「天体観測」
第壱話「知らない天井」
午前二時。 前と同じ、 僕は、真上を見上げた。 満天の空に黒い物体を発見した。 かなり大きい。 それは、僕に向かって落ちてくる。 いや、僕が、それに向かって登っていっている。 なすがままだった。いや、抵抗したくなかった。それに僕の求めているものがある気がするから・・・・・・・・・・ただ、なにかはわからないけど・・・・・・・・ そして僕は、吸い込まれるようにそれに取り込まれた。
「時間ギリギリね・・・・・・・・・・」 なにがギリギリなんだ?・・・・・・・・・・ ぼやけている頭でシンジは思う。 「いいんじゃない?間に合ってんだし・・・・・・・・」 「そうね・・・・・・・ともかく、これで適任者がそろったわね」 適任者?・・・・・・・・ 「三人目・・・・・・・・・・サードチルドレンか・・・・・・・・」 なんなんだ?・・・・・・・いったい 自分の聞きなれない単語ばかりでよくわからない。 「しかし、地球では適任者が全員子供とわね・・・・・」 「私情を挟むんじゃないわよ」 「わかってるわ、この子は・・・・・・・・・アスカの担当ね」 アスカ?・・・・・・・・・・誰だ?・・・・・・・・・・ アスカという響きに反応したが、誰のことなのかわからない。 「でも、この子記憶を消されているみたいよ」 記憶を・・・・・消されてる!? 「!?なんでまた・・・・・・・・・・」 「さぁ?アスカに聞いてみないと・・・・・・・・」 「そうね・・・・・・・・・・シンジ君、意識はあるでしょ?」 「・・・・・・・・・・」 なにか喋ろうとしたが、口が動かない、目も開けられない。 「あぁ、無理しなくていいわよ、今から部屋へ案内させるから、詳しいことはそこで聞いてね」 「・・・・・・・・・・」 はい、とも言えない。 なにか、電話をするような音が聞こえた。 「あぁ、日向君?今からアスカを・・・・・・・・」 そこでシンジの意識は消えた。
「アスカ・・・・・・・・なんで呼ばれたかわかっているわね?」 「はい・・・・・・・・」 アスカは今、何も無いとしか言いようの無い部屋で、金髪の女性、赤木リツコと青髪の女性、葛城ミサトといる。 「別に責めている訳じゃないのよ、ただなんでしたか知りたいだけ・・・・・・・・」 ミサトがアスカに語りかけてくる。 「答えたくありません」 「そう・・・・・・ならいいわ」 驚くほど早く引き下がった。これには少し驚く。 「さっき、検査のときにアスカの名前出しちゃったけど・・・・・・・・・それも消す?」 先ほどまで理由を聞いていたのに、今度は、「消す?」と聞いてきた。 わかっているんですね・・・・・・・・・・・ ミサトは鋭い人だ。誰もがそう認める。普段の態度からは想像できないように・・・・・・・・・だからこそ、この艦の艦長を務めている。 「お願いします・・・・・・・・・・」 そう言った後、身を翻し部屋を出ようとしたが・・・・・・・・・・ 「あぁ、ちょっち待って」 ミサトに呼び止められた。振り返らず、足だけ止める。 「記憶を消すことがその人にとっていいことだとは思わないでね」 「・・・・・・・・・・・・」 止めていた足を進め、部屋を出る。 あたしは、間違ってなかったはずだ。記憶を消したほうがシンジ様にとって、よかったはずだ・・・・・・・・・・なのに何故、ミサトはああいうことを言うのだろうか・・・・・・・・・・ 暫くするとシンジのいる部屋の前に着いた。
目を開けると、知らない天井が目に入った。 「・・・・・・・知らない天井だ・・・・・・・・」 いつもの木製の天井ではなく、白で統一された天井。 違う理由はわかっている。自分がなにかに乗せられているからだ。 あの後・・・・・・・・何かに取り込まれた後・・・・・・・・なにか、記憶が抜けている感じがする・・・・・・・・・・ 最近、といっても昨日から、何かが抜けている感じがする。 シンジは、胸につけているペンダントを見てみる。 これを見るとうっすらと、思い出すような気がするんだが、結局なにも思い出せない。 大切な、忘れちゃいけない気がするのに・・・・・・・・・ ぷしゅぅぅぅぅという扉の開く音と共に一人の少女が入ってきた。 「起きてましたか?」 「いや・・・・・・いま起きたところだけど・・・・・・・・」 シンジは食い入るようにその少女を見る。 どこかで、どこかで逢ったような・・・・・・・・・・ 「はい、これが食事です」 そう言って少女は持っていたトレイをシンジに渡す。 「あ、ありがとう・・・・・・・・・・」 シンジはトレイを受け取る。 トレイには、保存食らしきものがのっている。 少女はシンジの横に座る。 「あたしは、惣流アスカラングレー。あなたの担当者です。なにか質問はありますか?」 見慣れない食べ物には食べる気がせず、とりあえず質問をする。 「あの・・・・・・・・ここは?」 聞きたい事が沢山あるが、ひとつひとつ質問していくしかないためとりあえずどこにいるのか聞いてみた。 見当はついているけど・・・・・・・・・・・・・ 「ここですか?ここは葛城ミサト艦隊所属第0087部隊ジオフロントです」 「なにそれ?」 「つまり宇宙船です」 やっぱり・・・・・・・・・・ 見当道理の答えだった。あの時のことは覚えている、なにかに取りこまれたことは・・・・・・ 「あなたはこの船のスーパーコンピューターMAGIにより、パイロットとして選ばれたんです・・・・・・・・・・」 そう言うアスカの顔は悲しそうに見える。 「あなたはこれからパイロットとして訓練を受けてもらいます。実戦がくればもちろん出撃してもらいます。それで・・・・・・・・・・死んでしまうかもしれませんけど・・・・・・・・・・」 「わかった」 「!!!?」 アスカは、シンジのなんの迷いも無い返答に驚いたようにシンジの顔を見る。 「わかってるんですか!?死ぬかもしれないんですよ!それでもあなたは・・・・・・・・・・」 アスカの言葉を遮るようにしてシンジは言う。 「いいんだ・・・・・僕はどうしても逢わなきゃならない人がいるんだ・・・・・・・・・・」 誰だかわからないけど・・・・・・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・わかりました、後で追って指示が来ると思います」 シンジは立ち上がり、部屋を出ようとしたアスカに、なにか自分のなかで引っかかっているものを聞いた。 「あのさ、アスカさん・・・・・・どこかで逢ったことありませんか?」 「・・・・・・人違いじゃないでしょうか?シンジさん」 アスカはシンジの部屋を出て行った。
「ふぅ・・・・・・・きっつーー」 ぐぅぅぅっと背伸びをしながら鈴原トウジは感想をもらす。 「なに言ってるんだ、あのくらいでへばってどうする!俺たちパイロットなんだぜ!!」 いまだパイロットになれた興奮が収まらないのか、相田ケンスケが語る。 2人ともパイロットだ。 シンジと同じで地球から選ばれた適任者、ファーストチルドレン、セカンドチルドレン。 シンジ達はパイロットの訓練が終わり、待機室でくつろいでいる。 「僕、なにか飲み物持ってくるよ」 「ワイはコーラな」 「じゃぁ僕は・・・・・・・紅茶伝説」 「わかった」 2人の注文を聞きシンジは給水機のところへ行く。 「コーラに紅茶伝説、それに・・・・・本気茶」 「カシコマリマシタシバラクオマチクダサイ」 給水機が頼まれたものを紙コップに注いでいる。 あれから一週間たった。シンジはパイロットをしている。 あのあと、シンジは司令室に呼ばれ、葛城ミサトと赤木リツコに会い、軽くここでの説明を受けた。 それからは特に何も無く、ただ訓練をしている。 訓練の仲間は、先ほどの2人とアスカ、それにあの2人の担当者、洞木ヒカリと山岸マユミ。 シンジはそのなかで、ビリだった。 もともと運動をしていたわけでもないので反射神経並びに細かい操作でどうしても遅れをとる。 それに、どうしてもシンジはトリガーを引くときに躊躇してしまう。ホログラフのなかだとしても・・・・・・・・・・ 「カンリョウシマシタ」 紙コップにそれぞれの注文した飲み物が淹れられてある。 トレイに乗せて2人のところへと持っていく。 「サンキューな、シンジ」 「ありがと」 2人はそれぞれの物を取り飲み始める。シンジも飲みだす。 「ふぅぃぃぃぃぃ・・・・・・・訓練の後のコーラは最高やな」 椅子にどべーっと座りながら親父くさく言う。 「なに言っているんだ!この紅茶伝説を見ろ!この香り!この味!とろけるようなハーモニー!!」 「見ただけでわかるかいな・・・・・・・・」 つっこみをいれる。 「ふっ、所詮コーラなんてこの紅茶伝説に比べれば、へぼ同然」 「あぁ、なんやて?聞き逃せへんな!」 聞き逃せないことなのか?・・・・・・・シンジは思う 「おい、センセ、どっちがええと思う?」 「えっ?」 いきなり話を振られて戸惑うシンジ。 「紅茶伝説だよな!」 「コーラに決まっとるやないか!」 「えーーっと・・・・・・・・」 逃げられない!?・・・・・・・・・・ 「各員に告ぐ、本艦隊最前列を走行中のボリーズ艦隊が戦闘に入った。本艦隊も戦闘に参加する可能性がある。各員持ち場に着け!パイロット全員は、第五カタパルト前に集合せよ!繰り返す・・・・・・・・」 助かった・・・・・・・・・わけでもないか・・・・・・・・ 都合よく、収集のサイレンが鳴ったが、それはできれば鳴って欲しくないサイレンだった。 「なにしとんのや、はよせい」 「えっ?」 見るとすでにケンスケも飲み終わっている。 「ほら、行くぞ」 「待ってよ!」 一気に本気茶を飲み干し、トウジ達の後に続き、作戦室へと急いだ。
「「「失礼します」」」 第五カタパルト前の準備室の扉を開けると、すでに他のパイロットたちは集まっていた。 「来たわね、それじゃぁ、説明するから」 ミサトは持っている資料に目を通す。 他の者たちは何ともないのだろうか?・・・・・・・ シンジは辺りを見回す。誰も顔色を変えている様子は無い。むしろ、余裕という感じだ。 なぜだか嫌な予感がする。なにかこう・・・・・・相手の力を肌で感じるような感覚が・・・・・・ シンジはぐっと、拳を握り締めた。 「いい?敵艦隊はジェットアーロン級艦隊一機のみ、まず、こちらが戦闘になることは無いと思うけど、とりあえず準備をしといてね。実戦練習のつもりでいいわ」 「はい!」 「じゃぁ配分を・・・・・・・・・・」 ミサトの声はバタン!と激しく開かれた手動のドアの音によってかき消された。 「ミサトさん!」 走ってきたのか、日向マコトが息を切らしている。 「なにごと?日向君」 「はぁ、はぁ、それが・・・・・・・・」 マコトはいったん深呼吸してから言う。 「それが、すでにボリーズ艦隊が撃破されました!」 「なんですって!?」 驚きの声を上げる。 「なんや、やばそうやな・・・・・・・」 トウジが僕とケンスケに聞こえるくらいの大きさで話し掛けてくる。 「たった一個艦隊で破ってくるとは・・・・・・・」 ケンスケが青い顔で言う。さすがに今の報告は全員に緊張を持たせた。 やっぱり・・・・・・・・・・ シンジはこの報告にあまり驚かなかった。先ほどの予感が当たる気がしたからだ。 「すでに、ボリーズ艦隊を含め、3個艦隊を撃破しています。このままだと後、十分ほどで我艦も戦闘空域に入ります!」 「援軍でも来たの!?」 「いえ、それが・・・・・・・・・・PES(パーフェクトエヴァシリーズ)です」 「「「「そんな!!!」」」」 僕たち以外が全員声を上げる。 それほどまでに恐ろしいのだろうか・・・・・・・・ 「PESってあの最近開発に成功した、成長型ダミーシステム搭載の最新型エヴァシリーズ!?」 ヒカリが叫ぶ。 ダミープラグとは一定した技術をもつシステムで、この技術より高い人がパイロットとなる。 ヒカリが言っている成長型ダミープラグとは人のように成長する。そのため実戦を積ませると最強、といっていいほどになるやつだ。 「なんで、この艦に!?」 「・・・・・・・・・・ともかく迎撃するしかないわね・・・・・・・・・・・」 先ほどと変わり真剣な表情で言う。 「アスカは量産型エヴァ二号機に、洞木さんはエヴァ量産機改に、鈴原君は量産型旧エヴァ三号機に、相田君は量産型エヴァ旧四号機に、急いで!」 「了解!」 みんなそれぞれの機体へと走っていく。 「ミサトさん、僕は?・・・・・・・・」 一人残されたシンジが聞く。 「シンジ君は左舷砲撃手をお願い。射撃技術はあなたが一番だから」 「・・・・・・・・・わかりました・・・・・・・・」 不満・・・・・・・なのだろうか?僕は・・・・・・・・・・あの人と僕は同じところにいられないのだろうか・・・・・・・・・・・ シンジは胸のペンダントを見た。 君は、戦っているのか?・・・・・・・・・ シンジはパイロットと言っていた少女を思い出した。 誰だかわからないけど、その人と同じ場所に立てないのが悔しかった。
「なんなの?この感覚は・・・・・・・・・・」 司令席に座りながら、綾波レイは全身の肌に感じる力みたいな感覚を感じていた。 気が滅入っているのだろうか?・・・・・・・・・・ メインスクリーンでは、PESが着々と艦を沈めている。 「敵艦残り五、指揮艦と防衛艦のみです」 スクリーンでその五艦がズームされる。防衛艦は必死で攻撃を続けている。 「残り、ES(エヴァシリーズ)は?」 「現在戦闘中のESは、ダミー搭載エヴァ量産型が3機、エヴァ量産型が2機、エヴァFb(フルバーニアン)が3機、それに指揮艦のESのみです」 「こちらのESは?」 「0081エヴァが5機、全て健在です」 「そう・・・・・・・・」 司令席に身を沈める。いまだ、全身に力を感じる。 落ち着かない・・・・・・・・・・・ 「私専用のエヴァ零号機、スタンバイさせて」 オペレーターに向かい言う。 「は?出撃なさるので?」 「そう、気晴らしにね・・・・・・・・」 「気晴らし・・・・・・・・ですか」 オペレーターはそれだけ言うと、指示を急いでいる。 「霧島小佐」 横にいる少女に話し掛ける。 「はい」 「頼みます」 「わかってます。気をつけて、綾波大佐」 レイは立ち上がり、第六カタパルトへ向かった。
「第一拘束具から、第三拘束具まで解除」 「進路確認、オールグリーン」 指揮室にオペレータの声が響く。 「エヴァ全機発進!!」 「「「「了解!!発進します!!」」」」 アスカたちの乗るエヴァの発進を確認した後、ミサトは続けざまに指示を出す。 「ダミー搭載エヴァ発進準備、整い次第発進させて!」 「了解!探査針打ち込み完了!発進させます」 指揮室に忙しく響く声。 「リツコ、エヴァ初号機試作型もダミーで出すわ」 横にいるリツコに話かけている。 「わかってるの!?あれを無事、NERV本部に届けるのが、私たちの仕事よ!」 「死んだら元も子も無いでしょう!」 リツコの抗議をつき返す。 「マヤ、初号機発進させて」 「えっ?いいんですか?」 マヤが振り向き聞く。 「いいわ」 「先輩・・・・・・・・・・」 ミサトじゃなく、リツコが答える。 「エヴァ初号機発進させます!」 エヴァ初号機が発進されてゆく。 「ほら!ぼーっとしない!来るわよ!!」 メインスクリーンには、0081エヴァのPESが迫ってきている。 「A,Tフィールド展開と同時に、右舷凝集光砲、左舷凝集光砲右44度、左32度に向けて発射!弾幕張るのも忘れないで!!」 シンジは、トリガーを握る。 狙いを定める。 シンジは、トリガーを引いた。
続く
最近部停になっちゃった、某中学の野球部に入っている、愚者の後書き。
なんか、前より下手になったような気が・・・・・・・・・・ まぁ、戦闘なので、仕方ないってことで、大目に見てください。 さて、三人称小説になり、シンジ君以外の場面も書ける様になり、ちょっとは設定がわかったかな?とは思います。 まぁ、愚作ですけど、次回も期待してくれるとありがたいです。
<アスカ>来たわよ、来たわよぉ! |