「天体観測」
プロローグ某SS「心に残るは君の面影のみ」
「おはようございます」 そういって僕に笑いかけてくる少女。惣流アスカラングレー。自称宇宙人 何故宇宙人かというと、空から落ちてきたから。 「おはよう、アスカ」 まだ眠い目を擦りながら、挨拶を返す。 朝食はアスカが来てからアスカがやっている。僕がやろうか?と言ったが、「居候だからこれくらいは当たり前ですよ」と言って譲らないので、今は家事全般アスカにやってもらっている。 味噌汁のいい匂いが漂う中、僕は郵便受けに行き、新聞を取った。 ちゃぶ台の前に座り、アスカが淹れてくれた紅茶を啜りながら新聞に目を通す。 新聞では、一週間前から見えるようになった流星群の話題が載っている。今日までらしい。 そういえば、アスカが来たのも一週間前だったな・・・・・・・・ シンジは、一週間前を思い出してみた。
学校も冬休みに入り明日から二週間学校が休みになった。 勉強しなくていい(ちょうっと違うが)遊びまくれる、などという理由で皆、喜んでいたが、シンジは別の理由で喜んでいた。 シンジの趣味は天体観測。深夜、望遠鏡を持ち、家を星を眺める。 独り暮らしなので、誰にも咎められないが、朝が辛く、学校がある日にはできないのだ。 友達は「かっこつけてんじゃねぇ」とか「かっこいい」とか言うが、別にどうでもいい。 ただ、星が綺麗だから、星を眺めたいだけだ。 そんなわけで、冬休みはシンジにとって最高だった。 冬は、寒いが星がどの季節よりも綺麗だ。 そんなわけで、シンジの心は舞い上がっていた。
アスカが味噌汁を運んできた。 アスカは僕の正面に座る。 「「いただきます」」 読んでいた新聞を横に置き、アスカが作った味噌汁を飲む。 アスカの味噌汁は美味しい。味噌汁に限らず料理全般とにかくおいしい。 たまに知らない料理とか、出してくれたりする。昨日はアスカの故郷のなんとかという星の料理を出してくれた。 くせのある味だったが、なかなかおいしかった。 なんで、こんなに美味しいのだろう?・・・・・・ほんとに、愛情がこもってるからなのか? シンジは、考える。前に聞いてみたら「愛情がこもっているからです」と言われた。 嘘だ・・・・・・と思っていたが、最近になり信じ始めている。ここまで美味しくされたら、信じるしかない。 「なに考え込んでいるんですか?」 僕が考え込んでいる様子を察したのか、アスカが聞いてきた。 「あぁ、いや・・・・・なんでもないよ・・・・・・・」 なんで、こんなに美味しいの?そう聞きたい。だけどなぁ・・・・・・・聞いたら気を悪くするかなぁ・・・・・・・ 「なんで、こんなに美味しいの?ですか?」 ずばり言い当てられた。 「なんでわかるの!?」 「シンジ様と心が通じ合っているからです」 「マジ!?」 「嘘です」 「・・・・・・・・・・」 きっぱりと言われた。 目の前では、アスカが口元を抑えながら笑っている。 からかわれた・・・・・・・・・・・ 「冗談はさておき、シンジ様は、考え事が顔に出るタイプだからです」 「そうかなぁ?・・・・・・・・・・・」 「そうですよ。でも顔に出るだけじゃわかりません。やはりシンジ様と心が通じ会っているからですよ」 「もしかして、からかってる?」 アスカは、微笑んでいる。
もう一度自分の装備品を確かめてみる。 手袋に、水筒に、ラジオに、厚いジャンバーに、折りたたみ式の椅子に、望遠鏡。 ばっちしだ。忘れ物はない。 僕は、装備を確認してから自分の家を出た。 外に出ると、冬の夜の寒さが身にしみてくるが、それよりも空が綺麗だ。 「今日は晴れてそうだな」 僕は、自分のポジション。いわゆる自分だけの場所へ向かった。 昔、初めて天体観測をしたとき発見した場所だ。 ベルトに結んである、ラジオの天気予報で雨は降らないらしいと聞いた後、FMに変え、音楽を聴く。 「ニュルンベルクのマイスタージンガー 第一幕への前奏曲」 ワーグナーという人の作品で、アップテンポな曲だ。 聴きながら向かう途中でも星を見る。 肉眼で見る星は、望遠鏡から見る星ともまた一味違うからだ。 望遠鏡では星の一つ一つを見るが、肉眼では星をいっぺんに見る。 曲が変わり「四季より 春」が流れ始めるころには着いていた。 椅子を作り、望遠鏡をセットする。 今日の見所は、今接近中の流星群だ。 椅子に座り、望遠鏡を覗き込む。 望遠鏡を通して星が映る。 「よし絶景だ」 映る星はとても綺麗で、僕に感動を与えてくれる。 赤い星や青い星、いろいろあるが本命の流星群は見えない。 望遠鏡から目を離し、腕時計をみる。 時計は午前二時 見えてもいい時間だ。 おかしいな?・・・・・・・・確かこの時間帯だと思ったのに・・・・・・時計が壊れてるのかな・・・・・・・・・ 望遠鏡からではなく、肉眼で眺めてみても、流星群らしきものはみえない。 位置が違うのかな?・・・・・・・・・ 僕は、辺りの空を見回したが、流星群は見えない。 真上をみた。流星群が流れている・・・・・・・・・・・だが・・・・・・・・ なんか・・・・・・・・欠けている様な・・・・・・・・・・ それは、どんどん大きくなってくる。 ・・・・・・落ちて・・・・・・・・きている!? 避けようとしたが、運動神経のあまりない僕は、立つときに椅子でこけてしまって、仰向きに倒れた。 それは目の前に迫ってきている。 うわぁっ!!もう駄目だ・・・・・・・・・・ 僕は死を覚悟したが・・・・・・・・・・一向になっても衝撃が来ない。 そうか・・・・・・・もう死んでいるのか・・・・・・・痛みがなくてよかった・・・・・・・・ 「あの・・・・・」 「!!?」 声のしたほうを見ると、とても可愛らしい少女が僕のお腹の上に座っている。 「すみま・・・・・・・・・」 そこまで言うと、突然僕のほうに倒れ掛かってきた。 「!!?」 驚きの連続でなにがなんだかよくわからない。わかってることといえば、自分の名前、趣味、今日の晩御飯、それに仰向けに倒れている僕に、うつ伏せで倒れ掛かっている少女。 「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・・」 僕の顔の横で寝息を立てている。 混乱していた頭もその声で、現実に戻った。 まずは、どうするかだよな・・・・・・・・・・家に連れて帰るしかないのかな?・・・・・ 僕は、少女をどけて望遠鏡などを片付け始めた。 「なんなんだろ・・・・・・・」 少女は流星の如く僕の目の前に表れた。
電気を消して、布団に潜り込む。 アスカが表れた日から、天体観測はしてない。なぜかはわからない。 星は今でも綺麗だけど・・・・・・・・・・・なんでかな?・・・・・・・・・・・ 寝る前の考え事・・・・・・・・それは、いろいろな事が考えられる。 音の無い世界、自分しかいないんじゃないか?と思う世界の中、布団の暖かさを感じながら、シンジは物思いにふけっている。 考えてる内容は、全部アスカに関することだけだ。なぜか、アスカのことばかり考える。 アスカには、ずっといてほしい・・・・・・・・・・ ただ、純粋にそう思う。 最近は、天体観測をしていない。なんとなくする気がなくなったから・・・・・・・・ その理由を考えてみると、アスカと長くいたいから。という理由しか思い浮かばない。 さぁーーという音と共に、襖が開いた。 驚いて見ると、そこにはアスカが立っている。 いきなりの事に、心臓がばく、ばくしている。 「なに?アスカ・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 答えてくれない。 「えーと、その・・・・・・・・なにしにきたの?」 「・・・・・・・・・・」 やはり、沈黙。 なんとなく、気まずい空気が流れる。 ・・・・・・・・なんなんだろ・・・・・・・いったい・・・・・・ 「シンジ様・・・・・・・・・・・・今日だけ一緒に寝てもよろしいでしょうか?」 「えっ!?」 アスカは僕の返事を待たずに僕の布団へ入り込んできた。 「アっ・・・・・アスカ?・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 僕のほうを向きながら寝ている。 僕は恥ずかしさで仰向けに寝る。 寝るんだ・・・・・・寝るんだ・・・・・・・・・ 自己暗示を掛けてもなかなか眠れない。 羊が一匹、羊が二匹・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ついには、羊を数え始める。だが眠れない。ついには、三百匹まで数えてしまった。 目が冴えている。 今、何時だろう?・・・・・・・・・・・・ そう思い、辺りを見回す。アスカのほうを見ると、まだ起きていたため、目が合った。 「!!!」 声にならない声をあげる。 アスカの蒼い瞳が僕を見つめている。 暫く、見詰め合っていたが、恥ずかしさがこみ上げてきたため僕は、また上を見る。 「シンジ様・・・・・・・・・・・」 アスカが話し掛けてくる。 その声は、なんとなく悲しそうだった。 「あたし・・・・・・シンジ様とずっと一緒にいたいです・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 「ずっと・・・・・・・・ずっと一緒にいたいです」 「・・・・・・・・・・・」 すぐには答えられなかった。 なんでそんなことを言うのか?という思いと、どう答えたらいいんだろうという思いで、よくわからなかった。 そのため、僕のとった行動は、無意識なのか、意図的なのかよくわからなかった。 僕は、アスカの手を握った。 「ずっと、いればいいじゃないか。僕は何処へも行かないから・・・・・・・・・」 自分が何を言ったのかすぐにはわからなかった。 「ありがとう・・・・・・・」 アスカの声を聞いたとたん、もの凄い眠気が襲ってきた。 僕は、アスカの手を握ったまま寝てしまった。
とりあえず、この子を布団に寝かせる。 悪いと思ったが、身分を確認できるものはないかと調べたが、何もわからなかった。 空から落ちてきた子・・・・・・・・・・・・ 実感が沸かないが、それが事実だ。なんで空から落ちてきたのかわからない。考えてみても全然わからない。 落ち着こう・・・・・・・・ 気持ちを落ち着けるため、僕はキッチンに行きコーヒーを入れた。 あの子の分も淹れようかな?・・・・・・・・・・・・ 寝ている少女の分までコーヒーを作る。 お盆に載せて、少女のいる部屋へ持っていった。 何故か知らないが、少女がグッドタイミングで起きていた。 「あっ、起きた?」 「はい・・・・・」 「あ、コーヒーいれたんだけど・・・・・飲む?」 「いただきます・・・・・」 僕は、少女にコーヒーのはいったマグカップを差し出した。 少女は両手でそれを受け取る。 「あのさ・・・・・・君、名前は?」 少女がびくぅ!とおびえたように見えた。 まずかったかな・・・・・・・ 「あっ、無理に言わなくていいよ」 「・・・・・・アスカ・・・・・・・」 とても小さい声で呟いた。 「アスカ・・・・・・・・惣流アスカラングレー、葛城ミサト艦隊所属、第0087部隊ジオフロントのエヴァ二号機専属パイロット」 「は?」 わけのわからない言葉ばかり出てくる。 「つまり、あなたたちから見れば宇宙人ってことです」
目を覚ますと、朝日が差し込んでくる。目を擦りながら起き上がる。 頭が非常にぼーっとする。 手で頭を掻いた。 ん?・・・・・・・・・ 頭に何か金属のものが触れる。 手を開いてみるとそこには、ペンダントが握られていた。 十字架の・・・・・・・・・・ 僕は何故これを持っているのかわからなかった。思い出そうとするが、このペンダントについては何故か思い出せない。 まるで、記憶の一部だけが欠落しているようだ。 ・・・・・・・・・・ただ・・・・・・・・ ただ、これを見てると赤い髪の蒼い瞳のとても可愛らしい少女の姿が浮かび上がる。 名前もわからない。 なのに、その少女だけが心に残っている。 僕はそのペンダントを身につけた。 とりあえず、今やることは朝ごはんの支度だな・・・・・・・・・・ 僕はキッチンへと向かい、朝ごはんを作りながら思う。 誰かがやってくれていたような・・・・・・・・・・・ だが、その誰かが思い浮かばない。 まぁ、いいや・・・・・・・・ そう考えたとき、なんとなく心が痛んだ。 なにかとても大切にしたいものだったような・・・・・・ 考えるだけ心が痛むので、考えをやめた。 ちゃぶ台の前に座り、味噌汁を飲む。 心から湧き出てくるものがあるが、無理やり押し込めた。
夜、目が覚めた。 時計を見ると午前一時半。 間に合う・・・・・・・・ なにに間に合うのか自分でもわからないが、どうにかしてでも間に合わせなきゃいけない気がする。 布団から飛び出し、すばやく、手袋に、水筒に、ラジオに、厚いジャンバーに、折りたたみ式の椅子、望遠鏡を準備する。 靴をはき外へ出る。冬の寒さが身にしみるがお構いなしに自分の場所へと走る。 ベルトに結んだラジオからは、天気予報が流れ、今日は晴れだということを伝える。 時計を見る。 後十分・・・・・・・間に合う・・・・・・・・また君に逢えるのかな? 君が誰かはわからないが、とにかく逢いたかった。 やっと着いた。 時間は午前二時。 僕は真上を見渡した。
続く
HP開設おめでとうと喜んでいる、愚者の後書き。 ジュン様、HP開設おめでとうございます。このSSは開設記念SSです。そのわりには連作になっていますが気にしないで下さい。SSとしても楽しめますたぶん・・・・・ さて、この「天体観測」ですが、元ネタが、三つあります。バンプ オ○ チキン「天体観測」 機動戦士ガ○ダム 星界の○旗です。 現在と一週間前を混ぜてますのでわかりずらいと思います。上から順に現在、一週間前、現在、一週間前、現在、一週間前、現在、現在という順です。あまりに突飛しているところとかありますが多目に見てください まぁ、パクリが多いわけですが、みて面白いと思われると最高です。ついでにメールなんかくれたりすると、なお嬉しいです。 最後にまた、「ジュン様おめでとう!」
作者の河中様に感想メールをどうぞ メールはこちらへ <某管理人>うぉおっ!と、投稿、投稿や!ど、どないしょ。どないしたらええんや。せや、とりあえず、交番に届けて…。 |