、意地悪する気は全くないが、何故だか思わず水を差すようなことを口が勝手に言ってしまった。
「正確にはカヲル君と碇君の妹がでしょ、アスカ」
「う、で、でもそこには必ずアタシとアイツが一緒に・・・」
「それもあの子達が一人でも遊びに行けるようになるまでの間よね。
あくまでアスカは付き添いで、おまけみたいなものだもんね」
「む・・・」
「カヲル君ならアスカがついてなくたって大丈夫そうよね?」
とうとう黙りこくって口を尖らせたアスカはこの残酷な親友を恨めしげに睨んだ。
その表情が余りに幼く見えた―小さな妹が時たま見せる表情にそっくりだった―ので、
ヒカリは思わず笑いを零してしまった。
「何よう・・・」
「ごめんごめん。冗談よ。よかったじゃない、アスカ」
「・・・ホントによかったって思ってるの?」
「勿論よ。でも、そんなんじゃまだまだね」
まだアスカのことを苛めたりないのか、ヒカリはフフンと顎を上げ、目を細めて彼女にそう言った。
「ど、どうしてよ。だってアタシ、アイツにとって一番仲のいい女の子よ」
「甘いのよ!そんなのお砂糖にハチミツとシロップかけたくらい甘々よ!」
突如興奮したように語気を荒げて訳の分からない断定を下した親友の姿に
アスカは唖然として口をポカンと開けた。
「アスカ。そんなので満足してちゃ駄目よ。うかうかしてると貴女はただのお友達で終わっちゃうのよ」
「は、はぁ・・・」
「妹のお友達のお姉さん、なんて立場でいつまでもいていいと思ってるの?
カヲル君のことがなかったら接点なんかなくなっちゃうのよ?」
「・・・う、う〜ん」
「片想いなんて誰だって出来るのよ。そこから突き進むことが出来る人だけが勝てるのよ!」
「そ、そうですか・・・」
鼻息荒い親友に押されて心持ち後ずさりながらも、アスカは彼女の言ったことを考えてみた。
言っていることは正しいような気がしないでもないが、何故に彼女はこんなに力説しているのだろう。
ともあれ言われっぱなしはしゃくだったので何か言い返そうと思ったのだが、
昼休みが終わりに近付き、遊びに出ていた生徒達がガヤガヤと騒がしく教室に帰ってきたので
それは後回しにすることにした。
ヒカリは自分の言葉に圧倒されて目を丸くしていたアスカを見ながら、
不意に自己嫌悪に駆られた。私は一体何を興奮し、言っているのだろう。
彼女がアスカをせっつくようなことを言ったのは、意識してのことかどうかはともかく、
それは彼女自身の為だった。
いつかの下校時間、下駄箱でトウジが自分のことを好きだと口走ってからしばらくが経った。
だが今だに彼との関係には何の変化も訪れていない。
それは彼女自身が待ってくれと申し出た所為だが、実際彼女はほとほと困り果てていたのだ。
一体どうすればいいのか、皆目検討もつかない。
自分が誰かと恋愛関係になるということが信じられなかった。
そもそもこれまで彼女にとっては恋とは物語の中のものであり、夢想の中のものであった。
決してそれは自分自身が体験する生々しいものではなかったはずなのだ。少なくとも今はまだ。
想像だけに費やされる片想いは楽だ。その報われなささえ感傷的に自分を酔わせてくれる。
しかし現実は違う。トウジは彼女に現実を突きつけようとしたのだ。
彼女は相手を受け入れた先に待っている変化も怖ければ、
拒絶した場合には自分が相手を傷付けるのだという事実も怖かった。
だから彼女は逃げた。逃げたが、このままにしておいていいと思っている訳でもない。
それでヒカリは現実と夢想の境界面に解決策を見出そうとしたのだ。
彼女の親友は、綺麗だ。
ヒカリ自身も可愛らしい女の子ではあったが、産まれた時点ですでに彼女には手に入れようのないものを
持っている―それは逆の立場からも言えることだったが―という点で見た時、彼女の親友は綺麗だった。
彼女の親友が恋い慕っている少年も繊細で見目がよく、可愛い少年だ。
だから、彼女の親友が憧れの少年と恋愛を繰り広げることは、彼女にとって夢想に近い現実と言える。
身も蓋もない言い方をすれば、綺麗な恋愛―あるいはセックス―は許せるのだ。
美少年と美少女の恋愛ならばその存在に耐えられる。
だがそうでないものは駄目だ。
そして自分はともかく―ここが微妙な心理なのだが、可愛がられて育てられる少女には
少なからず自分が可愛いという思い込みがある―生憎トウジはそれに当て嵌まらない。
有り体に言って、お姫様と王子様の恋愛劇が成立しないのだ。現実には。
少女は綺麗なものを好む。
一方で汚いもの、醜いものを、彼女達はほとんど憎悪する。
醜くあってはならないのだ。普通であってさえそれは不十分なのだ。
綺麗なものだけを見て汚いものから目を逸らす為には常に夢見がちでいることだ。
ふわふわとした夢想を愛し、綺麗なものだけを現実から拾い上げる。
かくして“夢見がちな少女”が出来上がる。
そうやって彼女達は自分自身を守っている。
何より綺麗なものと汚いものとの間で激しく揺さぶられる自分自身の感情から。
だがそうは言っても現実からまったく遊離してしまっている訳ではない。
知識、あるいは情報は自然と入ってくるし、
夢見がちであることと本当に夢の間に生きていることは違う。
ヒカリが怖れたのは、恋愛が未知のものであるからでも望んでいないからでもなかった。
彼女はそれが決して美しいだけのものでない、醜い側面も持つものであると知っていたからであり、
自分自身がそうした醜さに塗れてしまうかも知れないと恐怖したからであり、
そしてそうなった時に自分自身の感情の激しさを決してコントロール出来ないだろうと
心のどこかで確信していたからである。
いずれはそうした夢見がちな部分を捨てなくてはならないのだ。
美しく可愛らしいものだけを好むことをやめ、現実に向かい合っていかなければならない。
だが、ヒカリにはまだその準備が出来ていなかった。
トウジのことは、面白くていい男の子だと思うが、恋をしているかと問われればそれは疑問だ。
好きだと言われたことは嬉しかったが、ではその想いに応えるかというとそれは別問題だ。
自分から恋に落ちた訳ではない。
だからここで問題となっているのは彼女が彼を受け入れるか、受け入れないか、
彼のことをこれから好きになっていくか、またはならないか。
選択をしなければならないということなのだ。
ヒカリはどうしていいか分からなかった。
そこでアスカのことを見ていれば何か分かるかも知れないと思ったのだ。
親友と少年の恋は、近く存在する現実であり、かつ夢想のように美しい。
実際はそんな訳はなかろうが、とにかくヒカリにとっては参考とするにもっとも理想的だったのだ。
決して彼女が打算的であったという訳ではない。
自分が前に進む為に、何か教えてくれるものや勇気付けてくれるものを求めたとして
それは責められるべきことではないだろう。
ヒカリは親友の恋を心から応援すると共に、
自分自身の為に一日も早くそれが進展することを願っていた。
「ほわちゃあっ!」
「うりゃ!」
気迫の篭もった、というよりは多分に芝居がかった掛け声と共に
半ズボンからにょきっと伸びたバンソウコウ付きの足が繰り出され、
それを見事に受け止めた黄金色に輝く木製モップは芸術的では必ずしもない
でたらめな手捌きで、キックを放った少年を襲った。
「この!この!」
「うわっ、武器を使うやなんて卑怯やで!」
「わははっ、突きっ、突きぃ!」
掃除は楽しみながらするものだ。
だが無論、それは掃除をきっちりしてこそ通じる論理で、今こうして顔を輝かせながら
実に楽しそうに闘っているふたりの少年は単なる邪魔な怠慢者でしかなかった。
当然責務を忠実に果たす人間からすれば苦々しいことこの上なく、
そんな典型であったこの少女は腰に手を当て鼻膨らませて、金切り声を上げた。
「もーっ!あんた達、ちゃんと掃除をしなさいよ!!」
おそらくクラスでもっとも大きなその声に、ふたりの少年がびっくりしたのは無理もないだろう。
そして、この少女とは幾分違う方法で彼らを止めようとしていた少年が、
びっくりして手元足元が狂った彼らの攻撃を図らずも受けてしまったのは、不幸な偶然だった。
「うわっ、すまん、シンジ!」
「お、おい、大丈夫か」
「いっ・・・た〜い」
ケンスケに頭をゴツンと棒で殴られ、トウジの上履きの裏が脇腹に食い込んだシンジは、
涙を浮かべながらその場にうずくまった。
その突然のアクシデントに一瞬場が静まり返ったが、
すぐに掃除をしていた生徒達がわいわいと集まってきた。
皆口々にトウジとケンスケを囃し立てたり、あるいは初めに彼らを注意したヒカリをからかった。
だが、そうして騒いでいては掃除がいつまでも終わらない。
ほうきを持ってヒカリの傍に立っていたアスカは、悪いことしたなという顔をしている親友の
肩を叩いてから彼らに近付いて言った。
「ほら、アンタ達。いつまでも掃除が終わりゃしないじゃないの。
相田、鈴原、少しは真面目にやりなさいよ。それから碇。うずくまってないで保健室行くわよ」
有無を言わせぬ調子でアスカはそのままほうきを壁に立てかけ、
シンジの腕を引っ張って無理矢理立たせた。
「あの、碇君、ごめんね?」
「え、ああ、別に洞木さんが悪い訳じゃ・・・」
そう返して今だに頭を押さえて涙ぐんでいるシンジが親友達を睨むと、
彼らは大袈裟にシンジを拝んで謝り、そんな彼らをクラスメイト達が小突きまわしている。
「行くわよ」
アスカは短く言って、シンジの腕を掴んだまま引っ張って教室を出ていった。
残された生徒達は銘々自分の役割を果たす為に動き出した。
そんな中、ふとこんな呟きが漏れた。
「・・・何でわざわざ惣流がシンジを連れてったんや?
ひとりでも行けるし。第一、保健委員は小池やろ?ちょうどおったのに」
机を運びながら不思議そうな顔をしたトウジは、自分の隣で同じく机を運んでいた
その小池という名の少女と顔を見合わせた。
「さてはサボリか?」
「違うでしょ」
「ねえ惣流さん。引っ張らなくても自分で歩けるよ」
「いいから。来なさい」
戸惑うシンジを余所にアスカは彼の腕をしっかり握って階段をスタスタと降りていく。
そんな彼女の態度に、弟や妹がいるから世話を焼くのに慣れてるのかな、とシンジは考えて
ぱたぱたとトウジの足跡がついた脇腹を払いながら大人しく後をついていった。
実際は彼が考えたような理由でアスカがこうしている訳ではなく、
その証拠に彼の袖をぎゅっと握った彼女の手のひらは緊張に汗ばんでいたのだが
この暢気な少年には彼女の微妙な心中など知る由もなかった。
そうして校舎の一階まで降りてきて、彼らは保健室までやって来た。
失礼しますと声を掛けながら中に入ると、白衣を着た保健教諭が彼らを出迎えた。
「あら、惣流さん。久し振りね。けど用件があるのはこっちの男の子かしら」
ふたりの様子を一瞥して彼女はそう言い、シンジに座るように促した。
「――で、頭をゴツンとやられたと」
シンジから事情を聞きながら彼の大きく腫れたたんこぶを確かめ、
笑いながら彼女は冷却剤の詰まったパックをシンジに手渡した。
「これで少し冷やしてなさい。そっちのベッド、使っていいから。
それから惣流さん。いつまでここに居座ってるつもりなのかしら?」
「べっつにぃ。いいじゃない、先生」
そう言いながら、アスカは戸棚を覗き込んだり体重計に乗っかったりと
保健室内をうろうろしている。
彼女が低学年の頃は、よく保健室に遊びに来ていた。
何故だか分からないが、この場所は学校でありながらまったく別の場所のようで
不思議と安心出来たのだ。ここにあるのは黒板や教科書ではなく、主の方も
教師然とした印象ではなく堅苦しくない。成長するにつれ次第に来なくなっていたが、
雑談にもよく乗ってくれるこの優しいお姉さんのような保健教諭のことがアスカは好きだった。
「よくはないわよ?掃除はどうしたのかしら」
「えー?アタシは怪我人をここまで運ぶ役目を果たしたもん。だから掃除は免除なの」
「こら。貴女がそうしてるのを他の子達はどう思うか、きちんと考えてみなさい。
貴女のやるべきことは何かしら。みんなが掃除をしてる間ここで時間潰しをすることなの?」
机の上で何か書類を整理していた教師は、わがままを言っているアスカをたしなめた。
その言葉にアスカは気まずそうな表情をして部屋の隅から彼女の顔とシンジのいるベッドの方を窺った。
叱られながらも何かに迷うような少女の表情を見た教師は、優しく笑って提案した。
「じゃ、こうしたら?あとで碇君のこと迎えに来なさい。ね、アスカちゃん。だから今は教室に戻るのよ」
「・・・はーい」
渋々といった感じでアスカは返事をし、大人しくしてなさいよ、とシンジに言い残してから
保健室を出ていった。
それを見送った保健教諭は、笑みを浮かべながらシンジのベッドへと近付いた。
「という訳だから、碇君。あの子が迎えに来るまでそこで寝てなさい」
「あの、別にそんなことしなくても自分で戻ります」
「駄目よ。これはもう決まったことなの。それに頭ってところはデリケートなんだから。
あの子も言ってたでしょう。大人しくしてなさい」
釈然としないながらもシンジは素直に返事をして、寝転んでぼんやりと天井を眺めた。
そんな少年を見下ろしながら教師は白衣のポケットに片手を突っ込み、溜息混じりに言った。
「大体ね、格闘ごっこに割り込むならもっと気を付けなさい。でっかいたんこぶ作っちゃって」
「はい・・・先生、惣流さんと仲いいの?」
「そうね、あの子はここの常連だったから」
「ふぅん・・・」
「遊びに来てただけなんだけどね。ここはそういう場所でもあるのよ」
よく分からないという顔をしたシンジに彼女は笑った。
何だかぼややんとした子ね、と思いながら彼女は再び机に戻って書類整理を始めた。
常連ってどういうことなんだろう。こんな薬臭いところに来て楽しいのかな。
シンジは首を僅かに巡らせて保健室の様子を見た。
確かに普段あまり触れないようなものがあって、それを珍しいとは思う。
身長計があれば絶対に計ってみたいし、体重計にはとりあえず乗ってみたくなる。
おどろおどろしい虫歯の写真が載った保健ポスターなどは顔を顰めながらも読んでしまう。
先生も優しい人だ。
しかし、だからといって通う程のものでもない。外でサッカーやドッヂボールをする方が断然楽しい。
シンジは持ち上げていた首の力を抜いて頭を枕に戻した。
ああでもそういえば、と彼は思った。
保健室が好きな子ってクラスに必ず幾らかはいたな。何でなのかは知らないけど。
天井の染みを眺めながら、彼はボンヤリと考えていた。
思い返してみれば、最近レイがカヲル君と惣流さんと遊ぶけれど、彼女のことをあまり知らない。
話はそれなりにするけれど、どういう人なのか考えたのは喧嘩して仲直りしたあの時だけだ。
5人兄弟の3番目で、気が強くて口が早くて手も早くて、甘いもの好きで紅茶も好きで、
カヲル君のお姉さんでレイのお気に入りのお姉ちゃんで、そういうことなら知っている。
けれど彼女のことを考えてみたことがない。どういう人なのか、いつもあまり考えない。
彼女が本当にどういう人間なのか、それを知らない。
彼女が自分にとって何なのか、それが分からない。
シンジは初めてそれに気付いた。
そして考えてみようとしながら、彼は知らない内に目を閉じていた。
惣流さんって――。
「――変なヒト」
「え?」
微かに聞こえた呟きに保健教諭がシンジのベッドを覗き込むと、
そこには静かな寝息を立てている少年がいるだけだった。
「・・・ただ寝てるだけね。寝付きのいいこと。春眠なんたらを覚えずとは言うけどね。
でもこの子ったら、たんこぶを押さえてなくちゃ駄目じゃないの」
「失礼しマース」
明るい少女の声と共に保健室の扉がガラガラと開き、目立つ髪色をした少女が入ってきた。
「あれ、先生いないじゃん」
キョロキョロと室内を見回しながら呟いたアスカは、何か用事で席を外したのかと納得して
シンジのいるベッドへと近付いていった。
「碇、呼びに来た・・・わよ。・・・寝てる」
アスカが声を掛けた少年は、たんこぶの部分に上手い具合に冷却用のパックを固定されて
静かに眠っていた。
どうしたものかと一瞬迷ったが、こんな機会は滅多にないということに彼女は気付いた。
だから当然、チャンスを最大限活用することにした。
彼の寝顔をよくよく眺めてみる。
こうしてみると、彼は本当に線の細い子供染みた顔をしていた。
個人的な想いは別として、幼い弟や妹の寝顔と受ける印象は大差ない。
柔らかく閉じられた目蓋が時折震えていた。
少女めいた白い頬は滑らかな丸みを帯び、僅かに産毛が見えるようだった。
血色のいい唇は微かに開き、あどけなく無防備な感じがした。
寝顔は誰でも幼く見える。
それでもこんなに小さく見えてしまう少年が、母を失い妹を背負うその気持ちはどんなものなのだろう。
いつか彼の気持ちに寄り添える日が来るのだろうか。
それを自分にさせてくれるのだろうか、この少年は。
食い入るようにシンジの顔を見つめていたアスカは、そっと息を吐き出して、
それから彼を起こす為に声を掛けようとした。
だが、口を開きかけたところで彼女は凍り付いた。
「ん、う・・・おかあさん・・・」
柔らかく閉じられていた目蓋にぎゅっと力が込められ、温厚そうな眉は悩ましげに顰められた。
僅かに寝返りを打ち顔が傾けられた時、涙が一筋、零れ落ちて枕に染みを作った。
その姿にアスカは胸を衝かれた。彼が呼び掛ける声音の寂しさに涙が溢れそうになった。
いつも笑って過ごしているのに、一方でこんなにも哀しそうな声を出すのだ。
そんな彼の姿を目の前にしてどうにも出来ない役立たずの自分に、少女は唇を噛み締めた。
そう、彼女には何も出来はしないのだ。
ずるい、とアスカは思った。
何てずるい。こんなのを不意打ちで見せられてどうすればいいというのだろう。
自分は傷付き震えている少年―無意識下にあるとはいえ―の姿を見て平気な女の子ではない。
でも今の自分には抱き締めることもできない。
アタシのもどかしい想いをまるで無視して、この少年はあるがままに己の姿を見せつけるのだ。
何故だか無性に腹が立った。
それは彼の気持ちに擦り寄ることも彼を慰めることも出来ない自分自身への腹立ちでもあり、
自分の気持ちなどまるで察してもくれない彼への苛立ちでもあった。
彼を起こさなくてはならない。今すぐ。こんな状態を消してしまわなくては。
アスカはシンジの体に掛けられていたシーツを引っ張って、ごしごしと彼の顔を乱暴に拭いた。
当然それまで眠っていたシンジも堪らず目を覚ました。
「う、むっ、何?やめてってば!」
腕を振りかざして顔を擦っているものを押し退け、シンジが幾分不快そうな顔をして目を開けた。
「いつまで寝てるの!」
「・・・ん?惣流さん?」
「明日の朝まで寝るつもりなの!?ホラ、とっとと起きなさい!」
まだ少し寝惚けて頭が働いていないシンジは周りを見回し、腰に手を当て怖い顔をして
自分を追い立てている少女の姿に混乱しながらも起き上がってベッドから足を下ろした。
「えーと・・・僕、寝ちゃったみたいだね」
「そうよ。アタシがわざわざ来てやったのにグースカ寝てるんじゃないわよ!」
「・・・何で惣流さんがまたいるの?」
「・・・・・」
「あの・・・ご、ごめん。何か怒ってる・・・?」
少女の真っ赤に染まった形相を見て訳も分からず謝ったシンジは、その直後に
今更ながらではあるが、彼女が呼びに来るまで休んでいろと言われたことを思い出した。
「あ、その、ちょっと寝惚けてたみたい。えと・・・ごめんね、呼びに来てくれたんでしょ?」
「・・・そうよ」
まだ不満そうな声をしたアスカはベッドの脇に椅子を引っ張ってきて腰掛けた。
しかし小難しい顔をして乱れた髪を撫でつけている少年の姿を見ていたら
少なくとも彼が自分との約束―という程のものでもないが―を忘れていたことに関しては
許してやる気になった。
「アンタ、今日もレイちゃんを迎えに行くのよね?」
無論彼女としては多分に期待を込めた―ふたりで一緒に弟達の迎えに行こうという―言葉だったのだが、
何と彼の口から返って来たのは否定の言葉だった。
意外な答えにアスカはすっかりうろたえてしまった。
「え?だ、だってレイちゃんは?」
「今日は別の人が迎えに行ってくれるんだ。だから」
「そ、そうなの」
アスカには知る由もないが、シンジの代わりにレイを迎えに行く人物とはリツコのことだ。
さしあたっては利用しないのだが、いずれ娘を入れるかも知れないので
一度保育園を見ておきたいし資料も欲しいと彼女が言ったのだ。
だからその際にレイの迎えもしておいてあげると。
そういう訳で彼としてはこの日、目の前の少女と一緒に帰る必要はない。
アスカは呆然とした。
彼と向かい合って保健室の椅子に座っている自分がまるっきり馬鹿みたいだった。
ヒカリの言った通りだったのだ。
カヲルとレイのことがなければ、彼にとって自分などさしたる価値もないのだ。
だってそうだろう。彼はこんなにも平然として残念がる素振りさえ見せない。
ショックを受けている自分にさえ気付いてくれない。
認めがたい事実を突きつけられて、浮き立っていた彼女の心はぺしゃんこに潰された。
「教室に戻ろっか、惣流さん」
「・・・そうね」
シンジの後を追って教室へと戻って行くアスカの顔は無残なほど青褪めていた。
アスカとヒカリは一緒に学校からの帰り道を歩いていた。
これから保育園へカヲルを迎えに行って、そのままヒカリはこの親友の家に遊びに行くのだ。
その青い目に憂鬱そうな光をたたえて、アスカは茜色の髪の毛の先をくるくると指に巻き付けながら
歩いていた。ヒカリもその様子に気付いていたが、一体何があったのか知らないので
昼にはあれほど浮かれていたというのに急に落ち込んだ風情を見せている親友に、
果たして事情を訊いてもいいものかどうか迷っていた。
どことなく気詰まりな沈黙のまましばらく歩き続けていた彼女達だったが、
横断歩道の赤信号で立ち止まった時に物憂げな溜息を吐いたアスカに見かねて
おさげ髪の少女は口を開いた。
「ねえ、アスカ。今日、ひょっとして都合が悪かった?」
「えっ?そんなことないわよ。ホント、全然」
慌てて髪の毛から指を解いたアスカは困惑した表情をした親友を見て弁解した。
シンジのことは確かにショックだったが、それはこの優しい親友には関係ないことだ。
楽しそうな風を精一杯装って、彼女は家に着いたら何をするか並べ立て始めた。
しかし彼女の誤魔化しにそうそう騙されるヒカリでもない。
この親友が気に病むことといったら、今のところはシンジのことくらいしか思い浮かばなかったヒカリは
ひょっとして自分が余計なことを言った所為で彼女を悩ませているのではないかと考えついた。
そして、その想像は酷く自分自身を傷付けるものだったし、こうして落ち込む親友の姿も
見たくはなかったので、それを何とかしなくてはならないという思いに駆られた。
「アスカ、私が言ったこと気にしてる?」
「へ?何が?」
「ほら、お昼休みに私が言ったこと」
「ああ、別に気になんかしてないわ」
アスカは頓着なげにそう答えた。
が、しかしヒカリの目にはそうは映らなかった。
「ごめんね、アスカ。ちょっとからかい過ぎたわ」
「もう。だから気にしてないってば」
「でも・・・」
「しつこいわよ!」
突如アスカが金切り声を上げた。
「ヒカリが言ったことは正しかったわよ!だからヒカリが謝ることなんて何もないでしょ!」
そう言い放って苛立たしげに髪の毛の先を指で引っ張って弄んでいる親友の姿に
ショックを受けたヒカリは、それでも彼女の言葉に引っ掛かるところがあった。
「正しかったって。何かあったの?」
「だから何でもないの。ヒカリには関係ないでしょ」
友の言葉にアスカは振り向きもせず、いつまでも変わらない赤信号をじりじりと睨み付けている。
そんな姿にヒカリは喘ぐような声を絞り出して訊き返した。
「関係ないですって?」
「そうよ。アタシは自分のバカさ加減に今うんざりしてるトコなの。
だからそれはヒカリには関係ないわ。いっつも正しいヒカリにはね」
その言葉の刺々しさにヒカリは顔を真っ赤に染めて言い返した。
「何よそれ!私はただ心配して・・」
「余計なお世話よ!アンタにはアンタの相手がいるでしょ。
アタシに構ってないでソイツのところに行ったらどうなの!」
トウジのことを言ったのだとすぐに分かった。
自分がそのことで悩んでいるのを知っている癖に何てことを言うのだと
いつも穏やかなヒカリも堪らずカッと頭に血がのぼった。
「何言ってるのよ!それこそ今は関係ないでしょ!」
親友の正面に廻って睨みつけようとしたヒカリだったが、
ちょうど信号が青に変わったのを見て取ったアスカは彼女を避けてそのまま
足を踏み鳴らさん勢いで大股に歩き去っていこうとする。
無視されて刹那呆然としたが、すぐさまヒカリもその後を追いかけていった。
「ちょっと!待ちなさいよ!」
「うるさいうるさい!」
「何よ!逃げる気!」
「逃げるですって?」
ちょうど道路を渡り切ったアスカが立ち止まって振り返った。
「逃げるですって!?」
更に甲高い声で繰り返す。
「アタシは逃げるなんてしないわよ!アンタとは違ってね!」
追いついて来た親友に指を突きつけて言い捨ててから、
再びアスカは踵を返してひとりで歩いて行こうとした。
それをヒカリも足早に追いかけながら、なおも彼女の背に声をぶつける。
「私と違うってどういう意味よ!答えなさい!」
「そのままよ!アンタは逃げ回ってるじゃないの、アンタのことを好きだって言ってるヤツからね!」
「それは・・」
「アタシは相手から好かれてなんかいやしないけど、アンタには随分余裕があるのね!」
「余裕なんかないわよ!いきなりあんなこと言われたらどうしていいか困るに決まってるじゃない!」
「それが逃げてるって言ってんのよ!バカ!!」
ずんずんと足を踏み鳴らしてふたりの少女が言い合いをしながら通り過ぎて行く様に、
道行く人々は目を丸くしてそれを見送った。
そんな周りなどまるでお構いなくふたりはなおも金切り声の応酬を続ける。
「そっちこそ一体何年ぐずぐずしてるつもりなのよ!馬鹿アスカ!」
「何ですって!?」
「いい加減アスカがぐずぐず言ってるのなんか聞き飽きたわよ!
陰でこそこそしてないでさっさとどうにかしたらどうなの!」
「簡単にそれが出来たら苦労しないわよ!人の気も知らないで好き勝手言うな!」
「それはこっちのセリフよ!碇君もこんな気分屋の相手なんかしてられないでしょうね!」
「ヒカリこそとっとと覚悟を決めたらどうなの!いつまでもウジウジしてんじゃない!」
再び赤信号に捕まったふたりは、横断歩道の前で並んで立ち止まった。
早足でずっと歩いて、しかも途切れなく大声を張り上げていたものだから
ふたりとも息切れがして肩を上下させていた。
お互い相手の方を見ようともせず、信号を待つ間むっつりと黙りこくっていた。
信号が青に変わると、アスカが肩を怒らせ前のめりになるようにして足を踏み出し、
ヒカリも同じようにしながら彼女の後を追って行った。
口を開かずふたりは早足に道を行く。
途中何人かのクラスメイトと擦れ違ったが、恐ろしい形相の少女ふたりが
競歩のようにしている様を見て彼らは一体何事かと唖然とし、
そしてそんな友人達の視線も無視して風を切っていった。
三たび赤信号で立ち止まったふたりは、怖い顔をして肩を並べた。
少し乱れた相手の息遣いが聞こえ、それを掻き消そうと鼻息を荒くさせた。
ゴオッという唸りとともに風が叩きつけてきて、
彼女達の軽やかな髪の毛やスカートの裾を巻き上げていった。
堪らずそれを押さえつけて、通り過ぎた風に息を吐いた拍子に視線の合ったふたりは鋭く睨み合った。
そしてへの字の結ばれた口を開き、なおもお互いに悪態をついた。
「このオセッカイでマジメブリッコでウスラトンカチのバカヒカリ」
「そっちこそ、ドジでスットコドッコイでお天気屋のオタンコナスアスカ」
息が上がって真っ赤に染まったお互いの顔をじっと見つめ合っていたふたりは、
不意に馬鹿馬鹿しくなってどちらともなく溜息混じりの笑いが零れた。
頬を撫でる風が毒気もどこかへ浚っていく。
「もうよしましょ。正直疲れたわ」
「アタシも。汗かいちゃった。・・・スットコドッコイですって。何よソレ」
「アスカこそ。ウスラトンカチなんて言わないわよ、普通」
顔を見合わせてくつくつと笑ったふたりは、大きな息を吐いてから背伸びをした。
火照った体に吹き抜けていく風が心地いい。
「あ〜あ、暖かくなってきたわねー」
「そうね、春だわね。ごめんね、アスカ。ついカッとなっちゃって」
「いいってば。お互い様よ。こっちも色々ヒドイこと言ったわ。やつあたりね。ゴメン、ヒカリ」
ヒカリよりも背の高いアスカが彼女の肩に腕を廻した。
それに応えようとヒカリも腕を持ち上げてしっかりと肩を組んだ。
「でもアスカの言う通りね。私、きっとアスカのことが羨ましかったのよ」
「アタシは人から好きだって告白されちゃうようなヒカリが羨ましい。
アイツってばアタシのこと全然分かってくれないんだから。
ホント、恋ってつらくて切なくて、それからちょっとムカツクものなんだわ」
「でも逃げないんでしょ?」
大袈裟に溜息を吐き出したアスカにクスクスと笑ってヒカリが問いかけると、
ニッと笑い返して彼女はその紅茶色の頭をコツンと寄せてきた。
「当然よ。アタシの邪魔は誰にもさせないんだから」
「ふふ。碇君も災難ね」
「あら、果報者の間違いでしょ」
自信たっぷりにそう言い切った赤毛の親友に、ヒカリは明るい笑い声を上げた。
「でもアタシの何が羨ましいの?」
「だってアスカ、とっても整ってて綺麗じゃない。碇君だって可愛いし」
「綺麗だからって何でも上手くいく訳じゃないのよ。それにヒカリこそキュートじゃないの。
アタシなんかすぐに老けるぞっていっつも脅されるのよ、キョウタ兄から。失礼しちゃう」
キョウタは洗顔後にぺたぺたと乳液を塗り込むマリアと、その横で姉の真似をして
一丁前に同じことをしていた―させてもらっていた―アスカの姿を見てそう言ったのだ。
彼からすれば、女性がいかに肌の乾燥を嫌うか理解しがたいらしい。
口走った直後、姉によって蹴っ飛ばされていたが
それくらいで懲りる兄ではないので以来度々からかってくる。
彼の理論では成熟が早い分、衰えるのも早いのだそうだ。
そして結局は、姉妹達とは違って彼の可愛らしい恋人は
きっといつまでも若々しさを保つだろうというふざけた結論に達するらしい。
ある日女性陣が呆れる中でそれに重々しく頷いた父と兄の夕食のおかずが少なくされたのは
当然の制裁だった。
「そういうものなの?」
「知らない。人によりけりじゃないの?でもアタシはそんじょそこらのとは出来が違うわよ」
「それ言い過ぎよ、アスカ」
「あら、これは失礼?」
つんと澄まして言ったアスカに再びヒカリは笑った。
何だか自分の思い悩んでいたことが馬鹿みたいに思えてきた。
結局のところ、アスカはヒカリよりも一足先に大人になる為の一歩を踏み出そうとしていたのだ。
心地いい夢想を捨てて現実に立ち向かって行こうとしているのだ。
それはきっと必要なことなのだろう。一生少女のままでいることなんて出来ない。
汚いものに否応なく晒されることだってあるだろうし、例えば恋にまつわることで言えば、
誰かとひとりの男を取り合って自分が悪役を演じる羽目になるかも知れない。
自分自身が汚れるということは何よりの恐怖であり、
自分が常に正しくあることが出来ないということは自身への憎悪を抱かせる忌まわしいことだ。
だがアスカは自分の恋の為にそれでも逃げないと言っているのだ。
本当はこうした彼女の、思い悩み浸っているだけの少女というのではなく
行動することの出来る強さを持っているところが羨ましいのかも知れないとヒカリは思った。
目的に向かって行動している親友は美しく輝いて見える。
だからそこに何か自分の思いを託したかったのかも知れない。
しかしアスカに言われた通り、自分は結局逃げているだけなのだろう。
彼女のことをなじったところで、これまで通りの少女らしさにしがみつこうとしていた自分より
きっと彼女は遥かに勇敢で魅力的だと思い知らされるばかりで、それがいっそ清々しかった。
自分には自分のやり方がある。答えはまだ出ないけれど、それでもいいかと思い始めた。
トウジには悪いが、まだ彼のことが好きだという訳ではない。
それどころか、これまではなるべく彼のことを考えるのを避けようとしていた。
けれど少なくともこれからは考えてみることにしよう。
自分の場合はそこから始めればそれでいいのだ。
考えてみれば、追い求める恋ではなく追いかけられる恋というのも少しだけ気分がいい。
彼が顔を真っ赤にしていたあの時、自分は確かに恥じらいと共に心のどこかで喜んでいた。
まだ寒い季節だったあの日の記憶が春の日差しに照らされて鮮明に色付いた。
柔らかな日差しの下でヒカリは深呼吸をした。
何だかすっきりしてしまった。
たまにはわめき散らしてみるものね。
「今日、何しよっか、アスカ?」
「そうねぇ、どうしよっかなぁ・・・」
信号が青に変わった。
一番の親友同士の少女ふたりは組んでいた肩を解き、
手を繋いで楽しげに笑い合いお喋りしながら歩いていった。
彼女達の姿が見えなくなっても、
春の風に乗ってそのふたつの明るい笑い声は道行く人々の耳を撫でていった。
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碇家のアルバムより 写:碇ゲンドウ |
リンカ様の連載第10話です。
アスカの想いが胸を打ちます。
シンジにとっては彼女はただの妹の友達の姉。
そして同級生の少し親しい女友達に過ぎない。
それを知らしめられたわけです。
甘い気持ちでいたから余計にショックだったことでしょう。
さて、今回はヒカリがいい役どころでした。
アスカとの口げんかの場面は特によかったですね。
ビジュアルが浮かびます。
赤いランドセルを背負った黒い髪と赤い髪の少女がずんずん歩いていく。
口げんかをしながら歩くその姿が浮かんできます。
いい春風でした。
アスカの想いはいつ通じるのでしょうか。
本当にありがとうございます、リンカ様。
続きをお待ち申し上げます。
(文責:ジュン)
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