(その壱)


(その弐)


(その参)

 

犬神家の一族

 

 角川文庫・初版 昭和47年6月10日 本文409P 解説:大坪直行

 金田一耕助の6番目の長編。
 信州財閥の巨頭・犬神佐兵衛翁が死去した。そして条件付きで莫大な全財産を贈与される野々宮珠代を巡って一族の人間の醜い争いが始まる。奇怪なゴム面を被った仮面の男は本当の犬神佐清なのだろうか。
 横溝ブーム、角川映画、その他色々な事象の起点となったのが、この作品の映画化(市川崑監督作品)でした。また他の作品ではなくこの作品をシリーズ第1作に選んで映画との比較を敢えて挑んだ『横溝正史シリーズ』(毎日放送)の姿勢も話題を呼びました。

 

 表紙は3バージョン有ります。

 

(その壱)

 この表紙絵は『火曜日の女・蒼いけものたち』を連想します。酒井和歌子が主演した、金田一耕助が出てこないことで有名な作品です(酒井和歌子が実に美しく、且つ可愛い!)。青春モノかと思ってしまうような若々しさがこの表紙絵から感じられます。

 

(その弐)

 『蒼いけものたち』でのアプローチもそうでしたが、『女王蜂』のように若者を中心にストーリーが進んでいくこの作品を市川崑は高峰三枝子や三國蓮太郎を起用することで一気に重厚なタッチに変化させました。表紙絵もイメージがガラリと変わり、ミステリアスでありながらまるで文芸大作かと思わせるような効果が出ています。

 

(その参)

 映画版の販促ポスターと合わせるために変更になったバージョンです。映画ポスター、レコード、書店のフェア・ポスター、その他このイラストが日本中を制覇したと断言できるでしょう。事実、横溝ファンであろうが無かろうが、すべてこのイラストが横溝正史ワールドという共通認識になっています。丸髷の女性も<その弐>バージョンの弱々しさが無くなり、押し出しと無表情さが強まっています。何といっても、この表紙絵で一番強烈なのは、<赤>でしょう。動脈の血液のように鮮やかな朱色の存在が、観る者に訴える効果は計り知れないものがあります。

 

 

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